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第十四章
夢-02
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クアンタは目だけを閉じた状態で周囲の警戒を行っていた。
彼女に引っ付きながら眠るリンナの額に触れ、そこから身体能力値の計測を行う。
虚力量は、先日失った分を補強するように供給が行われており、この状態であれば多少虚力を頂戴しても問題は無いかと考えたクアンタは、リンナの首筋に軽く舌を這わせる。
「ん……っ」
「ちゅ……、ぷぁ」
完全に補給できるわけもなく、日常生活を歩む分、そして変身は不可能ながらも名無しの災いと戦う程度の戦闘は可能であるか、と言える分の虚力が自身にある事を確認した彼女は、未だにグッスリと眠るリンナをそのままにベッドを降りた。
まだ日は完全に昇っていないが、しかしアメリア皇居の庭で刀を振るう一人の青年と、隣り合うとよりその壮大さが分かる、巨大な筋肉があった。
イルメールと、サーニスである。
屋根裏部屋に二人、扉の前に三人、隠し扉に二人の黒子たちが隠れて災いを警戒している状態である。少しリンナから離れても問題が無いとしたクアンタは、アメリア皇居から出て、刀を振るって素振りを行うサーニスへ近付く。
「おはよう、クアンタ」
背後から近付いたはずであるのに、クアンタの存在に気付いたサーニスが、しかし彼女へ視線を向ける事無く素振りを続ける。
「おっすクアンタ」
イルメールはというと、素振りを行うサーニスの隣に立ち、刀を振るう彼のフォームを確認しているように思える。
が、そんな彼女はクアンタを確認すると彼女に近付き、軽く手を彼女の方に叩きつけようとしたが、しかし現状でイルメールの強い力によってダメージを受ける事は得策では無いと考えたクアンタは、避ける。
「イルメールとサーニス。随分と早いが」
「せめておはようと返すのが礼儀だぞクアンタ。……まぁいい」
最後に、風で舞った木の葉数枚を、一閃した刃で切り裂いた所で、サーニスは刃を鞘に納め、そこでようやくクアンタを見据えて……ホッと息をついた。
「良かった。脱いでないな」
「疑問、私は普段から脱いでいる訳ではないが」
「しているだろうが!? 自分はお前の肌を見ている回数の方が多いのだ!」
調子が狂う、と言わんばかりにため息をついたサーニスだったが、そこで彼女の目線がどこにも定まっておらず、ただ無表情の……否、殆ど感情らしい感情を覚えていない存在であると再認識する。
「……本当に感情を無くしているのだな」
「虚力は少々であるが、補給できた。もう少し余剰分が存在すれば、肉体維持の他に感情へ虚力を回す事が出来るようになると思われる」
「クアンタ、一つだけど聴いていいか?」
「何だろうかイルメール」
「虚力っつーのはよォ、早い話が感情のエネルギーなんだろ?」
「肯定」
「感情を強く動かされりゃ、増えたりするワケだ」
「一部肯定」
「じゃあ例えば、オメェをボコボコにして死ぬ程怖い目に合わせたら昨日のリンナみてェに感情爆発しねェの?」
手をワキワキさせて笑いながら怖い事を言う、とサーニスが目を細めるが、しかしあくまでイルメール流の冗談である。だがクアンタは首すらも振らず「一部否定」と返した。
「余剰エネルギーがある場合はその通りである。が、現在の私は男性の平均量より多い程の量しか持ち得ない為、身体構成程度の虚力量でしかない。この状態で感情の変化による虚力増は起こり得ない」
「つまり……えっと?」
「増やす為の元手となる虚力が無い、と表現すればいいか?」
首を傾げて何といえばいいか分かりかねているイルメールに代わり、サーニスが何とか言葉を捻り出すと、彼女はそれに頷いた。
「肯定。さらに現在の状態で、虚力の補給を行う方法は現状三つ。
