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18話 家?
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「......よし!」
初めての家づくりは失敗に終わったが、凹んではいられない。夜になるまでには何とか寝れる家を作らなければならないのだ。
川から洞窟前の本拠地へ戻り、すぐに作業を開始する。
「ルンは引き続き壁を作ってくれ」
「1枚だけドアのスペースを作っておきますね」
話が早くて助かる。
「あ、でも窓もあったほうがいいですね」
「そうだな。その辺の大きさとか、ちょっと相談しようか」
みんなで住む家なので、どういう風にしたいのかは相談して決める事にする。
「おーい。家の相談するからみんな集まってくれ」
「私は洞穴の土砂を掻き出す作業があるからな。その辺は君たちに任せるよ」
「私はお花を植える作業が忙しいので、後のことは任せます(笑)」
協調性のない仲間達だった。
まあ、土砂を掻き出すからす作業は確かに重要だけど......
「エールの作業は今やること?」
「ふふっ、気持ちが華やかになりますよ(笑)」
......まあ、いいか。好きにさせておこう。
ヤスはルンと2人で家づくりをすることになった。
✳︎✳︎✳︎
その日の夕方
「やっとできたな」
夜になる前に完成して一安心だ。
みんなで完成した家を感慨深く眺める。
「ヤスさんにぴったりな穴から、ぴったりな犬小屋にランクアップしましたね(笑)」
「まさか人が住んでいるとは思えませんもんね」
エールとルンが散々に言っているがヤスはこの家を気に入っている。苦労して一から作った達成感もある。
「色々あったなー」
✳︎✳︎✳︎
この家が完成するまで数々の失敗を乗り越えてきた。
まず第一の問題はドアをどうやって実現するかだった。壁に扉をはめ込もうとしても固すぎて全く入る余地が無いし、バネのような便利な部品もない。
「どうしましょう」
「ドアというより板で塞ぐ感じにするとか?」
「立て掛けるだけだと隙間ができちゃいますね」
「内側から木で塞ぐか」
「でもそれだと夜は良くても、昼とか出掛けてるときに無防備すぎますよね」
「そうなんだよなー」
建築の知識が無いので先に進まない。
「壁に引っ掛ける場所をあらかじめ作っておいて、そこに引っ掛けて塞ぐのはどうでしょう?それなら出掛けてる最中にモンスターが家の中を荒らす心配は無いと思います」
「まあ、とりあえずそれで作るか。それに加えて寝るときには内側から突っ張り棒みたいなのを使えば襲われる事もないだろうし」
ヤスとルンは地面にイメージを描きながら認識を共有する。
「じゃあ、ドアを引っ掛けるフックと棒を引っ掛けるフックを壁の内側に作りますね」
「頼んだ」
具体的な形が固まったので、これ以降の作業はスムーズに進んだ。
「やっぱりスライムは便利ですね」
「今まで誰も使わなかったのが不思議なくらいだよな」
「スライム討伐はストレスが溜まりますからね。イライラしてますから、何かに使おうとか考える余裕ないんじゃ無いですか」
確かに初めて討伐した時は疲労感が半端なかった。
「それに、スライム討伐を受けるのなんて冒険者の中でも新米だけですから」
「経験が浅いから思いつかないし、経験豊富になるとスライムなんて見向きもしないってことね」
雑談もほどほどに玄関部分の壁が完成した。
「結構いい感じですね」
内側から板を引っ掛けると外側からいくら押してもビクともしないドアができた。
とりあえず玄関部分は上手くできたので一安心だ。
「これを応用すれば窓も付けられそうだな」
ガラスなどはここには無いので、窓はスライド式に板をはめ込むことにした。
こうして試行錯誤を繰り返し、やっと完成した家は無情にも突風で飛んでいった。
✳︎✳︎✳︎
「あの時はよく飛びましたね(笑)」
「結局、川に沈んでいきましたね」
「もう風の対策はしたから平気だよ」
家は風に飛ばされないように地面に固定した。
