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第一章
変身、斬心の魔法少女・クアンタ-02
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「そこの日本刀について詳しく伺いたい」
「ニホントー……? なんだそりゃ。ソイツはリンナが打った刀だよ」
「刀か。リンナとは」
「この首都の外れにある鍛冶屋を一人で切り盛りする若い子だよ。腕は確かだが、刀しか作らないものだから、鍛冶屋としては三流って言われてるがね」
「店主、地図でその鍛冶屋の場所を教えて頂けるか」
「客じゃねぇならさっさと帰んな」
「頼む。一目見ればすぐに退去する事を約束しよう」
「……ちょっと待ってろ」
頭を下げたクアンタを見て、恐らく地図を見せねば立ち去らぬと分かったように、店主はため息をつきながら店の奥より一枚の地図を取り出し、現在位置を指さした後、その鍛冶屋の場所を示す。
「感謝する。いずれ購買に立ち寄ろう」
「期待せずに待ってるよ。あざっしたー」
美術商を出て、クアンタは現在地から方角を定め、歩き出す。
店主の言ったリンナという人物は、ここより四キロほど離れた先にある貧困街の手前、首都と貧困街を挟んだ山道に居を構えている。
既に行き道も、言ってしまうと地図の全体図も覚えているので、そこからどう移動すれば最適ルートかも調べはついている。
道行く間に、自然とぶつかれる相手がいたら必ず身体の一部で触れ「申し訳ない。どこか痛まないか」と確認して離し、会釈をして歩くという行為を二十回ほど続け、その間に接触回線で得られる情報を脳内に残しておく。
その中にリンナという人物の情報を持つ男性が一人いた。
リンナ。家名は持たず、父親より名付けられたその名だけを有する十六歳の少女だが、当人は非常に男勝りで面倒な性格をしているという。
名の知れた刀匠だった父の技術と才能を受け継ぎ、更には自己流の技術を極めた結果、刀鍛冶としての技術は百年に一度の逸材とも言われている。
しかし、現在レアルタ皇国軍で採用される剣は、片手・両手いずれでも使用でき、比較的安価に製造可能なバスタードソードが主流であるのにも関わらず刀以外を製造しない事から、店主が先ほど言っていたように鍛冶屋としては三流と、同業からは嘲笑されている。
そんな彼女は、父から受け継いだ鍛冶場を【リンナ刀工鍛冶場】という名に変え、そこで刀を作っているという事だ。
今、クアンタがそのリンナ刀工鍛冶場へと辿り着く。
建物は、先ほどの街に多く存在した漆喰造り等の西洋風な建物とは真逆の、木造建築による一軒家。日本式にも見えはするが、細部が異なるようにも見える。
日本の長屋に似た建物と隣接する形で、同じく木造の工房が存在。恐らく鍛冶場というからには火を取り扱う為、風通しの良い建築方法を選んだのだろう。
そこから鉄を打ち込むような音が響いて聞こえたので、向かう。
その間に、金具も無く研がれもしていない、刀のなり損ないが乱雑に捨てられていた。
熱を感じる工房へと着いたクアンタが見た光景は――彼女自身、形容しがたい景色だった。
恐らく、リンナと言う少女であろう若い女が、金槌を今振り下ろした。
火床と呼ばれる鋼を熱する為の窯によって赤く光る鋼。それが彼女の振るう金槌によって叩かれると、段々と形を細長くされていく。
今、脇に置かれた桶に金槌を漬け、水に浸ったそれを振り下ろす。
結果、熱された鋼と水による接触で小さな水蒸気爆発を起こし、鋼の表面にある不純物を取り除いていく。
そして、そんな少女の姿は、一言で言えば可憐だった。
頭に巻き付け、髪の毛等生え際しか見えぬにも関わらず、その綺麗な銀髪と分かる輝き、煤と煙で汚れながらも麗しい端正な顔立ち。
女性としての発達は不十分だが、しかし適度に付けられた筋肉があると分かる正常に育った肉体、煤などの汚れが目立つが白いツナギに似た衣服を着込んで色気など感じさせないにも関わらず、それが彼女を彩る衣装なのだと思える。
「――誰、アンタ」
少女は、決して手を止める事無く口を開いた。金槌の音で非常に聞き取りづらいが、聴覚を最大限稼働させて聞き取った言葉に、クアンタは二秒ほど思考する。
「リンナ、という方だろうか」
「あぁ、そうだけど?」
声は非常に綺麗だが、女性としては低めで男性よりは高めの声質。聞き取りやすく、かつ甲高くない声色が、クアンタにとっては非常に好印象だった。
「見学をさせて貰いたい」
「あ、そう? じゃあついでに手伝……体験してきな」
リンナは乱雑に置かれていた大きめの金槌をクアンタへ投げ、彼女もそれを受け取り、首を傾げる。
「アンタみたいな変な成りしたベッピンさんにお願いすんのもワリィと思うけどさ、アタシが指示する場所に打ち込んで」
「素人がして構わないのだろうか」
「良いの。アンタは一定の強さで、ただ指定する場所を打ってくれれば」
頷きながら、今リンナが金槌で軽く叩いてアタリを示した場所に、正確な一打を、打つ。
「ちょい強めだから、もう少しだけ弱めて」
「了承」
