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第31話
しおりを挟む「もも、まだー?」
「今行くー!」
「ごめんごめん」
「ももはそんなに頑張ってメイクしなくても十分可愛いから大丈夫だよ」
「またそんな事言って~!遅いって思ってるんでしょ!」
「違うよ!本音だよ!」
私達は式場の契約をしに行く為に準備をしていた。
そして冬馬さんの運転で向かう。
式場は冬馬さんのお母さんの紹介で決める事になった。正直自分たちで見学して気に入った場所でしたかったけど、とても言えなかったし何より冬馬さんがそれを当たり前のように聞き入れていたのだ。
それでもドレスを選んだり料理を決めたりと山ほどある内容を決めるのは大変で、あっという間に数ヶ月経ってしまった。
4月にプロポーズをされてから3ヶ月、蝉の鳴き声がアパートの外から聞こえている。
式は3ヶ月後の10月中旬だ。
もちろん大安の日だ。
招待状も無事発送出来た。
入籍は結婚式当日にしようと冬馬さんと決めている。何故なら結婚記念日と入籍記念日が違うと特別感がなくなってしまいそうで記念日は一つにしたかったからだ。
冬馬さんと夜ご飯の用意をしていた。
「ももにばっかり任せてごめんね」
私が野菜を炒めて、冬馬さんは使ったまな板や包丁を洗っている時だった。
「いいよ、冬馬さんは店があるんだし。それに楽しみだから忙しい方が早く時間が過ぎるし」
冬馬さんは頻繁に店を閉めるわけにもいかず、契約の時以外は打ち合わせなどは私一人で行っていた。
「ははっ、前向きだね、助かるよ」
何気ない雑談の時間‥‥お店の事、聞いてみようかな。
「‥‥ところでさ、私のお店の事なんだけど‥‥」
「うん、どうしたの?」
冬馬さんは洗い物が終わって次はテーブルを拭いていた。
「式が終わって落ち着いたらさ、店舗見に行こうと思ってるんだけどどうかな?」
「‥‥いいと思うよ、俺も時間があれば付き合ってあげるよ。一応アドバイスくらいは出来ると思うし」
気のせいだろうか、一瞬冬馬さんの動きが止まった気がした。
「‥‥本当にやってもいいんだよね?」
私は恐る恐る聞いた。
「どうしたの?もしかしてお金足りない?」
冬馬さんはお金の事を気にしてるのか、確かに今は何かとお金がかかる。しかし私が心配してるのはそこではない。
「いや、そうじゃないんだけど‥‥結婚したらやっぱり専業主婦になった方が冬馬さんは嬉しいのかなって思って」
「そりゃあ店してたら忙しくて帰るのも遅いし休みもあまりないからね。でも専業主婦なら俺が帰ったらももがご飯作って待ってくれてるわけだから嬉しいのは嬉しいけど」
「やっぱそうだよね‥‥」
「だからって諦めても欲しくないから、結局はもものしたいようにするのが一番だよ」
「うん‥‥」
自分から聞いておいて気まずい雰囲気になってしまい後悔していた。
「そんな思い詰めないでよ。俺が負担になってる?」
「そうじゃないよ!ごめんね変な事聞いて」
「いいけどさ、俺に気遣わないで。俺はももと居られるだけで幸せなんだから」
「ありがとう」
冬馬さんは料理をしている私を後ろから抱きしめた。
「ももは優しいから色んな事に気を使うんだよね。俺がももの事引き止めた時も、俺を傷つけまいと思って仕方なく来てくれたんだよね」
「あの時は‥‥実を言うとね、冬馬さんにドキッとしちゃったの。だから全然仕方なくじゃなかったよ」
「そうだったの?その時知ってたら相当舞い上がってただろうなぁ俺」
「うん。てかもうご飯できるから離れていいよ?」
私が笑いながら言うと冬馬さんも笑っていた。
出来た料理をテーブルに運び、冬馬さんと向かい合って食事をする。
この時はまだ自分の優しさが後に仇になるとは想像もしていなかった。
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