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第十九章
戦う訳-01
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AD総合学園は、現在戦場となっている。
自衛隊駐屯基地区画。
既に三機のアルトアリスが落とされているも、まだ七機は速射砲や電磁砲を撃ち、第507飛行分隊の有する秋風への砲撃を緩めない。
だが相対する者達は、実戦経験が無いとしても、元々日本と言う国を守るべく、日々鍛錬に励む者達だ。
五機編成の秋風・高速戦パックは、先頭一機の後ろに続く形で並走し、放たれた弾頭を戦闘が避ける動きに合わせ、左右に散らばるとすぐに隊列へ戻すという動きを繰り返し、一機のアルトアリスが辛抱ならんと動き、前に出ると同時に先頭が60㎜機銃の銃弾を放つ。
数発の着弾、しかしそれを物ともしないT・チタニウム装甲だが、彼らの目的は被弾ではない。
被弾し、動きを止めたアルトアリスを左右から挟む形でレーザーサーベルを縦振り、横振りの同時攻撃を仕掛ける事で避ける隙を与えぬようにし、事実一機のアルトアリスを落とす事に成功。
しかし、彼らは決して気を紛らわす事は無い。
数の利はこちらが不利。しかし敵は連携などを考えぬ、一人一人が自己流の動きしか見せぬ、言ってしまえば子供の戦い方だ。
勿論技術が高い事は認めるが――第507飛行分隊、中隊長の立花は目を細めながら、AD総合学園生徒会より受理していた旧世代パケット通信による通信機へ声を吹き込む。
『三・二・五』
それは、普段より訓練で使用する連携指示の暗号だ。
三号機が先行し、二号機が援護、五号機は後方より敵機の動きを見ろという指示。
立花は一号機で、呼ばれなかった四号機は一号機に従え、という意味も含まれる。
そして三号機は、レーザーサーベルを出力したまま残る六機のアルトアリスへ向けて行動を開始。キャタピラ走行とスラスター移動、そして時々キャタピラ走行を解除して地面を蹴る事で見せる無軌道の動きに惑わされる六機と、そんな三号機を援護する二号機が、60㎜機銃を構え、撃つ。
迫りながらも決してこちらを無理に落とそうとしない一機と、その一機を援護する形で機銃を撃ち続けるもう一機に、アルトアリス各機は速射砲を構えるも、しかし事前に構えるモーションさえ見えていれば、射線を予測し乱数回避による被弾率低下を施す事が出来る。
『こちら五。一・四は左方からの攻撃を』
『一、了解』
『四、了解』
少々遠くから戦況判断を行っていた五号機が60㎜機銃を放ちながらも指示する内容に、一号機と四号機が動く。
敵機より見て右方へと駆け、60㎜機銃の銃弾をばら撒いていく。
二機のアルトアリスがそちらへ速射砲を向けた瞬間、三号機と二号機が動く。
三号機が構えていたレーザーサーベルを振りながら、今度は敵から見て左方方面へ駆け、一機のアルトアリスへ切り掛かるも、それを避けた敵機が脚部パイルバンカーを稼働させ、そのコックピットへと打ち込もうとする。
だが、一歩遅い。
既に60㎜機銃を発砲しながら、三号機がダガーナイフを引き抜いて投擲すると、T・チタニウム装甲に当たってわずかではあるが姿勢を崩し、挙動が遅れる。
挙動が遅れれば、それだけ隙も生まれる。
今コックピットへ押し込もうとしていた脚部を狙い、レーザーサーベルを突き刺した三号機。レーザーによって融解していく右脚部が破壊され、背中から倒れるアルトアリスを踏みつけた三号機は、そのまま奥にいるもう一機のアルトアリスに向け、更にサーベルを振り込んだ。
『六・七・八――てぇ!』
予備として待機されていた、高火力パック装備の秋風三機。それは駐屯基地の格納庫に身を隠していたが、今その115㎜砲を構え、撃つ。
一斉に放たれる115㎜砲。後方へ下がっていた秋風は着弾確認を済ませると、動きが鈍くなりつつも、まだ動きのある二機のアルトアリスへ向け、一斉に60㎜機銃を、撃つ。
合計五機の秋風より放たれる銃弾、追い打ちと言わんばかりに次弾装填を済ませた高火力パックの秋風。
次々に放たれる弾丸が、残るアルトアリスを全て撃破し、爆風が舞うと同時に、立花は通信機に声を吹き込む。
『こちら第507飛行分隊、現在基地区画占拠を試みた十機を撃破、学園生徒の援護へ』
『お待ち下さい。そちらへ居住区画占拠に動いていた十機が向かっております。そのまま迎撃をお願いします』
否定は、AD総合学園部兵隊を取り仕切る少女・神崎紗彩子のものだ。
彼女は元々作戦立案にも一枚噛んでおり、現状では彼女が現場の全てを俯瞰的に見据え、指示を出す立場にある。
『そちらは本当に大丈夫か?』
『今のところ死者は無しです。兵力はこちらが多いのですから、あなた方もご自分の身をご自身でお守りください』
『君達は子供だ。我々は本来、君達を守る為にここへ配備されている』
『だから――皆で生き残る為の最善を尽くすのでしょう?』
『……了解。健闘を祈る』
『そちらもお気を付けください』
通話が切れると同時に、上空より襲い掛かる速射砲と電磁砲の砲撃。ランダム回避を命じつつ、立花は自らの隊へ喝を入れる。
『――お前ら、学生に負けるわけにはいかないぞ!』
『了解!』
練度は高い。日頃より訓練に励んだ成果である。
しかし、今彼らの実力を引き出しているのは、訓練だけによって生み出されるものではない。
