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第29話
しおりを挟む俺はしばらく引きこもっていた。
しまいにはネットで死ぬ方法を検索する程嫌気がさしていた。
呆然とスクロールしていると、最初に見たサイトがある。
地女に出会えるという謳い文句のサイトだ。一瞬目を疑ったが、どうせまだ残ってるだけだろうと気にしないようにした。
しかし、気にしないようにしても気になるのが俺。
クリックしてみると、画面が落ちた。なんだよ、PCまで壊れてとことんついてないな。
画面が暗くなりしばらくすると、
「ようこそ!!よくクリックしてくれました!!」
「わぁ!!」
いきなり大声で画面から聞こえたのは聞き覚えのある男性の声。
一気に記憶が蘇り正気を取り戻す。
これは!!!!
「ビックリしたでしょ?ね?そうでしょ?」
「俺の事覚えてますか!?」
「どうも、申し遅れました。私、このサイトの管理人で地上人のサイと申します」
「サイさん?俺ですよ!分からないですか?」
「あなたは地女と出会いたいですか?」
もしかしてこれって、自動音声‥‥?
「俺は出会ったんですよ。地女に‥‥だから、もう一度その人に会わないといけないんです!」
「そうですか、残念です。では」
「待ってください!さっきのは嘘です!本当は出会いたいです!」
俺はとっさにこう言うしかなかった。
「そうですか!ではではご案内致しましょう!」
「お願いします!」
‥‥‥‥‥。
早く来い!そわそわ早く来い!
そう願いながら俺は待っていたが、一向に体が異変を感じる気配がない。
なんでだ。やはり無理なのか‥‥。
すると、再び画面からサイさんの声が聞こえた。
「大変申し訳ございません」
「な、なんですか?」
「あなたは合言葉が必要です」
「合言葉って何の事ですか?」
「あなたに登録されている合言葉です。合言葉をどうぞ」
「そんな!急に言われても合言葉なんて聞いてないですって」
「では、残念ですがさようなら」
サイさんがそう言うとPCの画面が明るくなった。
「待って下さい!サイさん!お願いです!俺は行かないと‥‥」
なんだ、無理じゃないか。最初から無理だったんだよ。合言葉ってなんだよ。
そんなの聞いてないよ‥‥‥‥?
合言葉?そう言えば初めて地上に行く時にサイさんが忘れないようにって言ってた気がする‥‥。
そうだ!俺が右の乳と聞き間違えていたやつ、ミヂノチチが合言葉かも!!
思い出した俺は再度サイトを開くとさっきとは違う声だった。
「ようこそ、よくクリックしてくれました」
「あの!俺、地女と出会いたいんです!」
「ではご案内致します」
「お願いします!」
「ご案内するにあたってあなたは合言葉が必要です」
「ミヂノチチです!ミヂノチチ!」
「少々お待ち下さい」
俺はこれで地上に行けると思っていた。
しかし期待はすぐ裏切られる事に。
「大変申し訳ありませんが、合言葉が違います。正しい合言葉をどうぞ」
「えっ?!そんなはずはありません!ミヂノチチで合ってます!」
「では残念ですが、さようなら」
「ちょ!ちょっと待って下さい!」
音声はそれっきり途絶えてしまった。
クソ!!ミヂノチチが違うなら他に何があるんだよ!
あー!!もう!!
俺はさっきまで死ぬ事を考えていたのに。
そんな事すら忘れていた。
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