16 / 22
16.ルイ・オーギュスト
しおりを挟む
「やあ!さっきぶりだね。」
あの爽やかイケメンが、ひらりとステージに上がってきた。
『えーーー!!?あなたがルイ・オーギュストさん?』
「ああ。挨拶をしていなかったね。私はルイオーギュスト。ルイと呼んでくれ。王宮騎士団に所属している。一応、副団長をやっているんだ。」
……副団長!?お父様の部下だったのか。
まさかこの人がルイオーギュストだと思わなかった。
『そうだったのですね。あ、先程はありがとうござました。』
「いやいや。当たり前の事をしたまでさ」
落ち着きと余裕、声のトーンまで紳士的。
かっこいいなあ。
「あの。開始してもよろしいですか?」
『あ。すいません。始めてください。』
そうだ。これから戦うんだった。
「それでは、始め!」
まずは様子見だな。
強さを確かめてから――
「君は何故試合に出たんだ?」
ルイさんがゆっくりこちらに歩いてくる。
『出ろって言われました』
心理戦に持ち込もうとしているのか?こんなガキ相手に?
そんなことをしなくても、勝てるでしょうに。
ルイさんは薄く笑った。
「ふふっ。それだけの理由で出るのか。」
『それだけです。』
「君は、自分は強い。と思っているんじゃないか?」
『なっ!』
「図星かい?本気を出さなくても勝てる、って。
本気出さなくても大丈夫。
自分は影から支えるだけでいい。
自分のことはどうでもいい。
そのうち死んだっていい。そう考えたことがある。
違うかい?」
ルイさんの声は淡々としているのに、耳に刺さる。
なんで
なんでそんなこと
誰にも言ったこと、ないのに。なんで。
「君みたいな人を知っているんだ。
あの人も君みたいな目をしててね。
私は、あの人に何も出来なかった。」
彼の話を聞いてはいけない気がした。これ以上この人の話を聞いていたら私の中の何かが壊れる。
考える前に体が動いた。斬りかかる。
しかし、剣はひらり、と避けられた。
「もうあんな思いはしたくない。」
何度切り込んでも当たらない。
焦りだけが積もっていく。
「1人で苦しまないでくれ。」
ルイさんは、悲しそうな顔で私を見る
優しい声なのが、逆に残酷だった。
『あなたに何がわかる。』
声が震えた。
『出会ってそんなにたってないじゃないか。あなたには関係無い!』
ルイさんの瞳は、真っ直ぐで、深い。
見透かされているみたいで怖い。
私が望んじゃいけないことを私が諦めたことを叶えてもいいんだ望んでいいんだって。
本当に叶うって思わされる。
「関係の無いことなのは分かっている。私は、あの人に似たお前を助けたいとおもった。ただの自己満なのは知ってるさ。私に君を助けさせてくれ。」
『これ以上僕の中に入ってこないでくれ。』
言った瞬間、自分の声が震えているのがわかった。
「君を苦しめるつもりはなかったんだ。すまない。助けたい気持ちは本当だから。いつでも王宮を訪ねてきなさい。君の名前を言えば通してもらえるようにする。」
ルイさんはそっと近づき、ポケットから白いハンカチを出し、目元に触れた。
「私はこの試合降参することにする。」
それ以上何も言わず、彼は背を向け
そのままステージを降りていった。
「なっ!!!ルイオーギュスト選手は自分からステージを降りてしまった!!?なんと!勝ったのはシグレ選手!???」
観客は大騒ぎ。
なのに私の耳には、何ひとつ入ってこなかった。
声が全部、頭の外で響いているような変な感覚だった。
『なんで。』
ぽつりと漏れた声は、誰にも届かない。
ただ、ハンカチのぬくもりだけが残っていた。
あの爽やかイケメンが、ひらりとステージに上がってきた。
『えーーー!!?あなたがルイ・オーギュストさん?』
「ああ。挨拶をしていなかったね。私はルイオーギュスト。ルイと呼んでくれ。王宮騎士団に所属している。一応、副団長をやっているんだ。」
……副団長!?お父様の部下だったのか。
まさかこの人がルイオーギュストだと思わなかった。
『そうだったのですね。あ、先程はありがとうござました。』
「いやいや。当たり前の事をしたまでさ」
落ち着きと余裕、声のトーンまで紳士的。
かっこいいなあ。
「あの。開始してもよろしいですか?」
『あ。すいません。始めてください。』
そうだ。これから戦うんだった。
「それでは、始め!」
まずは様子見だな。
強さを確かめてから――
「君は何故試合に出たんだ?」
ルイさんがゆっくりこちらに歩いてくる。
『出ろって言われました』
心理戦に持ち込もうとしているのか?こんなガキ相手に?
