これは愛か、それともただの刷り込みか

栗鼠

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ニーチェside 微睡みの中で

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…凄く温かい。
…凄くいい匂い。

ボクを拾ってくれたフォグは魔法使いで、終わりの時が近づいてるって言ってた。
魔法使いの最後は小さく小さく弾けて溶けて消えちゃうって。

生きるための術を駆け足だけど覚えろって色々教えてもらった。
魔力がないボクは森の深い所には住めないから浅い所に住めるようにしておくって、虎さんに連れて行ってくれるように頼んであるって。

たぶん、ここがそうなんだと思う、だから怖くないはず…そろりと顔を上げてみる。

「少し落ちついたか?」
「ん。」

頷いた。

「何日かここに居てやる。何が出来るのか見せてくれるか?」

昼過ぎになってた…さっき朝だったのに。
いっぱい寝ちゃった。
いつもは朝日が昇る頃起きて、日が暮れてだいぶ経ってから寝てた。
ボクは眠くて仕方がなかったけど、たくさん覚える事があって…頑張った。
人化したらもう少し覚えられるって言うから早く人化しないとダメだと思って…早く早くってすごくいっぱい思った。

…人化しても覚えることは、たくさんあって…なかなか覚えられなくて。
フォグがいなくなったらボクは生きていられない…寝たら死んじゃう。

怖くて怖くて…。

…ん
温かい
すんすん
いい匂い
すんすん

ボクはいつも家に来る虎の腕の中だった。
今度はベッドの上だった。…夕方だった。

…また …ねちゃったの?

もぞもぞしたら「起きたのか?」って言われて、ボクを腕のなかに抱いたまま起き上がってベッドの上で胡座をかいて…その上に横向きに座らせてくれた。

すんすん…いい匂い

首元に顔を埋める。

なんだかわかんないけど。
そわそわぞわぞわ …する。

「ちょっと待っていろ。」

さっきまで掛けていたケットでボクを包んでベッドを出て行った。
ケットを手繰り寄せて抱え込んで…すんすんしながら追いかけた。

トイレだった。
シンクで手と顔を洗ってる…水の音を聞いてたら、なんかボクも…もじもじする。

「持っててやるから。」
済ませておいでとケットを受け取ってくれたからボクはトイレの前まで行くけど、この人がどっか行っちゃうかもと思うと焦って下穿きの紐を変に引っ張ってこぶ結びにしちゃった。

「……うぇっ」
泣きそうになって変な声が出た。

「どうした?…固結びにしたのか。解いてやるからもう少し我慢しろ。」

「…こら。動くな。」

でも出ちゃう。
もじもじ
そわそわ 

「ほら解けた。」

急いで下穿きを下ろした
…ぁぁぁ    

「漏らさなくてよかったなぁ?」

…ちょっと恥ずかしかった。
手を洗って顔も洗った。
ケット返してって手を出したら返してくれた。すんすん …安心。後をついて行く。

ダイニングのイスに座って腿を叩いて『おいで』と右手で手招きしてくれた!ボクは膝の上に乗る。

いっぱいすんすんして…ボクの中がこの人の匂いでいっぱいになって…ボクはちょっと安心した。

顔を上げたら「名前を聞いていいかな?」って言われて…あれ?ボクの名前知らないの?…あれ?あなたの名前知らない。

「ニーチェ。」

イヴァンはボクを抱えたまま何にも話さない。
撫でてくれる手があったかくて気持ちいい。
どうすればいいのかな?

ここ昨日まで住んでた所と同じなんだけど…なんか全然違くて。
そわそわぞわぞわして落ち着かない。
何が違うんだろう。

えっと
えっと
わかんない。

膝から降りて家の中を全部見てまわった。
うん。おんなじ。

一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝た。
イヴァンと一緒なら寝ても死なないのかもしれない。

朝。

イヴァンが見ててくれる
ボクはボクの出来る事をやった

今は冬だから畑はお休み
洗濯して
掃除して
ご飯の準備をして
寒くない服を着て
外の小屋の蜜用の大きな鍋に水を入れる
火をつけてから森に行く。

キョロキョロするとキラキラが来てくれた。

木から花虫をポトポト落としてくれる。
噛まれない様に集めて持って帰って、ジョウカセキが入ったタライの中に入れて、トングで揺すると色が変わる。
グラグラした鍋に入れる。

鍋いっぱいになるまで何度か繰り返して水を足したり火を加減してグラグラをぽこぽこにする。ここまで出来たら明日の朝までずっと煮る。

空が暗くなってきたら鎧戸を閉めてランプに火を入れる。
薪が少なくてすむ様に作業部屋の間仕切りのカーテンを下ろす
ひとりで全部やるのは大変だった。

イヴァンは黙って見ていてくれた、ボクがモタモタしてても睨まない…。

お風呂はイヴァンが準備してくれた。
ぽあぽあして あったかくてすぐ眠くなった。

イヴァンは あったかい。
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