【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪

鈴菜

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【最終話】聖女の終わり

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「聖女しゃま!あなたを処刑ちます!」

あらあら、随分と可愛いらしい宣告ですこと。
それもその筈。今私に向けてそのような言葉を放ったのはまだ4才程度の幼子なのですから。

「よく処刑なんて言葉を知っていますわね。たいへん勉強熱心で偉いと思いますわ。」

そうやって褒めてあげると、これまた可愛らしい笑みを向けてくれます。
ですが、思い出したように彼女なりのキリッとした顔に戻ると再び私に宣告してきました。

「とにかく聖女しゃまは処刑なの!反省してきびしい罰を受けてくだしゃいな!」

反省、ねぇ。
最近は責められることも反省することもしていないと思うのだけど、一体何なのかしら?

「聖女しゃま最近リッタに構ってくれないんだもん!これはとってもとっても重い罪です!」

そう言って、彼女は私に抱きつきます。

彼女の名前はリッタ。
それは個人的に思い入れのある名前です。
まだ祖国の聖女だった頃に出会った、今では私唯一の親友となっている彼女の偽名だったもの。

その名前を私に付けられたのが、この子。
親友と親友が選んだ男の間に生まれた女の子。
私は2人の代わりにこの子を育てて…

「いや、私も夫も生きていますから。勝手に妄想の中で私を殺さないでくださいますか?」

「そう思うのだったら貴方たち2人とも仕事を減らしなさいな。リッタが最初にママ呼びしたのが私という事実をもっと重く受け止めなさい。」

ぐふっ、と言って倒れてしまいました。
適度に聖女の仕事をサボる私と違って勤労精神に満ちているのは、立派だと思うけれどね。

この親友…フレンダは今や一般人です。

多くの名前を使い分け暗躍するスパイのままだと命の危険がありますからね。私の一存で辞めさせました。
それに伴い名前も1つに決めた結果が親友を意味する言葉によく似たフレンダです。

「そうだよママ。聖女しゃまの言うこと聞いてもっと休んで。じゃないと2人とも処刑するから。」

いつの間にか私から離れていたリッタは母親のもとに駆け寄ると、頭を撫でながらそう言います。
フレンダも愛娘との触れ合いで癒されているようで、随分と幸せそうなだらしない顔を晒しています。

「そうよ小さなお姫様の言う通りにしましょう。処刑なんて今更されたくありませんもの。」

そう言って、私も仲良しの2人に交じります。
まったく、温かくて幸せな空間ですこと。


それからしばらくすると、母娘は帰りました。
今日はフレンダの旦那さんも帰って来るそうです。
はぁ…私の未来の旦那様はいつ帰ってくるのかしら?

数年前のあの騒動の後。
結局シズはノーデン子爵家を受け継ぎました。
ただし間違ってもノーデン家のためではありません。

シズが子爵となったのは私との婚約のためです。
帝国ではどちらか一方が貴族でないと法的力を持った婚約をすることが出来ません。
ですが、1度法的力を持った婚約を結べば他人からの煩わしい邪魔に対し合法的な罰を与えられます。

これによって私を嫌う元ノーデン夫人、シズの母親の邪魔を防いだのです。
あちらとしてもノーデン子爵家を存続させるためにはシズが必要ですし、納得せざるを得ませんでした。

こうして後顧の憂いも無くシズと結婚し正式な家族になる準備は整ったのですが、問題が1つあります。
シズがもう大忙しなのです。

シズがいくら優秀と言っても、子爵家の当主を務めるには流石に教養が足りません。
数多の呪いを抱え苦しんできた10年余りは、ロクな教育を受けられませんでしたからね。
ですから今になって子爵当主の仕事をこなしつつ勉強も並行して行っているのです。

頑張り屋さんなところも好きだけど、早死にさせられない理由もできましたしシズにも休んで欲しいわね。


ようやくシズが帰って来た頃にはすっかり夜です。

「ただいま帰りました、リーラ。」

私のことをお嬢様ではなくリーラと呼ぶのもすっかり慣れてしまいましたね。
愛称で呼ぶのに毎回赤面していた頃が懐かしいわ。

それから私が用意した食事を2人で食べ、一緒に入浴し、寝室に向かいます。
寝室には使い慣れたダブルベッドが1つ。
私はベッドに腰掛け、シズを隣に座らせます。

「ねえ、シズ。聞いて欲しいことがあるの。」

隣に座ってシズの肩に身体を預けて続けます。
まるで何でも無い日常会話のようなトーンで。

「私、しばらく聖女を休もうと思うの。」

顔は見ていないけれど、シズが驚いたのがなんとなく伝わってきました。
何と答えればいいのか分からない様子で困っている彼を存分に楽しんでから、その手を私のお腹に当てて

「もう私1人の身体じゃないからね。」




私は始め聖女カトレアナとして生まれました。
色々あって処刑され転生してもまた聖女。
ただ、リュミエラになって聖女以外にも多くのものになれたと思います。

それは、妹に優しい姉。
それは、親友を持つ普通の人。
それは、愛する人と結ばれた女性。

…そして、子どもを持つ母親。

この先、私はいつか死を迎えるでしょう。
それは処刑という形かも知れませんし、普通に寿命を迎えて穏やかに死ぬのかも知れません。

どうあれその時。
私は『聖女の私』として死ぬことはありません。
だって、私は最早ただの聖女ではないのですから。

私は私。
私を縛り付けてきた聖女の称号はもう終わりです。
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