そんなことをしなくても、勝てるでしょうに。
ルイさんは薄く笑った。
「ふふっ。それだけの理由で出るのか。」
『それだけです。』
「君は、自分は強い。と思っているんじゃないか?」
『なっ!』
「図星かい?本気を出さなくても勝てる、って。
本気出さなくても大丈夫。
自分は影から支えるだけでいい。
自分のことはどうでもいい。
そのうち死んだっていい。そう考えたことがある。
違うかい?」
ルイさんの声は淡々としているのに、耳に刺さる。
なんで
なんでそんなこと
誰にも言ったこと、ないのに。なんで。
「君みたいな人を知っているんだ。
あの人も君みたいな目をしててね。
私は、あの人に何も出来なかった。」
彼の話を聞いてはいけない気がした。これ以上この人の話を聞いていたら私の中の何かが壊れる。
考える前に体が動いた。斬りかかる。
しかし、剣はひらり、と避けられた。
「もうあんな思いはしたくない。」
何度切り込んでも当たらない。
焦りだけが積もっていく。
「1人で苦しまないでくれ。」
ルイさんは、悲しそうな顔で私を見る
優しい声なのが、逆に残酷だった。
『あなたに何がわかる。』
声が震えた。
『出会ってそんなにたってないじゃないか。あなたには関係無い!』
ルイさんの瞳は、真っ直ぐで、深い。
見透かされているみたいで怖い。
私が望んじゃいけないことを私が諦めたことを叶えてもいいんだ望んでいいんだって。
本当に叶うって思わされる。
「関係の無いことなのは分かっている。私は、あの人に似たお前を助けたいとおもった。ただの自己満なのは知ってるさ。私に君を助けさせてくれ。」
『これ以上僕の中に入ってこないでくれ。』
言った瞬間、自分の声が震えているのがわかった。
「君を苦しめるつもりはなかったんだ。すまない。助けたい気持ちは本当だから。いつでも王宮を訪ねてきなさい。君の名前を言えば通してもらえるようにする。」
ルイさんはそっと近づき、ポケットから白いハンカチを出し、目元に触れた。
「私はこの試合降参することにする。」
それ以上何も言わず、彼は背を向け
そのままステージを降りていった。
「なっ!!!ルイオーギュスト選手は自分からステージを降りてしまった!!?なんと!勝ったのはシグレ選手!???」
観客は大騒ぎ。
なのに私の耳には、何ひとつ入ってこなかった。
声が全部、頭の外で響いているような変な感覚だった。
『なんで。』
ぽつりと漏れた声は、誰にも届かない。
ただ、ハンカチのぬくもりだけが残っていた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
〈本編完結〉わたくしは悪役令嬢になれなかった
伊沙羽 璃衣
ファンタジー
「返しなさい! その体はわたくしのものよ!」
ある日ルミエラが目覚めると、転生者だという女に体を奪われていた。ルミエラは憤慨し、ありとあらゆる手を尽くして己の体を取り戻そうとする。
これは転生者に人生を奪われたひとりの少女のお話。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる