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第十三章
ズィマー-01
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レビル・ガントレットは、城坂修一が現在拠点としている島の面積・屋敷の広さを確認していた。
本音を言えば屋敷の構造を確認した上で作戦を開始したかったものの、短期間で情報を集めきる事が不可能に近く、また修一ならば明宮哨や明宮梢の安全を鑑みたシェルター施設などを用意している筈と想定、突入を三分ほど遅らせて、十二機のADを投入した。
島は、丸型の小さな島で、AD十二機での襲撃ならば四分ほどで終了する。
しかしそれが戦闘となればまた別である。敵はアルトアリス型機体を計五機所有している筈なので、戦力としては十二機でも心もとない。
「本音を言えば、織姫たちにも作戦参加をして貰いたかったが」
呟いた言葉は誰にも聞かれていない。
なぜアーミー隊だけで作戦を開始する事になったかと言えば、単純な話で「ガントレットが修一の居所を知ったと悟られれば撤退される恐れがあった為」であり、織姫たち四六を参加させる時間が無かった、というのが実状だ。
もしここで修一たちを取り逃がす事があったとしても、屋敷を押さえる事が出来れば撤退先の拠点を特定する事にも繋がる。
だから戦力よりも素早い行動を優先した、という事だ。
突入開始時間がやってくる。
FH-26Xの四機編成を三編隊組み、上空から一編隊を、北東と南西から一編隊ずつを突入させて、敵戦力のかく乱を目的とした作戦である。
島の中心部に建設された屋敷の地下から続くハンガーとハッチに向けて一斉に動き出した各機の動きは分かるが、しかし音声通信は今後絶望的になるだろうと予想された。
そして事実、そうなった。
隊員による定時報告が途絶えた。それと同時に、音声と映像による識別が困難となり、現在は機体に供えられたGPS反応だけが頼りとなった。
**
ヴィスナーは、目の前で行われている戦闘の様子を、ただ眺めていた。
風神のテストであるから、そうして場合によっての援護を必要とされているだけだったから、眺めているだけという事は間違いではない。
だがしかし――彼女は、手を動かす事も出来ず、ただメインカメラに映る光景を見て、呆然とするしか出来なかったのだ。
それは、何というか――虐殺に近いものだった。
ハンガーから飛び出した風神は、真っ先に見える山に向けて、跳んだ。
それも、滑空だとかそういうものではなく、本当に地面を強く蹴りつけ、跳んで、一キロ先にある木々へ、着地したのだ。
追いついた時、風神は一機のポンプ付きに向けて、拳を強く振り込んでいた。
続けて顔を上げると、今度は両腕を地面につけたまま地面を跳ね、空中で一回転しつつもう一機のポンプ付きが放つアサルトライフルの銃弾を装甲で跳ね返した後、首元に二撃の蹴りを見舞う。
そのまま敵機を背中から倒し、持っていたアサルトライフルを奪うと、火器管制にライフルのインストールを即座に終了させ、トリガーを引き、三発の銃弾をコックピットへ、放つ。
沈黙した二機目。
そこで三機目が、ヴィスナーの駆る二号機に向けてライフルを向けていたので、それに応戦しようとした瞬間、何かが二号機の横を通り過ぎて、ライフルにぶつかった。
それは、風神が落とした二機目のポンプ付きが装備していたライフル。銃口が逸れた三機目に向け、疾く駆けた風神は、そのまま体当たりでポンプ付きに突進すると、そのまま敵機の両腕を引っ張り、無理矢理接続部から引きちぎった。
バチバチと電流の流れる音が奏でられると同時に、引きちぎられた両腕を、コックピットに向けて叩き込む。
それだけで衝撃と電流がコックピットを襲っているだろうに、それでも足らぬと、風神は両手を組んで、重たい一撃としてコックピットへ叩き込むと、敵機は拉げて、沈黙した。
一度、休憩するかのようにゆっくりと立ち上がった風神。
しかし、すぐに地面を蹴って、どこかへと向かっていく。
それを追いかけようにも、追いかけた先には敵機の残骸しかない。
それも、全てが正確にコックピットを壊しているわけではなく、中にはコックピットだけが無事で、それ以外の箇所が破壊され、恐怖のあまり泡を吹いて気絶する者さえいた程だ。
そして最後、何とか追いついた先で――ヴィスナーは、ズィマーの声を、聴いた。
『うぁ、うはぁ! ううぁ!! ああぁっ!! あががっ!!』
正気じゃない。否、元より正気のパイロットではないと知っていたが、それでも、彼女の雄たけびは、異常だった。
