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第二章

生徒会-01

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「おはようお兄ちゃん」


 朝・七時半。オレ――城坂織姫が目を醒ましてリビングへと向かうと、そこには妹である城坂楠が、制服の上にエプロンをまとい、朝食を作る光景が目に入った。


「おはよう、楠」


 短く返事を返しながら、洗面台へと向かって身支度を整えている間に漂う、美味しそうな香りが、寝起きの身体を覚醒へと導いていく。歯を磨きながら本日の朝食が洋食だろうか和食だろうか、等と考えつつ、今口をゆすいだ。

  洗面台を出て椅子へ腰かけると、目の前に置かれる朝食。スクランブルエッグとソーセージ、簡単なサラダで彩られた朝食を見て、オレは楠へと笑みを浮かべた。


「ありがと。明日はオレが作るな」

「ううん! お兄ちゃんの美味しそうな顔を見るのが、私は大好きだもん」


 嬉しい事を言ってくれる妹だ。初めて出会った最初の数日こそ、ギクシャクした態度でお互いに距離を計っていたオレ達だが、今では立派な家族として、接する事が出来ている……と、思う。

  今まで家族と言うものを知らないからこそ、オレの想像でしかないのだが、それでも良いと思っていた。

  オレはもう、米軍に所属する兵士では無い。一人の、十五歳の男なのだ。今まで戦ってきたのだから、これからは家族との触れ合いを楽しんでも良いじゃないか。


「頂きます」

「うん。召し上がれ」


 ニッコリと笑いながら、美味しい朝食を食べるオレの事を見つめる楠。

  今オレは、おそらく幸せな時間を過ごしている筈なのだ。
  

  **

  
  現地時間、2089年6月30日、1205時。日本AD総合学園諸島。AD総合学園高等部・廊下。


「ねぇねぇ姫ちゃん姫ちゃん」

「姫ちゃんは止めろって何回言ったら分かるんだよ哨」

「えー、姫ちゃんの方が言いやすいし、何より可愛いじゃん」

「オレはこの名前が嫌いなんだよ! 子供の頃は普段英語だったから意味知らなかったけど、向こうで日本語習った時は本当に恥ずかしかったんだからな」

「それは置いといて姫ちゃん。昨日の事なんだけど、姫ちゃんが使い慣れてるかなって思って【ポンプ付き】の外部ブースターを装着できるように設定を組んでみたんだ」

「……うん、それは良さそうだな。あれがあれば乱暴な出力で滑空どころか飛行もできるし」

「で、昨日高田重工に追加装備申請と改修申請出したら、申請受理完了予定日が十五年後の今日になってた」

「ほー。今ん所、オレの歳と同じだな」

「そーだね。と言うわけで十五年後までは高機動パックで頑張ってね」

「ヘタな希望持たせんなよ……」


 昼休憩の時間に廊下を歩きながら、オレは、パートナー契約を結んでいる整備士の卵、明宮哨との会話を楽しんでいた。


  この学校に来て数日が経過。今では授業もそれなりに楽しんでやっているし、日本での生活にも慣れてきた。何より、今までオレには同年代の友達と言うものが居なかったから、こうして学校に通い、友達と話し、勉学に励む事の楽しさに気付いていたのだ。


  ……とは言っても、友達は少ないが。


「おい、アイツ」

「ああ。武兵隊の隊長を倒したらしいぜ」

「あの子、神崎さんに因縁つけて、決闘申し込んだって子でしょ?」

「しかも勝っちゃうなんて。何か怖いかも」


 ……などと言った、オレの話題が着色と共に悪い方向へと向いて、学園内に立ち込めているからだ。


「あの武兵隊の……えっと、神崎だっけ。アイツってそんなに有名なのか?」

「有名どころか、神崎先輩って二年生なのに、学園のトップから数えた方が早い位の実力者なんだよ。その人と戦って勝ったんだから、この程度の噂はしょうがないよ」

「まぁ確かに、アイツは高火力パックで素早い動きを見せてたし、すげぇ優秀なパイロットだとは思うけど」


 オレと決闘を行った、二年Aクラスに所属する先輩、神崎紗彩子の事を思い出す。

 秋風のプラスデータで、主に使用されるのは三つ。

  一つはオレが主に使用する【高機動パック】で、滑空が出来る以外は基本的に器用貧乏なプラスデータ。

  一つは授業で幾度か使った【高速戦パック】で、これは脚部に外付けのキャタピラユニットを取り付けた上で、外部スラスターも高出力の物を使用してる為、地面を駆けるスピードが素早く、陸戦兵器としての特性を強化させたプラスデータ。


 そして残る一つは、先日神崎が装備していた【高火力パック】。

 これは115㎜滑腔砲という戦車砲にも並ぶ高火力砲を装備し、後方支援にて敵の戦力を分散・破壊させる目的を持つパックだ。

 高火力故に機体を自立させながら稼働する秋風を安定させる為、脚部にウェイトの役目を持つ外部装甲を取り付けている。またそこから鉤爪を展開させる事により横転・転倒などを防ぐ役割もある。


  要するに機体がメチャクチャ重いから、操縦者にかなりの負担を強いる事になるのだが、神崎はまるで負担を感じさせぬような動きでオレに応戦をしていた。彼女が他のパックを装備していたのならば、もしかしたらもっといい勝負が出来たかもしれない。


「神崎より強い奴はいるのか?」

「いるよ。生徒会の久瀬先輩とか、一年生だけど高機動パックを装備させたら負け無しの島根さんとか」

「へぇ……一度、戦ってみたいな」


 昔からの悪い癖なのだが、オレは相手がAD乗りの場合「戦って相手を知ろう」とする習性がある。戦う事によって互いの実力を理解し、背中を預けるに値するかを計る為だ。

  戦場では僅かな技術の差が勝敗を決するので、常日頃から味方の実力には目を光らせていたのだ。
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