魔法少女の異世界刀匠生活

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第二章

シドニア・ヴ・レ・レアルター02

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 話がズレたけど、と今までの内容を踏まえた上で、リンナは講義を進めた。


「警兵がアタシの要望を素直に聞き入れてるのはなんでかって話だったわよね?」

「その通りだ」

「理由は二つあって、一つは警兵をまとめる警備兵士組織ってのが存在するんだけど、ここは警備兵士庁っていうトコによって運営されてる、治安維持や取り締まりとかを担ってる組織。これは分かる?」

「理解可能」

「この警兵庁、皇国軍の管理運営を行ってる国防省っていう所とは違う省庁で、予算配分としては国防省の方が多く回されてんのね」

「理解可能」

「けどシドニア様から『警兵の存在が領民の安心と安全に繋がる。活躍によっては今後の予算配分の見直しも検討する必要があろう』ってお言葉があって、それを何とか可能にしようと躍起になってんのよ。だから小市民の要望にも可能な限り叶える。ね? カンタンっしょ?」

「否、理解不能。象徴が積極的に政治運営に参加しているようにしか思えない」

「あー……ちなみにシドニア様、さっき言った七人の政治家の一人でもあって、さらに皇国軍の管理運営を行う国防省長官でもあるのよ」

「すまない、いいだろうか」

「んまぁ、質問は大体わかるけど、なに?」

「政治に参加しているどころか、政治を裏から動かしていないだろうか。シドニアとやらは」

「だからさっき言ったじゃない。『領主としてのシドニア様は政治運営に口出ししない』って。発言はあくまで『政治委員として』の発言と『国防省長官として』の発言でしっかり分けてるんよ」

「まず何故政治委員が関係閣僚となれるのか、そして何故象徴となる領主が政治委員への参加が出来るのか、それらを法律で定めていないのかが疑問なのだが」

「まぁ民主主義を名乗った独裁政治よねぇ。けど実際、領民の幸福度は高いらしいの。物価とかも昔より圧倒的に安定してるって話だし」


 独裁政権と言うのは非難の対象となる事は多いが、あくまでその政治方針・手腕によるものであるという事だ。

  シドニアという男はまず民主主義を名乗る事で領民が持つ独裁政治への不満を減少させている他、民主主義を名乗った独裁であると非難したい者達への牽制としてクリーンな政治経済を志し、事実それを成している上に法律違反でも無いのだからと非難を減らす。

  なるほど――領民からの信頼が厚いからこそできるグレーゾーン政治か、とクアンタが納得し、頷きながら続きを促す。


「二つ目の理由を、良いだろうか」

「二つ目もカンタン。そのシドニア様が今は『領主として』色んな場所を視察してて、昨日位からこのミルガスを視察中なの。だから少しでもあの人からの評価が落ちそうな事を避けたいって判断でしょ」

「ミルガスは首都とはいえ、警兵が個人への満足度に貢献しているかどうかをイチイチ視察で確認をするのだろうか」

「する。シドニア様はする。あの人は元々今の領土になる前のシドニア領で散々発生していた汚職を一つ一つ小さな証拠も含めて見つけ出し、関わった者を追放ないし死刑ないし投獄する事で、クリーンな政治を領民へアピールした領主様だもの。

 ほんの五年前だからアタシも親父と一緒に領主着任パレード行ったけど、その前日まで偉そうにしてた権力者連中百人位が身包み剥がされてはりつけにされてたのを見たもんねぇ」

「そして実際にそれは成されていると」

「少なくとも汚職政治を行っている証拠をシドニア様に掴まれたら一巻の終わり。

 ……まぁあくまであの人の威厳が通じるのは皇国軍に頭の上がらない人、政治家に頭の上がらない人だけで、あの人を侮辱さえしなければただの象徴でしかない。アタシら小市民が気にする事は無いわ」

「ほうほう。今のレアルタ国はそんな事になっていたか。私は百年ほど前のここしか知らんからなぁ」


 突然、二人以外の声が聞こえた。

  思わず顔をあげたリンナが、居間に腰を落ち着け、クアンタへ用意した白米を口に運びながら「うむ日本風の味」と感想を漏らす、謎の女性に驚き、立ち上がって飛び退いた。


「アンタ誰ッ!?」

「あ、クアンタ。そこにある魚油取ってくれ。この野菜炒めちょっと味が薄い」

「構わないがお師匠の話を聞け、神さま」


 それは、茶髪の髪の毛を後頭部でひとまとめにした、地球におけるオフィススーツに身を包んだ女性である。

  女性はクアンタから渡される瓶を受け取り、野菜炒めにかけて一口味見をすると「かけすぎた……」と少し落ち込むような声色で漏らしつつ、リンナへと視線を向けた。


「やぁ、クアンタが世話になっている。座ったらどうだ?」

「アンタ誰って聞いてんだけど!?」

「今クアンタが言った通り、私が神さまだ。地球と言う星からこのブリジステ諸島へクアンタを転移させた張本人。名を、菊谷ヤエ (B)という。以後お見知りおきを――と言いたいが、そう会う事もないだろうから、覚えなくても良い」


 許可も得ず、胸ポケットからハードのタバコを取り出した女性が指を鳴らす。一瞬だけ散った火花がタバコの先端を灯し、彼女は肺に煙を入れ込んだ後、それを吐き出した。


「え、えっと……か、神様……? クアンタの話の時にも思ったけど、神様なんてあり得ねぇ存在が、何でウチでメシ勝手に食ってタバコなんていう高級嗜好品吸ってんの……? ていうかウチ灰皿ないんだけど!?」

「無ければ作るだけだ。神さまを舐めるなよ」


 先ほど火を灯した時と同じように指を鳴らした女性――菊谷ヤエ(B)の動きに合わせて、青白い火花がバチバチと音を鳴らした次の瞬間、机に一つのガラス製灰皿が置かれ、リンナは開いた口が塞がらないと言わんばかりに灰皿に触れて確かめる。


「なに今の、錬金術? いや、でも等価交換と物質保存の法則に反してるじゃん。じゃあ魔術……いやそれにしたってこのゲレス細工、魔術投影どころの精度じゃないし……っ!」

「一応種明かしすると錬金術だが、お前らの使う錬金術とは異なる。考えるだけ無駄なので、安心して神さまによる神術とでも思って崇め奉れ」

「もうマジで意味わかんないんですけど……ッ」


 考え疲れたと言わんばかりに机へうつ伏すリンナに変わり、クアンタが言葉を発する。


「それより。どういう事かを説明して貰おう、神さま」

「んん、どこから説明しろと? お前の正体についてをこの小娘に語ればいいのか、それともお前の魔法少女システムについて語ればいいのか、それとも私のスリーサイズか。ちなみにバスト九十一、ウエスト六十三、ヒップ八十八だ。この辺は自由に変えられるが」


 わざと話を逸らしているようにも思え、クアンタは思案するが、しかし彼女の思考を読むことは不可能だ。

  彼女は自他共に認める「神さま」だ。故に、人間と同じ価値観や倫理観を所有していない。


「まず、私の問いに答えて貰おう」

「答えられたら答えてやろう」

「先ほど、神さまは『ブリジステ諸島へクアンタを転移させた張本人』と自己紹介をした。あの言葉に偽りはないか」

「ない。そもそも私しかいないだろう? お前の周りに異世界転移なんぞが出来る知り合いがいるのなら紹介してくれ。秩序安定の為に殺すかもしれないが」

「何故私をこの世界へ?」

「それは自分で考えろ。いずれ分かる時が来るし、そうする事がお前の為にも一番だ」
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