まるで、殺されそうになっているのが自分であるかのように叫びながら、風神は残る一機のポンプ付きに向けて、その拳を、顔面に、胸部に、腕部に、腰部に、股間部に、脚部に、ありとあらゆる部位に向け、振るっていた。
幾ら装甲の薄いFH-26Xと言えど、殴りすぎたせいで風神のマニピュレーターすらも既に拉げかかっており、それでも殴る事を、止めない。
最後に。
殴り飽きたと言わんばかりに右脚部を大きく振り上げて、強くコックピットに向けて踵を落とした事で――ポンプ付き全機の鎮圧が、終了。
作戦時間は――三分三十二秒と、圧倒的な力とスピードを見せた形だった。
**
城坂修一は、先んじて明宮哨と明宮梢の二名を避難用シェルターに送り届けた後、少ない作業員達に撤退準備を命じる事により、自身も自室で撤退するにあたって、どの程度の情報を残すべきかを考えていた。
情報を残しすぎれば尻尾以上の物を掴まれるが、しかし残さなければ四六やアーミー隊からの追撃を止める事となり、これはこれで都合が悪いとした修一。
いっそこのまま籠城戦を――と考えたが、それも修一にとっては宜しくない。
それならば、と。修一は紙で印刷されたものだけを暖炉に放り投げ、マッチの一本に火を灯して投げる。
段々と燃えていく書類を見届けた後、彼は手ぶらで部屋を出て、長距離輸送機へと向かう。
輸送機にはシェルターから移動の為に移されてきた哨と梢の両名もいて、二人を安心させるために近づき、護衛とした兵士三人から離した。
「ここから離れるよ」
「待ってください、まだ皆が」
哨が声を上げるも、修一は彼女の頭を撫でながら、安心させるよう僅かに口角を上げて笑い、頷く。
「安心しなさい、皆無事だ。勿論リェータもね」
「そっか、良かった」
修一の言葉にホッと息を撫でおろした哨。そんな彼女に少々驚いていた梢がいる。まだリェータとの関係性を聞いていないようだった。
「あの、修一さん。これから私達はどこへ」
「さぁて、どこにしようかな。希望はあるかい?」
「出来れば日本のAD総合学園が良いのですが」
「ふふ、梢君も少々ユーモラスだね。いずれはそうしてあげたいが、まだ駄目だ。それに哨君も、今僕達の元から離れたくはないだろう?」
「……ハイ」
哨の言葉にやはり驚く梢。彼女にも説明をしなければな、と思い輸送機の椅子に腰かけさせた後――風神が帰投し、膝を折った。
本音を言えば屋敷の構造を確認した上で作戦を開始したかったものの、短期間で情報を集めきる事が不可能に近く、また修一ならば明宮哨や明宮梢の安全を鑑みたシェルター施設などを用意している筈と想定、突入を三分ほど遅らせて、十二機のADを投入した。
島は、丸型の小さな島で、AD十二機での襲撃ならば四分ほどで終了する。
しかしそれが戦闘となればまた別である。敵はアルトアリス型機体を計五機所有している筈なので、戦力としては十二機でも心もとない。
「本音を言えば、織姫たちにも作戦参加をして貰いたかったが」
呟いた言葉は誰にも聞かれていない。
なぜアーミー隊だけで作戦を開始する事になったかと言えば、単純な話で「ガントレットが修一の居所を知ったと悟られれば撤退される恐れがあった為」であり、織姫たち四六を参加させる時間が無かった、というのが実状だ。
もしここで修一たちを取り逃がす事があったとしても、屋敷を押さえる事が出来れば撤退先の拠点を特定する事にも繋がる。
だから戦力よりも素早い行動を優先した、という事だ。
突入開始時間がやってくる。
FH-26Xの四機編成を三編隊組み、上空から一編隊を、北東と南西から一編隊ずつを突入させて、敵戦力のかく乱を目的とした作戦である。
島の中心部に建設された屋敷の地下から続くハンガーとハッチに向けて一斉に動き出した各機の動きは分かるが、しかし音声通信は今後絶望的になるだろうと予想された。
そして事実、そうなった。
隊員による定時報告が途絶えた。それと同時に、音声と映像による識別が困難となり、現在は機体に供えられたGPS反応だけが頼りとなった。
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ヴィスナーは、目の前で行われている戦闘の様子を、ただ眺めていた。
風神のテストであるから、そうして場合によっての援護を必要とされているだけだったから、眺めているだけという事は間違いではない。
だがしかし――彼女は、手を動かす事も出来ず、ただメインカメラに映る光景を見て、呆然とするしか出来なかったのだ。
それは、何というか――虐殺に近いものだった。
