174 / 285
第十七章
神霊-01
しおりを挟む
ラルタ海域に存在する、レアルタ皇国とラドンナ王国の領海線近く。
そこは岩場等が多く点在する海域であるからして、座礁や衝突等を懸念し、通常は漁港などが近付く事はない場所である。
クアンタ達――イルメールが所有するクルージングボートにて訪れた面々がいる場所も、海面から複数の岩場が顔を出しており、通常この近くに船を近づけようとするはずもない。
だが、船舶は岩場の一つに思い切り船首の方から衝突し、形をへこませている。
変形した船首の近くに膝と手を付き、ガックリと項垂れるイルメール。
「ルラルナァアアア――ッ!!」
ちなみにルラルナはこのクルージングボートの名前らしい。
「大丈夫だよぉイル姉さま。沈まなきゃセーフっ」
「何がセーフだドアホッ!! 船の操縦はオレの数少ない趣味だぞ!? オメェに魔改造されたヤツじャ怖ェから自腹で買った船なのにブッ壊しやがッてッ!!」
「後で直すってばぁ」
「いいやオメェには任せねェ! 後でアルハットに設計図と小遣い渡して直して貰うッ!! もしくは業者に送るッ!!」
「なんでさぁ業者なんかに送ったらお金勿体ないじゃーん。アルちゃんより私の方が船は知ってるよぉ? 私に任せて、そろそろ観念して飛行機能付けよ? ね?」
「だァからオメェに任せたくないッつッてンじャねェかッ!!」
正直船の損傷より、カルファスとのやり取りで苛立ち船の甲板にて地団駄を踏むイルメールの足によって破壊されそうな状況を端目に、ヤエがアルハットの取り出した霊子端末に表示された海図の拡大情報を見て、タッチペンを付けた。
「この辺だな」
「この辺……岩場の密集している中央部分ね?」
岩場は隆起するように海から顔を出しているが、それが幾つも集中して起こっている場所が現在いる場所だ。その中央部となると船では行けず、泳いで向かうしかない。
「海底に本来トンネルがあるんだが、現在はトンネルの入り口は自然に密集した岩等によって閉じられてしまっている。それを破壊すれば中に入れる」
「……となると、もしかして」
「入り口の岩を破壊すると、海水によって勢いよくトンネル内に流されていく。同じく流されてくる岩や海底のゴミが襲い掛かってくることが予想される為、それに対処するのが第一関門だな」
「第一関門……という事は第二、第三の関門がある、という事?」
「察しが良い。トンネルの長さはかなりあるが、酸素ボンベの方は大丈夫か?」
「どの位の時間流されるか、にもよるけれど」
「んー、十五分から二十分位だな」
「……それ位なら、問題無いかな」
しかし、とアルハットは地図を見据える。
現在はイルメール領の領海内とはいえ、海底トンネルがどの方向に進んでいるかにもよるが、一応仮想敵国に想定されてしまっているラドンナ王国の領土内へと流されてしまった場合、一応領土侵攻という扱いをされてしまう可能性だってある。海底トンネルを抜けた先にある、人類が未だ到達していない筈の【源の泉】がある場所とはいえ、そうした懸念はするべきであろう。
「その辺は心配するな」
「どういう事?」
「行けば分かる」
相変わらず重要な事は何ひとつ言わない彼女にため息をつきながら、未だ言い争うカルファスとイルメールへ近付く。
「じゃあいいよ言わせてイル姉さま! どうして飛行機能いらないの!?」
「海をカッ飛ばしたい筈なのに空カッ飛ばす理由ねェだろうが!?」
「海も空も青いじゃんどっちも変わんないよっ!」
「変わるよッ!? オレ基本的に馬鹿だけどそこは譲らねェからな!? オレは海が好きなのッ! 空には別に今ン所興味ねェの! ていうかそもそも船にその機能付けるんじャなくて別の魔導機開発すりャいいじャねェか!」
「それリュナスに特許取られたんだもん……ッ!! あの利権大国……ッ!!」
「あの、姉さま方、そろそろ」
アルハットが間に入る事で、二者が言い争いを止める。
「アルハット……後で船直してくれ……設計図は今ねェケド……」
「あー……後で霊子移動で停泊所に持って行き、その後修理をしましょう。カルファス姉さまが触らないようにだけ注意します」
「アルちゃんまで何でお姉ちゃんに冷たいのーっ!?」
「自業自得です姉さま。さぁ、既にリンナとクアンタは準備をしていますよ」
「ちぇー……」
