地女に恋した俺は夢を見ていた

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第22話

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 カエさんと俺は布団の上に並んで座った。

「話ってなんですか」

「何から話せばいいのか。まずはスイッチの事ですかね」

「スイッチの事?」

「実は少し聞いた話なんですけど、このスイッチ制度は今の段階で試験中らしいです」

「そうなんですか」

「そして、単純に少子化対策と言われてますけど、この国は男性の割合が少ないのも原因の一つにあります」

「はい」

「カエさん地下って知ってますか?」

「地下って地下鉄とかの?」

「それよりもっともっと深い所に人が暮らしている地下の世界があるんですよ」

「それとスイッチとどう関係があるんですか?」

「地下は地上と比べて男性の割合が多いです。そこで国は地下の男性を地上に招待して、出会いを広げようと試みているんです」

「すごく壮大な話みたいですけど、私には少し理解がし難いです」

「そうですよね。でも本当なんです、だから国の試験の為に頑張らなくてもいいんですよ」

「そう言われても」

「実は俺も地下から来た一人なんです‥‥」

「えっ?!」

 カエさんはとても驚いていたが、当たり前の反応だ。

「黙っていてごめんなさい」

「‥‥地底人?」

「そうとも言いますね」

「ちょっと驚き過ぎてなんて答えたらいいのか‥‥」

 カエさんはとても動揺している。

「地底人と言っても同じ人間ですよ。環境は結構違いますけどね」

「そう、ですか」

「俺、見た通り全くモテないんですよ」

「そんな事ありませんよ」

「はい、そう言ってくれるのはカエさんだけなんです。だから、カエさんがアプローチしてくれた時はとても信じられなかったです。もちろん、今でも夢を見てるみたいです」

「人は見た目じゃないのに‥‥」

「そうですよね、でも現実は厳しくて。今まで付き合っても長続きはしないし、中途半端な容姿にパッとしない性格。勉強だけが取り柄でした。でも社会に出て必要とされるのは容姿がいい人ばかりで‥‥」

「アニさん‥‥」

「そんな時地上の話を聞いたんです。半信半疑でした。でも今は心から来てよかったと思ってます」

「試験といえど国に感謝ですね」

「カエさんは前向きですね」

「前の私なら前向きになれていなかったと思います」

「じゃあ何か変わるきっかけでも?」

「はい。次は私の話をしてもいいですか?」

「もちろんです」

 カエさんは深呼吸をすると、ゆっくり話始めた。

「役所でスイッチの保持者が閲覧出来るのは知ってますよね」

「はい、前にその話はしましたよね」

「見に行った事あります?」

「あるわけないじゃないですか!」

「ふふっ。そうですよね!」

「で、それが何か?」

「閲覧出来るのは何も情報だけじゃないんですよ。顔写真付きなんです」

「えっ!あり得ない‥‥」

「実は、悪意のある人がそれを閲覧してよくない噂を立てたり、SNSで晒されたりしたんです。それが原因で知らない番号から必要に電話が鳴ったり、家に知らない人が来たり怖い思いをしていました」

「それは辛いですね‥‥」

 最低だ、本当に腐っているこの国は。

「でも、もう大丈夫なんです」

「本当に大丈夫なんですか?」

「はい。だって今の私は生まれ変わったんですから」

「どうゆう事?」

「私のこの顔、整形なんですよ」

「‥‥‥えーーっ!!」

「ふふっ。そりゃ驚きますよね。でも失礼ですよ!」

 カエさんはそう言うと少し笑いながらほっぺを膨らませている。

「す、すみません」

 驚いた。この綺麗な顔が整形だったなんて。

「私は見た目のせいで今まで全くモテなかったんです。むしろそのせいで学生時代も酷い目に合っていました。でも整形してからは、街で声をかけられる事も多く、誰も私がスイッチ保持者だと思わなかったはずです」

「そうですよね。俺も最初は信じられなかったですもん」

「それから、自宅も引っ越して心機一転職場も変えた時、街でアニさんを見かけたんです」

「そうだったんですね」

「前はマッサージ店で働いてました。薄暗いし、施術中はみんな寝ますしね。でも整形してからは憧れだった洋菓子店で販売の仕事が出来る様になりました」

 カエさんから時々甘い匂いがしたのはそのせいか。

「カエさんも色々大変だったんですね」

「アニさんに何故か惹かれるものがあったのは私と似ていたからなんですね。アニさんの話を聞いて納得しました」

「俺もカエさんの話を聞いて、すごく親近感と言うか近づけた気がします」

「お互いのことも知った事ですし‥‥。その‥‥」

 そうだ、曖昧にするわけにはいかない。

「カエさん!」

「はい」

「俺と付き合ってください!」

「はい!」

 そう言うとカエさんは嬉しそうに俺に飛びついてきた。その勢いで俺はカエさんに押し倒されたような体勢になった。

「もう恋人同士なんですし遠慮はなしですよ!」

 少し意地悪な顔をしながら、そうは言っても俺が強引に手を出すわけがないと高を括っているようにも見える。

「ゆっくりいきましょう」

「‥‥‥わかりました」

 俺はカエさんの頭をそっと撫でた。

「あっそうだカエさん、もう敬語はなしにしません?」

「いいの?」

「だってよそよそしいしね」

「嬉しい!」

 カエさんは素直で優しい俺の彼女です。
 
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