天使エールはいっっっっつも笑顔

夏木ユキ

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09話 宴会

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「......さーん、ヤスさーん」

 いつの間にか寝てしまったようだ。

「お待たせしました(笑)」

「先に始めて潰れてんじゃないわよ」

 エールが顔を覗き込んでいる。

「結構飲んでるみたいですね(笑)」

 次第に頭がクリアになっていく。
 え?

「ど、どうしたんだ?その格好!?」

 ネグリジェ? ベビードール?
 ヤスの知識が追い付かない。

「カンナさんの私服をいただきました(笑)」

「気にしないで、もう小さくて着れないやつだから」

 いや、気になるのはそこじゃない。
 というか直視できない。

「あ、触ったら警察だからね♥」

「触りませんよ!」

 天使的にこんな格好して問題ないのだろうか?

「まあ天使が全裸で登場してる絵とかもありますし(笑)」

 何を言ってるんだこの子は

「生4つと唐揚げとコロッケくださーい」

 ルンが呑気に注文している。
 まさかルンもこんな格好してるのか!?

 にゃーん。

「......」

「可愛いでしょ?」

「......私服っすか?」

 猫パジャマじゃん

「何か文句でも?」

「ないです」

「ビール4つと唐揚げとコロッケお待たせしましたー」

「ありがとうございます! 皆さんの分頼んでおきましたよ!」

「じゃあ、今日は飲みましょう!」

「おー(笑)」

 エールとカンナが飲みまくっている
 2人とも顔変わらないんだな。

「ルンって酒飲んで良いの?」

 ルンの見た目は未成年としか思えない。

「何でですか?」

「いや、ほら年齢的に」

「私24ですよ?」

 まさかの同い年だった。

「みんなから若いって言われない?」

「何が言いたいんですか?」

 正直15才位だと思っていた。

「かんぱーい」

「かんぱーい(笑)」

 隣ではエールとカンナがジョッキの山を築いていた。
 ペース早くない?

「酒強いんだな」

「こんな程度じゃ酔えませんよ(笑)」

「ほらほらーヤスもエールちゃんも飲みなさいな!」

 ジョッキを渡してくるカンナの手にはジョッキが6杯分ある。
 この席には4人しかいないはず......妙だな......

「はい! かんぱーい」

「かんぱーい(笑)」

 このペースで付き合わされたら速攻つぶれる気がする。

 エールとカンナの格好に、周囲からの視線が熱い。
 すると直接話しかけてくる奴が出てきた。

「お嬢ちゃん達、良い飲みっぷりだ。俺たちと一緒にどうだい?」

「ふふっ、やっと声掛けて来たわね」

 カンナが獲物を見る蛇のような目をしている。

「飲み比べで私たちを潰せたら好きにしていいわよ。ただし、負けたら奢りね♥」

「お、言ったな? 絶対だからな?」

「必死ですね(笑)」

 結果は言うまでもなかった。
 カンナとエール2人に対して、声を掛けて来た男グループは5人だったにも関わらず2人の圧勝だった。

「はーい、奢りけってーい♥」

「ごちそうさまです(笑)」

 勝敗が決してからペースがさらに上がった。
 ......化け物かな?

「良い機会なので、高いメニュー全部頼みましょう(笑)」

「あ、じゃあここからここまで全部下さい」

「かしこまりましたー」

 ルンはルンで酒も少し飲みつつ食べまくっている。

「ほら、ヤスさん! これ高いだけあって美味しいですよ!」

 ルンが差し出した料理からスパイスの良い匂いが漂ってくる。

「おー、スパイスの炊き込みご飯か。旨いなこれ!」

「そうでしょうそうでしょう! これお土産に包んでもらいましょう!」

「奢りって恐ろしいな」

 エールを見るとチャーハンを食べていた。

「やっと念願のチャーハンです(笑)」

 そういえば異世界に来たばかりの頃に食べたがっていたような気がする。

「食べたかったなら、頼めば良かったじゃん。今まで何度もチャンスあっただろ?」

「チャーハンの値段見れば分かりますよ(笑)」

 どういうことだろうか?

「え? 大銅貨7枚!?」

 宿1泊より高い......

「観光地価格ですね(笑)」

「それにしてもぼったくりだろ......」

「あー美味しいです(笑)」

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 閉店まで飲み続けたヤス達は明細を負けた男達に押し付けて部屋に向かった。
 ルンは気に入った料理と日持ちしそうな食べ物を包んでもらったようだ。
 エールもしっかりチャーハンをテイクアウトしている。

「これでしばらく食費がかかりませんね」

「ルンはしっかり者だなー」

 ヤスはすっかり出来上がったカンナを背負っている。

「カンナさーん。部屋どこですかー?」

「そんなものないから泊めてちょうだいな♥」

「......」

 ヤスの寝床が床に決定した。

 部屋に着き、カンナをベッドに寝かせる。
 3人はベッドに腰かけて、しばらく窓から星空を眺めていた。

「だいぶ賑やかになったな」

「ルンちゃんも入ってくれましたしね」

「あの時は餓死しかけてたので拾ってくれてありがとうございました」

「ルンは立派な戦力だからな。凄い助かってるよ」

 まあ、普段の俺への当たりをもう少し柔らかくしてくれるともっと助かるけど......

「ヤスさんとエールさんは何で冒険者をやっているんですか?」

 そういえばルンにエールの事を説明していなかった。
 話して良いものなのかしばらく悩んでいると

「私は別に話して良いと思いますよ(笑)」

「......やっぱエールって心読めるの?」

「いえ、ヤスさんが分かりやすいだけですよ。ただ、ルンちゃんはもう寝ちゃいました(笑)」

 ルンはいつの間にかエールの膝枕で寝ている。

「みんなで騒ぐのも楽しいですね(笑)」

「今まではお金気にして定食だけだったしな。こっち来て酒飲んだのも始めてか」

「私は普段の食事でも充分楽しいですよ」

 エールはルンの頭をなで続けている。
 月明かりが2人を照らしている。

「改めて見ると、やっぱり凄い格好してるな」

 月明かりがエールの白い肌に反射してレースの透け感が際立っている。
 これはこれで、食堂の時とはまた違った雰囲気を纏っていてドキドキする。

「ふふっ、見るだけなら構いませんよ(笑)」

「ななななにを言っているのかな?」

「大丈夫ですよ。私はヤスさんを信用しています。それにきっと......」

 ルンとカンナに視線を向ける。

「口にはしないかも知れませんが、2人もそうだと思いますよ」

「そっか」

「そうです」

 これからは、ここにいる4人で力を合わせて頑張っていこう。
 きっと楽しい毎日になるはずだ。

「ヤスさん。これからもよろしくお願いしますね」

「こちらこそ。エール」

 その後は、2人で他愛のない会話が続いた。
 日本での生活、天界の話......

 いつ眠ってしまったのかは覚えていない。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 次の日

 目が覚めるとカンナはいなかった。
 ついでにショーンの財布もなかった。

「また会いましょうねって言ってましたよ(笑)」

 昨夜の決意を返せ。
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