イルメールとカルファスに酸素ボンベと大きめのゴーグルを手渡す。本来であれば本格的な深水用装備を装着するのが得策ではあるが、この面々の場合は海底トンネルで動きを抑制しやすい深水用装備は好ましくない。
リンナへの酸素ボンベ取り付けを行ったクアンタは、ゴーグルを装着。元々呼吸が必要ではないクアンタにも一応予備の酸素ボンベを渡し、背負わせている。
「んしょ……っと、こんな感じかな、クアンタ」
「問題無いだろう。私とお師匠は準備完了だが、神さま、私たちはまだ変身しない方がいいのか?」
「ああ。クアンタの外装もリンナさんの聖道衣も、水中駆動には向かないからな。クアンタはいざという時に変身し、リンナさんを守れ」
「? 神さま、せーどーいって何?」
「リンナさんが変身してる時に着ている服ですよ」
「あー、あの白と赤の……そういえば、なんでアタシ変身すると黒髪になるんだろ?」
確かにリンナとクアンタは変身した方が身体機能は上がるが、しかし海中となると勝手が違う。それならば動きやすく魔術外装処理の施された水着での方が、生存率は上がる筈だとした。
「じゃあ、クアンタちゃんとリンナちゃんは、コレを首に巻いて。使い物になるかは分かんないけど」
カルファスがリンナとクアンタに手渡したのは、首元に巻くチョーカーだが、若干の厚みがある。
「コレは、通信機か?」
「うん、声帯から出されてる声の振動を電気信号に変換して脳に直接伝える脳伝導式だね。人の声以外は遮断する仕組みだけど、流石に海水の流れが早すぎると誤動作は起こしちゃうかも」
「んしょ……」
首に装着した通信機の感覚に僅かながら慣れないリンナ。そこで今まで手に持っていたマジカリング・デバイスを、クアンタに渡す。
「クアンタ、コレ持っててくれない? 流石に流されちゃいそう」
「了解」
リンナのマジカリング・デバイスを受け取り、胸元へ仕舞い込むように押し込むと、それはトプンと彼女の身体へと入っていく。クアンタの流体金属で構成されている身体に収納されているので、海水の勢いによって流されることは無いだろう。
「よし。全員、問題無いな」
装備の確認をして回るアルハット以外が頷き、時間差でアルハットも頷いた事を確認して、ヤエが先導して海中へと飛び込んだ。
他の面々は酸素ボンベを背負っている関係上、船の端に腰かけながら、背中から海中へと潜り込む。
全員の潜水が確認、中でも先ほど泳ぐ練習をしていたクアンタは大丈夫か、とアルハットとリンナが視線を向けるが、彼女も問題無く海中内でグッと親指を立てた。
『全員、聞こえるか?』
ヤエが首元の通信機に声を吹きかけると、全員の脳に直接声が届けられる。
頷いた事を確認して、ヤエは解説を続けた。
『アルハット、地図のデータは頭に叩き込んでいるな。イルメールを連れて先導し、イルメールが入り口を塞いでる岩を破壊しろ』
『イルメールは負傷しているが』
クアンタが声を挟むと、ヤエは首を横に。
『海中の抵抗がある中で一番動けるのは、水中での訓練に長けたイルメールしかいない。アルハットの錬成もカルファスの魔術も、海中では上手く作用しないからな』
例えばカルファスの魔術も、水中で全く作用しないというわけではないが、水中での魔術師用の場合、地上での魔術使用を想定した短縮設定が使用できず、詠唱魔術の使用をしなければならないが、詠唱魔術は使用に時間がかかるうえ、現在の海中ではなかなかに難しい。
そして錬金術においても物質変換を行う技能としてアルハットは天才と言っても良いが、その力量故に触れている海中の認識をしてしまい、錬成に海水を混合してしまう可能性が高い。さらにアルハットが得意とする水銀錬成も同様に、流れの速い海水内では流されてしまう可能性も考慮しなければならない。
更にはクアンタはリンナを守らねばならないし、リンナは水中駆動に向いていない。
以上の理由から、水中で動くとすると、まずはイルメール、次点でリンナをアルハットかカルファスに任せた上でのクアンタが、なるべく他の面々の安全を確保しなければならない。
『ならイルメールが海中を先導しろ。私は後方の守りに着く』
『オーライ。可愛い妹達とリンナに傷付けたらオメェをブッ壊すからなクアンタ』
『イルメールこそな』
アルハットがイルメールを連れて向かった先、指定されていた岩場と海底の間に、砂や岩場とは異なる、何やら色の異なる岩石が集結した、壁のような場所が見えた。
イルメールがその壁に軽く触れると共に、耳を当てる。
