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第二十四章
愛-11
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クアンタがリンナの手を引き、地下室から出た時、廃墟が大きく揺れ動いている事に気が付いた。
「マズい」
そう言葉を発すると、彼女はリンナの身体を強く抱きしめて、近くのドアへ向けて身体を投げた。
木製ドアを叩き壊しながら、外へ何回転も地面を転がる事でその場から退避したクアンタとリンナ。それが功を奏した形になる。
既に廃墟と地下室の間にある床が、クアンタとリンナ、愚母との戦いによってダメージを受け、限界に近づいていたのだ。
メキメキと音を立てて崩れていく廃墟と共に、床も落ちて地下室は埋まってしまう。
そこにいたマリルリンデも愚母も、その瓦礫によって潰されてしまった事だろう。
クアンタはリンナの身体を抱いたままその場で起き上がり、彼女の身体についた土埃等を払っていく。
「怪我はないか、お師匠」
「怪我は……そりゃしまくってる、かな?」
苦笑と共に、リンナは震えていた足をもつれさせ、クアンタの身体に倒れ込んで、彼女の柔らかな胸に、顔を埋めさせた。
「……んん? クアンタ、アンタおっぱい小っちゃくなってない?」
「愚母との戦いで身体を刃へ錬成させたからな。一番優先順位が低めなのは胸部の脂肪だった」
「ちょっ! 一番優先しちゃダメな奴じゃんソレ!」
「……よくわからん」
「むぅー、じゃあどうやって育てるか分かんないけど、これからアンタのおっぱいをじっくり育ててくしかないかぁ」
「そんな事より」
「そんな事ォ!?」
「愚母の解き放った災厄が、どんな形で振り撒かれたかが分からない。警戒を怠らないようにしよう」
そこでリンナは「あ」と顔を赤めて、周りを見渡した。
愚母は確かに、戦いの終わりに災厄を振りまく為、虚力を放出した筈だ。
それは天高くまで伸びていったことを二人は感じていたが、それ以降の行方を感じ切れていなかった。
「餓鬼の時みたいに、地震とか火山の噴火とかが起きる、って事だよね?」
「どんな形で災厄が振り撒かれているかが分からない以上、警戒をするに越した事は」
と。
そう言葉を発している途中で。
――クアンタが一瞬びくりと震えた後、全身から力を抜けさせた。先ほどリンナがクアンタに身体を預けたように、今度は彼女がリンナへと身体を倒れさせたのだ。
「ちょ――クアンタ!」
声をかけるリンナ。だが彼女は糸の切れた人形、歯車を失った機械のようにピクリとも動かなくなった。
「く、クアンタ! クアンタ!」
何が起こっているかが分からない。コレが災厄? しかし愚母はリンナへ向けて恨みの言葉を放った。それに災いが放出して訪れるのは、個々に対する病気などではなく災害だと聞いている。故にクアンタだけが倒れる等おかしいと、リンナが回らない頭で考えていると。
やがて彼女は目を開き、ゆっくりと立ち上がる。
「よ……よかったぁ……クアンタ、大丈……っ」
言葉を発している最中に、クアンタがリンナの胸を強く押して、彼女を遠ざけた。
「お、おSHI、匠……」
「クアンタ……?」
「逃GEロ……NIげ路……ッ」
明らかに普通じゃない。発音もおかしく、リンナは彼女がなにを言っているかも、上手く理解できなかった。
「どうしちゃったのクアンタ、クアンタッ!」
言葉は、もうクアンタに届いていなかった。
彼女はゆっくりと目を開けると、その冷たく感情のこもっていない瞳でリンナを見据えた後、口を開いた。
「蟄千ォッ譛ォ繝翫Φ繝舌?1093820974縲∵磁邯壼ョ御コ」
(太陽系第三惑星・地球部隊所属子機、接続完了)
その言葉が放たれた瞬間、リンナは強い耳鳴りのような感覚に襲われた。
キィ――ンと響く音が脳に響きながらも、しかし音と共に言葉の意味が直接脳内に叩き込まれるような、そんな感覚だ。
