覚えていられなくても

栗鼠

文字の大きさ
5 / 13



…西領の領主が変わったのは今から10年前。その前までは領民が北領に逃げてくるほど住みづらかった。

西領は、青竜が棲むこの大陸の食を支える穀倉地帯が広がり他領が羨むほど自然に恵まれた王都に隣接した牧歌的で穏やかな土地だ。

…いや…牧歌的と言えば聞こえがいいかもしれないが…街が発展ていなかった。理由は簡単でドワーフが棲みつかなかった事だ。だからインフラも一体いつの時代の物だ?と思うほど古く整備されていなかった。…そう言う事に強いのがドワーフだ。

こちらの勝手に開発出来るわけじゃない。
地形や生息している野生動物、住んでいる種族によって色々事情があるんだ。

最大の敗因は…たぶん…エルフだ。エルフは開発を嫌うからな…仕方のない事だ。ドワーフは好奇心旺盛だから…牧歌的な所はあまり好まないんだ。

獣人は……根っこが馬鹿だから。真っ直ぐ進む事しか出来ないし苦しくても体力があるから限界まで耐えてしまうし…。人族は…欲深く頭が回る。

それらが…悪い方向に噛み合った。

王都に通じる街道だけが、どうにか通れる程度に整備されていた。

不便だからと言って手を出せる訳じゃない。
領と言えば垣根が低そうに聞こえるだろうが交流はあるがそれぞれが独立しているんだ。
友好協力はするが内政は不干渉が…基本だ。

…口を出すにはきっかけが必要だった。

10年前。私が仕事を覚え始めて15年、28の時に河守りの名を父から引き継いで2年目。いつものように日の出の頃に目覚めカーテンを開けて…異変に気がついた。
隣接する西領の湖の水位が高い過ぎる…このままだと湖が氾濫してしまう。水門を開けて下流に流さなければ甚大な被害が出る。
こちらは自然湖だが、あちらは増水した雪解け水を管理するための人工湖だから内包出来る水量に限界がある。

…継いだばかりの若造が!と言われるだろうかと迷ったが…あまり着る事のない三揃いを着て人口湖の水門の近くにある館に馬で向かった。

蜘蛛の巣の様な…鬱陶しい結界。
ひとつひとつは脆弱な結界だが…何重にもかけられていて……脂汗が滲む…なんだ?この不快さは…。

館は見えているのに前に進めない。…と言うか進みたくない。コレは…ちょっと私には荷が勝ちすぎているか?と諦めかけた時…私の様子を伺っている挙動不審な狼を見つけた。

もしかして西領の同業者か?と思い馬から降りて手を上げて声をかけてたら…縋り付いてきた…。

「…お前もか?お前の番もあの中にいるのか?
番が…帰って来ないんだ。
魔獣に襲われて死んだんだろうと言われた。
確かに…来ていた服の切れ端は …あった。
…血の匂いもした。でも…死んでいない。
俺とアイツは番紋で繋がっているんだ…アイツは生きている…。でも匂いがしないんだ。


…昨日…俺なんかに見えるはずのない精霊の幼な子が見えて…ここに導いてくれた。
だか何故だか入れない…近寄れない。」

「番の種族は?」
「…犬だ。」

犬は春と秋が発情期だ。狼が発情期の番の匂いがわからないって事は…異常事態だ。温存していた魔力を解放して結界を侵食する。前には進めないが…穴ぐらいは開けられる…はず…。どうにか侵食できたのは針の先ほどの穴……それでも …熊の私だからわかる…いくつもの歪な発情香。 

……私には戦う術がない。

狼と共に急ぎ外砦に向かった。
門番に掛け合ったが「他領の事は対応出来ない」と言われて途方にくれた。そこに俺より10は若いだろう厳つい白熊が来て「雌の失踪届はこちらでも何件か報告を受けている。湖が氾濫したら近くの集落も被害を受ける。中央に掛け合って来るから待っていろ。」と。

…私達は …ただ待った。

暫くして外砦に高位の狼と虎と …何人かの兵士が来た。「侵入の言い訳は河川の維持管理に伴う協力要請だ。君にはついて来てもらう」と言われ手を掴まれたと思ったらって言われて湖畔の館の近くまで転移で飛んでいた。


…あの館での事は…今でも忘れられない。
…思い出したくない。


その事がきっかけで王弟殿下が西領を治める事になって北領と友好協力が強く結ばれ、インフラ整備を援助する為ドワーフが入って…河川の事ならわかるからと爺さんと父さんが西領の河守りの指導に入り…。


何を言いたいかって?…忙しかったと言いたかったんだ……ただの言い訳だ。

去年までは…問題なかったんだ…。

…春で。私もラヴィも発情期で…。

いや!あんな幼いラヴィに欲情なんてしないから!

そもそも私は…そう言う事をするのが面倒で…ずっと不全紋を刻んでいたんだ。更新の隙間で娼館に行って…ちゃんと勃つって…確認作業程度にヌいてた…。

自分は草食系の熊なのかな?思っていたんだ。



感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました