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第十二章
進化-13
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「ただ……アンタらが、やらなきゃいけない事だから……世界に、災厄をまき散らすの……?」
「そうだよ。それがボク達の生まれた意味だからね」
「アンタには、感情があるんでしょ? そこに、意味を求めないの?」
「だからさ、意味を求める事自体が無意味なんだよ。
例えば人間は生きる為に食事をするけど、食事の内容は求めても、食事の意味を求めはしないだろう?
ただ人間の中にあるルーチンワークであり、食事をしなければただ飢え死ぬだけ。
ボク達も一緒さ。生まれた後、生きる為に虚力を収集し、収集した後にそれを放出して、災厄をまき散らし、死ぬ。それがボク達の生態というだけ。
――ああ、感情によって行動を左右させるかどうかを聞いているのなら、それも意味の無い事だ。
先ほどの例に例えれば、君たちは食事をする時に豚や牛等の肉を食らい、そうした食材に感謝する人もいれば、何も考えずに食らう人もいるだろう?
それと一緒で、人間に対して興味を抱きつつ虚力を食らうのと、興味も持たず食らうのと、それ位の違いしかない」
リンナとの語らいで、いい具合にカルファスの息が途絶えかかっている。このまま時間を稼いでいれば、まずはカルファスの命は奪える。
その後はリンナか、アメリアか、イレギュラーのクアンタを率先して殺すという手もある。シドニアがいるからリンナを殺すのには難易度が上がるが、それでも出来ない事ではない。
暗鬼の頭には、彼女への返答とは別に、そうした思考が交差し、笑みを浮かべた。
「リンナ、君はこの世に何を期待している?」
「期待……?」
「ああ。この世には、理由もない事柄など幾らでも転がっていて、それが時に誰へ無意識の悪意となって襲い掛かる。たったそれだけの事なのに、君はこの世へ下手に期待しちゃうから、絶望するんだよ。
ボク達災いは――君達人類を理由なく攻撃する、無意識の悪意でしか無いんだよ」
そろそろか、とリンナへの語らいを終え、今一番息の根を止める事が容易いクアンタの処分方法を考えようとした、その時。
死ぬ寸前、既に喋る事も難しい筈のカルファスが、ズリズリと身体を動かし、暗鬼の右足を、力無く掴んだ。
「へぇ、まだ動けるんだカルファス。君って肉体労働派には思えないんだけど」
「ふざ……ふざ、けんな……っ」
血を吐き出した結果、気管を開ける事が出来たと言わんばかりに顔を僅かに上げ、精いっぱい暗鬼を睨みつける表情は――暗鬼も少し、驚きを隠せなかった。
「ふざける……? ボクが何をふざけていると?」
「意味を……求める事が、無意味……? 違、う……人は、人間は……何かを求めるから……ここまで進化を、してきたんだ……ッ!」
暗鬼の着ている白いコートを掴み、無理矢理身体を起こしてよじ登るように、カルファスは否定の言葉を口にする。
「人でなしと、言われようが……、私は、人類の、先を見たい……ッ!
進化の先……、あらゆる意味を、求め抜いた先……人が、より良い生活を……送る為に……ッ!
それを、無意味なんて、言わせない……、貴方達なんかに……!」
「その価値観を、ボク達災いに押し付けられても困るんだけどね」
「ああ、そうだね……、だったら、そっちの価値観も……押し付けるな……っ!
リンナ、ちゃんは……そんな、貴方達を、無意味に傷付けちゃダメって……貴方達の、尊厳を傷つけまいと、私に怒った……!
