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Pattern4.円谷マドカ──悪役は存在を証明する──
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彼はシンプルに戦闘が好きだった。戦闘狂だった。
彼はヒーローアズマの師匠だった。だから、ヒーローアズマの強さを誰よりも理解していた。
彼はクズだった。誰よりも、クズで、でも、イケメンだった。
彼はそんなヴィランだった。
彼は、そんなヴィランで、ありたかった。
『つぶら、俺があんたを止めてやるよ』
『へぇ、じゃあ、止めてみろよ、ヒーローさん』
ヒーローが教え子であっても、手加減はしない。アズマも俺には手加減はしない。
何故ってそれは、俺は戦闘が好きだから。アズマはそれを知っているから。
『リュー、災難だったなぁ』
『その災難を作ったのはあんただろ、つぶら』
『はっ、そうだったな』
『……アズマを倒しやがって』
『はっ、お前が早く倒さないのが悪いんだろーが!』
味方でさえ、揶揄うクズ。
分かっていた。知っていた。
一人のヴィランには一人のヒーロー。それが暗黙の了解だった。
でも、いや、だから、リューの手でヒーローを倒させたくなかった。だって、それはリューにとって一生の傷になるって分かっていたから。
『あいつは強かったよ、アクセ。お前より、断然な』
誰よりも、誰よりも、アズマのことを知っていた。彼の強さを知っていた。
『お前と違ってあいつは敵に捕まらなかったんだから』
なぜなら、俺はアズマの師匠であって、ヒーローとしてのアズマと戦ったことがあるから。そして、アズマの強さをよく聞いていたから。
──アズマの血の繋がらない義兄であり、ヴィランのアクセから。
『やっぱり、顔良いなあんた……。クソじゃん』
『唐突な暴言。え、何? 真神、何かあったわけ?』
『特には。ただ、顔良いのにクズだなぁって』
『ストレートな暴言。マジで何かあった?』
『……ちょっと好きだった人思い出した』
『はぁ! 元リア充はいいっすねぇ!』
『つぶらさんも大概、ストレートな暴言じゃん』
イケメンなのにクズ。そうヴィラン仲間からも言われた。勿論、敵であるヒーロー達からもそう言われていた。
顔が良い自覚はあった。クズな自覚もあった。だって、意識してクズにしているのだから。
完全悪のヴィラン。教え子すら見捨てるヴィラン。
戦闘狂で、クズな、最低のヴィラン。
それが俺だった。
戦闘が好きだなんて。
「アズマ、俺が止まらなくなったらお前が俺のことを止めてくれ」
戦闘狂だなんて。
「「俺を止められるのはお前だけだから。なんたってお前は俺の教え子だから」だろ、先生」
……俺は戦うことしか知らなかった。だから、だから、戦ってきただけだったのに。
「おー、よく分かってんじゃん」
誰も、俺に戦うななんて、言ってくれなかったくせに。
「何度言われてきたと思ってんだよ」
「あんたを止めてやる」って言ってくれたのだって一人だけだった。
「220回?」
だから。
「5万7843回ですぅ!!」
だから、俺は俺を止める役目をアズマに頼むしかなかった。
──――結局、そのアズマだって俺を止められなかったが。
「ねぇ、円谷、アズマのこと頼むね」
自分の目で成長を全て見ていた。
「はあ……。は? は?!?! は?!?!」
それは偶然だった。
「オレ様、んや、僕さ、アズマのこと殺したくてたまらなくなっちゃうんだよ~。多分、デッドラインで殺しちゃう。アズマのせいでって。お兄ちゃんなのに」
幼少期からの泥棒仲間で、ヴィラン仲間のアクセ。アホでバカで煩くて、害悪なヴィラン。そうアクセは呼ばれていた。でも、俺の前ではそんな一面は出なかった。
「それは、」
断れるはずがなかった。育て方なんて分からなかったけど、やるしかなかった。デッドラインなんて、即死を与える超能力だったし。
「でも、円谷はアズマのこと意味なく殺さないでしょ? 僕のことも、殺すことになっても意味なく殺さないでしょ?」
自分の手で二人を殺そうと思っていたことを後悔していないかと言えば、それは嘘になる。二人に生きていてほしいと思ったこともあったから。
二人がいることで俺が証明されるから。
「…………全部分かって言ってるのか、それ」
だって、俺の全てを知っていたのは二人だけだったから。
「うん。だから、お願いしてるんだよ。君なら、僕達の死を意味あるものにしてくれるはずだから」
兄とは親友で、弟とは師弟関係で。
「…………アズマも死ぬ前提なんだな、アクセ」
俺の人生のなかで唯一幸せだった時間。
「そうだよ。だって、アズマは絶対ヴィランじゃなくて、ヒーロー向きだし、君、自分を止めるように成長したアズマに言うつもりでしょ」
お前がヴィランを裏切らなければ、なんて。お前らが光を見せなければ、なんて。
「ノーコメントで」
「君は僕達兄弟について一番知ってるもんね!」
「ノーコメントで!!」
結局、アクセはヒーローを守って捕まった。でも、それより先にアズマはヒーローとして、俺に殺された。
──――二人を俺が殺したかったなんて、声になんて出せなかった。
全てが存在証明のためだった。全て自分のため。全て、全て、全て。
俺は知っている全てをお前らに注ぎ込んできた。
俺は全力でお前らの前に立ってきた。
ヒーローからも、ヴィランからも、世間から嫌われても、俺はお前らの前に立つ。
──それが俺の、クズの、存在証明だから。
彼はヒーローアズマの師匠だった。だから、ヒーローアズマの強さを誰よりも理解していた。
彼はクズだった。誰よりも、クズで、でも、イケメンだった。
彼はそんなヴィランだった。
彼は、そんなヴィランで、ありたかった。
『つぶら、俺があんたを止めてやるよ』
『へぇ、じゃあ、止めてみろよ、ヒーローさん』
ヒーローが教え子であっても、手加減はしない。アズマも俺には手加減はしない。
何故ってそれは、俺は戦闘が好きだから。アズマはそれを知っているから。
『リュー、災難だったなぁ』
『その災難を作ったのはあんただろ、つぶら』
『はっ、そうだったな』
『……アズマを倒しやがって』
『はっ、お前が早く倒さないのが悪いんだろーが!』
味方でさえ、揶揄うクズ。
分かっていた。知っていた。
一人のヴィランには一人のヒーロー。それが暗黙の了解だった。
でも、いや、だから、リューの手でヒーローを倒させたくなかった。だって、それはリューにとって一生の傷になるって分かっていたから。
『あいつは強かったよ、アクセ。お前より、断然な』
誰よりも、誰よりも、アズマのことを知っていた。彼の強さを知っていた。
『お前と違ってあいつは敵に捕まらなかったんだから』
なぜなら、俺はアズマの師匠であって、ヒーローとしてのアズマと戦ったことがあるから。そして、アズマの強さをよく聞いていたから。
──アズマの血の繋がらない義兄であり、ヴィランのアクセから。
『やっぱり、顔良いなあんた……。クソじゃん』
『唐突な暴言。え、何? 真神、何かあったわけ?』
『特には。ただ、顔良いのにクズだなぁって』
『ストレートな暴言。マジで何かあった?』
『……ちょっと好きだった人思い出した』
『はぁ! 元リア充はいいっすねぇ!』
『つぶらさんも大概、ストレートな暴言じゃん』
イケメンなのにクズ。そうヴィラン仲間からも言われた。勿論、敵であるヒーロー達からもそう言われていた。
顔が良い自覚はあった。クズな自覚もあった。だって、意識してクズにしているのだから。
完全悪のヴィラン。教え子すら見捨てるヴィラン。
戦闘狂で、クズな、最低のヴィラン。
それが俺だった。
戦闘が好きだなんて。
「アズマ、俺が止まらなくなったらお前が俺のことを止めてくれ」
戦闘狂だなんて。
「「俺を止められるのはお前だけだから。なんたってお前は俺の教え子だから」だろ、先生」
……俺は戦うことしか知らなかった。だから、だから、戦ってきただけだったのに。
「おー、よく分かってんじゃん」
誰も、俺に戦うななんて、言ってくれなかったくせに。
「何度言われてきたと思ってんだよ」
「あんたを止めてやる」って言ってくれたのだって一人だけだった。
「220回?」
だから。
「5万7843回ですぅ!!」
だから、俺は俺を止める役目をアズマに頼むしかなかった。
──――結局、そのアズマだって俺を止められなかったが。
「ねぇ、円谷、アズマのこと頼むね」
自分の目で成長を全て見ていた。
「はあ……。は? は?!?! は?!?!」
それは偶然だった。
「オレ様、んや、僕さ、アズマのこと殺したくてたまらなくなっちゃうんだよ~。多分、デッドラインで殺しちゃう。アズマのせいでって。お兄ちゃんなのに」
幼少期からの泥棒仲間で、ヴィラン仲間のアクセ。アホでバカで煩くて、害悪なヴィラン。そうアクセは呼ばれていた。でも、俺の前ではそんな一面は出なかった。
「それは、」
断れるはずがなかった。育て方なんて分からなかったけど、やるしかなかった。デッドラインなんて、即死を与える超能力だったし。
「でも、円谷はアズマのこと意味なく殺さないでしょ? 僕のことも、殺すことになっても意味なく殺さないでしょ?」
自分の手で二人を殺そうと思っていたことを後悔していないかと言えば、それは嘘になる。二人に生きていてほしいと思ったこともあったから。
二人がいることで俺が証明されるから。
「…………全部分かって言ってるのか、それ」
だって、俺の全てを知っていたのは二人だけだったから。
「うん。だから、お願いしてるんだよ。君なら、僕達の死を意味あるものにしてくれるはずだから」
兄とは親友で、弟とは師弟関係で。
「…………アズマも死ぬ前提なんだな、アクセ」
俺の人生のなかで唯一幸せだった時間。
「そうだよ。だって、アズマは絶対ヴィランじゃなくて、ヒーロー向きだし、君、自分を止めるように成長したアズマに言うつもりでしょ」
お前がヴィランを裏切らなければ、なんて。お前らが光を見せなければ、なんて。
「ノーコメントで」
「君は僕達兄弟について一番知ってるもんね!」
「ノーコメントで!!」
結局、アクセはヒーローを守って捕まった。でも、それより先にアズマはヒーローとして、俺に殺された。
──――二人を俺が殺したかったなんて、声になんて出せなかった。
全てが存在証明のためだった。全て自分のため。全て、全て、全て。
俺は知っている全てをお前らに注ぎ込んできた。
俺は全力でお前らの前に立ってきた。
ヒーローからも、ヴィランからも、世間から嫌われても、俺はお前らの前に立つ。
──それが俺の、クズの、存在証明だから。
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