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プロローグ~始まりの出会い~
第一話
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褐色の瓦屋根は滑りやすかった。
ヴレイは時々足を取られながら、前を走るザイドを懸命に追い駆けていた。
同じ黒髪が、風でわさわさ動いている姿が目についた。他の十五歳の子に比べるとザイドは長身だ。平均より低く、しかも二つ年下のヴレイはザイドの頭をいつも見上げていた。
屋根と屋根の間を飛び越え、密集している町の中心地へと近づく。
町の小径からは、きゃあきゃあとはしゃぐ子供たちが、自分たちが向かっている方角と同じ方角へ走っていく。後ろからは大人たちも足早に、誰も彼もやたら楽しそうに同じ方角へ歩いていた。
ザイドが屋根から屋根へ飛び移った。ヴレイも勢いに任せ塀の上へ飛び移る。
「おっと」とよろけてヴレイはバランスを立て直す。
「大丈夫か、もう直ぐだぞ」
チラッと後ろを一瞥したザイドが走り出したので、ヴレイも従いて行く。
今度は眼前に迫ってきた大人二人分の高さはある屋根へと、ザイドは飛び移った。
少し高いなと、思ったヴレイは勢いに任せて、高く跳躍した。
また滑りやすい瓦屋根のせいでヴレイは「おーっと」と今度こそ転びそうになった。瞬時にザイドがヴレイの手を掴んで引き寄せると、そのまま屋根の先端に掴ませてくれた。
「ふぅ、危なかった、ありがと、ザイド」
「お前は本当にドジだな」
鼻で笑うザイドは本気で呆れていたが、ヴレイは眼前の景色に感激した。
「うわぁ、人がたくさん! いつもの町の広場じゃないみたい!」
「そうか? そんなに驚くことか?」
ヴレイとザイドの眼前には、薄茶色の煉瓦作りの建物に囲まれた広場があり、広場に描かれた絵柄が見えなくなるほどの群衆に埋め尽くされていた。
広場の中央には劇場が作られ、今か今かと開演を待つ歓声に、自分の声さえも聞こえないほどだ。
「見たいって言ってただろ、お前の十三歳の誕生祝だ。すっげぇ特等席だろ!」
自慢げにザイドは口端を吊り上げてニッと笑ってみた。
「すっごいよ、ザイド! よくこんな場所があるなんて知ってたね」
「だろ! 村から何度も通って、探したんだぜ」
ザイドは得意げに笑って見せた。
最近、学校が終わって早々、どこかに行っていた先はここだったのかと、ヴレイは納得した。
「だから、こんなに人がいても驚かなかったのかぁ、僕も誘ってくれればーー」
「おや? 先客がいたとは、君たちもこの町の子か?」
突如訊ねられて、「え!」と二人は声を揃えて振り返った。変な言葉遣いが耳についた。
しかも科白を遮られ、ヴレイはむくれ顔でその子を見た。
黄金色の長い髪が印象的な、少女が後方に立っていた。
春を告げる強い横風が靡き、黄金色の髪を耳元で押さえた。
花の刺繍がされたワンピースの下には、騎士のような動きやすい格好をしていた。上等そうな織物だという雰囲気は見れば分かる。
女神様のような出で立ちに、二人は同時に言葉を失った。
ヴレイは時々足を取られながら、前を走るザイドを懸命に追い駆けていた。
同じ黒髪が、風でわさわさ動いている姿が目についた。他の十五歳の子に比べるとザイドは長身だ。平均より低く、しかも二つ年下のヴレイはザイドの頭をいつも見上げていた。
屋根と屋根の間を飛び越え、密集している町の中心地へと近づく。
町の小径からは、きゃあきゃあとはしゃぐ子供たちが、自分たちが向かっている方角と同じ方角へ走っていく。後ろからは大人たちも足早に、誰も彼もやたら楽しそうに同じ方角へ歩いていた。
ザイドが屋根から屋根へ飛び移った。ヴレイも勢いに任せ塀の上へ飛び移る。
「おっと」とよろけてヴレイはバランスを立て直す。
「大丈夫か、もう直ぐだぞ」
チラッと後ろを一瞥したザイドが走り出したので、ヴレイも従いて行く。
今度は眼前に迫ってきた大人二人分の高さはある屋根へと、ザイドは飛び移った。
少し高いなと、思ったヴレイは勢いに任せて、高く跳躍した。
また滑りやすい瓦屋根のせいでヴレイは「おーっと」と今度こそ転びそうになった。瞬時にザイドがヴレイの手を掴んで引き寄せると、そのまま屋根の先端に掴ませてくれた。
「ふぅ、危なかった、ありがと、ザイド」
「お前は本当にドジだな」
鼻で笑うザイドは本気で呆れていたが、ヴレイは眼前の景色に感激した。
「うわぁ、人がたくさん! いつもの町の広場じゃないみたい!」
「そうか? そんなに驚くことか?」
ヴレイとザイドの眼前には、薄茶色の煉瓦作りの建物に囲まれた広場があり、広場に描かれた絵柄が見えなくなるほどの群衆に埋め尽くされていた。
広場の中央には劇場が作られ、今か今かと開演を待つ歓声に、自分の声さえも聞こえないほどだ。
「見たいって言ってただろ、お前の十三歳の誕生祝だ。すっげぇ特等席だろ!」
自慢げにザイドは口端を吊り上げてニッと笑ってみた。
「すっごいよ、ザイド! よくこんな場所があるなんて知ってたね」
「だろ! 村から何度も通って、探したんだぜ」
ザイドは得意げに笑って見せた。
最近、学校が終わって早々、どこかに行っていた先はここだったのかと、ヴレイは納得した。
「だから、こんなに人がいても驚かなかったのかぁ、僕も誘ってくれればーー」
「おや? 先客がいたとは、君たちもこの町の子か?」
突如訊ねられて、「え!」と二人は声を揃えて振り返った。変な言葉遣いが耳についた。
しかも科白を遮られ、ヴレイはむくれ顔でその子を見た。
黄金色の長い髪が印象的な、少女が後方に立っていた。
春を告げる強い横風が靡き、黄金色の髪を耳元で押さえた。
花の刺繍がされたワンピースの下には、騎士のような動きやすい格好をしていた。上等そうな織物だという雰囲気は見れば分かる。
女神様のような出で立ちに、二人は同時に言葉を失った。
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