一つは女性から虚力を収集する方法。だがこの方法はお師匠程に多く虚力を有していたとしても、一度に多量収集すると女性の身体機能に異常をきたす可能性がある為、長期に亘る補給が必要である。
一つは物に宿った虚力を収集する方法。現状ではお師匠の打った刀を食すという方法はあるが、しかし完成品の刀は対災いに用いる事が必要である為に非推奨。打ち損ねた刀からの補給も可能だが、現状手元にない状態である事に加え、捕食した質量分、必要な虚力量も増える為、これもまた非推奨。
一つは」
と、そこで言葉を止めたクアンタが、首を横に振る。
「残り一つは何だッてンだ?」
「忘れてくれて構わない。現状、有り得ない方法である」
「有り得るようにする方法はあるかもしれん。言うだけ言ってみるといいだろう」
サーニスとしても今のクアンタよりも、以前のように無感情そうに見えても彼女の個性が垣間見えていた状態の方が好ましいと感じているのか、感情を取り戻す方法に興味がある、と言った様子で伺うと、クアンタも頷いて残る一つの方法を口にした。
「他者から感情を受け取る方法である」
「……どういう意味だ?」
「端的に言えば、他者からの愛情や劣情、または増悪の感情等を向けられる事。虚力そのものの移植ではなく、虚力の基となる感情を受け取る事により、そこから虚力を補給する方法だ。
だが私は他者から好意を向けられる存在ではなく、また増悪の感情を向けられるような行為も現状行っていない為、ここから補給できたとしても少量が限度であると予想出来る」
「つまり、好きとか嫌いとか、そういう感情を他人から向けられりゃあ、それを虚力の発生源に出来るっつー事か。ややっこしいなぁ」
あまり頭を使う事が得意ではないイルメールがこれ以上聞いても方法が思いつかないと言わんばかりに頭を掻き、サーニスも「確かに自分では役に立ちそうにないな」と目を伏せた。
「でもよぉ、今のってコレじゃダメか?」
「コレとは」
イルメールがニシシ、と笑いながらクアンタの手を取り、その顎を人差し指で持ち上げると、自分の顔とクアンタの顔を近付け、あたかも口付けを行っているかのように演出する。
「好きだぜ、クアンタ」
「感情の移植により虚力を全体比率0.00001%分の補給を確認」
「少ねぇっ!?」
「確かに駄目ではないが、補給できる量としては期待が出来ない、という事である」
「ならメッチャ言いまくったりすりゃいいんじゃね? 増えてはいるんだろ? なぁクアンタ、オレはお前の事が好きだぜ! メチャクチャ好きだぜ!」
「おはようお師匠」
「ん?」
今、クアンタが挨拶をした意味が分からず、イルメールが顔を上げると――その意味を理解する。
そこには、顔を真っ赤にして口元を押さえ、あわわと慌てるようにしたリンナの姿があり、イルメールは「げっ」と反対に顔を青くした。
「い、イルメールって……そ、そうだったんだ……クアンタの事、好きだったんだ……ッ!」
「ち、違うぞっ!? オ、オレはリンナとのガキが欲しいンだゾ!? クアンタとの交尾は望んでねェからな!?」
「い、いや、嘘つく事じゃ、ないよ……そりゃ、それなりに複雑だけど……ま、まぁ……ひ、人を好きになるって、誰でも自由に与えられた権利じゃん……?」
「ホントに違ェ、っていうかリンナ、今顔スゲェ事になってるぞどういう感情表現だソレ!?」
一応表情としては眉を潜ませながら生暖かい目でイルメールを見据えつつ、しかし下唇が上唇から横にずれて顎がしゃくれていると表現すればいいのだが、リンナ自身も自分がどういう感情でどういう表情を浮かべればよいかも理解していないので、そのままクアンタへと近づく。
「おはよクアンタ。イルメールの想いに返事してあげて……」
「イルメールの好意には否定を」
「オォィ、そこの否定じゃなくてリンナの勘違いを否定してやれ!?」
「そして今のイルメールが言った言葉には肯定を。お師匠、イルメールは私に好意を抱いているわけではなく、実験を行っていたと証言する」
