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第一章
8 下女 ト 令嬢 ~或る下女の手記~
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吾輩はエリナリーゼ。家名はまだない。
ああああああ、違う違う!!
なんか混乱しちゃってるわ!
なんなの、この変な自己紹介。
平民なんだから「まだ」も何も家名がないのは当たり前じゃない。
「吾輩」だなんて言った事ないし。
何だか異世界からの変な電波を受信したみたい。
でも、今日はそこまで混乱しちゃうくらいすごい事がおこったの!信じられる?
朝までは何も無い退屈な日常だったのに。
私は今日、いつも通り日の出前に出勤していた。
私の家は郊外にあり、まだ暗い時間に家を出ないと貴族街の公爵家にたどり着けない。
朝、日が昇る頃に公爵家の裏門にある使用人専用の通路からお邸に入っていく。
私より早く来てる人はちらほらいて、みんな下働き専用の建物の中で思い思いに欠伸をしたり朝ご飯を食べたりしてる。
私も朝ご飯にと、昨夜焼いておいて固くなったパンを歯で毟りとるように食べる。
丁度パンを食べ終わったタイミングで大量の洗濯物が届く。
さあ!お仕事の始まりだ!
山と積み重なった洗濯物を先輩方が種類や素材で分けてくれる。
私はシーツやタオルの担当だ。
これから経験を積んで行けばもしかしたらツヤツヤのシルクやふわふわのウールを担当させてもらえるかもしれない!今日も頑張ろう!
タオル類が積まれた山から抱えられるだけ抱えて、外の水場へ行き足踏み洗いで汚れを落とす。
頑固な汚れは摘んで揉んで手間がかかる。
それらを畳んで絞って干場へ持って行くと干場の下働きが干してくれる。
そうしてまた積まれたタオルを手に少しずつ洗濯物の山を崩していく。
そうして何往復しただろうか、突然おかみさんから声がかかる。
あ、おかみさんっていうのは私たち下働きのリーダーやってる人の事。恰幅のいい、下町の肝っ玉母さんみたいな人で、下働きなのに奴隷を使う権限を持ってるすごい人なんだ!
おかみさんって呼ぶと「ガラじゃない」って怒るけどなんかしっくりきて呼んじゃうのよね。
「リナ!
奥様のお茶会に何人か見繕ってんだが、あんたも行くかい?」
「いいんですか?行きます!」
「あんた変わってるねぇ。お茶会なんて退屈な上に、周りの使用人も貴族ばっかで鼻持ちならないだろうに」
ラッキー!!
確かに立ってるだけだけど、私は可愛い物が大好きなの。貴婦人のキラキラしたドレスや綺麗にデコレーションされたお菓子たちは見ているだけで楽しい。
何より侍女のお仕着せが可愛いの!
いつも着ている下働きメイドの薄汚れたブラウンの重たいワンピースじゃなく、黒にも見える濃紺のふんわりしたエプロンドレス。
しかもキラキラしたものを見ているだけでお給金をいただけるなんて理想的すぎて申し訳ないくらいよ。
「いえいえ、私で良ければ喜んで!」
ウキウキしながら貸してもらった侍女のお仕着せに着替える。
やっぱり可愛い!生地が柔らかくて着心地がいいわ。
鏡の前で簡単に髪をまとめて、先輩にお願いして貸してもらった化粧を施すとお茶会の会場へ行く。
いつも通り、会場の端の方で両の手足を揃えて背筋を伸ばし直立する。
洗濯しか能がない私にはお茶ひとつまともに淹れられない。
貴婦人の対応は本職のメイドさんにお任せして私はただ立ってるだけ。本当に飾り。
しばらく貴婦人たちのご歓談を眺めていたんだけど驚いた事に私が控えている隅の方のテーブルに公爵のお嬢様がいらっしゃった。
まだ幼くていらっしゃるのにちょっと前から奥様と一緒にお茶会に出席されるようになったんだって!
