116 / 191
第十二章
戦災の子-03
しおりを挟む
神崎紗彩子は、現在腹部に裂傷を受けている関係上、自宅療養を医者から命じられているものの、AD学園都市部における一軒のカフェテリアで、藤堂敦と共に、とある女性二人と待ち合わせをしていた。
一人はすぐにやってきた。城坂楠――否、髪の毛を後頭部でひとまとめにし、温和な表情を消している事から、現在は秋沢楠としてここにいるのだろう事が分かり「秋沢さんでいいですか?」とだけ声をかけると、彼女も頷き、やってきた店員にアイスカフェオレを注文した。
「お話とは、いったい何でしょう」
彼女は城坂楠として会話する時も、秋沢楠として会話する時も、基本は紗彩子に尖った対応をする。言葉は若干だが他の者と話す時よりも棘があり、今もカフェオレにストローを差し込むと、カラカラと氷を鳴らしながらも紗彩子を睨む。
「いい加減貴方は、私にもまともな対応をして下さらない? 可愛い義妹ちゃん」
「誰が義妹ですか。私に兄妹はいません」
「そういう事にしましょう――来ました」
カフェテリアに来店した女性へ手を上げる。
女性は、柔らかな雰囲気をしたAD学園の制服をまとった少女で、くすりと笑いながら三人の席へやってくると、まずは藤堂にお辞儀をした。
「あ、どうも。自分、藤堂敦っていう戦場カメラマンですわ」
「ご丁寧なのかどうなのかわからないご挨拶、ありがとうございます。私、天城幸恵って言います」
名刺を差し出した藤堂と、それを受け取る少女――天城幸恵。
天城幸恵は、AD総合学園三年Bクラスに属する女性だが、基礎という基礎を極め、AD同士の模擬戦においてはトップクラスの戦績を誇る。
「神崎ちゃん、先にオレの取材、いいかな?」
「天城さんに同意を得てからにして下さいね」
「構いませんかねぇ?」
「ふふっ、取材は慣れてませんので、お手柔らかに」
幸恵はカプチーノを注文し、藤堂は彼女の注文が席に届くまでの間、録音機と小さなメモを取り出し、ペンをノックする。
カプチーノが届き、それに口を付けた幸恵に、録音機を指しながら首を傾げると、彼女も頷いて笑みを継続した。
「じゃあ、取材を始めていきます」
「よろしくお願いします」
「天城さんは、現在三年Bクラスながらも、先日の交流戦では三位までのし上がった実力派ですね。自分も観戦していましたが、島根のどかさんとの試合に勝利した事や、織姫・楠ペアの雷神とあそこまで渡り合う実力は、戦場で色々な場面を見て来た私も圧巻されました」
「織姫ちゃんと楠ちゃんっていう一年生に負けてますので、正直自慢は出来ないのですがね」
「それでもだ、天城さんのパイロット能力は抜きん出ている。少し突っ込んだ質問ですが、Bクラスに配属された理由は、ご自身に心当たりが?」
藤堂の質問に気分を害する事も無く、しかし少しだけ考えた幸恵は、思い出しながら苦笑した。
「多分アレです。私、何分完璧主義というか、徹底主義というか……的を指示通りの順番に撃つって試験があったんですが、試験指示を無視して、近い順に撃ち抜いてしまって」
「なぜそんな、指示を無視するなんて事を?」
「実戦じゃどうかは分かりませんが、一番手前の堕とせると確実に分かっている敵を落とした方が、戦力低下に繋がるでしょう? なのに、奥に行ったり手前に戻ったり、なんて非効率的過ぎます」
「あー、なるほど。個人的にこっちの方が効率が良いのにどうして指示はこうなってる、と考えてしまったと」
「その辺りが私の悪い癖。治さなきゃ治さなきゃとは思っているのですが、どうにも性分で」
基本を徹底した彼女だからこそ、基本から外れた事を行う試験に我慢ならないという理由は納得が出来、この回答には紗彩子と楠が感心する。
「では次に、天城さんは今年度を以てAD総合学園卒業予定の三年生となりますが、卒業後の進路はどのようにお考えですか?」
「先日の交流戦で、防衛省の方と色々とお話をさせて頂きまして、試験結果も良好な為、防衛大学への入学と、後のキャリアコースを推薦されました」
「おぉ、では背広組だ」
「ですが、どうでしょうね。私のように融通の利かない可愛げのない女より、神崎ちゃんや楠ちゃんのような可愛い女の子が背広組になって、世間の目に触れられるようになった方が、防衛省としても良いのではないか、と思いますが」
「勿論二人も良い女だが、天城さんも良い女ですよ」
「ふふ、ごめんなさい。私ヒゲの濃い男性って苦手なんです」
「あらら。じゃあついでに聞いちゃおうかな。好みの男性はどんなタイプですか?」
「そうですねぇ、やっぱり可愛い子ですね」
「城坂織姫君みたいな」
「ええ、彼は良いですよ。実にいいです。可愛いのにお口が悪くて、でも照れると可愛くて小っちゃくて可愛くて」
目を輝かせた幸恵。早口になるが、しかし聞き取りやすい言葉で、藤堂もメモを素早く走らせる。
「可愛い連呼ですね」
「実際可愛いので仕方ありません。あ、違うの楠ちゃん。楠ちゃんも勿論可愛いのだけれど、姫ちゃんはどこか違う可愛さがあって」
「聞いていませんし気にしていません」
いきなり話を振られた為、面倒そうに返答をした楠の頬をぷにぷにと突く幸恵。