何にせよ今は家が完成したことを喜ぶ時だ。
「明日は完成祝いやろうぜ!」
「宴会ですね(笑)」
「料理も凝りましょう!」
家を建てるのと並行して、隣に調理場も建てたので、凝った料理も作れるようになった。
偶然、皆それなりに料理ができることがわかり、それぞれのこだわりが詰まった調理場になっている。
「調理場が家よりも豪華になりましたね」
「確実に力を入れる場所を間違えたな」
「皆さんの身体は食べたものでできているので食事は大切です! 私は皆さんの料理が楽しみですよ(笑)」
「私くらい長生きすると、食事以外に楽しみがないと言っても過言ではない。期待しているぞ」
どうやらタマキが一番楽しみにしているようだ。
「お祝いは明日だから夕飯は軽く済ませて今日は寝ようか」
「はーい(笑)」
✳︎✳︎✳︎
その日の夜
「ふむ。狭いな」
「ぎゅうぎゅうです(笑)」
新しくできた家は4人だととても狭かった。4人で横になるスペースしかない。
「スライムが足りなくなってきてこの大きさが限界でした」
「ヤスさんが私たちと密着して寝たかったからだと思ってました(笑)」
「違うからね?」
気にしないようにしていたが、これからはこの狭い空間で、性格はアレだが可愛い女の子たちと暮らしていく事になる。この事実に少し期待を膨らませてしまう。
日本にいた時は仕事のストレスからか性欲も落ちていた。しかし、こっちの世界に来てから調子が良いせいか最近少しムラムラすることも増えてきた。ただ、ここで手を出したらどうなるかヤスはわかっているので、これから我慢の日々が続きそうだ。
「まあ、ヤスさんは手を出さないと信じていますよ(笑)」
「一番弱いですしね」
「......」
考えてみたら、この中でヤスが一番弱い。ルンは普通に強いし、エールは必殺技があるし、タマキの魔法はかけられたら対抗する手段がない。
「おやすみ」
ヤスはこれ以上考えることをやめて寝る事にした。
うぅ......後ろから聞こえる女子トークが気になって仕方ない。
✳︎✳︎✳︎
次の日の朝
「ヤスさーん、朝ですよー(笑)」
耳元でエールの声がする。最近はエールが起こしてくれる前に目が覚めていたが、昨日慣れない作業をしたせいかいつもより長く寝てしまったようだ。
「んー。おはよう」
ヤスが眠い目を擦りながら周りを見るとまだみんな寝ているようだった。
エールはヤスが起きたのを確認すると他のメンバーを起こし始める。
「ルンちゃんも朝ですよー(笑)」
「ふぁーい」
「タマキさんも朝ですよー(笑)」
「......」
一緒に暮らすようになってわかったのだが、タマキは基本的に寝るのが好きなようだ。朝は起こしても起きない。そういえば初めて会った時も昼寝をしていた。
「タマキさーん(笑)」
「うう......」
「普通、歳を取ると睡眠は浅くなるんですよー(笑)」
「そうなのか?」
日本にいた時、社会人になると極端に夜の寝付きが悪くなった。年齢と関係あるのだろうか?
「ヤスさんの場合は、一日中パソコンを使っていて、寝る直前までスマホいじってたせいですよ(笑)」
エールによると、強い光を浴びるとメラトニンという睡眠のホルモンが分泌されず、身体が寝る状態にならないとのことだ。
ホルモンの作用以外にも人間は光を浴びたりすると脳が覚醒するようにできているため、寝る前に電気機器をいじらない方が良いらしい。
「だから寝る前は暗くして電気は見ない方がいいんです。でもロウソクの火は大丈夫ですよ(笑)」
「へー」
普通に感心してしまった。こっちに来てから目覚めがいいのは、良く動いて良く食べている健康的な生活を送っているからだと思っていたが、パソコンやスマホを見なくなったのも大きな理由みたいだ。
「まあ、タマキさんが起きないのは別の理由ですけどね(笑)」
タマキを見ると相変わらず起きそうにない。初めて見た時も思ったが、寝姿が凛々しい。とても頼りになりそうな見た目をしているのにどこか抜けている不思議なお姉さんだ。本人は良く歳だと言っているが一体いくつなのだろうか?