ようやくそこで、いつもの表情に戻りつつ、どういう意味かを理解できなかったリンナが首を傾げて問う。
「どういう事?」
「虚力の補給方法についての実験である」
リンナに先ほどサーニスとイルメールにした解答を説明し、ようやくそこでイルメールがクアンタへ言った言葉が、心からの告白で無いと知り、ホッと息をついた。
「そ、そっか。そういう事。へ、へぇ~……ひ、人から、好意を受け取れば……その、虚力の補給、出来るんだぁ」
「肯定。故に私への補給としては不適切と判断した」
「そ、そうなんだねぇ~、う、うん……で、でもいい方法なんじゃん? その、クアンタの事、好きな人、見つければいいんでしょ?」
少し顔を赤くして嬉しそうに、しかし視線をクアンタから外して何か言いたげにしているリンナだったが、そこでクアンタが首を横に振る。
「有り得ない。私は人間ではなく、フォーリナーから分離した個でしかない。そうした存在に好意を抱くのは通常有り得ない事である。まだ険悪な感情を向けられる事の方が有り得る」
「そ、そこまで言う……?」
「通常の人間は私という存在に好意を寄せる理由が無い。もしそうした人間がいれば、その人物は異常者だと言わざるを得ない」
「ぐ……っ!」
今の発言に、僅かながらだが口元を歪めて額に皺を寄せたリンナ。そうした彼女の変化にクアンタが気付き「どうした」とだけ問う。
「……ク、クアンタのあほぉっ! 鈍感女っ! アンタなんかその辺の石で足の小指打って悶絶でもしてろーっ!」
真っ赤な顔で瞳に涙を浮かべ、皇居内へと走り去ってしまったリンナの姿を見据え――クアンタは首を傾げる。
「理解不能ではあるが、しかし感情移植によって全体比率二パーセント分の虚力補給を確認」
「……クアンタ、オメェはもうちょっと人間ってェのを学べ?」
「ああ、アレではリンナさんがかわいそうだ……」
「……理解不能」
イルメールが珍しく可愛そうなモノを見る目でクアンタの肩を叩き、サーニスも同じく頷いたので、クアンタはより大きく、首を傾けた。
彼女に引っ付きながら眠るリンナの額に触れ、そこから身体能力値の計測を行う。
虚力量は、先日失った分を補強するように供給が行われており、この状態であれば多少虚力を頂戴しても問題は無いかと考えたクアンタは、リンナの首筋に軽く舌を這わせる。
「ん……っ」
「ちゅ……、ぷぁ」
完全に補給できるわけもなく、日常生活を歩む分、そして変身は不可能ながらも名無しの災いと戦う程度の戦闘は可能であるか、と言える分の虚力が自身にある事を確認した彼女は、未だにグッスリと眠るリンナをそのままにベッドを降りた。
まだ日は完全に昇っていないが、しかしアメリア皇居の庭で刀を振るう一人の青年と、隣り合うとよりその壮大さが分かる、巨大な筋肉があった。
イルメールと、サーニスである。
屋根裏部屋に二人、扉の前に三人、隠し扉に二人の黒子たちが隠れて災いを警戒している状態である。少しリンナから離れても問題が無いとしたクアンタは、アメリア皇居から出て、刀を振るって素振りを行うサーニスへ近付く。
「おはよう、クアンタ」
背後から近付いたはずであるのに、クアンタの存在に気付いたサーニスが、しかし彼女へ視線を向ける事無く素振りを続ける。
「おっすクアンタ」
イルメールはというと、素振りを行うサーニスの隣に立ち、刀を振るう彼のフォームを確認しているように思える。
が、そんな彼女はクアンタを確認すると彼女に近付き、軽く手を彼女の方に叩きつけようとしたが、しかし現状でイルメールの強い力によってダメージを受ける事は得策では無いと考えたクアンタは、避ける。
「イルメールとサーニス。随分と早いが」
「せめておはようと返すのが礼儀だぞクアンタ。……まぁいい」
最後に、風で舞った木の葉数枚を、一閃した刃で切り裂いた所で、サーニスは刃を鞘に納め、そこでようやくクアンタを見据えて……ホッと息をついた。
