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第七章

格納庫にて-01

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 時限式爆弾は実にシンプルな作りであった。

 現場へ出向き、時限爆弾の解体をまず行ったオレは、心配する楠と村上を格納庫前に一旦置いたまま、一人の少女から指示を受けていた。


「姫ちゃん、次そっちの信管ね」

「おう」


 茶色の髪を全て逆上げた、中性的な顔立ちが印象強い作業着の女の子。彼女はオレのパートナー技師であり、一年整備科に所属する明宮哨である。


「しかし村上君ってば、運悪すぎでしょ。いいや、逆に運がいいのかも?」

「そ、そうかねぇ。流石に爆弾見つけた時は肝を冷やしたぜ……」

「早い段階で見つけられたのは僥倖でしたね。爆発まで五時間あったとは言え、それまでに見つけていなかったら、知らず知らず観客いる中……ボカン、でしたから」


 外なので何時誰が聞いているか分からないという理由から、楠の口調は会長モードだ。

 デジタル電波時計のアラーム接続を爆弾の信管に繋げているだけのシンプルな作り故、簡易的な爆発物処理が出来るオレ一人でも解体は容易だった。

 おまけにADに搭載されている電磁誘導装置を流用した電波発生装置を哨に用意して貰う事によって妨害電波を発し、アラームと信管を接続する無線を止めている。操作を間違えても電流が流れる事も無いので、爆発もあり得ない。


「――終了」


 火薬の仕込まれている鉄パイプをゆっくりと取り出し、それを哨に預ける。彼女は特定危険物――つまり火薬を扱う資格も持っているので、後は任せて平気だろう。


「助かったぜ姫っ」

「安心すんな。正直あれ一個だけならあんまり威力は出ない。数人殺すのがやっと程度だからな。まだある筈だ」

「それでも十分な威力では?」

「楠、前回のテロ事件。ミィリスの目的は何だった?」

「秋風及び雷神の鹵獲・情報収集と見受けられます」

「今回の目的は、何が予想できる?」

「……愉快犯、という可能性は」


 まぁそれもあるな。もしそうであれば一番嬉しい。無駄な被害を抑える事が出来る。


「オレはこの爆弾が、ミィリスと同じく、新ソ連系のテロ組織による設置だと見てる。多分そろそろ――」


 と、その時にオレが持つ携帯端末が震えた。耳に当てずスピーカーモードにして、通話を開始。


「もしもし」

『城坂織姫だな』

「そう言うアンタは、爆弾魔――で、いいのか?」


 楠を始め、村上も驚いている。哨は「やっぱり」と言わんばかりの表情である。


「何個仕掛けた」

『総計二十三個。既に一個は無力化されてしまっていると思うが、全て同じ仕掛けだ。見つけられれば、そう解体は難しくない筈さ』

「律儀にあれ二十三個も作ったのか。何モンだ?」

『【レイス】――そう言えば、君は分かるだろう? 元アーミー隊の隊長殿』


 ここで聞こえてくる情報をまとめよう。

  聞こえる声は、変声機のような物を用いたくぐもった声。しかし口調から落ち着いた年を感じさせる。舌足らずな感じも無いので、年はそれなりに取っているだろう。

 外なのか屋内なのかは、おそらく屋内。風の音が少なく、人の声は他に聞こえない。


「レイスね……お前らが例の元締めだって言うのか?」

『その呼び方は正確では無いが、その通りだ』


 その呼び方は正確では無い――こう言えるという事は、信用してもいいのだろう。

  レイスとは都市伝説程度の噂が米軍部内で行き交っていた新ソ連系テロ組織の『元締め』の事である。しかし実際にレイスは存在し、またこの呼び方は正確では無いのだ。

  正しくは『軍需産業連携機構』――つまり、新ソ連を中心とした軍事企業や軍部と繋がりを持っている組織だ。元締めでは無く、それぞれとの協力関係である。


「どっかのテロ組織を動かさず、レイスが動くなんて珍しいな。オレが現役の頃でも無かったぞ」

『今は四六を初め、日本軍部が大変警戒をしているからね。米軍との共同演習も行われているし。どこぞのテロ組織を動かすより、自分たちで動いた方がやりやすいのさ』

「何が目的だ。オレに電話をかけて来たって事は、何かやらせたい事があるんだろ?」


 哨がその場にある物を使って逆探知機を造ろうとしていたが、時間がかかりそうだった。それに逆探知はオレもやっている。


『まず城坂織姫。君は交流戦の一回戦で敗退したね?』

「……そう、だけど」


 てっきり【雷神】を寄越せ、位は言われると思っていたから、交流戦云々をここで言われるとは思っていなかった。


『そして君は生徒会役員だ。今からプログラムを書き換える事も難しくは無い』

「そうだな」


 実際この事件が起こるまで、敗者復活戦がどうとかという話をしていたのだから。


『城坂織姫。君と城坂楠の両名で【雷神】に搭乗し、交流戦に飛び入りで参加、優勝せよ。これはどのような形でも構わないが、必ず観客に見られる形で実現するんだ』

「意味が分かんないな。今すぐ雷神をそっちに寄越すだけでいいだろ。なんで交流戦の参加なんて回りくどい事を」

『我々は既に、雷神のデータ等持ち得ている。ミィリスは無駄な事をした』


 流石に驚く。今コイツは、何と言った?
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