「タマキさんって不思議な人だよね」
「人ではないですけどね(笑)」
「え?」
人じゃないの?
「私も気になります。あんな魔法聞いたこともないですし」
さっきまでぼんやりしていたルンが話に入ってくる。
「前に1000年くらい生きてるって言ってました(笑)」
「なら人ではないですね。納得です」
相変わらずルンは受け入れるのが早い。
「普通に受け入れているけど、珍しくないの? 1000年だよ? おかしいだろ!」
「タマキさんなら納得できる気がします」
うーん。確かにそんな気がしないでもない。
「でも人じゃないなら何なんでしょうか?」
「確かに気になるな」
1000年も生きてる生き物って何なんだ? クラゲ? たまに分裂でもするのか?
「ふふっ、タマキさんはタマキさんで良いじゃないですか(笑)」
「まあ、そうですね」
納得できないのはヤスだけのようだ。
✳︎✳︎✳︎
お昼前
「そろそろ宴会用のご飯を作りませんか?」
まだ早くないか? まだ昼も食べていないのに。
「ふむ。そうだな」
「作りましょう(笑)」
ヤス以外が乗り気だった。何この熱意。
「何作るんだ?」
「皆さんの得意料理にしませんか?」
「ふむ。ならなるべく地元の味にしようではないか。珍しいものが食べられるかもしれないしな」
「良いですね! じゃあメイン料理と副菜を各自一品ずつで良いですか?」
「私も頑張ります(笑)」
何だかヤスも楽しみになってきた。
「じゃあ、食材を買いに町へ行きましょう!」
「レッツゴー(笑)」
✳︎✳︎✳︎
市場にて
「何作ろうかな......」
宴会に向けて、各自メイン料理+αを作る事になった。なるべく地元の料理という制限もある。
この世界の料理は、基本的に炒め料理で肉と野菜を香辛料で豪快に炒めたものが食堂に並ぶ。食材は地球と似ているが、豆腐や納豆などの加工品は見当たらない。
「香辛料は豊富なんだよなー」
温暖な気候のためか種類が豊富で安い。
「ヤスさんは何作るんですか?(笑)」
「まだ悩んでる。調味料とか制限あるし......エールは何作るの?」
「チャーハンです(笑)」
「絶対それ地元の料理じゃないだろ」
天界の料理、ちょっと楽しみだったのにな
「仕方ないんです。天界の料理は基本的に生で、素材の味しかしません(笑)」
「濃いチャーハンが好きって言ってたもんな」
「はい(笑)」
エールはチャーハンか。中華料理......
「肉まんでも作るか」
パンがあるから生地も作れるし、チャーハン作れるなら中華っぽい調味料もあるのだろう。
「良いですね(笑)」
「あともう一品か......」
肉まんと一緒に作れるやつがいいな。蒸料理......
「茶碗蒸しでいいか。この世界で蒸料理は珍しいだろうしタマキも納得するだろ」
「私のもう一品は飲み物にします(笑)」
✳︎✳︎✳︎
「楽しみですね!」
買い物を終えて家に戻る途中、荷車を押すルンの足取りは軽い。
この世界には冷蔵庫などないため食材の保存ができない。そのためいつもは数日分しか買わないのだけど......
「結構買ったな......」
「ふむ。調子に乗りすぎてしまったな」
「でもパーティーですから(笑)」
まあ、今日くらいは贅沢しても良いか。
✳︎✳︎✳︎
「さてと......じゃあ作るか」
スパイスの効いた肉餡を包んだ肉まんと、鶏ガラの効いた茶碗蒸しを作る。
この無駄に立派な調理場は、4人同時に調理してもまだ広さに余裕がある。
「火加減の調節が出来ないのが難点だな」
「まだ改善の余地ありですね(笑)」
エールを見ると、ヨーグルトを混ぜている。
「チャーハン作るんじゃないの?」
「今作ったら冷めちゃうじゃないですか(笑)」
確かに。
「チャーハンは最後です(笑)」
「じゃあ、今は何作ってるんだ?」
「ラッシーですよ(笑)」
「......それも絶対天界の料理じゃないよな」
「はい(笑)」
この天使ルール無用だな......
