魔法少女の異世界刀匠生活

ミュート

文字の大きさ
108 / 285
第十一章

カルファス・ヴ・リ・レアルタ-03

しおりを挟む
 新型ゴルタナ。第四世代型ゴルタナ。

  そう名を打って取り出された物に、クアンタは目を細めてアルハットへ問う。


「コレは、マジカリング・デバイスか?」

「正確に言うと少し違うわ。これはゴルタナの形状をマジカリング・デバイスに似せただけのもの。ヤエさんからマジカリング・デバイスについてデータを貰ったから、その技術だけを流用した形ね」


 縦幅十二センチ、横幅六センチ、厚さは七ミリ程の長方形型デバイス、四インチ程の大きさを有する液晶のような画面は、恐らく霊子の集合体を用いて表示するタイプのタッチパネルで、クアンタはその外観だけを見ても、自身の持つマジカリング・デバイスと瓜二つのそれを手に取り、内部情報の解析を行うが、しかし魔術的・錬金術的な代物であるのか、あらゆる金属の集合体であるという情報しか読み取れない。


「そして、この第四世代型ゴルタナに、対災い専用装備としての技術を結集した、4.5世代型をカルファス姉さまが開発中よ」

「私にその試験をしろというのか?」

「ええ。実際に使用してみて、それが対策になり得るものかを見て欲しいの」


 とはいえ、現在は刀の増産を進めている状況である。リンナ一人だけを置いてカルファス領に出向くわけにもいかないのだが。


「あー……」


 と、そこで汗だくになったリンナが居間に顔を出し、アルハットが小さなお辞儀をすると「お邪魔しているわ」とだけ言った。


「いらっしゃいアルハット。今の聞こえてたんだけどさ、それってすぐ行かなきゃダメ?」

「丁度それを問おうと思っていたのだが」

「いいえ大丈夫。心配しないで。二日後に正式な書類として送るのだけれど、四日後にカルファス領へ来賓として呼びたてるから、その時にテストしてほしい、という事よ」

「アタシもお呼ばれされてたんだ」


 んー、と口をすぼめて考えるリンナ。カルファス領は馬車での移動に半日以上の時間が必要だ。以前のアメリア領に出向いた時の様に、一日で予定が終了したとしても二日間は作業に入れない事を危惧しているのかもしれない。


「既にシドニア兄さまには話を通したのだけれど、この事で遅れが出ても特に問題はないとの返答だったわ。新型ゴルタナの開発が進めばそれだけ戦力増強に繋がるって事でね」

「んー……まぁ、納期延びるならアタシは良いけどさ……クアンタ、アンタは良いの? その、新型ゴルタナの試験ってのはアンタも気になる?」

「そうだな。こうした装備によってお師匠を防衛する皇国軍や警兵隊の能力が向上するという事ならば、協力に問題はない」


 それに加えた理由は、口にしないがアルハットの持つ霊子端末へ無線通信を行い、意思疎通を図る。


『その4.5世代型、扱いとしてはゴルタナにしないつもりだな?』

『ええ。四世代型はゴルタナとしての扱いになるけれど、4.5世代型の方は貴女のマジカリング・デバイスと同列扱いにするから、イザって時には誰でも使える様にするわ――つまり、リンナでも使える様にするって事』


 アルハットとしても、現状の様にリンナが戦闘能力を保持していない状況を好ましく思っていなかったらしい。


  ――何せ、ただ虚力が多い、ただ刀を作る技術を持っているというだけでは、ヤエが守ろうと、マリルリンデ、五災刃がリンナを狙う理由とするには薄すぎる。


  リンナには、刀を作る事よりも大きな、何か力があると考えたのだ。


「じゃあ今日の所は、これで」

「え、もう行っちゃうの? お茶でも飲んできなよ。何だったら工房覗いてく?」

「嬉しいお誘いだけど……少し公務が残ってるの。だからそのお誘いはまた今度ね」


 以前、アルハットとリンナのイザコザがあった際に、リンナはどうやらアルハットと敬語を使わずに話すようになったらしく、それに加えて随分と友好的になった。


「じゃあ、また来るわねリンナ。その時こそ、色々工房を見せて頂戴」

「うん、アルハットもあんま無理せず頑張りなよ?」

「ふふ、難しい事を言うわね」


 じゃあね、と言葉にしつつ、リンナの額に軽くキスをして、霊子転移をしたアルハット。


「随分と二人で仲良くなったみたいだな」

「そうかな? んー……何か、アンタが前に、アタシとアルハットが似てるって聞いた時から、何か他人に思えなくてさぁ。それに、可愛いよねぇアルハット。なんか、アタシ的にはちょっとドジなお姉ちゃんってカンジ」


 そう笑うリンナに、少し複雑な感覚を覚えるクアンタ。しかし友好的である事は好ましい事であるはずなので「そうか」とだけ端的に返す。


「それより、刀はいいのか?」

「ああ、大丈夫大丈夫。そろそろ昼メシの準備しよっかなぁ、って思ってさ」

「もうそんな時間か」


 既に太陽は昇りきり、これから昼過ぎとなる。リンナが汗だくの貫頭衣を脱いで、そのまま半裸の状態で台所へ出向き、クアンタは「何か手伝おうか」と声をかけるが、リンナはちょっと困り顔で「あー……いいや」と首を横に振る。


