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第20話
しおりを挟む10分ほど電車に揺られたところで降りた。
「えーっと、確かこの辺だな」
トンさんがメモを見ながら歩いている。
しばらく歩くと、あるアパートに着いた。
「ここだ、アニ」
「行ってみましょう」
俺たちは玄関のチャイムを鳴らした。
ピンポーン。
すると、中から出て来たのは女性だった。恐らく奥さんだろう。
「どちら様ですか?」
「あ、あのぅ、えっと」
俺が何て言おうか悩んでいると、トンさんが代わりに喋ってくれた。
「私達、ギョプの同僚でして、最近休んでるみたいなんで、どうしたものかなぁと思いまして」
「あの人何も言ってませんでした?」
「はい、何も」
「今あの人捕まってるんですよ」
「えっ?!」
俺とトンさんは目を合わせて驚いた。
「よかったら理由とか聞いてもいいですか?」
「浮気したんですよ」
「浮気でどうして捕まるんですか?」
「浮気って罪なんですよ。常識じゃないですか」
地上では浮気は逮捕案件なのか。
「で、今はどこにいるんですか?」
「行っても会えませんよ。家族の私でも面会出来ないんです」
「そうなんですか?」
「えぇ、多分当分は出てこれないですし」
「じゃあいつ頃帰ってくるとかは分からないですかね」
「何か用事でもあるんですか?」
「大した事じゃあないんですけど、もしよかったらギョプが帰ったら連絡してくるように伝えてもらえますか?」
「分かりました」
俺たちはギョプの奥さんと話を済ませると、ひとまず帰る事にした。
結局トンさんが会話をしてくれた。
「驚きましたね」
「まさか浮気で捕まるとはな」
「あんな綺麗な奥さんがいるのに浮気って最低ですね」
「俺なんか出会いもねぇのにあいつだけやりまくってたのか」
俺はトンさんのこうゆうところが苦手だ。
下品というか浅いというか。
「まあでもギョプが無事なのが分かっただけよかったですよ」
「そうだな!」
外はすっかり暗くなりトンさんは明日も仕事の為解散した。
トンさんはからかうのが好きなだけな陽気なおっさんだと思っていたが地上の生活に於いては案外頼りになるんだなぁと感心した。
そして浮気がどれほど罪深いかを改めて思い知った。
まぁ俺は浮気できるほど薄情ではないし、そもそも選べる立場ではないのだ。
最近一日がすごく長く感じていた。
しかし、俺は晩に現れる星に癒された。
地上は汚い時も臭い時もあるが、それ以上に綺麗で幻想的な世界だ。無限に広がるパワーを感じる。
一人星を見ながらアパートに帰ると、ギョプの一件で疲れていた俺はシャワーも浴びず布団に倒れ込むように転んだ。
そんな時考えるのはやはりカエさんの事だ。
そして、時々自分がどうしてここにいるのか分からなくなる。
元々俺は彼女が欲しくて、トンさんに教えてもらい地女を知った。しかし、実際にこの地上に来てカエさんという素敵な人と無事出会えたというのにこのザマだ。
トンさんならどうするだろう。
速攻で事を済ませているはずだ。
でも俺はどうだ?
カエさんがあんなにも積極的に誘ってくれているのに何をそんなに怖がっているんだ。
考えた結果俺は一つの結論に辿り着いた。
俺‥‥本気でカエさんの事を好きになってる。
一目惚れと言えばそれまでだが、そうじゃない。カエさんの優しい話し方や笑った時の笑顔、少し意地悪な表情、グラマラスな‥‥。
それに、好きだからこそ慎重になるんだ。
カエさんに本当の気持ちを話そう。
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