初めての家づくりは失敗に終わったが、凹んではいられない。夜になるまでには何とか寝れる家を作らなければならないのだ。
川から洞窟前の本拠地へ戻り、すぐに作業を開始する。
「ルンは引き続き壁を作ってくれ」
「1枚だけドアのスペースを作っておきますね」
話が早くて助かる。
「あ、でも窓もあったほうがいいですね」
「そうだな。その辺の大きさとか、ちょっと相談しようか」
みんなで住む家なので、どういう風にしたいのかは相談して決める事にする。
「おーい。家の相談するからみんな集まってくれ」
「私は洞穴の土砂を掻き出す作業があるからな。その辺は君たちに任せるよ」
「私はお花を植える作業が忙しいので、後のことは任せます(笑)」
協調性のない仲間達だった。
まあ、土砂を掻き出すからす作業は確かに重要だけど......
「エールの作業は今やること?」
「ふふっ、気持ちが華やかになりますよ(笑)」
......まあ、いいか。好きにさせておこう。
ヤスはルンと2人で家づくりをすることになった。
✳︎✳︎✳︎
その日の夕方
「やっとできたな」
夜になる前に完成して一安心だ。
みんなで完成した家を感慨深く眺める。
「ヤスさんにぴったりな穴から、ぴったりな犬小屋にランクアップしましたね(笑)」
「まさか人が住んでいるとは思えませんもんね」
エールとルンが散々に言っているがヤスはこの家を気に入っている。苦労して一から作った達成感もある。
「色々あったなー」
✳︎✳︎✳︎
この家が完成するまで数々の失敗を乗り越えてきた。
まず第一の問題はドアをどうやって実現するかだった。壁に扉をはめ込もうとしても固すぎて全く入る余地が無いし、バネのような便利な部品もない。
「どうしましょう」
「ドアというより板で塞ぐ感じにするとか?」
「立て掛けるだけだと隙間ができちゃいますね」
「内側から木で塞ぐか」
「でもそれだと夜は良くても、昼とか出掛けてるときに無防備すぎますよね」
「そうなんだよなー」
建築の知識が無いので先に進まない。
「壁に引っ掛ける場所をあらかじめ作っておいて、そこに引っ掛けて塞ぐのはどうでしょう?それなら出掛けてる最中にモンスターが家の中を荒らす心配は無いと思います」
「まあ、とりあえずそれで作るか。それに加えて寝るときには内側から突っ張り棒みたいなのを使えば襲われる事もないだろうし」
ヤスとルンは地面にイメージを描きながら認識を共有する。
「じゃあ、ドアを引っ掛けるフックと棒を引っ掛けるフックを壁の内側に作りますね」
「頼んだ」
具体的な形が固まったので、これ以降の作業はスムーズに進んだ。
「やっぱりスライムは便利ですね」
「今まで誰も使わなかったのが不思議なくらいだよな」
「スライム討伐はストレスが溜まりますからね。イライラしてますから、何かに使おうとか考える余裕ないんじゃ無いですか」
確かに初めて討伐した時は疲労感が半端なかった。
「それに、スライム討伐を受けるのなんて冒険者の中でも新米だけですから」
「経験が浅いから思いつかないし、経験豊富になるとスライムなんて見向きもしないってことね」
雑談もほどほどに玄関部分の壁が完成した。
「結構いい感じですね」
内側から板を引っ掛けると外側からいくら押してもビクともしないドアができた。
とりあえず玄関部分は上手くできたので一安心だ。
「これを応用すれば窓も付けられそうだな」
ガラスなどはここには無いので、窓はスライド式に板をはめ込むことにした。
こうして試行錯誤を繰り返し、やっと完成した家は無情にも突風で飛んでいった。
✳︎✳︎✳︎
「あの時はよく飛びましたね(笑)」
「結局、川に沈んでいきましたね」
「もう風の対策はしたから平気だよ」
家は風に飛ばされないように地面に固定した。
何にせよ今は家が完成したことを喜ぶ時だ。
「明日は完成祝いやろうぜ!」
「宴会ですね(笑)」
「料理も凝りましょう!」