一人はすぐにやってきた。城坂楠――否、髪の毛を後頭部でひとまとめにし、温和な表情を消している事から、現在は秋沢楠としてここにいるのだろう事が分かり「秋沢さんでいいですか?」とだけ声をかけると、彼女も頷き、やってきた店員にアイスカフェオレを注文した。
「お話とは、いったい何でしょう」
彼女は城坂楠として会話する時も、秋沢楠として会話する時も、基本は紗彩子に尖った対応をする。言葉は若干だが他の者と話す時よりも棘があり、今もカフェオレにストローを差し込むと、カラカラと氷を鳴らしながらも紗彩子を睨む。
「いい加減貴方は、私にもまともな対応をして下さらない? 可愛い義妹ちゃん」
「誰が義妹ですか。私に兄妹はいません」
「そういう事にしましょう――来ました」
カフェテリアに来店した女性へ手を上げる。
女性は、柔らかな雰囲気をしたAD学園の制服をまとった少女で、くすりと笑いながら三人の席へやってくると、まずは藤堂にお辞儀をした。
「あ、どうも。自分、藤堂敦っていう戦場カメラマンですわ」
「ご丁寧なのかどうなのかわからないご挨拶、ありがとうございます。私、天城幸恵って言います」
名刺を差し出した藤堂と、それを受け取る少女――天城幸恵。
天城幸恵は、AD総合学園三年Bクラスに属する女性だが、基礎という基礎を極め、AD同士の模擬戦においてはトップクラスの戦績を誇る。
「神崎ちゃん、先にオレの取材、いいかな?」
「天城さんに同意を得てからにして下さいね」
「構いませんかねぇ?」
「ふふっ、取材は慣れてませんので、お手柔らかに」
幸恵はカプチーノを注文し、藤堂は彼女の注文が席に届くまでの間、録音機と小さなメモを取り出し、ペンをノックする。
カプチーノが届き、それに口を付けた幸恵に、録音機を指しながら首を傾げると、彼女も頷いて笑みを継続した。
「じゃあ、取材を始めていきます」
「よろしくお願いします」
「天城さんは、現在三年Bクラスながらも、先日の交流戦では三位までのし上がった実力派ですね。自分も観戦していましたが、島根のどかさんとの試合に勝利した事や、織姫・楠ペアの雷神とあそこまで渡り合う実力は、戦場で色々な場面を見て来た私も圧巻されました」
「織姫ちゃんと楠ちゃんっていう一年生に負けてますので、正直自慢は出来ないのですがね」
「それでもだ、天城さんのパイロット能力は抜きん出ている。少し突っ込んだ質問ですが、Bクラスに配属された理由は、ご自身に心当たりが?」
藤堂の質問に気分を害する事も無く、しかし少しだけ考えた幸恵は、思い出しながら苦笑した。
「多分アレです。私、何分完璧主義というか、徹底主義というか……的を指示通りの順番に撃つって試験があったんですが、試験指示を無視して、近い順に撃ち抜いてしまって」
「なぜそんな、指示を無視するなんて事を?」
「実戦じゃどうかは分かりませんが、一番手前の堕とせると確実に分かっている敵を落とした方が、戦力低下に繋がるでしょう? なのに、奥に行ったり手前に戻ったり、なんて非効率的過ぎます」
「あー、なるほど。個人的にこっちの方が効率が良いのにどうして指示はこうなってる、と考えてしまったと」
「その辺りが私の悪い癖。治さなきゃ治さなきゃとは思っているのですが、どうにも性分で」
基本を徹底した彼女だからこそ、基本から外れた事を行う試験に我慢ならないという理由は納得が出来、この回答には紗彩子と楠が感心する。
「では次に、天城さんは今年度を以てAD総合学園卒業予定の三年生となりますが、卒業後の進路はどのようにお考えですか?」
「先日の交流戦で、防衛省の方と色々とお話をさせて頂きまして、試験結果も良好な為、防衛大学への入学と、後のキャリアコースを推薦されました」
「おぉ、では背広組だ」
「ですが、どうでしょうね。私のように融通の利かない可愛げのない女より、神崎ちゃんや楠ちゃんのような可愛い女の子が背広組になって、世間の目に触れられるようになった方が、防衛省としても良いのではないか、と思いますが」
「勿論二人も良い女だが、天城さんも良い女ですよ」
「ふふ、ごめんなさい。私ヒゲの濃い男性って苦手なんです」
「あらら。じゃあついでに聞いちゃおうかな。好みの男性はどんなタイプですか?」
「そうですねぇ、やっぱり可愛い子ですね」
「城坂織姫君みたいな」
「ええ、彼は良いですよ。実にいいです。可愛いのにお口が悪くて、でも照れると可愛くて小っちゃくて可愛くて」
目を輝かせた幸恵。早口になるが、しかし聞き取りやすい言葉で、藤堂もメモを素早く走らせる。
「可愛い連呼ですね」
「実際可愛いので仕方ありません。あ、違うの楠ちゃん。楠ちゃんも勿論可愛いのだけれど、姫ちゃんはどこか違う可愛さがあって」
「聞いていませんし気にしていません」
いきなり話を振られた為、面倒そうに返答をした楠の頬をぷにぷにと突く幸恵。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた
九戸政景
恋愛
高校三年生の柴代大和は、小学校一年生の頃からの付き合いである秋田泰希の姉である夕希に恋心を抱いていたが、夕希の結婚をきっかけに恋心を諦めていた。
そして小学生の頃の夢を見た日、泰希から大和は夕希の離婚を伝えられ、それと同時にある頼みをされる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる