魔法少女の異世界刀匠生活

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第十三章

災滅の魔法少女-03

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 カルファス領を抜け、アメリア領とカルファス領の領境付近の山岳であるリュート山脈郡で合流した、四体の災い。

  餓鬼は未だに気絶したままだが、暗鬼が彼女を抱えながら「いいご身分だよね」と吐き、一番体格の優れる斬鬼へと彼女の身体を渡す。


「斬鬼、餓鬼を連れて、先に愚母の所へ戻ってほしい。無いとは思うけど、ボクと豪鬼は一応尾行とかに気を付けながらアジトに戻るよ」

「了解した。では、失礼」


 一瞬でその場から消えた斬鬼の姿を見届けた後、豪鬼は「オレも疲れてるんだがな……」と文句をいいつつ「ボクだってリンナに殴られた個所が再生できないんだから」と同じく文句を口にする暗鬼と並走し、歩き出す。


「……まぁ、色々と問題は発生したし、今後も困った事にはなるかもしれないが……カルファス討伐は出来たな」

「うん。……まぁ、あのリンナには驚かされたけれど、結局の所『ただ強いだけの力』ならどうとでもなるんだ。結局はどう動くかも分からなくてイレギュラーなクアンタや、段違いに面倒ごとを引き起こすカルファスが厄介だったからね。彼女を殺せたのは一歩前進、って所かな」

「へぇ。私ってそんな、面倒ごとを引き起こす奴だと思われてるんだねぇ~。お姉さんちょっと気を付けないとダメかなぁ?」


 突如、声が聞こえた。それも、聞こえてはならない類の声で、豪鬼と暗鬼は互いに背中を合わせながら冷や汗を垂らし、周りを警戒する。


  ――しかし、声を発した人物の姿は、すぐに捉える事が出来た。


「何驚いてるの~? 殺した相手が生きてるのって、そんなに驚きかなぁ?

 私なら『何度殺してもOKなんて調べ放題やっふぅうっ!』って思っちゃうけどぉ」


 二者がこれから進もうとした先、その木々の隙間から姿を現した女性――。

  暗鬼が殺した筈のカルファスが、一人だけ。


「カルファス……ッ! 君は、確かに心臓を潰した、あの状態から復活は不可能なはずだ……!」


 カルファスは殺した時と違い、その着込んでいる王服に血痕等、貫かれた痕などは無く、小綺麗な彼女のまま現れた。

  ニッコリと笑みを浮かべ、自分が殺された事など分かっていない、気付けられた事も理解できていないと、言わんばかりに。


「うん、殺されたよ。魔術回路を無理矢理摘出した経験はあるけど、流石に心臓引き千切られた経験って無かったからちょっと新鮮だったよ、ありがとう」

「質問に答えてくれないか!?」


 暗鬼が普段の冷静な姿とは違い、声を荒げて彼女に問う。その姿は、普段他人を気遣う事などしない豪鬼が僅かに気遣いながら、一人で先行し過ぎないかを注視している程に。


「……まさか、偽物、って奴か?」

「違う違う。あの殺されたカルファス・ヴ・リ・レアルタは本物だよぉ」

「じゃあ、お前が偽物……? 彼女が殺された時、所謂政治的空白とやらを空けない為に用意された……的な」

「違うよぉ。まぁシドちゃんとかアメちゃんとかには用意されてるかもしれないケドね、私はそういうのすぐバレちゃうからしない」

「じゃあ何だって言うんだ!?」

「そうだなぁ……そこの説明するために、君達は【根源化】っていうのが何か知ってるかを聞こうかな?」


 根源化。

  それは、生命体の至るべき頂、と言っても良いだろう。


「個々に命や思考、感情を持ち得る【一】ではなく、統合された【全】なる生命体と言えば良いかなぁ。

 例えばこの星にいる人間が全員一つの塊になって統合されてしまえば、争いなんかは起きようがないし、思考回路も一つしか無ければ価値観の相違で相反する必要も無い。

  貴方達の長であるマリルリンデや、私たちの仲間であるクアンタちゃんは本来、元々【フォーリナー】っていう全から分離して先兵として送り込まれた存在、本体との接続が切れてしまった結果、個の存在として確立したに過ぎない」

「その話とアンタに、何の関係があるって言うんだ……?」

「カンタンだよ。私も、最初はその根源化を果たす為に行動をしていたと言ってるの」


 カルファス・ヴ・リ・レアルタは、言ってしまえば「魔術師的な思考と技術を用いて人類社会に永遠の幸福をもたらす」事を目的にしていて、かつては根源化こそが人類の至るべき終着点だと考えた。

  かつて母親に命を、その優秀な魔術回路を狙われ、その仕返しとして肉体労働者施設に更迭し、それを復讐として喜んでしまった自分の感情というものに、恐怖した。


  ――この世には、感情などという不確定要素はいらず、母や子などという価値観も必要などない。


  そうした考えを持って、彼女はまず根源化に何が必要かを考えた。


「そもそも方法が分からなかった。例えば全ての人間を液体化させてこの星にしみこませる事だって、思考は行われないけれど根源化と言っても相違ないし、今だから知ってるフォーリナーみたいな、一つに統合された流体金属になるという手もあるけれど、全人類の肉体を何かしらに変質させる方法は大魔術による神秘の体現しか他になく、それを実現し得るマナの量は流石に私じゃ貯蓄できないし、それこそ【源】を見つけ出すしか方法が無かった」


 結局は、カルファスも多くの魔術師と同じく、最終的には源へと至る必要があるのかもしれないと考えた。

  それはただ『最終的に源へ至る為に必要な研究』なのか『研究を実現するために源が必要』なのかの違いだけ。


「だから私が求めたのは何より時間。

  私の肉体は、長く見積もっても百年しか生き永らえる事は出来ない。ううん、魔術回路の劣化を考えたら、残りは長く見積もって十五年程度。

  これじゃあ別の方向性から根源化を実現し得る方法を見つける事も、根源化を果たし得る大魔術の使役に必要なマナを持ち得る【源】への到達も難しい」


  時間という概念から逃れる方法自体はいくつか存在する。

  一つは時間を止める事。これは難しくはあるが、出来ない事ではない。正確に言えば『時間から隔絶された空間を作り出す』というもので、現にコレをカルファスは……というより、カルファスの魔術回路を狙って襲い掛かってきた魔術師が独自魔術として作り上げていたから、その技術はありがたく頂戴した。

  一つは自分の老化を止める事。これは非常に難しい。これも『自分の時間を停止させる』事自体は可能であるものの、そうなると思考そのものが停止してしまう為、完全なる老化停止という事ならば、それこそ神にでもなる他に方法はない。

 一つは自分と同じ肉体、同じ魔術回路を持ち得るコピーを作り出す事。これは魔術と錬金術の観点を兼ね備える生体魔導機の開発によって比較的容易にはなったが、しかしそうする事によって思考回路が二つになって……否、三つになろうが四つになろうが五つになろうが、結局は同一の思考回路、同一の魔術回路を持ち得るのだから、並列処理を行える計算機を増やす程度にしかなり得ないので、根本的な解決にはならない。

  
  だから――カルファスが採用したのは、この三つの技術を掛け合わせて【自身のみの根源化を果たす】という方法であった。

  
「私たちは、オリジナルのカルファス・ヴ・リ・レアルタが持つ人格と思考を常に送信し続けられる受信魔導子機であり、その送信された情報を元に行動する【一】」


 暗鬼と豪鬼の背後に、目の前にいた筈のカルファスと同様の姿をした、二体目のカルファスが現れた。


「カルファス・ヴ・リ・レアルタの擬似魔術回路と擬似マナ貯蔵庫を体内に宿して、オリジナルのカルファスと同等のスペックを持ち得ている」

「同一の思考・同一のスペックを持ち得る……それは、確かにコピーではあるけれど、でもその人物と何ら変わらない、何ら劣る事のない、第二、第三と増え続けるカルファス・ヴ・リ・レアルタそのもの」


 三体目は、二者の上空から降り、四体目は暗鬼に隣接するかのようにフッと姿を現した。


「オリジナルのカルファス・ヴ・リ・レアルタは、時間の概念から切り離された固定空間の最下層でその肉体を封印され、その頭脳だけを働かせて、私たち受信魔導子機の操作を行っている……つまり生体計算機状態になってると言っても良いかな?」

「頭脳の老化が起こっても問題が無いように、脳のバックアップと擬似脳の製造は常に取り続けているし、なんであれば今の脳も二世代目だね」

「脳の劣化が起こっても、封印された肉体の脳だけを取り換えて、再起動可能なように調整されてるって事」


 五体目、六体目と……段々と増えていき、最終的には視認できぬ数のカルファスが暗鬼と餓鬼の逃げ道を埋めるように、彼らを見据えている。


  その光景は――本来人ならざるものである暗鬼と豪鬼の二人ですら、恐怖を覚える光景であった。


『こうして私は、オリジナルさえ殺されなければ何時でも蘇る事の出来るシステムを生み出した。

 私たちの肉体は自動的に生成され、必要があれば固定空間から必要な数が派遣される。

  表舞台に立つ私が殺されても、別の私がその立場になり、そしてそれまで培った経験や知識は全てオリジナルが所有している。


  コレが、私一人による根源化の体現であり――根源化の紛い物。


 何時かの先にある本当の根源化を果たす為に必要な、偉業を果たす為に必要な偉業だよ』
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