世界が終わるその時に

沖方敬太郎

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Pattern5. 真神真希──悪役は愛さない──

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 悪の幹部はカリスマ性がある。それが必須。

 必要に『』悪役はヒーローを殺さない。それが鉄則。

 悪役は完璧な悪役。抜けなんてないはず。

 悪役は悪になる理由なんて、ない。なぜやら、彼らは性悪説のなかで生きているから。



 カリスマ性がなければ、殺しを好めば、どこか抜けていれば、悪になる理由があったら、それは?

 それは──



真神まがみ、お前どうして隊長格に昇格しないんだ。もしくは幹部に』

『俺は八咫やた隊長みたい優秀じゃないからですよ』

 ──つぶらさんみたいに、隊長みたいに、イブキみたいに、ボスの速建はやたけさんみたいに、俺は優秀でもないし、カリスマ性もない、から。


「真神さん! ありがとうございます!」

「こちらこそ。訓練頑張れよ、アルディ」

 でも、それでも、誰も死なないように仲間達を鍛えることはできた。



『真神さんはヒーローも民間人も殺さないのですね。それは何故ですか?』

『誰だって大切な人が死んだら嫌だろ?』

『まあ、それは確かに』

『だから、だよ。2度と同じことを思いたくないし、思わせたくないんだよ、華月かげつ

『優しい人ですね、あなたは』

『どうも』

 ただ、失いたくないだけ。それだけの理由。この辛さを誰にも味わってほしくない。そんな言い訳。


「真神、お前、裏切り者のヒーロー側に行った俺すらも、殺さない、のかよ」

「…………殺して、何になるんですか、八咫隊長」

 ……それが、ヴィランがヒーローを、裏切り者を殺さない理由なんて。



『まーがーみー、報告書は』

『あ、やべ。華月の研究に付き合ってたら忘れてました。サーセン』

『サーセンで済むか。早く書け、真神』

『サーセン、隊長』

 どこか、誰かに助けてほしくて、ちょっと脇を甘くして。そして、仲間に注意され。

 そんな日々だった。


「あなたは、本当に……」

「本当に何だよ、華月」

「いえ、ヴィランヒーローだな、と」

「はっ、ヴィランだなんて、有難い言葉だよ。お前も大概、ヴィランにとってのヒーローだよ。VPUSヴィランパワーアップシステムを生み出したんだから」

「ヒーローと言われるだけで鳥肌がたつのでシャラップ」

 ヴィランにとっても、ヒーローにとっても、俺は「」だった。



 悪役になった理由なんて、理由なんて、忘れた。忘れたくないから、忘れた。

『まーちゃん、私ね、ヒーロー正義の味方になるんだ! そのときはまーちゃんも一緒にヒーロー正義の味方になってね!』

『………そのときは、俺は悪役正義の敵でいい』

『えー、なんでなんでなんでなんでなんで、なんでー!!!』

 好きだった。好きだった。

 好きで好きで好きでたまらなかった。

 傷付けたくなかった。

 本当は閉じ込めておきたかった。

 ……でも、そんなことをしたら、君は悲しむから。が見えなくなるから。

 そのを真正面から見たい、って思ったから。

『ヒーローになったお前をぶっ潰すためだよ、黙れ、アリス!』

『やだよーん!』


 ──2度と、思い出してたまるものか。



 カリスマ性がなくても、人を殺さなくても、どこか抜けていても、俺は悪役ヴィランだ。悪役なんだ。


 だって、は俺が愛した彼女だけだから。



「ヴィラン「真神」、僕は君を倒したくはない」

 全てに目を瞑った。

 過去を振り返らないことにした。

「はっ、流石、ヒーロー正義の味方様だな。ヒーロー、クラ。あまちゃんだな」

「君だってあまちゃんだろう。ヴィラン悪の味方らしくない」

 もう、光が目の前に現れることはない。そんなこと、分かっていても、この選択を終わりにすることなんてできない。

「俺はそれでいい。そう誓ったから」

「アリスと誓ったから?」

「……なんで、アリスの名前を」

「言う必要あるかよ。僕の先輩で片想いしてて、僕も誓ったからだなんて」

 だって、彼女の残したがまだ、この世界には残っているのだから。

「…………ないな」

「だろ?」

「…………まったく。好きになった俺らはバカみたいだな」

「本当に」



 ただ、好きだった。ただただ、彼女ヒーローとの未来のためだった。




 ──彼女ヒーローのためなら、俺は最期まで悪役正義の敵(悪の味方)にだってなってやるんだ。
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