魔法少女の異世界刀匠生活

ミュート

文字の大きさ
14 / 285
第二章

シドニア・ヴ・レ・レアルター03

しおりを挟む
 フィルター近くまで吸っていたタバコを灰皿に押し付けて消し、二本目を吸い始めるヤエに、リンナが頭を抱えながらも身体を起こした。


「ごめん、ようやくちょっと落ち着けた」

「ではお前も何か質問してみろ。神さまと会話できる滅多にない機会だ、少しはサービスしてやろう」

「えっと……クアンタって、そのフォーリナーっていう宇宙人、なんすよね?」

「正確には流体金属生命体【フォーリナー】であり、正確な名前というのは存在しない」

「クアンタがさっき、神さまを名乗る女に捕まったって言ってたんすけど、それがえっと……ヤエさんでいいんすか?」

「捕らえてマジカリング・デバイスを授けたのは私だが、デバイスを作ったのは(A)だな」

「え、エー?」

「まぁもう一人の神さまだと思えばいい。元々クアンタや私がいた世界には、私の様な神さまが合計十人位いて、私はその内の一人というだけだ」

「神さま、多いっすね」

「私の様な形を有した神さまじゃなければ、それこそ八百万といるぞ?」

「なに? クアンタの元々いた、そのチキューって所は神さまがいっぱいいんの?」

「安心しろ、この世界にもいるぞ。まぁそれはいいだろう。他に聞きたい事は?」

「じゃ、じゃあその、マホーショージョって、なんなんすか? 見たとこ、ゴルタナみたいなカンジに見えたけど」

「まぁこの世界にあるゴルタナと用途は同じで、お前らで言う魔術と錬金術によって構成された、魔法少女変身補助システム――マジカリング・デバイスを使用して変身した者の事をそう呼んでいる。またの名をアルタネイティブともいうが、私は魔法少女の方が分かりやすくて好きかな」

「あ、ゴメンまた頭こんがらがって来た……ッ!」

「何とも返答のし甲斐が無い奴だなぁ」

「通常の人間は突然神さまを名乗る輩がいれば混乱する事は当然かと思われる」

「そりゃそうだ」


 クククと笑いながらも律儀に待ってくれているヤエに、リンナはこめかみを押さえつつ、彼女が三本目のタバコを取り出したタイミングで質問を再開。


「あの、神さまがウチに来たのって、やっぱクアンタを呼び戻しに来たんすか?」

「いや違う、こっちの世界にご迷惑おかけしてないか様子を見に来ただけ。まだコイツにやってもらいたい事があるし、それを果たすまでは少なくとも連れ戻す気はない。……それにクアンタもどうやら、まだ帰りたくないって感じだ」


 ニヤニヤとした表情を浮かべながらクアンタを見たヤエに、彼女も頷く。

  仮に、もしヤエが連れ帰る等と言ったら、彼女はそれに拒否するつもりだった。

  元よりクアンタはフォーリナーより待機命令を下され、地球の監視に注力していただけの存在である。

 地球へと戻ってもやる事は無いし、それならばリンナと共に鍛冶場を切り盛りしていた方が好ましい。

  だが――問題はその「好ましい」という感情だ。


「二つの質問に答えて貰えないだろうか」

「時間的にそれでラストかな。タバコも切れたからコンビニ行きたいし」


 人差し指をを立てたクアンタが、まず一つ目の質問と置きながら、言葉を選ぶ。


「どうやら私の持つ情報収集能力が万全ではないようなのだが、神さまの仕業か」


 クアンタは元々、触れただけで物質や有機物の情報を読み取る性能を有している。

 人に触れれば脳と直接繋がり、個人情報や記憶を含めた情報取得を行う事も出来、事実このシドニア領へと降り立った際に利用しているが、それにより取得した情報は不完全だった。


 クアンタが思案する仮説は二つ。

  一つは、この菊谷ヤエ(B)がクアンタの持つ能力に制限をかけているという仮説。

  もう一つは――


「いや? 私はお前に何も細工をしていない。強いて言えばお前の中にマジカリング・デバイスを埋め込んで着脱可能にした位か? それが影響を与えてるんじゃないかという事ならそれも否だぞ」


 先回りして、二つ目の仮説も否定されてしまった。


「ではなぜ」

「よく考えろ、お前はそもそもフォーリナー本体……つまり【全】から分離した【一】だ。その機能はフォーリナー本体と通信接続が出来る環境でこそ情報解析が可能なわけで、お前という子機しかない今の状況で満足に情報解析が出来る筈が無いだろう」

「――なるほど。今まで本体と通信が断絶された事など無かった為、私としても想定外の出来事だったわけか」


 彼女の説明に疑問点は無い。頷きそれに納得した事で、ヤエが「二つ目は?」と聞きながら三本目のタバコも火種を潰した。


「二つ目は……私も、何と言語化すれば良いのか、判断出来かねるのだが」

「ならあえて何も考えずに口にしてみろ。人間は皆そうしてる」

「神さまがそれをいうのか」

「私だって元人間だし、一応人間の味方をしてるつもりだぞ? 深入りするつもりは毛頭無いが」

「……そうだな、では二つ目の問いは『私に感情を付与したか』だ」


 彼女の言葉に、ヤエはつい胸ポケットをまさぐり、タバコを探したが見つからない。

 先ほど吸った分で最後だったので当然だが、それにも笑いがこみ上げてきて、遂には腹を抱えて、高笑いをしだす。


「やはり感情、感情か! フォーリナーの先兵でしかないお前が感情とは、本当に面白い! いや勿論お前の事を見ていて、私もそうだとは思っていたがな」

「か、神さま、そんな可笑しい事? 誰だって感情位あるじゃんよ」

「おいおい小娘。じゃあお前は、自分の打ってる刀一本一本に感情が宿ってるとでもいうか? 言わんだろう!」

「そりゃ、刀は感情を持っちゃいないよ。けどクアンタはこうして生きてるんだ。なら感情位は持ち得るだろうさ」

「違うね、クアンタは道具だよ。それこそ刀だ。コイツはそもそも地球を我が物にしようと企んで送り込まれたフォーリナーの兵器だからな。

 情報収集をする必要があったから人間をコピーして模ったに過ぎん。感情などある筈が無いし、あるとすればコイツはフォーリナーにとって欠陥品だ。出来損ないだ!」


 そう腹を抱えて笑うヤエを見て。


  リンナは彼女の胸倉を素早く掴み、右手をグーにして一発、その頬へ叩き込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ニートを生贄に。

ハマハマ
ファンタジー
『勇者ファネルの寿命がそろそろやばい。あいつだけ人族だから当たり前だったんだが』  五英雄の一人、人族の勇者ファネルの寿命は尽きかけていた。  その代わりとして、地球という名の異世界から新たな『生贄』に選ばれた日本出身ニートの京野太郎。  その世界は七十年前、世界の希望・五英雄と、昏き世界から来た神との戦いの際、辛くも昏き世界から来た神を倒したが、世界の核を破壊され、1/4を残して崩壊。  残された1/4の世界を守るため、五英雄は結界を張り、結界を維持する為にそれぞれが結界の礎となった。  そして七十年後の今。  結界の新たな礎とされるべく連れて来られた日本のニート京野太郎。  そんな太郎のニート生活はどうなってしまう? というお話なんですが、主人公は五英雄の一人、真祖の吸血鬼ブラムの子だったりします。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

フィフティドールは笑いたい 〜謎の組織から支援を受けてるけど怪し過ぎるんですけど!?〜

狐隠リオ
ファンタジー
 偉大なる魔女の守護者、それが騎士。  大勢の若者たちがその英雄譚に魅了され、その道へと歩み始めていた。  だけど俺、志季春護は騎士を目指しながらも他とは少し違かった。  大勢を護るために戦うのではなく、残された二人の家族を護るために剣を振るう。  妹の夏実と姉の冬華。二人を護るために春護は努力を続けていた。  だけど……二人とも失ってしまった。  死の淵を彷徨った俺は一人の少女と出会い、怪しげな彼女と契約を交わしたんだ。  契約によって得た新たな力を使い俺は進む。騎士の相棒である水花と共に。  好意的だけど底の知れないナニカの助力を受け、少年は強さを求める。  家族の仇を取るために、魔族を討滅するために。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...