『イル姉さま、どう?』
『あー……僅かに海水が岩の向こう側に流れてるみてェな音が聞こえる。風の音も僅かに聞こえるから、向こうは空洞だな』
『という事は、あまり向こう側に海水は流れておらず、この岩場を壊したら、予想通り』
『ごぼーっ、と海水ごとトンネル内に流されていくぞ』
『それってさぁ、壁は遠隔で壊して海水が満たされるの待って、後々優雅に泳いでいくってのじゃダメなの?』
『ダメではないが、海水の流れに乗って行かないと移動距離的に三時間弱かかるぞ。それほど酸素ボンベが続くか?』
『え、ちょっと待って。という事は海水の流れメチャクチャ速くない? 本来は三時間弱かかる所を十五分から二十分位で到着できちゃうって事でしょ?』
『だから関門なんだよ。ホレ、イルメールさっさと壁を壊せ。そんでもって他の奴らは対ショック体勢な』
『はい――よおおっ!!』
海底に足を置き、海底トンネルを塞ぐ岩盤に右手の拳を突きつける様にしたイルメール。
目を閉じて、酸素ボンベから空気を吸い込み――力をただ闇雲に叩き込むのではなく、岩盤の脆い部分に力を注ぎ込む事で破壊する打突が、岩盤をガラリと破壊したが――結果として、海底トンネルに一同が穴へと飛び込んでいくように、吸い込まれる。
そこは岩場等が多く点在する海域であるからして、座礁や衝突等を懸念し、通常は漁港などが近付く事はない場所である。
クアンタ達――イルメールが所有するクルージングボートにて訪れた面々がいる場所も、海面から複数の岩場が顔を出しており、通常この近くに船を近づけようとするはずもない。
だが、船舶は岩場の一つに思い切り船首の方から衝突し、形をへこませている。
変形した船首の近くに膝と手を付き、ガックリと項垂れるイルメール。
「ルラルナァアアア――ッ!!」
ちなみにルラルナはこのクルージングボートの名前らしい。
「大丈夫だよぉイル姉さま。沈まなきゃセーフっ」
「何がセーフだドアホッ!! 船の操縦はオレの数少ない趣味だぞ!? オメェに魔改造されたヤツじャ怖ェから自腹で買った船なのにブッ壊しやがッてッ!!」
「後で直すってばぁ」
「いいやオメェには任せねェ! 後でアルハットに設計図と小遣い渡して直して貰うッ!! もしくは業者に送るッ!!」
「なんでさぁ業者なんかに送ったらお金勿体ないじゃーん。アルちゃんより私の方が船は知ってるよぉ? 私に任せて、そろそろ観念して飛行機能付けよ? ね?」
「だァからオメェに任せたくないッつッてンじャねェかッ!!」
正直船の損傷より、カルファスとのやり取りで苛立ち船の甲板にて地団駄を踏むイルメールの足によって破壊されそうな状況を端目に、ヤエがアルハットの取り出した霊子端末に表示された海図の拡大情報を見て、タッチペンを付けた。
「この辺だな」
「この辺……岩場の密集している中央部分ね?」
岩場は隆起するように海から顔を出しているが、それが幾つも集中して起こっている場所が現在いる場所だ。その中央部となると船では行けず、泳いで向かうしかない。
「海底に本来トンネルがあるんだが、現在はトンネルの入り口は自然に密集した岩等によって閉じられてしまっている。それを破壊すれば中に入れる」
「……となると、もしかして」
「入り口の岩を破壊すると、海水によって勢いよくトンネル内に流されていく。同じく流されてくる岩や海底のゴミが襲い掛かってくることが予想される為、それに対処するのが第一関門だな」
「第一関門……という事は第二、第三の関門がある、という事?」
「察しが良い。トンネルの長さはかなりあるが、酸素ボンベの方は大丈夫か?」
「どの位の時間流されるか、にもよるけれど」
「んー、十五分から二十分位だな」
「……それ位なら、問題無いかな」
しかし、とアルハットは地図を見据える。
現在はイルメール領の領海内とはいえ、海底トンネルがどの方向に進んでいるかにもよるが、一応仮想敵国に想定されてしまっているラドンナ王国の領土内へと流されてしまった場合、一応領土侵攻という扱いをされてしまう可能性だってある。海底トンネルを抜けた先にある、人類が未だ到達していない筈の【源の泉】がある場所とはいえ、そうした懸念はするべきであろう。
「その辺は心配するな」
「どういう事?」
「行けば分かる」
相変わらず重要な事は何ひとつ言わない彼女にため息をつきながら、未だ言い争うカルファスとイルメールへ近付く。