正直、私にとっても、よくわかんないけど……、でも、そうして、見も知らない相手を……傷つけまいと、願うその心を……無意味だなんて、言わせない……言わせて、堪るか……ッ!」
多量の出血にも関わらず、カルファスは言葉を止める事はない。
それがなぜか――考えれば早い話で、暗鬼はクアンタを掴む手を振るって彼女を投げ飛ばし、代わりにカルファスの首根っこを掴んで、その左胸に、ピンと伸ばした左手の手刀を、突き刺すように振り込んだ。
「や、止め――ッ!!」
リンナの止める声もむなしく、手刀は無慈悲にも突き立てられた。
暗鬼がカルファスの体内から抜き出したのは未だ僅かに鼓動する心臓。
血まみれの手を気にする事無く、心臓の形を見据えた暗鬼は「やはりね」と吐き捨てた後、その心臓を握りつぶした。
「心臓に再生の術式を埋め込んでいたんだねぇ。道理でなかなか死なないと思ったよ。まぁ、これで死んだだろうけど」
首から手を離すと、糸の切れた人形のようにだらりと地に落ちて、もう動かないカルファスの姿へ――リンナは、最後まで伸ばしていた、しかしシドニアによって遮られていた手を、下ろす。
「あ……、ああ……ッ!」
間違いなく、死んだ。
カルファスという女が。
非人間的ではあったけれど、優しさを持ち得、リンナへ最後まで勇気づける言葉を投げかけてくれた、姉のような存在が。
「じゃ、次はクアンタかな」
もう、既に死んでいるカルファスに興味が無いと言わんばかりに、何とか身体を起こして立ち上がろうとするクアンタへ向けて歩を進めようとした、暗鬼の姿を見て。
リンナは頭の中で、何かが弾ける様な感覚を覚えた。
リンナの頬を、大粒の涙が流れて、顎から滴り落ちる、その瞬間。
――彼女は呆然とするシドニアの手を振り払い、暗鬼へと疾く駆け、その頬に向けて乱雑に、一撃の拳を叩き込んだ。
暗鬼からすれば、避ける必要も無い一撃である筈だった。
そうして殴りかかってくる事は分かっていたが、しかし彼女の攻撃が意味をなす筈もない。
頬で受け、彼女の手を掴み、彼女の命か虚力を奪ってやる算段まで、頭の中に浮かんでいた。
――である筈なのに。
暗鬼は、リンナが腕を思い切り振り切った瞬間、その勢いに圧されて殴り飛ばされたのだ。
近くの木に暗鬼の身体が衝突し、バキバキと音を奏でながら、根元から折れていく。それだけでどれだけの衝撃が暗鬼を襲ったかも想像に難くない。
「が、――ゴボ、ッ!」
殴られた衝撃で、痛みと共に唾液を吐き出しつつ、痛みを再生しようとする暗鬼だが、しかし再生が出来ない。
何があったかを、完全に理解できなかった。
――ただ分かった事が一つだけ。
リンナの拳には、虚力が込められていたのだ。
それも、今まで暗鬼が回収してきた人間すべての虚力を合わせても尚足りぬ程の、膨大な虚力が。
「な……なん、だ……リンナ、君、その虚力量は……ッ! それは、普段の君が持つ虚力の、数倍はあるだろう……!?」
「……オメェなんかに……オメェ等なんかに、これ以上誰かを傷つけさせるモンかよッ!!」
ずっとその手に握っていた、4.5世代型デバイスを、リンナは構えた。
「皆に笑顔で居て欲しい、ただそれだけを願った、カルファス様の想いを踏み躙ったオメェ等は――ぜってぇ許さねェ!!」
4.5世代型デバイスの頭頂部にあるスイッチを押したリンナ。
瞬間、彼女の脳へ直接殴りつけるかのような、情報の濁流という衝撃が一瞬走るものの、故に彼女は4.5世代型デバイス――否、既にマジカリング・デバイスと呼んで差し支えない力の、使い方を理解した。
〈Magicaring Device Priestess・MODE〉
表示される画面の文字等、リンナには読めない。それが地球における言語であることも知らない。ただの紋様にしか見えない。
だがそれで良い。その意味を今知る必要は無い。あとで誰かに聞けばいいだけだと、リンナは気にも留めなかった。
リンナの体内を、普段よりも数倍、否、既に十数倍と言っても良い程の虚力が循環する。
その虚力の内、一割も無い量を吸い出したリンナのマジカリング・デバイスは、彼女を――リンナを変身者として認め、搭載した虚力増幅装置が、吸い出した倍の量を、リンナの体内に還元する。
――息を吸い込み、暗鬼や災いに対する憎しみと怒りと、カルファスの死を悲しむ感情を込めて。