ハンガーから飛び出した風神は、真っ先に見える山に向けて、跳んだ。
それも、滑空だとかそういうものではなく、本当に地面を強く蹴りつけ、跳んで、一キロ先にある木々へ、着地したのだ。
追いついた時、風神は一機のポンプ付きに向けて、拳を強く振り込んでいた。
続けて顔を上げると、今度は両腕を地面につけたまま地面を跳ね、空中で一回転しつつもう一機のポンプ付きが放つアサルトライフルの銃弾を装甲で跳ね返した後、首元に二撃の蹴りを見舞う。
そのまま敵機を背中から倒し、持っていたアサルトライフルを奪うと、火器管制にライフルのインストールを即座に終了させ、トリガーを引き、三発の銃弾をコックピットへ、放つ。
沈黙した二機目。
そこで三機目が、ヴィスナーの駆る二号機に向けてライフルを向けていたので、それに応戦しようとした瞬間、何かが二号機の横を通り過ぎて、ライフルにぶつかった。
それは、風神が落とした二機目のポンプ付きが装備していたライフル。銃口が逸れた三機目に向け、疾く駆けた風神は、そのまま体当たりでポンプ付きに突進すると、そのまま敵機の両腕を引っ張り、無理矢理接続部から引きちぎった。
バチバチと電流の流れる音が奏でられると同時に、引きちぎられた両腕を、コックピットに向けて叩き込む。
それだけで衝撃と電流がコックピットを襲っているだろうに、それでも足らぬと、風神は両手を組んで、重たい一撃としてコックピットへ叩き込むと、敵機は拉げて、沈黙した。
一度、休憩するかのようにゆっくりと立ち上がった風神。
しかし、すぐに地面を蹴って、どこかへと向かっていく。
それを追いかけようにも、追いかけた先には敵機の残骸しかない。
それも、全てが正確にコックピットを壊しているわけではなく、中にはコックピットだけが無事で、それ以外の箇所が破壊され、恐怖のあまり泡を吹いて気絶する者さえいた程だ。
そして最後、何とか追いついた先で――ヴィスナーは、ズィマーの声を、聴いた。
『うぁ、うはぁ! ううぁ!! ああぁっ!! あががっ!!』
正気じゃない。否、元より正気のパイロットではないと知っていたが、それでも、彼女の雄たけびは、異常だった。
まるで、殺されそうになっているのが自分であるかのように叫びながら、風神は残る一機のポンプ付きに向けて、その拳を、顔面に、胸部に、腕部に、腰部に、股間部に、脚部に、ありとあらゆる部位に向け、振るっていた。
幾ら装甲の薄いFH-26Xと言えど、殴りすぎたせいで風神のマニピュレーターすらも既に拉げかかっており、それでも殴る事を、止めない。
最後に。
殴り飽きたと言わんばかりに右脚部を大きく振り上げて、強くコックピットに向けて踵を落とした事で――ポンプ付き全機の鎮圧が、終了。
作戦時間は――三分三十二秒と、圧倒的な力とスピードを見せた形だった。
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城坂修一は、先んじて明宮哨と明宮梢の二名を避難用シェルターに送り届けた後、少ない作業員達に撤退準備を命じる事により、自身も自室で撤退するにあたって、どの程度の情報を残すべきかを考えていた。
情報を残しすぎれば尻尾以上の物を掴まれるが、しかし残さなければ四六やアーミー隊からの追撃を止める事となり、これはこれで都合が悪いとした修一。
いっそこのまま籠城戦を――と考えたが、それも修一にとっては宜しくない。
それならば、と。修一は紙で印刷されたものだけを暖炉に放り投げ、マッチの一本に火を灯して投げる。
段々と燃えていく書類を見届けた後、彼は手ぶらで部屋を出て、長距離輸送機へと向かう。
輸送機にはシェルターから移動の為に移されてきた哨と梢の両名もいて、二人を安心させるために近づき、護衛とした兵士三人から離した。
「ここから離れるよ」
「待ってください、まだ皆が」
哨が声を上げるも、修一は彼女の頭を撫でながら、安心させるよう僅かに口角を上げて笑い、頷く。
「安心しなさい、皆無事だ。勿論リェータもね」
「そっか、良かった」
修一の言葉にホッと息を撫でおろした哨。そんな彼女に少々驚いていた梢がいる。まだリェータとの関係性を聞いていないようだった。
「あの、修一さん。これから私達はどこへ」
「さぁて、どこにしようかな。希望はあるかい?」
「出来れば日本のAD総合学園が良いのですが」
「ふふ、梢君も少々ユーモラスだね。いずれはそうしてあげたいが、まだ駄目だ。それに哨君も、今僕達の元から離れたくはないだろう?」
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