魔法少女の異世界刀匠生活

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第五章

皇族、集結-05

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「では君の正体はひとまずそこまでで構わない。むしろ本題はここからだ」

「分かっている。あの先日相対した存在、マリルリンデについてだろう」


 災いを使役し、リンナを狙っていると取れる発言をしていた男。

  嬉々とした感情表現にも似た身振り手振り、言動こそしているが、しかし表情に一切そうした喜を見せぬ、チグハグの存在。

  シドニアは、その存在についてを知りたがっていた。


「奴について分かっていることを教えてくれ」

「残念だが、そう多くは知らない。奴も私と同じフォーリナーの先兵であり、二百二十年前にフォーリナー本体からこの星の調査をする為に派遣されていた者、という事位だ」


 二百二十年前、フォーリナー本体は自身の存在する銀河とは別の銀河――塩基系第二惑星ゴルサという星に存在する有機生命を確認した。

  このゴルサが、レアルタ皇国などの存在する星であり、本来であれば彼……マリルリンデはこの星を調査し、フォーリナーへその情報を送り続ける事が任務であった。

  だが二百年前、フォーリナーは塩基系銀河全土にビックバン、つまり膨張爆発運動の発生と、それによる銀河の壊滅を観測。

  結果として塩基系銀河の調査は終了、現在は本体との通信が遮断されている状況だと語った。


「マリルリンデはフォーリナー本体との通信接続が切れていた事が原因で帰還出来ず、また二百年という年月を経て経年劣化、思考回路や身体構成機能に損傷が見られている様子だった」

「何故奴が災いを使役出来ている? アレは君たちフォーリナーの作り出す存在なのか?」

「否、少なくともフォーリナーにはああした存在を生み出す力は無い。しかし、災いを使役できる理由はわからないが、災いを使役する理由は、ある程度仮説が立てられる」


 フォーリナーという生命体は食事等による栄養補給の必要が無い。しかし、代わりに有機生命が持つ【虚力】というエネルギーを摂取する必要がある。

  フォーリナーはこの虚力を求めて外宇宙を調査、有機生命体を探し、虚力を採取する。

  必要があったり、優位性が確認されれば、その者達もフォーリナーの一員として迎え入れる。

  どちらにせよ侵略でしかないが、それがフォーリナーという生命における生存方法なのだから、それを咎める事は人類にも出来まい。


「我々先兵の活動にもある程度虚力が必要だ。そして有機生命におけるツガイのメスは、虚力を最も多く持ち得る。

 故にマリルリンデは自身の活動可能時間を引き延ばすために虚力を女性から収集している、と考えられるのだが、奴はそれを否定した。

 ――いや、否定じゃないな。恐らくそれも理由の一つだが、まだ別の、もっともっと単純な事の為に収集していると言っていた」

「その『もっともっと単純な事』というのは分かるかい?」

「奴いわく『一ヶ月やそこいらしかこの惑星を経験していない私』では分からないそうだな」

「ならば、それ以上を今考えるのは無駄という事じゃな。災いの事を知らねば仮説も立てられぬのならば、カルファスに色々と話を聞いて仮説を立てられるかどうかを考えた方が建設的じゃ」


 レアルタ皇国第二皇女・カルファス。魔術師であり、災いに関しての知識をある程度有していると思わしき人物。

  その者から災いの情報を聞き出し、そしてクアンタの持ち得ている情報と合わせて仮説を立てられるかどうかが、今回の問題を解決しうる鍵となり得る。


「……そうですね。確かに何も分からぬまま仮説を立てるのは危険かもしれませんね。ええ、分かっています」


 だが何も考えていないのが性に合っていないのか、シドニアは若干不満げだ。しかしクアンタとアメリアは気にすることなく、会話を続ける。


「また話がズレるやもじゃが、少し気になる事がある」

「何でしょう」

「クアンタもフォーリナーなのじゃろ? 主は虚力とやらを収集しておるのか?」

「少なくともこの一ヶ月、この惑星ゴルザにおいては収集しておりません」

「主の身体は、そのマリルリンデのように損傷していかんのか?」

「本来ならばそうなのですが――少なくともこの星に来てから、私は虚力不足となっていません」


 それも、今アメリアに指摘されて初めて気づいた。

  確かに先日、シドニアから少量の虚力を収集したがすぐに返還しているし、それ以前にもこのレアルタ皇国にて虚力を収集していないにも関わらず、クアンタは虚力不足を実感した覚えはない。

  その理由が分からないと考えた所で、シドニアがリンナへと視線をやる。


「その虚力についてだが、マリルリンデはリンナの事を『上玉だ』と言っていたな。リンナの虚力量を気にしておいた方がいい、ともな」

「アタシ、ですか?」

「私もあの言葉が気になっていた」


 しかしまだ調べていない。クアンタは立ち上がってリンナの元まで行き、今までの話についてこれていない彼女の肩を掴む。


「へ? 何、クアンタ?」

「お師匠、失礼する」


 リンナの首筋に顔を近づけ、今その鎖骨近くに、口づけをする。


「ひゃっ」


 驚きのあまり声をあげたリンナだったが、しかしクアンタは止まらない。

 肌に唇を付けて吸いつき、僅かに痕が残る程にしゃぶりついた後、彼女は舌を這わせ、首筋をツツ――となぞる。


「あ、ひゃぁ……っ、だ、ダメ、クアンタ、皆、見てる……、見てるから……ぁっ!」

「ちゅ――ぷはぁ」


 最後に今一度、今度は首と肩の付け根部分で強く吸いついた事で行為を終わらせたクアンタが、唇を拭いながら真顔で「これは凄い」と頷いた。


「はぁ……っ、も、なん、何なのさぉ……っ」


 涙目になりながら顔を真っ赤にしたリンナを放って、クアンタは続けてアメリアの元へ。


「アメリア様、少々よろしいでしょうか?」

「うむっ! どんどん来るがよいッ!!」


 先ほどの行為を食い入るように見ていたアメリアが、両手を広げて訪れたクアンタを出迎え、今まさに首筋にキスをしたクアンタを抱きしめた。

 先ほどリンナへしたように、唇で肌に吸いつき、舌を這わせている間、アメリアは恍惚とした表情を浮かべる。


「あ……あぁ、いいのぉ、これ。クアンタの舌が吾輩の肌を愛撫しておる……っ」


 そう言っている間、アメリアもまたクアンタの胸と尻を撫でまわし、随分と楽しんでいる様子が見受けられる。


「なぁサーニス、私は何故姉と友人の情事を見せられているのか分かるかい?」

「申し訳ありませんが、自分に聞かれましても……」


 シドニアは呆れ顔だが、サーニスは本日何度目か分からぬ赤面を浮かべている。

  十分アメリアの肌を楽しんだかのように、今クアンタがアメリアから離れ、先ほどと同じように唇を拭うが、しかし「うむ」と言葉にするだけで、その感想を述べなかった。


「えー、もう終わりかえ? 吾輩、このままベッドに向かう気満々じゃったのに……」

「申し訳ありませんが、これ以上はアメリア様が危険です」


 元々座っていた席に着席し、クアンタが説明を開始する。
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