彼女の指示通り、少々力を緩めて振り下ろされた金槌。リンナが頷き「それを保って、指示通り」と言うと、クアンタも頷き、続けて指示のあった場所へ、正確に打ち込む。
「ニホントー……? なんだそりゃ。ソイツはリンナが打った刀だよ」
「刀か。リンナとは」
「この首都の外れにある鍛冶屋を一人で切り盛りする若い子だよ。腕は確かだが、刀しか作らないものだから、鍛冶屋としては三流って言われてるがね」
「店主、地図でその鍛冶屋の場所を教えて頂けるか」
「客じゃねぇならさっさと帰んな」
「頼む。一目見ればすぐに退去する事を約束しよう」
「……ちょっと待ってろ」
頭を下げたクアンタを見て、恐らく地図を見せねば立ち去らぬと分かったように、店主はため息をつきながら店の奥より一枚の地図を取り出し、現在位置を指さした後、その鍛冶屋の場所を示す。
「感謝する。いずれ購買に立ち寄ろう」
「期待せずに待ってるよ。あざっしたー」
美術商を出て、クアンタは現在地から方角を定め、歩き出す。
店主の言ったリンナという人物は、ここより四キロほど離れた先にある貧困街の手前、首都と貧困街を挟んだ山道に居を構えている。
既に行き道も、言ってしまうと地図の全体図も覚えているので、そこからどう移動すれば最適ルートかも調べはついている。
道行く間に、自然とぶつかれる相手がいたら必ず身体の一部で触れ「申し訳ない。どこか痛まないか」と確認して離し、会釈をして歩くという行為を二十回ほど続け、その間に接触回線で得られる情報を脳内に残しておく。
その中にリンナという人物の情報を持つ男性が一人いた。
リンナ。家名は持たず、父親より名付けられたその名だけを有する十六歳の少女だが、当人は非常に男勝りで面倒な性格をしているという。
名の知れた刀匠だった父の技術と才能を受け継ぎ、更には自己流の技術を極めた結果、刀鍛冶としての技術は百年に一度の逸材とも言われている。
しかし、現在レアルタ皇国軍で採用される剣は、片手・両手いずれでも使用でき、比較的安価に製造可能なバスタードソードが主流であるのにも関わらず刀以外を製造しない事から、店主が先ほど言っていたように鍛冶屋としては三流と、同業からは嘲笑されている。
そんな彼女は、父から受け継いだ鍛冶場を【リンナ刀工鍛冶場】という名に変え、そこで刀を作っているという事だ。
今、クアンタがそのリンナ刀工鍛冶場へと辿り着く。
建物は、先ほどの街に多く存在した漆喰造り等の西洋風な建物とは真逆の、木造建築による一軒家。日本式にも見えはするが、細部が異なるようにも見える。
日本の長屋に似た建物と隣接する形で、同じく木造の工房が存在。恐らく鍛冶場というからには火を取り扱う為、風通しの良い建築方法を選んだのだろう。
そこから鉄を打ち込むような音が響いて聞こえたので、向かう。
その間に、金具も無く研がれもしていない、刀のなり損ないが乱雑に捨てられていた。
熱を感じる工房へと着いたクアンタが見た光景は――彼女自身、形容しがたい景色だった。
恐らく、リンナと言う少女であろう若い女が、金槌を今振り下ろした。
火床と呼ばれる鋼を熱する為の窯によって赤く光る鋼。それが彼女の振るう金槌によって叩かれると、段々と形を細長くされていく。
今、脇に置かれた桶に金槌を漬け、水に浸ったそれを振り下ろす。
結果、熱された鋼と水による接触で小さな水蒸気爆発を起こし、鋼の表面にある不純物を取り除いていく。
そして、そんな少女の姿は、一言で言えば可憐だった。
頭に巻き付け、髪の毛等生え際しか見えぬにも関わらず、その綺麗な銀髪と分かる輝き、煤と煙で汚れながらも麗しい端正な顔立ち。
女性としての発達は不十分だが、しかし適度に付けられた筋肉があると分かる正常に育った肉体、煤などの汚れが目立つが白いツナギに似た衣服を着込んで色気など感じさせないにも関わらず、それが彼女を彩る衣装なのだと思える。
「――誰、アンタ」
少女は、決して手を止める事無く口を開いた。金槌の音で非常に聞き取りづらいが、聴覚を最大限稼働させて聞き取った言葉に、クアンタは二秒ほど思考する。
「リンナ、という方だろうか」
「あぁ、そうだけど?」
声は非常に綺麗だが、女性としては低めで男性よりは高めの声質。聞き取りやすく、かつ甲高くない声色が、クアンタにとっては非常に好印象だった。
「見学をさせて貰いたい」
「あ、そう? じゃあついでに手伝……体験してきな」
リンナは乱雑に置かれていた大きめの金槌をクアンタへ投げ、彼女もそれを受け取り、首を傾げる。
「アンタみたいな変な成りしたベッピンさんにお願いすんのもワリィと思うけどさ、アタシが指示する場所に打ち込んで」
「素人がして構わないのだろうか」
「良いの。アンタは一定の強さで、ただ指定する場所を打ってくれれば」
頷きながら、今リンナが金槌で軽く叩いてアタリを示した場所に、正確な一打を、打つ。
「ちょい強めだから、もう少しだけ弱めて」
「了承」
彼女の指示通り、少々力を緩めて振り下ろされた金槌。リンナが頷き「それを保って、指示通り」と言うと、クアンタも頷き、続けて指示のあった場所へ、正確に打ち込む。
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