彼女はただ、音声コマンドを入力する為、ただ叫ぶのだ。
「変……身ッ!!」
〈HENSHIN〉
奏でられる機械音声と共に、リンナの全身を包む光と共に、爆発にも似た暴風がリンナから放たれ、周囲を襲う。
瞬間、リンナの短い白銀の髪が揺らめきながら黒へと色を染めていき、長さも腰ほどまでに伸びていく。
それが長丈によって一つ結びにまとめられ、さらにはそれまで着込んでいた黒のドレスは消し去られ、一瞬だけ彼女は生まれたままの姿を曝け出すも、しかしすぐに白衣と緋袴が着込まれ、ヒールも無くなり足袋と草履という履物に。
一言で形容すれば、それはクアンタの知る地球で言う【巫女装束】に分類されるのだろう。
最後に腰帯に一本の長太刀【滅鬼】を佩き、今それを乱雑に抜き放った瞬間、暴風が収まり、誰もが動きを止めて視界を奪われていた状況から脱すると――彼女へと視線を向けた。
――今のリンナの姿を、何と言葉にしてよいのか、誰も分からなかったが。
――唯一言えるとすれば、それは「美しい」という言葉に尽きるだろう。
涙をボロボロと流し、しかし毅然とした表情で前を向き、長太刀の切っ先を暗鬼へと向けて構える彼女の姿に、誰もが目を奪われていた。
「私にとってもあまりに想定外すぎるが――しかし名付けないわけにはいくまいッ!」
声は、木の枝に足をのせて立ち、リンナへと手で指し示す人物から。
皇族全員が知り、五災刃は知らぬ神、菊谷ヤエ(B)から放たれている。
「彼女は【姫巫女】の力を受け継ぎ、災いを討滅し得る救世主!
その名は――【災滅の魔法少女・リンナ】であるッ!」
「そうだよ。それがボク達の生まれた意味だからね」
「アンタには、感情があるんでしょ? そこに、意味を求めないの?」
「だからさ、意味を求める事自体が無意味なんだよ。
例えば人間は生きる為に食事をするけど、食事の内容は求めても、食事の意味を求めはしないだろう?
ただ人間の中にあるルーチンワークであり、食事をしなければただ飢え死ぬだけ。
ボク達も一緒さ。生まれた後、生きる為に虚力を収集し、収集した後にそれを放出して、災厄をまき散らし、死ぬ。それがボク達の生態というだけ。
――ああ、感情によって行動を左右させるかどうかを聞いているのなら、それも意味の無い事だ。
先ほどの例に例えれば、君たちは食事をする時に豚や牛等の肉を食らい、そうした食材に感謝する人もいれば、何も考えずに食らう人もいるだろう?
それと一緒で、人間に対して興味を抱きつつ虚力を食らうのと、興味も持たず食らうのと、それ位の違いしかない」
リンナとの語らいで、いい具合にカルファスの息が途絶えかかっている。このまま時間を稼いでいれば、まずはカルファスの命は奪える。
その後はリンナか、アメリアか、イレギュラーのクアンタを率先して殺すという手もある。シドニアがいるからリンナを殺すのには難易度が上がるが、それでも出来ない事ではない。
暗鬼の頭には、彼女への返答とは別に、そうした思考が交差し、笑みを浮かべた。
「リンナ、君はこの世に何を期待している?」
「期待……?」
「ああ。この世には、理由もない事柄など幾らでも転がっていて、それが時に誰へ無意識の悪意となって襲い掛かる。たったそれだけの事なのに、君はこの世へ下手に期待しちゃうから、絶望するんだよ。
ボク達災いは――君達人類を理由なく攻撃する、無意識の悪意でしか無いんだよ」
そろそろか、とリンナへの語らいを終え、今一番息の根を止める事が容易いクアンタの処分方法を考えようとした、その時。
死ぬ寸前、既に喋る事も難しい筈のカルファスが、ズリズリと身体を動かし、暗鬼の右足を、力無く掴んだ。
「へぇ、まだ動けるんだカルファス。君って肉体労働派には思えないんだけど」
「ふざ……ふざ、けんな……っ」
血を吐き出した結果、気管を開ける事が出来たと言わんばかりに顔を僅かに上げ、精いっぱい暗鬼を睨みつける表情は――暗鬼も少し、驚きを隠せなかった。
「ふざける……? ボクが何をふざけていると?」
「意味を……求める事が、無意味……? 違、う……人は、人間は……何かを求めるから……ここまで進化を、してきたんだ……ッ!」
暗鬼の着ている白いコートを掴み、無理矢理身体を起こしてよじ登るように、カルファスは否定の言葉を口にする。
「人でなしと、言われようが……、私は、人類の、先を見たい……ッ!
進化の先……、あらゆる意味を、求め抜いた先……人が、より良い生活を……送る為に……ッ!
それを、無意味なんて、言わせない……、貴方達なんかに……!」
「その価値観を、ボク達災いに押し付けられても困るんだけどね」
「ああ、そうだね……、だったら、そっちの価値観も……押し付けるな……っ!
リンナ、ちゃんは……そんな、貴方達を、無意味に傷付けちゃダメって……貴方達の、尊厳を傷つけまいと、私に怒った……!
正直、私にとっても、よくわかんないけど……、でも、そうして、見も知らない相手を……傷つけまいと、願うその心を……無意味だなんて、言わせない……言わせて、堪るか……ッ!」
多量の出血にも関わらず、カルファスは言葉を止める事はない。
それがなぜか――考えれば早い話で、暗鬼はクアンタを掴む手を振るって彼女を投げ飛ばし、代わりにカルファスの首根っこを掴んで、その左胸に、ピンと伸ばした左手の手刀を、突き刺すように振り込んだ。
「や、止め――ッ!!」
リンナの止める声もむなしく、手刀は無慈悲にも突き立てられた。
暗鬼がカルファスの体内から抜き出したのは未だ僅かに鼓動する心臓。
血まみれの手を気にする事無く、心臓の形を見据えた暗鬼は「やはりね」と吐き捨てた後、その心臓を握りつぶした。
「心臓に再生の術式を埋め込んでいたんだねぇ。道理でなかなか死なないと思ったよ。まぁ、これで死んだだろうけど」
首から手を離すと、糸の切れた人形のようにだらりと地に落ちて、もう動かないカルファスの姿へ――リンナは、最後まで伸ばしていた、しかしシドニアによって遮られていた手を、下ろす。
「あ……、ああ……ッ!」
間違いなく、死んだ。
カルファスという女が。
非人間的ではあったけれど、優しさを持ち得、リンナへ最後まで勇気づける言葉を投げかけてくれた、姉のような存在が。
「じゃ、次はクアンタかな」
もう、既に死んでいるカルファスに興味が無いと言わんばかりに、何とか身体を起こして立ち上がろうとするクアンタへ向けて歩を進めようとした、暗鬼の姿を見て。
リンナは頭の中で、何かが弾ける様な感覚を覚えた。
リンナの頬を、大粒の涙が流れて、顎から滴り落ちる、その瞬間。
――彼女は呆然とするシドニアの手を振り払い、暗鬼へと疾く駆け、その頬に向けて乱雑に、一撃の拳を叩き込んだ。
暗鬼からすれば、避ける必要も無い一撃である筈だった。
そうして殴りかかってくる事は分かっていたが、しかし彼女の攻撃が意味をなす筈もない。
頬で受け、彼女の手を掴み、彼女の命か虚力を奪ってやる算段まで、頭の中に浮かんでいた。
――である筈なのに。
暗鬼は、リンナが腕を思い切り振り切った瞬間、その勢いに圧されて殴り飛ばされたのだ。
近くの木に暗鬼の身体が衝突し、バキバキと音を奏でながら、根元から折れていく。それだけでどれだけの衝撃が暗鬼を襲ったかも想像に難くない。
「が、――ゴボ、ッ!」
殴られた衝撃で、痛みと共に唾液を吐き出しつつ、痛みを再生しようとする暗鬼だが、しかし再生が出来ない。
何があったかを、完全に理解できなかった。
――ただ分かった事が一つだけ。
リンナの拳には、虚力が込められていたのだ。
それも、今まで暗鬼が回収してきた人間すべての虚力を合わせても尚足りぬ程の、膨大な虚力が。
