プレパレーション

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第33話

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 いつものベンチに腰掛け、スマホの画面を開き柊生の名前を探す。着信履歴にはない。

 少しどきどきしながら電話をかける。
 
 プルルルル‥‥‥

「ももちゃん?」

 意外にも柊生はワンコールで出た。

「‥‥久しぶり、だね」

「本当だよ!どうしたの急に?」

「あのね、お姉さんから聞いたんだけど家帰ってないの?」

「姉貴がなんで?」

「心配して店まで来てくれたよ。誰が電話しても出ないし何してるのかわからないって」

「そうだ!ももちゃん今どこ?」

「えっ?今は公園にいるけど」

「すぐ行くから待ってて!」

 柊生はそう言うと電話を切ってしまった。

「えっ‥‥」

 どうしよう、柊生が来たところで何を話せばいいのか。それよりも数ヶ月ぶりに会う柊生に緊張していた。

 そんな事を考えながらキョロキョロしていると後ろから声がした。

「ももちゃん」

「‥‥柊生??」

 そこにいたのは私の知っている柊生ではなかった。とても痩せ細っており顔色も悪く髪も伸びきっていた。

「久しぶりだね!」

「あっ、うん、そうだね」

「隣座ってもいい?」

「うん」

 柊生が私の隣に座った。

「本当久しぶりだね」

 柊生が笑っている、私に会えて嬉しいのか?一方的に振った私に怒ってはいないのか。

「うん。それでさ、今‥‥どうしてるの?」

「そんな事今はいいじゃん」

「よくないよ。その為に電話したのに」

「話したくない」

 柊生はそう言い抱きついてきた。

「ちょっと、やめてよ」

「やめない」

「本当に‥‥、お姉さんが心配してるよ」

「帰りたくないから」

「どうして」

「ももちゃんといたい‥‥」

 その言葉に胸がスギンとした。

「わかったから‥‥とにかくお姉さんに連絡してよ」

 そう言いながら柊生を離した。
 とても辛く疲れきっているように見えた。

「姉貴からなんか聞いたの」

「うん、大体は」

「てか俺気付いちゃったんだけど、その指輪なに?」

「‥‥私‥‥結婚するから」

「もしかしてあの店長と?」

 柊生の顔が曇っていくのが分かった。

「うん‥‥」

 私はそう答えるのが精一杯だった。

「そっか‥‥。そんなに好き?」

 柊生が何故そんなに私の言い辛い事を聞いてくるのか分からなかった。もしかしたら当てつけなのか、それとも‥‥。

「早く帰りなよ」

 私はそう言ってその場を去ろうと立ち上がった。

「だめだよ」

 柊生は私の手を掴み引き止めた。

「何がだめなの。私は結婚するし、柊生はお姉さんが心配してるから早く帰るべきだよ」

「その二つを一緒にしないでよ。俺が言ってるのは」

「いいから!帰って!」

 そう言って柊生の手を振り払い大きな声で言った。今の私にはそうするしかなかった。

「ももちゃん‥‥」

 そんな顔で私を見つめないで。
 もう目を合わせる事も出来なくなる。

 私は柊生の視線に耐えられなくなり走ってその場を後にした。

 無我夢中で走った、まるで邪念を消し去るかのように。

 そして私は柊生のお姉さんに一言言っておこうと電話をした。

「もしもし、柊生のお姉さんですか?」

「ももちゃん?柊生電話出たの?」

「はい、電話にも出ましたし、さっき会ってきました」

「会ったの?どこで?」

「駅の近くの公園です。一応帰るように伝えました」

「ありがとね」

「はい」

 柊生のお姉さんの電話を切り、アパートまでゆっくり歩いて帰る事に。

「ただいま」

「おかえり。遅かったね、どこ行ってたの?」

 冬馬さんになんて言おう‥‥まさか柊生と会ってたなんて言えないし。

「ゆいが、ちょっと相談したい事があるって言うから会ってた」

「そうなんだ。ももは本当優しいね」

「そうかな?あっ私先お風呂入ってくるね」

 冬馬さんの顔を直視出来なかった私はそそくさとお風呂に逃げてきた。

 別に悪い事をしているわけでもないのに罪悪感を感じるのはなんでだろう‥‥。


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