魔法少女の異世界刀匠生活

ミュート

文字の大きさ
48 / 285
第五章

皇族、集結-04

しおりを挟む
 丁度五分だ。またサーニスに文句を言われないよう、リンナの格好にも少々気を配りながら、寝ぐせのついた彼女の髪の毛を手櫛で軽く整え、ドアを開ける。


「待たせたな」

「あ、サーニスさん、おはようございます」

「……おはようございます、リンナさん」


 またも顔を赤くしているサーニスに首を傾げたリンナ。クアンタは「聞いていたな」と小さく呟くと、彼だけは聞こえたようで、頷いた。


「えっと、ではシドニア様とアメリア様がお待ちですので、行きましょう」

「わかりました」


 少し遅れた事を気にしているのか、率先して歩いていくリンナの後ろをついていくサーニスとクアンタ。クアンタに軽く肘をつき、視線がサーニスを向いた結果、彼は小声で問いかけた。


「その……クアンタとリンナさんは、そういう関係なのか?」

「そういう、とは?」

「お付き合いをしていたりとか」

「何が言いたいかはわからないが、お師匠と弟子の関係だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「そ、そうか……では、まぁ程々に、適切な距離感を持って、清らかな関係を築きなさい」

「よくわからんが、了解」


 そんな話をしている間に、シドニアとアメリアの待つ部屋に到着し、サーニスがノックをした事で『入ってくれ』とシドニアの声が。


「失礼します。クアンタとリンナさんをお連れしました」

「ありがとう。待機していてくれ」


 それは人が数人座る程度では大きすぎる円卓だった。しかし一面に広げられた資料や本などが乱雑に置かれ、それを読み漁りながら目を細めているシドニアに、心配そうな表情で声をかけるリンナ。


「あの、シドニア……さん。大丈夫ですか? なんか、疲れてそうですけど」

「何、昨日から寝ていないだけだ。帰りの馬車で睡眠を取るので問題はない」

「睡眠不足は推奨しないぞ」

「君が情報を小出しにしなければ、私もここまで考え込まずに済むかもしれないのだがね」

「安心しろ、小出しせず情報を開示したところで、どうせ考え込むことになる。だから誤った考え方をしないよう、吟味した情報を与えているんだ」

「気遣いは嬉しいが、君はもう少し人間めいた思考をした方がいいよ」

「善処しよう。アメリア様は?」

「書斎から必要そうな過去の文献を持ってきている。少々待て」


 とは言っても、待つことは無かった。

  シドニアがそう言った三秒後には再び扉が開かれ、アメリアが「待たせたな!」と声を張り上げた。後ろには大量の書物を抱える黒子たちがおり、彼らが机に書物を置いた事で、話し合いの準備が整った。


「ではこの資料や書物に関しては、シドニアへ一任する。一冊でも無くせば賠償請求する故、気を付ける事じゃな」

「承知しておりますよ、姉上。――では、始めよう」


 席に着いたアメリア。既に着席していたシドニアとリンナ、クアンタの四人が円卓に腰かけている事を確認しつつ、サーニスがシドニアの後ろに立った。


「まずクアンタ、これまで君の正体について、特に問う事は無かったが、これについて話すことは問題ないか?」

「今まででも、問われれば答えていた」

「そうか。ではまずそこからお願いしたい」

「了承。ちなみにお師匠に話した時は『長い』と言われてしまったが、手短に話した方が良いだろうか」

「君の正体、そして目的が分かれば長くとも短くとも問題は無い。頼む」


 クアンタは二秒ほど、思考へ時間を回す。しかし隠す事も特にないので、淡々と説明していく事に。


「まず、手っ取り早く私の事を自己紹介するとすれば、宇宙人だ」

「……ほう」


 シドニアが、それは想像していなかったと言わんばかりに表情を変え、顎に手をやった。読んでいた文献からも手を離し、クアンタの言葉に集中するという意思も感じられた。


「宇宙人だと? 宇宙人とは、あの、宇宙から来た生物、という事か?」


 サーニスが流石にそれは理解できないと首を傾げながら、空に向けて指をさす。クアンタも頷きつつ、しかし端的に説明するため、彼の問いには深く返事はしなかった。


「流体金属生命体【フォーリナー】――それが、私の元々属していた存在の名だ。人類のような個々の存在を容認した、多様性を重視するモノではなく、フォーリナーという大本の全が存在し、そこから分離した先兵が私だ。

 本来の私はフォーリナー全土の繁栄を目的として行動する必要があるものの、しかしこの星へとやってきた時から、フォーリナー本体との通信手段がなく、一つの個としての存在を確立した……という事らしい」


 リンナとサーニスが若干頭にクエスチョンマークを浮かべていたが、しかしシドニアとアメリアは、理解が出来たように頷いた。


「なるほど――例えばそうであるという証明は出来るか? 流体金属生命体というのが何かはわからんが、そう名がついているという事は、元々君は人間としての体ではなく、そうした生命体としての姿を持つのだろう?」