「……そうだな、私が料理をすると、アレか」

「あのさ、まぁ、あんま気にすんな? 女は料理できなきゃいけねぇってホーリツなんか無いんだから」

「……了解」


 数日前、リンナがあまりの忙しさに「メシ作ってる時間なんかねーよッッ!!」と発狂していた為、クアンタが手空きに料理を作ったのだが、この料理が非常にユニークな味わいだったらしい。リンナは「マズくは無いけどウマくもない」とキッパリ言い放ち、クアンタもそれ以来、自分の料理スキルに疑問を持っていたらしい。


「では、少し外の掃除をしてくる……」

「あ……」


 表情は最後まで不変だったが、普段のクアンタらしからぬ哀愁漂う背中に何と声をかける事も出来なかったリンナが、悪い事言っちゃったかなぁ……と頭を掻きつつ、朝食の時に炊いたご飯の量を確認した。

  
  そうして五分ほど、庭とリンナ宅の近くを掃除していたクアンタが、それでもやる事が無かったので、ミルガスの街へと出向いて小切手の換金と口座への入金を行い、帰ると既に食事の準備が整っていた。


「クアンタお帰り。ご飯できてるよ」

「ありがとう、お師匠」


 鼻腔から伝わる、香ばしい匂いが玄関にも漂ってきた。

  クアンタ自身が気付かぬ程、少しだけ早足で居間へと行くと、昼食はちゃぶ台に並べられていた。


「クアンタが好きなリュナス料理作ったからさ、いっぱい食べな!」


 地球で言う所の中華料理にも似た料理の数々、正式な名称はリンナも知らぬようだが、クアンタが知るところで『麻婆豆腐』や『青椒肉絲』、『春巻き』、『水餃子』等があり、クアンタは小さく「私はこれが好きといったか?」と首を傾げた。


「あ、あれ? アンタ確かアメリア領で飯食った時、餡掛け豚好きっつってなかったっけ? あれリュナス料理だから、こういうのも好きかなーって思ったんだけど……」

「美味しいと言った覚えはあるが、好きと言った覚えはない」


 であるが、リンナはそうしたクアンタが「美味しい」と言った料理の事を覚えていたようで、少しだけ喜ばしい感情が彼女の中に芽生える。


「……だが、嬉しい。ありがとうお師匠」


 相も変わらず表情は変えぬが、しかしリンナから見れば少し嬉しそうにしているクアンタにホッとして、すぐに二人で座布団に腰かける。


「んじゃ、いただきます」

「頂きます」


 作ってくれたリンナと食材への感謝を口にして、すぐに箸を伸ばし、それぞれを食していく。


  ――クアンタは確かにこの時、リンナの作るリュナス料理に夢中だったかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ニートを生贄に。

ハマハマ
ファンタジー
『勇者ファネルの寿命がそろそろやばい。あいつだけ人族だから当たり前だったんだが』  五英雄の一人、人族の勇者ファネルの寿命は尽きかけていた。  その代わりとして、地球という名の異世界から新たな『生贄』に選ばれた日本出身ニートの京野太郎。  その世界は七十年前、世界の希望・五英雄と、昏き世界から来た神との戦いの際、辛くも昏き世界から来た神を倒したが、世界の核を破壊され、1/4を残して崩壊。  残された1/4の世界を守るため、五英雄は結界を張り、結界を維持する為にそれぞれが結界の礎となった。  そして七十年後の今。  結界の新たな礎とされるべく連れて来られた日本のニート京野太郎。  そんな太郎のニート生活はどうなってしまう? というお話なんですが、主人公は五英雄の一人、真祖の吸血鬼ブラムの子だったりします。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

台風のよる、君ひそやかに、魔女高らかに

にしのくみすた
ファンタジー
【空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!】 台風の夜、魔女はホウキで空を翔け――嵐と戦う! この街で台風と戦うのは、ホウキで飛ぶ魔女の仕事だ。 空を飛ぶ魔女に憧れながらも、魔法が使えない体質のため夢を諦めたモチコ。 台風の夜、嵐に襲われて絶体絶命のピンチに陥ったモチコを救ったのは、 誰よりも速く夜空を飛ぶ“疾風迅雷の魔女”ミライアだった。 ひょんな事からミライアの相方として飛ぶことになったモチコは、 先輩のミライアとともに何度も台風へ挑み、だんだんと成長していく。 ふたりの距離が少しずつ近づいていくなか、 ミライアがあやしい『実験』をしようと言い出して……? 史上最速で空を飛ぶことにこだわる変な先輩と、全く飛べない地味メガネの後輩。 ふたりは夜空に浮かんだホウキの上で、今夜も秘密の『実験』を続けていく――。 空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

フィフティドールは笑いたい 〜謎の組織から支援を受けてるけど怪し過ぎるんですけど!?〜

狐隠リオ
ファンタジー
 偉大なる魔女の守護者、それが騎士。  大勢の若者たちがその英雄譚に魅了され、その道へと歩み始めていた。  だけど俺、志季春護は騎士を目指しながらも他とは少し違かった。  大勢を護るために戦うのではなく、残された二人の家族を護るために剣を振るう。  妹の夏実と姉の冬華。二人を護るために春護は努力を続けていた。  だけど……二人とも失ってしまった。  死の淵を彷徨った俺は一人の少女と出会い、怪しげな彼女と契約を交わしたんだ。  契約によって得た新たな力を使い俺は進む。騎士の相棒である水花と共に。  好意的だけど底の知れないナニカの助力を受け、少年は強さを求める。  家族の仇を取るために、魔族を討滅するために。

処理中です...