家を建てるのと並行して、隣に調理場も建てたので、凝った料理も作れるようになった。
偶然、皆それなりに料理ができることがわかり、それぞれのこだわりが詰まった調理場になっている。
「調理場が家よりも豪華になりましたね」
「確実に力を入れる場所を間違えたな」
「皆さんの身体は食べたものでできているので食事は大切です! 私は皆さんの料理が楽しみですよ(笑)」
「私くらい長生きすると、食事以外に楽しみがないと言っても過言ではない。期待しているぞ」
どうやらタマキが一番楽しみにしているようだ。
「お祝いは明日だから夕飯は軽く済ませて今日は寝ようか」
「はーい(笑)」
✳︎✳︎✳︎
その日の夜
「ふむ。狭いな」
「ぎゅうぎゅうです(笑)」
新しくできた家は4人だととても狭かった。4人で横になるスペースしかない。
「スライムが足りなくなってきてこの大きさが限界でした」
「ヤスさんが私たちと密着して寝たかったからだと思ってました(笑)」
「違うからね?」
気にしないようにしていたが、これからはこの狭い空間で、性格はアレだが可愛い女の子たちと暮らしていく事になる。この事実に少し期待を膨らませてしまう。
日本にいた時は仕事のストレスからか性欲も落ちていた。しかし、こっちの世界に来てから調子が良いせいか最近少しムラムラすることも増えてきた。ただ、ここで手を出したらどうなるかヤスはわかっているので、これから我慢の日々が続きそうだ。
「まあ、ヤスさんは手を出さないと信じていますよ(笑)」
「一番弱いですしね」
「......」
考えてみたら、この中でヤスが一番弱い。ルンは普通に強いし、エールは必殺技があるし、タマキの魔法はかけられたら対抗する手段がない。
「おやすみ」
ヤスはこれ以上考えることをやめて寝る事にした。
うぅ......後ろから聞こえる女子トークが気になって仕方ない。
✳︎✳︎✳︎
次の日の朝
「ヤスさーん、朝ですよー(笑)」
耳元でエールの声がする。最近はエールが起こしてくれる前に目が覚めていたが、昨日慣れない作業をしたせいかいつもより長く寝てしまったようだ。
「んー。おはよう」
ヤスが眠い目を擦りながら周りを見るとまだみんな寝ているようだった。
エールはヤスが起きたのを確認すると他のメンバーを起こし始める。
「ルンちゃんも朝ですよー(笑)」
「ふぁーい」
「タマキさんも朝ですよー(笑)」
「......」
一緒に暮らすようになってわかったのだが、タマキは基本的に寝るのが好きなようだ。朝は起こしても起きない。そういえば初めて会った時も昼寝をしていた。
「タマキさーん(笑)」
「うう......」
「普通、歳を取ると睡眠は浅くなるんですよー(笑)」
「そうなのか?」
日本にいた時、社会人になると極端に夜の寝付きが悪くなった。年齢と関係あるのだろうか?
「ヤスさんの場合は、一日中パソコンを使っていて、寝る直前までスマホいじってたせいですよ(笑)」
エールによると、強い光を浴びるとメラトニンという睡眠のホルモンが分泌されず、身体が寝る状態にならないとのことだ。
ホルモンの作用以外にも人間は光を浴びたりすると脳が覚醒するようにできているため、寝る前に電気機器をいじらない方が良いらしい。
「だから寝る前は暗くして電気は見ない方がいいんです。でもロウソクの火は大丈夫ですよ(笑)」
「へー」
普通に感心してしまった。こっちに来てから目覚めがいいのは、良く動いて良く食べている健康的な生活を送っているからだと思っていたが、パソコンやスマホを見なくなったのも大きな理由みたいだ。
「まあ、タマキさんが起きないのは別の理由ですけどね(笑)」
タマキを見ると相変わらず起きそうにない。初めて見た時も思ったが、寝姿が凛々しい。とても頼りになりそうな見た目をしているのにどこか抜けている不思議なお姉さんだ。本人は良く歳だと言っているが一体いくつなのだろうか?