「險倬鹸髢イ隕ァ髢句ァ九?ょュ千ォッ譛ォ繝翫Φ繝舌?1093820974縺ッ螟ェ髯ス邉サ隨ャ荳画ヱ譏溘?蝨ー逅?Κ髫頑園螻槫ュ先ゥ溘?∝挨縺ョ蝨ー逅?Κ髫頑園螻槫ュ先ゥ溘∈縺ョ繝??繧ソ霆「騾?幕蟋銀?ヲ窶ヲ螳御コ」
(太陽系第三惑星・地球部隊所属子機がこれまで当惑星にて収集したデータを、地球部隊所属別子機への転送開始……完了)
力が抜け、ろくに立っていられない。故にクアンタへ近付く事も出来なければ、脳に直接響く言葉の意味を考える余裕もない。
「莉・蠕後?∝ュ千ォッ譛ォ繝翫Φ繝舌?1093820974縺ッ隨ャ莠悟香荳我クュ髫翫↓莉ョ驟榊ア槭?ょ、ァ逶ョ讓吶?蝪ゥ蝓コ邉サ隨ャ莠梧ヱ譏溘ざ繝ォ繧オ縺ョ萓オ逡・縺ォ螟画峩」
(以後、太陽系第三惑星・地球部隊所属子機は第二十三中隊に仮配属。大目標・太陽系第三惑星をベースとした疑似星ゴルサの侵略に変更)
「ク、アンタ……!」
何とか発する事が出来た言葉。
しかし、その言葉と共に、クアンタは僅かに視線を、地に足を付けるリンナへ向ける。
その――冷たい目を。
「蟆冗岼讓呵ィュ螳壼、画峩繝サ閼?ィ√→縺ェ繧雁セ励k蟄伜惠縲∝ァォ蟾ォ螂ウ縲舌Μ繝ウ繝翫?代?譬ケ貅仙喧繧帝幕蟋九○繧」
(小目標設定・現状最脅威となり得る存在、姫巫女【リンナ】の根源化を開始せよ)
ゆっくりと、リンナへと近付いてくるクアンタ。
決して言葉を発する事なく、そのエクステンデッド・フォームのまま、リンナから渡された打刀【リュウセイ】を抜き放って。
「クアンタ……っ」
彼女は、決して答えない。
リュウセイを握り、リンナの腹部目掛けて振り込まれるが、そこでようやく身体を自由にすることが出来たリンナは地面を転がって刃を避け、荒れる息を整えながら、叫ぶ。
「クアンタ、どうしちゃったの――ッ!?」
彼女は、決して答えない。
相手が動くならばそれに合わせるだけだと言わんばかりに地を蹴り、リンナへと迫ろうとするクアンタに、リンナはただ目を瞑る事しか出来なかった。
〔リンナ――ッ!〕
そんな彼女を守る様に、空から飛来した、一人の少女がいた。
上空からクアンタへと向けて、何か光弾の様なものを放ち、彼女の動きを止めた後、リンナの身体を抱き寄せてその場から遠ざかる。
「……え、ある……アル、ハット……?」
リンナがアルハットの名を言うのに疑問符を付けた理由は、彼女の外観が関係している。
アルハット・ヴ・ロ・レアルタである事は、間違いない筈だ。
彼女と同じ顔、同じ髪をしている女性は、しかしその体内から光るように浮かび上がる、その薄緑色の光が印象強かった。
衣服も無く、彼女は裸体を晒している。
だが彼女から感じる虚力もアルハットと同質のモノで、リンナはそれがアルハットであると仮認識した。
冷や汗を流しながら、リンナを下ろすアルハット。
彼女は右腕を天へと掲げる。掲げた腕からバチバチと青白い光――錬成反応を放出すると、どこかからマジカリング・デバイスらしき物を出現させた。
デバイスをクアンタと思われる何かに向けて、言葉を放つ。
〔答えて。貴女はクアンタ? それとも――フォーリナー?〕
彼女は、答えない。
しかしリンナは、アルハットの言葉を受けて「え」と僅かに言葉を溢す。
〔……そう、答えないのね〕
アルハットはそう落胆するように言った後、マジカリング・デバイスの電源を入れ、左腕に浮かび上がった腕輪型デバイス……エクステンデッド・ブーストに、マジカリング・デバイスを刺し込んだ。
〈Devicerr・Extended・ON〉
〔変身〕
〈HENSHIN〉
機械音声と共に、アルハットが放った声。エクステンデッド・ブーストの指紋センサーに触れてアタッチメントを九十度回したアルハットは、その身を光に包んだ。
光が散ると、そこには斬心の魔法少女-クアンタ、エクステンデッド・フォーム-と同様の姿をした、魔法少女へ変身を遂げたアルハットの姿があり、リンナはもう、何が起こっているかを理解する事も出来ず、思った言葉を口にする。
「あ、アルハット……? い、いつ、魔法少女、に……?」
「ごめんなさいリンナ、それは後にして」
アルハット――変身を遂げ、錬成の魔法少女・アルハット-エクステンデッド・フォーム-へと成り代わった彼女は、背部のリボン型スラスターユニットを吹かしながらクアンタへと接近し、彼女の顔面を殴りつける。
「あ、アルハット――ッ!」
何故クアンタを、と叫ぼうとするリンナだったが、しかしアルハットはリンナの言葉を受け止められる状況にない。
むしろ、追い詰められているのは、アルハットの方だ。
クアンタの頬を殴りつけた右腕の拳から、ピシピシと音を立てて、少しずつ【侵蝕】されている感覚を覚えたアルハットは、躊躇う事無く自分の右前腕を左の手刀で切り落として、彼女から遠ざかる。
「チッ!」
舌打ちをしたアルハットはリンナへと近付いて、彼女の身体を持ち上げる。
「あ、アルハット、腕! 腕が落ちちゃってる! な、なんで腕斬っちゃったのさッ!? て、ていうかクアンタ! クアンタどうしちゃったのッ!?」
「今の私が、フォーリナーに侵蝕されるわけにはいかないの。……貴女もね」
「クアンタッ! クアン」
霊子端末を取り出したアルハットによって、どこかへと霊子転移されていく、アルハットとリンナ。
その様子を見据えていたクアンタらしきモノはゆっくりと周りを見渡したが、その周辺には森林以外に何もない事を確認。
「蟆冗岼讓吶?√Ο繧ケ繝医?ゆサ・蠕後?蟆冗岼讓吶?騾イ陦後→蜷梧凾縺ォ螟ァ逶ョ讓吶?騾イ陦後r髢句ァ九☆繧」
(小目標、ロスト。以後は小目標の進行と同時に大目標の進行を開始する)
クアンタらしきものは腕を広げて、天へ掲げる。
まるで自分の存在はここだと示すかのように。
そうしていると、リュート山脈全土を覆う程に巨大な塊が、ゆっくりと天から飛来してきた。
――その飛来した、純銀の輝きを放つ塊こそが。
流体金属生命体【フォーリナー】である。
**
「……来ちまったか」
腹部から未だ赤い血を流し続けている男――ガルラは、空に浮かぶ高位なる存在を見据えて、小さく呟いた。
「皇族の皆さん方……リンナ……オメェ等に、世界の命運はかかってるぜ」
「マズい」
そう言葉を発すると、彼女はリンナの身体を強く抱きしめて、近くのドアへ向けて身体を投げた。
木製ドアを叩き壊しながら、外へ何回転も地面を転がる事でその場から退避したクアンタとリンナ。それが功を奏した形になる。
既に廃墟と地下室の間にある床が、クアンタとリンナ、愚母との戦いによってダメージを受け、限界に近づいていたのだ。
メキメキと音を立てて崩れていく廃墟と共に、床も落ちて地下室は埋まってしまう。
そこにいたマリルリンデも愚母も、その瓦礫によって潰されてしまった事だろう。
クアンタはリンナの身体を抱いたままその場で起き上がり、彼女の身体についた土埃等を払っていく。
「怪我はないか、お師匠」
「怪我は……そりゃしまくってる、かな?」
苦笑と共に、リンナは震えていた足をもつれさせ、クアンタの身体に倒れ込んで、彼女の柔らかな胸に、顔を埋めさせた。
「……んん? クアンタ、アンタおっぱい小っちゃくなってない?」
「愚母との戦いで身体を刃へ錬成させたからな。一番優先順位が低めなのは胸部の脂肪だった」
「ちょっ! 一番優先しちゃダメな奴じゃんソレ!」
「……よくわからん」
「むぅー、じゃあどうやって育てるか分かんないけど、これからアンタのおっぱいをじっくり育ててくしかないかぁ」
「そんな事より」
「そんな事ォ!?」
「愚母の解き放った災厄が、どんな形で振り撒かれたかが分からない。警戒を怠らないようにしよう」
そこでリンナは「あ」と顔を赤めて、周りを見渡した。
愚母は確かに、戦いの終わりに災厄を振りまく為、虚力を放出した筈だ。
それは天高くまで伸びていったことを二人は感じていたが、それ以降の行方を感じ切れていなかった。
「餓鬼の時みたいに、地震とか火山の噴火とかが起きる、って事だよね?」
「どんな形で災厄が振り撒かれているかが分からない以上、警戒をするに越した事は」
と。
そう言葉を発している途中で。
――クアンタが一瞬びくりと震えた後、全身から力を抜けさせた。先ほどリンナがクアンタに身体を預けたように、今度は彼女がリンナへと身体を倒れさせたのだ。
「ちょ――クアンタ!」
声をかけるリンナ。だが彼女は糸の切れた人形、歯車を失った機械のようにピクリとも動かなくなった。
「く、クアンタ! クアンタ!」
何が起こっているかが分からない。コレが災厄? しかし愚母はリンナへ向けて恨みの言葉を放った。それに災いが放出して訪れるのは、個々に対する病気などではなく災害だと聞いている。故にクアンタだけが倒れる等おかしいと、リンナが回らない頭で考えていると。
やがて彼女は目を開き、ゆっくりと立ち上がる。
「よ……よかったぁ……クアンタ、大丈……っ」
言葉を発している最中に、クアンタがリンナの胸を強く押して、彼女を遠ざけた。
「お、おSHI、匠……」
「クアンタ……?」
「逃GEロ……NIげ路……ッ」
明らかに普通じゃない。発音もおかしく、リンナは彼女がなにを言っているかも、上手く理解できなかった。
「どうしちゃったのクアンタ、クアンタッ!」
言葉は、もうクアンタに届いていなかった。
彼女はゆっくりと目を開けると、その冷たく感情のこもっていない瞳でリンナを見据えた後、口を開いた。
「蟄千ォッ譛ォ繝翫Φ繝舌?1093820974縲∵磁邯壼ョ御コ」
(太陽系第三惑星・地球部隊所属子機、接続完了)
その言葉が放たれた瞬間、リンナは強い耳鳴りのような感覚に襲われた。
キィ――ンと響く音が脳に響きながらも、しかし音と共に言葉の意味が直接脳内に叩き込まれるような、そんな感覚だ。
「險倬鹸髢イ隕ァ髢句ァ九?ょュ千ォッ譛ォ繝翫Φ繝舌?1093820974縺ッ螟ェ髯ス邉サ隨ャ荳画ヱ譏溘?蝨ー逅?Κ髫頑園螻槫ュ先ゥ溘?∝挨縺ョ蝨ー逅?Κ髫頑園螻槫ュ先ゥ溘∈縺ョ繝??繧ソ霆「騾?幕蟋銀?ヲ窶ヲ螳御コ」
(太陽系第三惑星・地球部隊所属子機がこれまで当惑星にて収集したデータを、地球部隊所属別子機への転送開始……完了)
力が抜け、ろくに立っていられない。故にクアンタへ近付く事も出来なければ、脳に直接響く言葉の意味を考える余裕もない。
「莉・蠕後?∝ュ千ォッ譛ォ繝翫Φ繝舌?1093820974縺ッ隨ャ莠悟香荳我クュ髫翫↓莉ョ驟榊ア槭?ょ、ァ逶ョ讓吶?蝪ゥ蝓コ邉サ隨ャ莠梧ヱ譏溘ざ繝ォ繧オ縺ョ萓オ逡・縺ォ螟画峩」
(以後、太陽系第三惑星・地球部隊所属子機は第二十三中隊に仮配属。大目標・太陽系第三惑星をベースとした疑似星ゴルサの侵略に変更)
「ク、アンタ……!」
何とか発する事が出来た言葉。
しかし、その言葉と共に、クアンタは僅かに視線を、地に足を付けるリンナへ向ける。
その――冷たい目を。
「蟆冗岼讓呵ィュ螳壼、画峩繝サ閼?ィ√→縺ェ繧雁セ励k蟄伜惠縲∝ァォ蟾ォ螂ウ縲舌Μ繝ウ繝翫?代?譬ケ貅仙喧繧帝幕蟋九○繧」
(小目標設定・現状最脅威となり得る存在、姫巫女【リンナ】の根源化を開始せよ)
ゆっくりと、リンナへと近付いてくるクアンタ。
決して言葉を発する事なく、そのエクステンデッド・フォームのまま、リンナから渡された打刀【リュウセイ】を抜き放って。
「クアンタ……っ」
彼女は、決して答えない。
リュウセイを握り、リンナの腹部目掛けて振り込まれるが、そこでようやく身体を自由にすることが出来たリンナは地面を転がって刃を避け、荒れる息を整えながら、叫ぶ。
「クアンタ、どうしちゃったの――ッ!?」
彼女は、決して答えない。
相手が動くならばそれに合わせるだけだと言わんばかりに地を蹴り、リンナへと迫ろうとするクアンタに、リンナはただ目を瞑る事しか出来なかった。
〔リンナ――ッ!〕
そんな彼女を守る様に、空から飛来した、一人の少女がいた。
上空からクアンタへと向けて、何か光弾の様なものを放ち、彼女の動きを止めた後、リンナの身体を抱き寄せてその場から遠ざかる。
「……え、ある……アル、ハット……?」