「じゃあいいよ言わせてイル姉さま! どうして飛行機能いらないの!?」
「海をカッ飛ばしたい筈なのに空カッ飛ばす理由ねェだろうが!?」
「海も空も青いじゃんどっちも変わんないよっ!」
「変わるよッ!? オレ基本的に馬鹿だけどそこは譲らねェからな!? オレは海が好きなのッ! 空には別に今ン所興味ねェの! ていうかそもそも船にその機能付けるんじャなくて別の魔導機開発すりャいいじャねェか!」
「それリュナスに特許取られたんだもん……ッ!! あの利権大国……ッ!!」
「あの、姉さま方、そろそろ」
アルハットが間に入る事で、二者が言い争いを止める。
「アルハット……後で船直してくれ……設計図は今ねェケド……」
「あー……後で霊子移動で停泊所に持って行き、その後修理をしましょう。カルファス姉さまが触らないようにだけ注意します」
「アルちゃんまで何でお姉ちゃんに冷たいのーっ!?」
「自業自得です姉さま。さぁ、既にリンナとクアンタは準備をしていますよ」
「ちぇー……」
イルメールとカルファスに酸素ボンベと大きめのゴーグルを手渡す。本来であれば本格的な深水用装備を装着するのが得策ではあるが、この面々の場合は海底トンネルで動きを抑制しやすい深水用装備は好ましくない。
リンナへの酸素ボンベ取り付けを行ったクアンタは、ゴーグルを装着。元々呼吸が必要ではないクアンタにも一応予備の酸素ボンベを渡し、背負わせている。
「んしょ……っと、こんな感じかな、クアンタ」
「問題無いだろう。私とお師匠は準備完了だが、神さま、私たちはまだ変身しない方がいいのか?」
「ああ。クアンタの外装もリンナさんの聖道衣も、水中駆動には向かないからな。クアンタはいざという時に変身し、リンナさんを守れ」
「? 神さま、せーどーいって何?」
「リンナさんが変身してる時に着ている服ですよ」
「あー、あの白と赤の……そういえば、なんでアタシ変身すると黒髪になるんだろ?」
確かにリンナとクアンタは変身した方が身体機能は上がるが、しかし海中となると勝手が違う。それならば動きやすく魔術外装処理の施された水着での方が、生存率は上がる筈だとした。
「じゃあ、クアンタちゃんとリンナちゃんは、コレを首に巻いて。使い物になるかは分かんないけど」
カルファスがリンナとクアンタに手渡したのは、首元に巻くチョーカーだが、若干の厚みがある。
「コレは、通信機か?」
「うん、声帯から出されてる声の振動を電気信号に変換して脳に直接伝える脳伝導式だね。人の声以外は遮断する仕組みだけど、流石に海水の流れが早すぎると誤動作は起こしちゃうかも」
「んしょ……」
首に装着した通信機の感覚に僅かながら慣れないリンナ。そこで今まで手に持っていたマジカリング・デバイスを、クアンタに渡す。
「クアンタ、コレ持っててくれない? 流石に流されちゃいそう」
「了解」
リンナのマジカリング・デバイスを受け取り、胸元へ仕舞い込むように押し込むと、それはトプンと彼女の身体へと入っていく。クアンタの流体金属で構成されている身体に収納されているので、海水の勢いによって流されることは無いだろう。
「よし。全員、問題無いな」
装備の確認をして回るアルハット以外が頷き、時間差でアルハットも頷いた事を確認して、ヤエが先導して海中へと飛び込んだ。
他の面々は酸素ボンベを背負っている関係上、船の端に腰かけながら、背中から海中へと潜り込む。
全員の潜水が確認、中でも先ほど泳ぐ練習をしていたクアンタは大丈夫か、とアルハットとリンナが視線を向けるが、彼女も問題無く海中内でグッと親指を立てた。
『全員、聞こえるか?』
ヤエが首元の通信機に声を吹きかけると、全員の脳に直接声が届けられる。
頷いた事を確認して、ヤエは解説を続けた。
『アルハット、地図のデータは頭に叩き込んでいるな。イルメールを連れて先導し、イルメールが入り口を塞いでる岩を破壊しろ』
『イルメールは負傷しているが』
クアンタが声を挟むと、ヤエは首を横に。
『海中の抵抗がある中で一番動けるのは、水中での訓練に長けたイルメールしかいない。アルハットの錬成もカルファスの魔術も、海中では上手く作用しないからな』
例えばカルファスの魔術も、水中で全く作用しないというわけではないが、水中での魔術師用の場合、地上での魔術使用を想定した短縮設定が使用できず、詠唱魔術の使用をしなければならないが、詠唱魔術は使用に時間がかかるうえ、現在の海中ではなかなかに難しい。