「良かった。脱いでないな」
「疑問、私は普段から脱いでいる訳ではないが」
「しているだろうが!? 自分はお前の肌を見ている回数の方が多いのだ!」
調子が狂う、と言わんばかりにため息をついたサーニスだったが、そこで彼女の目線がどこにも定まっておらず、ただ無表情の……否、殆ど感情らしい感情を覚えていない存在であると再認識する。
「……本当に感情を無くしているのだな」
「虚力は少々であるが、補給できた。もう少し余剰分が存在すれば、肉体維持の他に感情へ虚力を回す事が出来るようになると思われる」
「クアンタ、一つだけど聴いていいか?」
「何だろうかイルメール」
「虚力っつーのはよォ、早い話が感情のエネルギーなんだろ?」
「肯定」
「感情を強く動かされりゃ、増えたりするワケだ」
「一部肯定」
「じゃあ例えば、オメェをボコボコにして死ぬ程怖い目に合わせたら昨日のリンナみてェに感情爆発しねェの?」
手をワキワキさせて笑いながら怖い事を言う、とサーニスが目を細めるが、しかしあくまでイルメール流の冗談である。だがクアンタは首すらも振らず「一部否定」と返した。
「余剰エネルギーがある場合はその通りである。が、現在の私は男性の平均量より多い程の量しか持ち得ない為、身体構成程度の虚力量でしかない。この状態で感情の変化による虚力増は起こり得ない」
「つまり……えっと?」
「増やす為の元手となる虚力が無い、と表現すればいいか?」
首を傾げて何といえばいいか分かりかねているイルメールに代わり、サーニスが何とか言葉を捻り出すと、彼女はそれに頷いた。
「肯定。さらに現在の状態で、虚力の補給を行う方法は現状三つ。
一つは女性から虚力を収集する方法。だがこの方法はお師匠程に多く虚力を有していたとしても、一度に多量収集すると女性の身体機能に異常をきたす可能性がある為、長期に亘る補給が必要である。
一つは物に宿った虚力を収集する方法。現状ではお師匠の打った刀を食すという方法はあるが、しかし完成品の刀は対災いに用いる事が必要である為に非推奨。打ち損ねた刀からの補給も可能だが、現状手元にない状態である事に加え、捕食した質量分、必要な虚力量も増える為、これもまた非推奨。
一つは」
と、そこで言葉を止めたクアンタが、首を横に振る。
「残り一つは何だッてンだ?」
「忘れてくれて構わない。現状、有り得ない方法である」
「有り得るようにする方法はあるかもしれん。言うだけ言ってみるといいだろう」
サーニスとしても今のクアンタよりも、以前のように無感情そうに見えても彼女の個性が垣間見えていた状態の方が好ましいと感じているのか、感情を取り戻す方法に興味がある、と言った様子で伺うと、クアンタも頷いて残る一つの方法を口にした。
「他者から感情を受け取る方法である」
「……どういう意味だ?」
「端的に言えば、他者からの愛情や劣情、または増悪の感情等を向けられる事。虚力そのものの移植ではなく、虚力の基となる感情を受け取る事により、そこから虚力を補給する方法だ。
だが私は他者から好意を向けられる存在ではなく、また増悪の感情を向けられるような行為も現状行っていない為、ここから補給できたとしても少量が限度であると予想出来る」
「つまり、好きとか嫌いとか、そういう感情を他人から向けられりゃあ、それを虚力の発生源に出来るっつー事か。ややっこしいなぁ」
あまり頭を使う事が得意ではないイルメールがこれ以上聞いても方法が思いつかないと言わんばかりに頭を掻き、サーニスも「確かに自分では役に立ちそうにないな」と目を伏せた。
「でもよぉ、今のってコレじゃダメか?」
「コレとは」
イルメールがニシシ、と笑いながらクアンタの手を取り、その顎を人差し指で持ち上げると、自分の顔とクアンタの顔を近付け、あたかも口付けを行っているかのように演出する。
「好きだぜ、クアンタ」
「感情の移植により虚力を全体比率0.00001%分の補給を確認」
