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ボリスside ……秋
しおりを挟む湿度が変わった…秋が来る。
…今までとは確実に違う。
俺の中で「何か」が強く反応している。
流石に言わないと駄目だ。
言ってない事が有り過ぎて…何から話せばいいのかわからなくなってきた。
まず…秋は忙しいって事を言わないと。
気を使わせるのが嫌で…ギリギリまで引き伸ばした。たぶん今日の休みがまともに休める最後だ…リオと向き合う時間を作らないと。
2人で釣りに行ったら楽し過ぎて駄目で。
家にいるとイチャイチャしたくなるから駄目で。
…イゴールの所に見舞いに行くって理由で外に出る。先触れも出した。
伯爵家だからな…まず…おしゃれしようか。
髪だけハーフアップに結い上げてから商会に向かった。カタログで目星はつけてあるからな?色だけ焦茶とボルドーで合わせたリンクコーディネートだ。
リオは、ノーカラーのショートジャケットにワイドパンツ。
俺は、ジャケスラに半袖の綿ニット。…スリングはベージュにしよう。
着て外に行くチャンスは無さそうだが…他にもいくつか見繕った。相変わらずリオはあまり服は欲しがらない。
「このまま着て帰る。まとめて家に届けといてくれ。」
約束の時間までまだ少しあるから…ちょい出店を楽しもう。
「杏飴はいかがですか~!」の声にリオが反応した。ひとくちサイズにカットした生の果実を串に刺して飴でコーティングした物なんだが…そういえば果実飴は食べさせた事が無かったな?
季節ごとに使う果物が変って噛むとパリパリ薄い飴が砕けるんだ。
口に入れたはいいが…リオには少しデカいひとくちサイズで…必死に転がしながら噛んでて…コレは笑っちゃ駄目なヤツなんだが…ニヨる。
焦らなくても…もう1個もリオのだからな?
イゴールの家は内砦の内側…森側だから東門を通り抜けた。東門には、白の盾に属する貴族の屋敷がいくつかある。その中で地位を守り続けているのがイゴールの家だ。
黒兎はプライベートガーデンのテラスに置かれたベッドで微睡んでた。
手前でスリングから出してタオルと羊が作ったあんず持たせて。
「ほら。行ってこい。」
「ぼりすは?」
そうか。リオは知らないんだ。…チャトラの家では一緒だったしな。
「具合の良くない雌の見舞いの時は、他の雄は近付かないもんなんだ。特に今日は狼も居ないだろ?だから俺は庭にも入らねぇし、これ以上近寄らない。ここで待ってる。」
「…わかった」
リオはお見舞いの品を持ってプライベートガーデンに入って行った。
家令だろう山羊が
「お気遣いありがとうございます。お茶はいかがですか?」
「いただきます。」
立って待たされる訳じゃない、庭の手前にちゃんと俺の席が用意してある。
「この度の件ボリス様にご助言を頂いていたにも関わらず、この様な事になり慙愧の念に堪えません。魔法使いのお弟子様にお詫びも兼ねて心ばかりの品をお渡ししたいのですが、森にお住まいでそれも叶わず、お手数とは思いますがお願いしても宜しいでしょうか?」
「承ります。」
「宜しくお願い致します。」
…尻拭いも大変だな?
『こんにちは』
この距離だとリオ達の会話も丸聞こえだ。
『これ おみまいです おくちに あうと いいんですけど』
『来てくれてありがとう』
『すこし おちついたと きいたので おじゃまさせて いただきました』
『少し頑張り過ぎちゃった。心配してくれてありがとう。』
『おなか おおきく なりましたね』
『もうすぐ産まれるの。だから森には行けなくて
押し付けるみたいになって、ごめんなさい』
『だれかが かわれることでは ないから
くろうさぎさんにしか できないから がんばって ください』
『ありがとう。』
おー、リオが頑張ってる。
結構会話が続いてる。
若い山羊に勧められた椅子に座り、出されたお茶に手をつけるリオ。ああ…所作が本当に綺麗だ。
他愛無い話。
産まれるのは狼なんだ。とか。
あの時の焼き菓子が美味しかったとか。
お菓子は作った事がないとか。
『…ハルキって呼んで欲しい』
黒兎が山羊に確認を取ってる?
あの山羊距離が近いな…第二夫か?
そうか…イゴールは番紋を入れていないのか。
まぁ、殲滅は死と隣り合わせだからな…第二夫は胎の子と…番の地位を守る為には仕方がないか…。
番だとしても…強い子が産まれるまでは専有も番紋も入れる事は出来ないんだろうな…貴族も大変だな。
俺はリオさえ居れば …それでいい。
『リランは?リランはハルキって呼べない?』
『私もですか?……ハルキ?」』
『嬉しい。僕、名前をあまり呼ばれる事が無かったから』
お?リオがいきなり緊張しはじめた…なんだ?
『…はるきさん…あの……ぼく そろそろおいとまします…また きます ね?』
『うん。今日は来てくれてありがとう。りおちゃん』
ぺこっとお辞儀して早足で戻ってきた。
「もう いいのか?」
「うん げんきそう だった」
振り返って小さく手を振って。
「ん!」ってスリングに入れろって催促された?
駄目 山羊 駄目 駄目
…わかった!あの山羊といい雰囲気だったから浮気かと思ったんだな?
そりゃドキドキするな?後で教えてやろう。
お疲れ様。はい、杏飴。
…ウジウジうじうじよ!本当に!……リオは俺が言う事に絶対に嫌って言わねぇから…本当に言い辛ぇ。
秋になったら俺は殲滅に入る事になる。
…小隊長の時も緩衝帯のフォローには入ってた。
入ってはいたが仕事終わりに2時間程度だ。
討伐と殲滅は…全く違う。
最近…殲滅に入ると腹の底から「何か」が湧き上がる…塗り替えられる様な感覚がある。
リオにどう言えば…伝わるだろうか。
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