「タマキさんって不思議な人だよね」
「人ではないですけどね(笑)」
「え?」
人じゃないの?
「私も気になります。あんな魔法聞いたこともないですし」
さっきまでぼんやりしていたルンが話に入ってくる。
「前に1000年くらい生きてるって言ってました(笑)」
「なら人ではないですね。納得です」
相変わらずルンは受け入れるのが早い。
「普通に受け入れているけど、珍しくないの? 1000年だよ? おかしいだろ!」
「タマキさんなら納得できる気がします」
うーん。確かにそんな気がしないでもない。
「でも人じゃないなら何なんでしょうか?」
「確かに気になるな」
1000年も生きてる生き物って何なんだ? クラゲ? たまに分裂でもするのか?
「ふふっ、タマキさんはタマキさんで良いじゃないですか(笑)」
「まあ、そうですね」
納得できないのはヤスだけのようだ。
✳︎✳︎✳︎
お昼前
「そろそろ宴会用のご飯を作りませんか?」
まだ早くないか? まだ昼も食べていないのに。
「ふむ。そうだな」
「作りましょう(笑)」
ヤス以外が乗り気だった。何この熱意。
「何作るんだ?」
「皆さんの得意料理にしませんか?」
「ふむ。ならなるべく地元の味にしようではないか。珍しいものが食べられるかもしれないしな」
「良いですね! じゃあメイン料理と副菜を各自一品ずつで良いですか?」
「私も頑張ります(笑)」
何だかヤスも楽しみになってきた。
「じゃあ、食材を買いに町へ行きましょう!」
「レッツゴー(笑)」
✳︎✳︎✳︎
市場にて
「何作ろうかな......」
宴会に向けて、各自メイン料理+αを作る事になった。なるべく地元の料理という制限もある。
この世界の料理は、基本的に炒め料理で肉と野菜を香辛料で豪快に炒めたものが食堂に並ぶ。食材は地球と似ているが、豆腐や納豆などの加工品は見当たらない。
「香辛料は豊富なんだよなー」
温暖な気候のためか種類が豊富で安い。
「ヤスさんは何作るんですか?(笑)」
「まだ悩んでる。調味料とか制限あるし......エールは何作るの?」
「チャーハンです(笑)」
「絶対それ地元の料理じゃないだろ」
天界の料理、ちょっと楽しみだったのにな
「仕方ないんです。天界の料理は基本的に生で、素材の味しかしません(笑)」
「濃いチャーハンが好きって言ってたもんな」
「はい(笑)」
エールはチャーハンか。中華料理......
「肉まんでも作るか」
パンがあるから生地も作れるし、チャーハン作れるなら中華っぽい調味料もあるのだろう。
「良いですね(笑)」
「あともう一品か......」
肉まんと一緒に作れるやつがいいな。蒸料理......
「茶碗蒸しでいいか。この世界で蒸料理は珍しいだろうしタマキも納得するだろ」
「私のもう一品は飲み物にします(笑)」
✳︎✳︎✳︎
「楽しみですね!」
買い物を終えて家に戻る途中、荷車を押すルンの足取りは軽い。
この世界には冷蔵庫などないため食材の保存ができない。そのためいつもは数日分しか買わないのだけど......
「結構買ったな......」
「ふむ。調子に乗りすぎてしまったな」
「でもパーティーですから(笑)」
まあ、今日くらいは贅沢しても良いか。
✳︎✳︎✳︎
「さてと......じゃあ作るか」
スパイスの効いた肉餡を包んだ肉まんと、鶏ガラの効いた茶碗蒸しを作る。
この無駄に立派な調理場は、4人同時に調理してもまだ広さに余裕がある。
「火加減の調節が出来ないのが難点だな」
「まだ改善の余地ありですね(笑)」
エールを見ると、ヨーグルトを混ぜている。
「チャーハン作るんじゃないの?」
「今作ったら冷めちゃうじゃないですか(笑)」
確かに。
「チャーハンは最後です(笑)」
「じゃあ、今は何作ってるんだ?」
「ラッシーですよ(笑)」
「......それも絶対天界の料理じゃないよな」
「はい(笑)」
この天使ルール無用だな......
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