「な……なん、だ……リンナ、君、その虚力量は……ッ! それは、普段の君が持つ虚力の、数倍はあるだろう……!?」
「……オメェなんかに……オメェ等なんかに、これ以上誰かを傷つけさせるモンかよッ!!」
ずっとその手に握っていた、4.5世代型デバイスを、リンナは構えた。
「皆に笑顔で居て欲しい、ただそれだけを願った、カルファス様の想いを踏み躙ったオメェ等は――ぜってぇ許さねェ!!」
4.5世代型デバイスの頭頂部にあるスイッチを押したリンナ。
瞬間、彼女の脳へ直接殴りつけるかのような、情報の濁流という衝撃が一瞬走るものの、故に彼女は4.5世代型デバイス――否、既にマジカリング・デバイスと呼んで差し支えない力の、使い方を理解した。
〈Magicaring Device Priestess・MODE〉
表示される画面の文字等、リンナには読めない。それが地球における言語であることも知らない。ただの紋様にしか見えない。
だがそれで良い。その意味を今知る必要は無い。あとで誰かに聞けばいいだけだと、リンナは気にも留めなかった。
リンナの体内を、普段よりも数倍、否、既に十数倍と言っても良い程の虚力が循環する。
その虚力の内、一割も無い量を吸い出したリンナのマジカリング・デバイスは、彼女を――リンナを変身者として認め、搭載した虚力増幅装置が、吸い出した倍の量を、リンナの体内に還元する。
――息を吸い込み、暗鬼や災いに対する憎しみと怒りと、カルファスの死を悲しむ感情を込めて。
彼女はただ、音声コマンドを入力する為、ただ叫ぶのだ。
「変……身ッ!!」
〈HENSHIN〉
奏でられる機械音声と共に、リンナの全身を包む光と共に、爆発にも似た暴風がリンナから放たれ、周囲を襲う。
瞬間、リンナの短い白銀の髪が揺らめきながら黒へと色を染めていき、長さも腰ほどまでに伸びていく。
それが長丈によって一つ結びにまとめられ、さらにはそれまで着込んでいた黒のドレスは消し去られ、一瞬だけ彼女は生まれたままの姿を曝け出すも、しかしすぐに白衣と緋袴が着込まれ、ヒールも無くなり足袋と草履という履物に。
一言で形容すれば、それはクアンタの知る地球で言う【巫女装束】に分類されるのだろう。
最後に腰帯に一本の長太刀【滅鬼】を佩き、今それを乱雑に抜き放った瞬間、暴風が収まり、誰もが動きを止めて視界を奪われていた状況から脱すると――彼女へと視線を向けた。
――今のリンナの姿を、何と言葉にしてよいのか、誰も分からなかったが。
――唯一言えるとすれば、それは「美しい」という言葉に尽きるだろう。
涙をボロボロと流し、しかし毅然とした表情で前を向き、長太刀の切っ先を暗鬼へと向けて構える彼女の姿に、誰もが目を奪われていた。
「私にとってもあまりに想定外すぎるが――しかし名付けないわけにはいくまいッ!」
声は、木の枝に足をのせて立ち、リンナへと手で指し示す人物から。
皇族全員が知り、五災刃は知らぬ神、菊谷ヤエ(B)から放たれている。
「彼女は【姫巫女】の力を受け継ぎ、災いを討滅し得る救世主!
その名は――【災滅の魔法少女・リンナ】であるッ!」
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