そして錬金術においても物質変換を行う技能としてアルハットは天才と言っても良いが、その力量故に触れている海中の認識をしてしまい、錬成に海水を混合してしまう可能性が高い。さらにアルハットが得意とする水銀錬成も同様に、流れの速い海水内では流されてしまう可能性も考慮しなければならない。
更にはクアンタはリンナを守らねばならないし、リンナは水中駆動に向いていない。
以上の理由から、水中で動くとすると、まずはイルメール、次点でリンナをアルハットかカルファスに任せた上でのクアンタが、なるべく他の面々の安全を確保しなければならない。
『ならイルメールが海中を先導しろ。私は後方の守りに着く』
『オーライ。可愛い妹達とリンナに傷付けたらオメェをブッ壊すからなクアンタ』
『イルメールこそな』
アルハットがイルメールを連れて向かった先、指定されていた岩場と海底の間に、砂や岩場とは異なる、何やら色の異なる岩石が集結した、壁のような場所が見えた。
イルメールがその壁に軽く触れると共に、耳を当てる。
『イル姉さま、どう?』
『あー……僅かに海水が岩の向こう側に流れてるみてェな音が聞こえる。風の音も僅かに聞こえるから、向こうは空洞だな』
『という事は、あまり向こう側に海水は流れておらず、この岩場を壊したら、予想通り』
『ごぼーっ、と海水ごとトンネル内に流されていくぞ』
『それってさぁ、壁は遠隔で壊して海水が満たされるの待って、後々優雅に泳いでいくってのじゃダメなの?』
『ダメではないが、海水の流れに乗って行かないと移動距離的に三時間弱かかるぞ。それほど酸素ボンベが続くか?』
『え、ちょっと待って。という事は海水の流れメチャクチャ速くない? 本来は三時間弱かかる所を十五分から二十分位で到着できちゃうって事でしょ?』
『だから関門なんだよ。ホレ、イルメールさっさと壁を壊せ。そんでもって他の奴らは対ショック体勢な』
『はい――よおおっ!!』
海底に足を置き、海底トンネルを塞ぐ岩盤に右手の拳を突きつける様にしたイルメール。
目を閉じて、酸素ボンベから空気を吸い込み――力をただ闇雲に叩き込むのではなく、岩盤の脆い部分に力を注ぎ込む事で破壊する打突が、岩盤をガラリと破壊したが――結果として、海底トンネルに一同が穴へと飛び込んでいくように、吸い込まれる。
0
あなたにおすすめの小説
異世界ニートを生贄に。
ハマハマ
ファンタジー
『勇者ファネルの寿命がそろそろやばい。あいつだけ人族だから当たり前だったんだが』
五英雄の一人、人族の勇者ファネルの寿命は尽きかけていた。
その代わりとして、地球という名の異世界から新たな『生贄』に選ばれた日本出身ニートの京野太郎。
その世界は七十年前、世界の希望・五英雄と、昏き世界から来た神との戦いの際、辛くも昏き世界から来た神を倒したが、世界の核を破壊され、1/4を残して崩壊。
残された1/4の世界を守るため、五英雄は結界を張り、結界を維持する為にそれぞれが結界の礎となった。
そして七十年後の今。
結界の新たな礎とされるべく連れて来られた日本のニート京野太郎。
そんな太郎のニート生活はどうなってしまう? というお話なんですが、主人公は五英雄の一人、真祖の吸血鬼ブラムの子だったりします。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
フィフティドールは笑いたい 〜謎の組織から支援を受けてるけど怪し過ぎるんですけど!?〜
狐隠リオ
ファンタジー
偉大なる魔女の守護者、それが騎士。
大勢の若者たちがその英雄譚に魅了され、その道へと歩み始めていた。
だけど俺、志季春護は騎士を目指しながらも他とは少し違かった。
大勢を護るために戦うのではなく、残された二人の家族を護るために剣を振るう。
妹の夏実と姉の冬華。二人を護るために春護は努力を続けていた。
だけど……二人とも失ってしまった。
死の淵を彷徨った俺は一人の少女と出会い、怪しげな彼女と契約を交わしたんだ。
契約によって得た新たな力を使い俺は進む。騎士の相棒である水花と共に。
好意的だけど底の知れないナニカの助力を受け、少年は強さを求める。
家族の仇を取るために、魔族を討滅するために。
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる