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第32話
しおりを挟む式も近づいていた10月上旬。
いつものように私は冬馬さんの店でバイトをしていた。
店のドアが開き、女性のお客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませ」
すると、そのお客さんはメニューを見るでもなく真っ直ぐ私の方に向かってきた。そして私に聞いてきた。
「あなたがももちゃん?」
なんで私の名前を知ってるんだろう。もしかして忘れてるだけで知り合いなのか?
「えっ、はい、そうですけど‥?」
「いきなりごめんね。私柊生の姉なんだけど少し時間ある?」
「えっ柊生のお姉さんですか?」
柊生のお姉さんが私に何の用なの?
私は急に不安になった。
しかし、丁度この時冬馬さんは買い出しに出掛けており不在だった為、柊生の話なら今の方が都合がいいと思い一旦店を閉めた。
「ビックリしたでしょ」
「はい」
柊生のお姉さんと私は座って話すことに。
「単刀直入に言うね。柊生がいなくなったの」
「はい?」
柊生がいなくなった?それはいわゆる家出のようなものなのか、それとも‥‥。
「ここ最近家に帰って来なくて」
「‥‥そうなんですか」
家出の方だった。
「電話しても出ないし。それでね、柊生の友達に聞いたの」
「はい」
「そしたら柊生友達の電話にも出ないらしくて、でもあなたからなら出るんじゃないかって言われてここを教えてもらったの」
「どうして私なんですか?」
「あなたの事すごく好きだったみたいだから」
「だからって‥‥」
「柊生にかけてみてくれないかな?」
「出ますかね‥‥」
「きっと出ると思う。あなたうちの事柊生から聞いてない?」
「どんな事ですか?」
「親の事とか」
「あぁ。殆ど家には居ないって柊生は言ってましたけど」
「そぅ。本当の事は言ってないのね」
「本当の事?」
「殆どいないってのは間違えではないけど、正しくはもういないのよ」
「もういない、とは?」
「死んでるの、父も母も」
「えっ‥‥」
そんな事一言も聞いてなかった私はとても驚いてしまった。
「そりゃ驚くよね」
そう言って柊生のお姉さんは、家族の事を教えてくれた。
柊生の両親は柊生が高校に入学したばかりの時交通事故で亡くなっており、お姉さんはその後大学を辞め、夜の仕事をして生計を立てている。柊生はその頃から学校もまともに行かなくなっていた、そんな時私と出会い、どうでもよくなっていた柊生にとって私はとても魅力的に見えたらしい。
お姉さん曰く精神的に不安定だったのが私と付き合い始めた頃から落ち着いていたと。
「そんな事があったんですね‥‥私何も知らなくて」
「それが突然また前の柊生に戻ったの、しかも今度は悪い友達と付き合い出して‥‥」
「それって私と別れたから‥‥ですか」
「何とも言えないけど相当好きだったって言ってたらしいから」
「そうですか‥‥」
「帰って来なくなって一週間経つの、どこかで死んでるんじゃないかって心配で‥‥」
柊生のお姉さんは不安気な表情でどこかを見つめていた。
「‥‥わかりました、連絡してみます」
「ありがとう、これ私の連絡先だから何か分かったら教えてね」
そう言って番号の書いたメモを渡してくれた。
「はい」
「仕事中にごめんね」
「大丈夫ですよ」
そして帰り際お姉さんが私の手を見て言った。
「あなた結婚したのね」
「‥‥来週挙式予定なんです」
「そっか、おめでとう」
少し悲しそうな心のこもっていないようなおめでとうを言われ複雑な気持ちになりながらも、柊生の事が本当に心配なんだなと、どうにか家に帰るように私が伝えないとと思った。
「ありがとうございます‥‥」
お姉さんが帰ると、すぐ店をまた開けた。
しばらくして冬馬さんが店に戻ってきた後、用事が出来たと嘘をついて店を出た私は人気のない場所で電話をしようと公園に向かった。
柊生に電話するのは数ヶ月ぶりだ。
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