「そうだな――では、失礼」


 彼女は自分の胸に手を当てる。突然何をしているんだとギョッとするサーニスとリンナは放っておき、彼女はその掴んだ右の乳房を――もいだ。


「あああああーッ! オッパイが――っ!!」

「落ち着けお師匠。すぐ戻す。いや、邪魔だからこのまま失くしたい所ではあるのだが」


 もがれた乳房。だがそのもぎ取られたはずの接続面からは血が流れる事は無く、ただ銀色の表面がそこにはあった。

 そして乳房だったものは段々と形を崩していき、銀色の液体となって、再度変形を開始、今度は銀色の球体へと成り代わって、それを机の上に放り投げる。


「流体金属――簡単に言えば液体状の金属だな。自由変形と即時加工によってあらゆる形へ変化させる事が出来るし、ある程度は私の思考回路と接続して操作することも可能だ」


 転がして、対面のアメリアへと向かっていった球体は、クアンタが手を伸ばすとそれに引っ張られるような形で、手に収まった。


「そしてコレを変形させ――」


 球体が再び形を変えていく。今度は刃渡り一寸程度のナイフへと成り代わって、クアンタが軽く自分の腕を切り裂いた。しかし、その切り口からも、血は一切流れない。


「こうした武器とする事も出来る。以前『控えろ』と言われたこともあり、なるべく自前の武器を使用するが」

「驚いたな。個々の肉体に縛られる人類とは全く違う性質の生命体だ」

「じゃのう。例えば錬金術や魔術とて、大本の肉体――つまりは自己が存在し初めて成し得る術じゃ。自己の存在を無下にした術師はとんと聴かん」


 なぜ二人はこうも冷静なのだとするサーニスとリンナを落ち着かせるため、今ナイフの形を乳房へと変え、先ほどもぎ取った胸へと押し付ける事で、元々の形へと戻らせた。


「ちなみに、あまり本筋とは関係ないかもしれんが、そうして乳をもぎ取ったり腕を切り裂いたりして、痛みは無いのかえ?」

「そこそこ痛いです」

「……そうかぁ。今後はそうした行為、控えて良いぞ?」

「かしこまりました」


 本来はそうした痛覚なども作用しない筈なのだが、今は何故か作用している、とは言わなかった。今回の本筋は、アメリアの言う通りそこではない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ニートを生贄に。

ハマハマ
ファンタジー
『勇者ファネルの寿命がそろそろやばい。あいつだけ人族だから当たり前だったんだが』  五英雄の一人、人族の勇者ファネルの寿命は尽きかけていた。  その代わりとして、地球という名の異世界から新たな『生贄』に選ばれた日本出身ニートの京野太郎。  その世界は七十年前、世界の希望・五英雄と、昏き世界から来た神との戦いの際、辛くも昏き世界から来た神を倒したが、世界の核を破壊され、1/4を残して崩壊。  残された1/4の世界を守るため、五英雄は結界を張り、結界を維持する為にそれぞれが結界の礎となった。  そして七十年後の今。  結界の新たな礎とされるべく連れて来られた日本のニート京野太郎。  そんな太郎のニート生活はどうなってしまう? というお話なんですが、主人公は五英雄の一人、真祖の吸血鬼ブラムの子だったりします。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

台風のよる、君ひそやかに、魔女高らかに

にしのくみすた
ファンタジー
【空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!】 台風の夜、魔女はホウキで空を翔け――嵐と戦う! この街で台風と戦うのは、ホウキで飛ぶ魔女の仕事だ。 空を飛ぶ魔女に憧れながらも、魔法が使えない体質のため夢を諦めたモチコ。 台風の夜、嵐に襲われて絶体絶命のピンチに陥ったモチコを救ったのは、 誰よりも速く夜空を飛ぶ“疾風迅雷の魔女”ミライアだった。 ひょんな事からミライアの相方として飛ぶことになったモチコは、 先輩のミライアとともに何度も台風へ挑み、だんだんと成長していく。 ふたりの距離が少しずつ近づいていくなか、 ミライアがあやしい『実験』をしようと言い出して……? 史上最速で空を飛ぶことにこだわる変な先輩と、全く飛べない地味メガネの後輩。 ふたりは夜空に浮かんだホウキの上で、今夜も秘密の『実験』を続けていく――。 空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

フィフティドールは笑いたい 〜謎の組織から支援を受けてるけど怪し過ぎるんですけど!?〜

狐隠リオ
ファンタジー
 偉大なる魔女の守護者、それが騎士。  大勢の若者たちがその英雄譚に魅了され、その道へと歩み始めていた。  だけど俺、志季春護は騎士を目指しながらも他とは少し違かった。  大勢を護るために戦うのではなく、残された二人の家族を護るために剣を振るう。  妹の夏実と姉の冬華。二人を護るために春護は努力を続けていた。  だけど……二人とも失ってしまった。  死の淵を彷徨った俺は一人の少女と出会い、怪しげな彼女と契約を交わしたんだ。  契約によって得た新たな力を使い俺は進む。騎士の相棒である水花と共に。  好意的だけど底の知れないナニカの助力を受け、少年は強さを求める。  家族の仇を取るために、魔族を討滅するために。

処理中です...