薄い生地をふんだんに使ってふわふわに広がった春の空の色を映したようなドレスをまとってよちよちと覚束無い足取りでこちらに歩いてくる。
かーわいー!!
ちゃんとした侍女のひとがお嬢様を椅子に引き━━━あ、すごい頑張ってる。抱っこしてあげたい━━━紅茶を入れて差し上げてる。
何歳だっけ?ちっちゃいのに綺麗に食べるなー。
顔には出さずにそれとなく見てたら、なんとお嬢様は散策のお供に私を指名された。
なんで?!なんで私なの??!!
一瞬、隣のメイドに視線を送るがクッと顎で「行け」と示される。
そりゃそうよね。お嬢様のお言葉を拒否出来るわけなんてない。
本職侍女も「飾りのコイツでいいのか?」感はあったみたいだけど、それでも代わりに自分がと挙手する勇気はなかったみたい。
こうなったら腹を括って付いていこう!
平民だとバレただけで減給か謹慎。その上、お嬢様の不興を買ったら最悪死ぬ。
ちょっと歩いて戻って来るだけよ。
その間くらいは取り繕ってみせるわ!
そう覚悟を決めてついて行ったけど、やっぱかーわいー。
てくてくと歩く歩調も、その度にふわふわと揺れ動く青銀の後れ毛も、心無しか大輪のバラをご覧になって目を細められる仕草も全てが愛らしい。
そう!なんとお嬢様の御髪は青銀色なの!
この世界の常識なんだけど魔力は髪に宿るものなの。
その色が薄ければ薄いほど質も量も優れてると言われているわ。
より白い方が魔法使いとして優れ、反対に髪が黒いと魔法の才能は乏しいらしい。
完全な白も黒もいないらしいけど、あんな煌めきを纏う銀色は初めて!
今まで見た中で突出した淡色の髪で驚いたわ 。
私は残念な、赤銅色。
比較的よくある色味だけど、かなりこっくりした濃色なのよね...。
それは置いといて、改めて宣言しましょう。
私は!可愛いものが!大好きです!!
ああああああ、違う違う!!
なんか混乱しちゃってるわ!
なんなの、この変な自己紹介。
平民なんだから「まだ」も何も家名がないのは当たり前じゃない。
「吾輩」だなんて言った事ないし。
何だか異世界からの変な電波を受信したみたい。
でも、今日はそこまで混乱しちゃうくらいすごい事がおこったの!信じられる?
朝までは何も無い退屈な日常だったのに。
私は今日、いつも通り日の出前に出勤していた。
私の家は郊外にあり、まだ暗い時間に家を出ないと貴族街の公爵家にたどり着けない。
朝、日が昇る頃に公爵家の裏門にある使用人専用の通路からお邸に入っていく。
私より早く来てる人はちらほらいて、みんな下働き専用の建物の中で思い思いに欠伸をしたり朝ご飯を食べたりしてる。
私も朝ご飯にと、昨夜焼いておいて固くなったパンを歯で毟りとるように食べる。
丁度パンを食べ終わったタイミングで大量の洗濯物が届く。
さあ!お仕事の始まりだ!
山と積み重なった洗濯物を先輩方が種類や素材で分けてくれる。
私はシーツやタオルの担当だ。
これから経験を積んで行けばもしかしたらツヤツヤのシルクやふわふわのウールを担当させてもらえるかもしれない!今日も頑張ろう!
タオル類が積まれた山から抱えられるだけ抱えて、外の水場へ行き足踏み洗いで汚れを落とす。
頑固な汚れは摘んで揉んで手間がかかる。
それらを畳んで絞って干場へ持って行くと干場の下働きが干してくれる。
そうしてまた積まれたタオルを手に少しずつ洗濯物の山を崩していく。
そうして何往復しただろうか、突然おかみさんから声がかかる。
あ、おかみさんっていうのは私たち下働きのリーダーやってる人の事。恰幅のいい、下町の肝っ玉母さんみたいな人で、下働きなのに奴隷を使う権限を持ってるすごい人なんだ!
おかみさんって呼ぶと「ガラじゃない」って怒るけどなんかしっくりきて呼んじゃうのよね。
「リナ!
奥様のお茶会に何人か見繕ってんだが、あんたも行くかい?」
「いいんですか?行きます!」
「あんた変わってるねぇ。お茶会なんて退屈な上に、周りの使用人も貴族ばっかで鼻持ちならないだろうに」
ラッキー!!
確かに立ってるだけだけど、私は可愛い物が大好きなの。貴婦人のキラキラしたドレスや綺麗にデコレーションされたお菓子たちは見ているだけで楽しい。
何より侍女のお仕着せが可愛いの!
いつも着ている下働きメイドの薄汚れたブラウンの重たいワンピースじゃなく、黒にも見える濃紺のふんわりしたエプロンドレス。
しかもキラキラしたものを見ているだけでお給金をいただけるなんて理想的すぎて申し訳ないくらいよ。
「いえいえ、私で良ければ喜んで!」
ウキウキしながら貸してもらった侍女のお仕着せに着替える。
やっぱり可愛い!生地が柔らかくて着心地がいいわ。
鏡の前で簡単に髪をまとめて、先輩にお願いして貸してもらった化粧を施すとお茶会の会場へ行く。
いつも通り、会場の端の方で両の手足を揃えて背筋を伸ばし直立する。
洗濯しか能がない私にはお茶ひとつまともに淹れられない。
貴婦人の対応は本職のメイドさんにお任せして私はただ立ってるだけ。本当に飾り。
しばらく貴婦人たちのご歓談を眺めていたんだけど驚いた事に私が控えている隅の方のテーブルに公爵のお嬢様がいらっしゃった。
まだ幼くていらっしゃるのにちょっと前から奥様と一緒にお茶会に出席されるようになったんだって!
薄い生地をふんだんに使ってふわふわに広がった春の空の色を映したようなドレスをまとってよちよちと覚束無い足取りでこちらに歩いてくる。
かーわいー!!
ちゃんとした侍女のひとがお嬢様を椅子に引き━━━あ、すごい頑張ってる。抱っこしてあげたい━━━紅茶を入れて差し上げてる。
何歳だっけ?ちっちゃいのに綺麗に食べるなー。
顔には出さずにそれとなく見てたら、なんとお嬢様は散策のお供に私を指名された。
なんで?!なんで私なの??!!
一瞬、隣のメイドに視線を送るがクッと顎で「行け」と示される。
そりゃそうよね。お嬢様のお言葉を拒否出来るわけなんてない。
本職侍女も「飾りのコイツでいいのか?」感はあったみたいだけど、それでも代わりに自分がと挙手する勇気はなかったみたい。
こうなったら腹を括って付いていこう!
平民だとバレただけで減給か謹慎。その上、お嬢様の不興を買ったら最悪死ぬ。
ちょっと歩いて戻って来るだけよ。
その間くらいは取り繕ってみせるわ!
そう覚悟を決めてついて行ったけど、やっぱかーわいー。
てくてくと歩く歩調も、その度にふわふわと揺れ動く青銀の後れ毛も、心無しか大輪のバラをご覧になって目を細められる仕草も全てが愛らしい。
そう!なんとお嬢様の御髪は青銀色なの!
この世界の常識なんだけど魔力は髪に宿るものなの。
その色が薄ければ薄いほど質も量も優れてると言われているわ。
より白い方が魔法使いとして優れ、反対に髪が黒いと魔法の才能は乏しいらしい。
完全な白も黒もいないらしいけど、あんな煌めきを纏う銀色は初めて!
今まで見た中で突出した淡色の髪で驚いたわ 。
私は残念な、赤銅色。
比較的よくある色味だけど、かなりこっくりした濃色なのよね...。
それは置いといて、改めて宣言しましょう。
私は!可愛いものが!大好きです!!
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