魔法少女の異世界刀匠生活

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第一章

変身、斬心の魔法少女・クアンタ-01

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 赤髪の少女――クアンタは身体が揺れる感覚と共に、意識を取り戻した。

  何時の間にか閉じられていた目を開け、自身の両手・両足の存在を確認。それと同時に自身の衣服も確認するが、先ほどまで着込んでいたフリルなどの付いたものではなく、以前に着込んでいた黒を基本色とした上下のジャージであるとも確認する。


  人通りの多い場所にいる。それは意識を取り戻した時には既に気付いていた。

  先ほどまでいた場所は、誰の目にも付かなさそうな古びた建物の中だった筈なのに、今いる場所は随分と西洋的な街。

  街を歩く者も、クアンタのようにジャージ等を着ている者はいない。元々クアンタが知る限りでも外出にジャージを着込んでいる者もそう多くは無かったが、しかしそれでも周りにいる者達はその殆どが、単色の布一枚を用いた貫頭衣で、煌びやかとは無縁な格好をしている。

  通り行く者全員が、クアンタの事を怪訝そうに見据えていた。

  しかし彼女はそんな奇異の目に憚る事なく、ただぼぅっと立ち尽くして、現状把握に努めるが、しかし情報が無さすぎる。

  試しに、今自分の横を通り過ぎようとした女性の肩に触れる。

 僅かに驚いたように声をあげた、クアンタが知る人間で二十台程度に見える女性が続けて放つ言葉は、恐らく不意に触れられた事による戸惑いや怒りを表しているのだろうが、彼女の知らぬ言語だった。

  しかし、突如触れて来た少女が無表情でジッと自身を見つめ、口を開く事も、そして触れた肩を放す事も無く掴んでいる事実に、段々と表情を恐怖へ変化しているようにも見える。

  三十秒ほど、そうして女性の肩を掴んでいたクアンタだったが、次第に彼女の放つ言語の解析を完了し――口を開く。


「申し訳ない。古い知り合いに似ていた為、彼女と親愛の証を待っていたのだが、人違いのようだ。謝罪する」


 そう言って頭を下げると、女性はホッと息をついて「大丈夫」と言う。


「でも貴女、ちょっと怖かったわ。そんなに無表情で、それが貴女の言う親愛の証なの?」

「そうだ。私が無表情で、向こうがニッコリと笑う。こんな風に」


 クアンタがぎこちなく口角を上げ白い歯を見せるように笑うと、女性は若干引き気味に「あ、ああ、そうなの」と言いながら、これ以上関わらないように、と言わんばかりにそそくさと去っていく。

  クアンタも、そうして別れる事が最適だと分かっていたから、それ以上喋る事は無い。


「さて」


 たった今習得した言語を慣らすように、独り言で呟く。


「参った。ここは秋音市でも日本でも地球でも太陽系でもない」


 秋音市は彼女が元々居た地の名称、日本は秋音市が存在する国の名称、地球は日本が存在する惑星の名称、太陽系は地球が存在する惑星系の名称だ。


「フォーリナー本体との通信も断絶中。しかし人が生存できる環境として、今この場所――レアルタ皇国シドニア領土、首都・ミルガスは非常に地球と酷似している」


 先ほどの女性に触れた時、彼女とのを整理しつつ、歩き出す。

  歩きながら人々とぶつからぬように、しかし考えるように言葉を放つ事を止めぬクアンタ。


「周りの建造物は漆喰に三角屋根の作りが多い。現在にも残る建築方法ではあるが、地球とは異なる方法で建てられた様子も見受けられる」

「施しを……ぶべ」

「今私が誤って蹴ったのは恐らく乞食と思われる。そして乞食が求める多くは金銭であり、金銭は基本的に地球の概念と似通った性質がある。金銀銅などの金属に価値を定め、その価値分の通貨を用いた決済を行う。単位はクルスであり、特段意味の無い推察ではあるが、現在の物価や通貨価値のアップダウン情報から判断するに一クルスは日本円では百三円程度と推察。尚一クルス以下はパルトで、百パルトで一クルスとなる」


 今通り過ぎた野菜などを扱う屋台に視線を一瞬だけ向ける。紙に書かれて貼られたトマトに似た野菜は、六十五パルトだったが、品名の書かれた札には【トート】とあった。


「太陽系第三惑星地球に存在する秋音市への帰還が急務だが、現状私の存在するこのミルガスが、どの銀河圏に属する星か推察不可。さらに私が秋音市よりこの場所に移動した方法なども含め、疑問となる点が多く存在する事から、これらを解決する方法は無いと思われる。この星を出る為に必要な装備を私は有しておらず、ミルガスの文化レベルから推察するに、この星の人類は星の外への進出を行っていないとも考えられる」


 情報整理及び口頭発音練習を終えたクアンタが、ふと足を止めた。

  彼女が目に留めたのは、芸術品等を取り扱う小さな美術商。


  ガラスの向こう側に展示された、この世界には似合わぬ刀が、その刃を輝かせていたのだ。


  クアンタも自分自身、何故刀を見て足を止めたのか。

  そして――胸元に感じる、何かじんわりと滲むような熱が籠っているのか、それがわからず、答えを探る為に美術商へ入店した。

  美術品を扱う店だけあって、店主がすぐに顔を出した。街行く者達よりは衣服に装飾品の施された格好をした男性は、クアンタの姿を見て「なんだ、若い女じゃないか」と落胆の声をあげる。
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