――この国を、この国を支えていく若者を守るのだと、入隊した日の事を思い出して戦う者達の誇りが、力を引き出している。
自衛隊駐屯基地区画。
既に三機のアルトアリスが落とされているも、まだ七機は速射砲や電磁砲を撃ち、第507飛行分隊の有する秋風への砲撃を緩めない。
だが相対する者達は、実戦経験が無いとしても、元々日本と言う国を守るべく、日々鍛錬に励む者達だ。
五機編成の秋風・高速戦パックは、先頭一機の後ろに続く形で並走し、放たれた弾頭を戦闘が避ける動きに合わせ、左右に散らばるとすぐに隊列へ戻すという動きを繰り返し、一機のアルトアリスが辛抱ならんと動き、前に出ると同時に先頭が60㎜機銃の銃弾を放つ。
数発の着弾、しかしそれを物ともしないT・チタニウム装甲だが、彼らの目的は被弾ではない。
被弾し、動きを止めたアルトアリスを左右から挟む形でレーザーサーベルを縦振り、横振りの同時攻撃を仕掛ける事で避ける隙を与えぬようにし、事実一機のアルトアリスを落とす事に成功。
しかし、彼らは決して気を紛らわす事は無い。
数の利はこちらが不利。しかし敵は連携などを考えぬ、一人一人が自己流の動きしか見せぬ、言ってしまえば子供の戦い方だ。
勿論技術が高い事は認めるが――第507飛行分隊、中隊長の立花は目を細めながら、AD総合学園生徒会より受理していた旧世代パケット通信による通信機へ声を吹き込む。
『三・二・五』
それは、普段より訓練で使用する連携指示の暗号だ。
三号機が先行し、二号機が援護、五号機は後方より敵機の動きを見ろという指示。
立花は一号機で、呼ばれなかった四号機は一号機に従え、という意味も含まれる。
そして三号機は、レーザーサーベルを出力したまま残る六機のアルトアリスへ向けて行動を開始。キャタピラ走行とスラスター移動、そして時々キャタピラ走行を解除して地面を蹴る事で見せる無軌道の動きに惑わされる六機と、そんな三号機を援護する二号機が、60㎜機銃を構え、撃つ。
迫りながらも決してこちらを無理に落とそうとしない一機と、その一機を援護する形で機銃を撃ち続けるもう一機に、アルトアリス各機は速射砲を構えるも、しかし事前に構えるモーションさえ見えていれば、射線を予測し乱数回避による被弾率低下を施す事が出来る。
『こちら五。一・四は左方からの攻撃を』
『一、了解』
『四、了解』
少々遠くから戦況判断を行っていた五号機が60㎜機銃を放ちながらも指示する内容に、一号機と四号機が動く。
敵機より見て右方へと駆け、60㎜機銃の銃弾をばら撒いていく。
二機のアルトアリスがそちらへ速射砲を向けた瞬間、三号機と二号機が動く。
三号機が構えていたレーザーサーベルを振りながら、今度は敵から見て左方方面へ駆け、一機のアルトアリスへ切り掛かるも、それを避けた敵機が脚部パイルバンカーを稼働させ、そのコックピットへと打ち込もうとする。
だが、一歩遅い。
既に60㎜機銃を発砲しながら、三号機がダガーナイフを引き抜いて投擲すると、T・チタニウム装甲に当たってわずかではあるが姿勢を崩し、挙動が遅れる。
挙動が遅れれば、それだけ隙も生まれる。
今コックピットへ押し込もうとしていた脚部を狙い、レーザーサーベルを突き刺した三号機。レーザーによって融解していく右脚部が破壊され、背中から倒れるアルトアリスを踏みつけた三号機は、そのまま奥にいるもう一機のアルトアリスに向け、更にサーベルを振り込んだ。
『六・七・八――てぇ!』
予備として待機されていた、高火力パック装備の秋風三機。それは駐屯基地の格納庫に身を隠していたが、今その115㎜砲を構え、撃つ。
一斉に放たれる115㎜砲。後方へ下がっていた秋風は着弾確認を済ませると、動きが鈍くなりつつも、まだ動きのある二機のアルトアリスへ向け、一斉に60㎜機銃を、撃つ。
合計五機の秋風より放たれる銃弾、追い打ちと言わんばかりに次弾装填を済ませた高火力パックの秋風。
次々に放たれる弾丸が、残るアルトアリスを全て撃破し、爆風が舞うと同時に、立花は通信機に声を吹き込む。
『こちら第507飛行分隊、現在基地区画占拠を試みた十機を撃破、学園生徒の援護へ』
『お待ち下さい。そちらへ居住区画占拠に動いていた十機が向かっております。そのまま迎撃をお願いします』
否定は、AD総合学園部兵隊を取り仕切る少女・神崎紗彩子のものだ。
彼女は元々作戦立案にも一枚噛んでおり、現状では彼女が現場の全てを俯瞰的に見据え、指示を出す立場にある。
『そちらは本当に大丈夫か?』
『今のところ死者は無しです。兵力はこちらが多いのですから、あなた方もご自分の身をご自身でお守りください』
『君達は子供だ。我々は本来、君達を守る為にここへ配備されている』
『だから――皆で生き残る為の最善を尽くすのでしょう?』
『……了解。健闘を祈る』
『そちらもお気を付けください』
通話が切れると同時に、上空より襲い掛かる速射砲と電磁砲の砲撃。ランダム回避を命じつつ、立花は自らの隊へ喝を入れる。
『――お前ら、学生に負けるわけにはいかないぞ!』
『了解!』
練度は高い。日頃より訓練に励んだ成果である。
しかし、今彼らの実力を引き出しているのは、訓練だけによって生み出されるものではない。
――この国を、この国を支えていく若者を守るのだと、入隊した日の事を思い出して戦う者達の誇りが、力を引き出している。
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