リンナがアルハットの名を言うのに疑問符を付けた理由は、彼女の外観が関係している。
アルハット・ヴ・ロ・レアルタである事は、間違いない筈だ。
彼女と同じ顔、同じ髪をしている女性は、しかしその体内から光るように浮かび上がる、その薄緑色の光が印象強かった。
衣服も無く、彼女は裸体を晒している。
だが彼女から感じる虚力もアルハットと同質のモノで、リンナはそれがアルハットであると仮認識した。
冷や汗を流しながら、リンナを下ろすアルハット。
彼女は右腕を天へと掲げる。掲げた腕からバチバチと青白い光――錬成反応を放出すると、どこかからマジカリング・デバイスらしき物を出現させた。
デバイスをクアンタと思われる何かに向けて、言葉を放つ。
〔答えて。貴女はクアンタ? それとも――フォーリナー?〕
彼女は、答えない。
しかしリンナは、アルハットの言葉を受けて「え」と僅かに言葉を溢す。
〔……そう、答えないのね〕
アルハットはそう落胆するように言った後、マジカリング・デバイスの電源を入れ、左腕に浮かび上がった腕輪型デバイス……エクステンデッド・ブーストに、マジカリング・デバイスを刺し込んだ。
〈Devicerr・Extended・ON〉
〔変身〕
〈HENSHIN〉
機械音声と共に、アルハットが放った声。エクステンデッド・ブーストの指紋センサーに触れてアタッチメントを九十度回したアルハットは、その身を光に包んだ。
光が散ると、そこには斬心の魔法少女-クアンタ、エクステンデッド・フォーム-と同様の姿をした、魔法少女へ変身を遂げたアルハットの姿があり、リンナはもう、何が起こっているかを理解する事も出来ず、思った言葉を口にする。
「あ、アルハット……? い、いつ、魔法少女、に……?」
「ごめんなさいリンナ、それは後にして」
アルハット――変身を遂げ、錬成の魔法少女・アルハット-エクステンデッド・フォーム-へと成り代わった彼女は、背部のリボン型スラスターユニットを吹かしながらクアンタへと接近し、彼女の顔面を殴りつける。
「あ、アルハット――ッ!」
何故クアンタを、と叫ぼうとするリンナだったが、しかしアルハットはリンナの言葉を受け止められる状況にない。
むしろ、追い詰められているのは、アルハットの方だ。
クアンタの頬を殴りつけた右腕の拳から、ピシピシと音を立てて、少しずつ【侵蝕】されている感覚を覚えたアルハットは、躊躇う事無く自分の右前腕を左の手刀で切り落として、彼女から遠ざかる。
「チッ!」
舌打ちをしたアルハットはリンナへと近付いて、彼女の身体を持ち上げる。
「あ、アルハット、腕! 腕が落ちちゃってる! な、なんで腕斬っちゃったのさッ!? て、ていうかクアンタ! クアンタどうしちゃったのッ!?」
「今の私が、フォーリナーに侵蝕されるわけにはいかないの。……貴女もね」
「クアンタッ! クアン」
霊子端末を取り出したアルハットによって、どこかへと霊子転移されていく、アルハットとリンナ。
その様子を見据えていたクアンタらしきモノはゆっくりと周りを見渡したが、その周辺には森林以外に何もない事を確認。
「蟆冗岼讓吶?√Ο繧ケ繝医?ゆサ・蠕後?蟆冗岼讓吶?騾イ陦後→蜷梧凾縺ォ螟ァ逶ョ讓吶?騾イ陦後r髢句ァ九☆繧」
(小目標、ロスト。以後は小目標の進行と同時に大目標の進行を開始する)
クアンタらしきものは腕を広げて、天へ掲げる。
まるで自分の存在はここだと示すかのように。
そうしていると、リュート山脈全土を覆う程に巨大な塊が、ゆっくりと天から飛来してきた。
――その飛来した、純銀の輝きを放つ塊こそが。
流体金属生命体【フォーリナー】である。
**
「……来ちまったか」
腹部から未だ赤い血を流し続けている男――ガルラは、空に浮かぶ高位なる存在を見据えて、小さく呟いた。
「皇族の皆さん方……リンナ……オメェ等に、世界の命運はかかってるぜ」
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