魔法少女の異世界刀匠生活

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第六章

円卓会議(ちゃぶ台)-08

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 色々と積み重なった事が多すぎた一日も、残り数時間で終わると言う夜。

  リンナは疲れた様子で、しかし黙々と料理に口を付ける。クアンタも頂くが、しかし食糧保存庫にそう大した食材が無かったから、魚の切り身と白米、ムソ汁という、それなりに質素な食事となっていた。


「そういえばお師匠」

「ん、どうした?」


 疲れているから、返事は若干元気がない。しかし続けてクアンタが放った言葉には、言葉も出なかった様子だ。


「この後、アルハットが来るらしい。時間の指定は無かったが、恐らく今日中だろう」


 先の記述通り、返事は無い。しかし今は相当参ってるのか、箸を咥えて遠い目をし、頷くだけ頷く。


「申し訳ない、言うのが遅くなった」

「あー、別にいいけど、アルハット様が何の用なの?」

『貴女達の事を、もっと詳しく知った方が多角的な情報を得られる可能性があるから、かしら』


 突如、声が聞こえた。

  粒子や量子よりも小さな粒が流れ、しかしそれが一つに固まる。

  段々と人の形を作っていく、青白い光の粒。

  それが霊子と呼ばれる概念なのだろうとクアンタが見据えつつも、リンナは箸をポトッと落とした。


「ゆ、幽霊!?」

『ええ、恐らく幽霊と呼ばれる存在も、こうした量子よりも小さい霊子の集合体であるだろうと仮定されているわ。けれど私は幽霊じゃなくて』


 霊子同士の結合が完了する。畳へ足をつけた女性――アルハット。

  続けてもう一人、同じ要領でこの場に現れた者が、カルファスだ。

 二者は霊子移動が問題無く行えた事を確認しつつ、急いで靴を脱ぎ、庭へと綺麗に置いてから、ペコリと頭を下げた。


「夜分にゴメンねェ、クアンタちゃんとリンナちゃん。まだ色々と知りたいことがあってね?」

「だからこうしてお邪魔をするというワケよ。お邪魔します」


 二者はクアンタとリンナが向かい合って食事を摂っている横に腰かける。

  クアンタの隣にアルハットが、リンナの隣にカルファスが。


「え、っと、その……し、知りたい事って、何すか?」

「緊張しなくていいよぉリンナちゃん。それよりちょっと失礼」

「いて」


 リンナの髪の毛を二本ほど乱雑に抜いたカルファスは、密閉できるプラスチックのような透明袋にそれをしまう。


「クアンタの髪の毛も頂いていいかしら」

「構わんが、時間経過と共に流体金属の欠片へ変化するだけだぞ」

「むしろその流体金属を解析させて欲しいの。貴女の体を隅々まで調べる方法もあるけれど……私なんかにベタベタ触れられたくないでしょう?」


 では失礼、とクアンタの髪の毛を、こちらは四本ほど引っこ抜き、同じく透明な袋をこちらは二つ用意、一つはそのままちゃぶ台に乗せ、もう一つは懐に入れた。


「時間経過観察を行っている間、もう少し詳しいフォーリナーのお話を伺えないかしら。それと、シドニア兄さまから少し窺っているけれど、マホーショージョというモノについても」

「了解。詳しくという事ならばかなり長くなるが、構わないか?」

「その為に伺ったのだから、気にする必要は無いわ。その間、お姉さまはリンナについて調査を。後程共有願います」

「了解了解~っ、じゃあリンナちゃん色々とお話をしよう!」

「その……話すような事、そんな無いんすけど……」

「それはこっちが決めるんだよぉ……っ、リンナちゃんを色々と触診して……、っていうのはクアンタちゃんがぶち切れて殺されるかもしれないからやめといてー」


 今日の会議にて、レアルタ皇国最強を謳われるイルメールとクアンタの大立ち回りを見ていたカルファスが、言葉の途中で冷や汗を流し、クアンタを見据える。

  勘は正しく、触診という言葉を放った瞬間、クアンタはカルファスを凝視し、眉間にしわを寄せていた。


「では、こちらはこちらでお話を。まずはフォーリナーについて」

「そうだな――まず今日の話し合いでは省略したが、私は元々この星を調査するために派遣された尖兵ではない、とだけ先に付け加えよう」

「ほう」


 興味がある、と言わんばかりに瞳を輝かせるアルハットに、クアンタも遠慮をすることなく、語り聞かせる。


「元々私は、太陽系第三惑星地球という、別の銀河、別の星に生息する生命体の調査を行っていた」

「なるほど。話はズレるけれど、そのチキューという星では、電子端末が発達しているの? 貴女は私の霊子端末を見た時、電子端末かと疑っていたけれど」

「その星の七割近くが、何かしらの電子端末を所有し、さらには電子端末からインターネットという通信網を用いて情報を共有したり、遠く離れた人間と会話をしたりすることも可能だ」


 いまいち想像が出来なかったのかもしれない。クアンタとしてもそれ以上説明する必要は無いかもしれないが、しかしこれから先、どんな情報が必要になってくるか分からない。


  ――ならば。


「差し出がましいかもしれないが、霊子端末を貸してくれないだろうか?」

「構わないけれど、私の生体認証が無いと使えないわよ」

「いいや、問題はない。――私がこのシステムの解析は出来るはずだ」


 霊子端末に触れる。寸法はおおよそ七インチ程の、地球でのくくりで言えばファブレットサイズの画面を有している。

 カメラは無いが、一般的なタブレットやファブレットと構造自体は似通っている。

  驚くべきはその情報処理能力だ。地球のスマートフォンやコンピュータ等よりも圧倒的に高度な処理が行えるであろうが、しかしその処理を行うのは、CPUやGPUなどの演算処理チップ等ではなく、全て霊子による処理だ。


「――解析完了、情報出力開始」

「え」


 声を漏らすアルハットの事など気にすることなく、クアンタは指先に力を込める。

  今日、アルハットは霊子端末を通じて通信を行ってきた。赤外線通信……否、どちらかというとBluetooth接続にも似た通信回路を通して、クアンタの知り得ている45GB分のデータを送信する前に現地語に翻訳したファイルも同梱する。

  五分ほど、時間が必要だったが、しかし送信を終えたクアンタは抜ける力を何とか込め、アルハットに霊子端末を返却した。


「……なるほど、別れ際にした通信と同じく、非接触型電波通信回路を利用したのね。そしてその通信網を利用して、貴女の知っている情報を文章変換、それを霊子端末に情報を送った、と」

「少し語弊がある。私はとある事情から、元々文章としてこの情報を肉体に収納していた。その文章をレアルタ皇国で使われる皇国語に変換しただけだ」

「だとしても――見た事も無い霊子端末を触れただけで理解し、情報を送信し得るなんて」

「必要な事だ。時間がある時に見ればいいが、地球ではこうした情報通信が、一般市民レベルで可能となっている。

 その霊子端末程ではないが、かなり高性能な電子通信端末が先進国に住まう人々の六割から七割に普及し、誰でも、誰とでも通信連絡が取れる」


 クアンタの言葉と、そして今流し読みする地球の情報を見据えながら、アルハットは僅かに動揺した様子で、吐き捨てる。


「正気の沙汰じゃないわね。もしかして、一人一人の知識水準も高いのではないかしら」

「肯定だ。もちろん全人類がそうではないし、教育が行き届いていない後進国等は存在するが、例えば私の降り立った日本という国においては、少なからず十五歳までは教育を施さなければならないという法律が存在する程だ」

「その最低教育水準はどの程度? 文字の読み書き、単純な数字の計算とかかしら?」

「最終的には、簡易的な科学実験や世界的な歴史について、そして場合によっては工学知識に必要な数式計算も行えるように教育がされる。この中等教育にて教わった内容を活かせる人間に育つ方が珍しいが、しかし志し次第でそうした職種を目指すことは可能になる程の水準だ」

「馬鹿なんじゃない、そのニホンって国。それを最低水準にしてしまえば必ず個体ごとの知識格差が生まれるし、民衆操作も難しくなるじゃない」

「肯定と共に同意。私も、それなりに解せないとは思っている」
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