「少ねぇっ!?」
「確かに駄目ではないが、補給できる量としては期待が出来ない、という事である」
「ならメッチャ言いまくったりすりゃいいんじゃね? 増えてはいるんだろ? なぁクアンタ、オレはお前の事が好きだぜ! メチャクチャ好きだぜ!」
「おはようお師匠」
「ん?」
今、クアンタが挨拶をした意味が分からず、イルメールが顔を上げると――その意味を理解する。
そこには、顔を真っ赤にして口元を押さえ、あわわと慌てるようにしたリンナの姿があり、イルメールは「げっ」と反対に顔を青くした。
「い、イルメールって……そ、そうだったんだ……クアンタの事、好きだったんだ……ッ!」
「ち、違うぞっ!? オ、オレはリンナとのガキが欲しいンだゾ!? クアンタとの交尾は望んでねェからな!?」
「い、いや、嘘つく事じゃ、ないよ……そりゃ、それなりに複雑だけど……ま、まぁ……ひ、人を好きになるって、誰でも自由に与えられた権利じゃん……?」
「ホントに違ェ、っていうかリンナ、今顔スゲェ事になってるぞどういう感情表現だソレ!?」
一応表情としては眉を潜ませながら生暖かい目でイルメールを見据えつつ、しかし下唇が上唇から横にずれて顎がしゃくれていると表現すればいいのだが、リンナ自身も自分がどういう感情でどういう表情を浮かべればよいかも理解していないので、そのままクアンタへと近づく。
「おはよクアンタ。イルメールの想いに返事してあげて……」
「イルメールの好意には否定を」
「オォィ、そこの否定じゃなくてリンナの勘違いを否定してやれ!?」
「そして今のイルメールが言った言葉には肯定を。お師匠、イルメールは私に好意を抱いているわけではなく、実験を行っていたと証言する」
ようやくそこで、いつもの表情に戻りつつ、どういう意味かを理解できなかったリンナが首を傾げて問う。
「どういう事?」
「虚力の補給方法についての実験である」
リンナに先ほどサーニスとイルメールにした解答を説明し、ようやくそこでイルメールがクアンタへ言った言葉が、心からの告白で無いと知り、ホッと息をついた。
「そ、そっか。そういう事。へ、へぇ~……ひ、人から、好意を受け取れば……その、虚力の補給、出来るんだぁ」
「肯定。故に私への補給としては不適切と判断した」
「そ、そうなんだねぇ~、う、うん……で、でもいい方法なんじゃん? その、クアンタの事、好きな人、見つければいいんでしょ?」
少し顔を赤くして嬉しそうに、しかし視線をクアンタから外して何か言いたげにしているリンナだったが、そこでクアンタが首を横に振る。
「有り得ない。私は人間ではなく、フォーリナーから分離した個でしかない。そうした存在に好意を抱くのは通常有り得ない事である。まだ険悪な感情を向けられる事の方が有り得る」
「そ、そこまで言う……?」
「通常の人間は私という存在に好意を寄せる理由が無い。もしそうした人間がいれば、その人物は異常者だと言わざるを得ない」
「ぐ……っ!」
今の発言に、僅かながらだが口元を歪めて額に皺を寄せたリンナ。そうした彼女の変化にクアンタが気付き「どうした」とだけ問う。
「……ク、クアンタのあほぉっ! 鈍感女っ! アンタなんかその辺の石で足の小指打って悶絶でもしてろーっ!」
真っ赤な顔で瞳に涙を浮かべ、皇居内へと走り去ってしまったリンナの姿を見据え――クアンタは首を傾げる。
「理解不能ではあるが、しかし感情移植によって全体比率二パーセント分の虚力補給を確認」
「……クアンタ、オメェはもうちょっと人間ってェのを学べ?」
「ああ、アレではリンナさんがかわいそうだ……」
「……理解不能」
イルメールが珍しく可愛そうなモノを見る目でクアンタの肩を叩き、サーニスも同じく頷いたので、クアンタはより大きく、首を傾けた。
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