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人魚姫は夏の星座に導かれ、運命の王子様と出会う
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「まあ、綺麗な星空」
人魚族の王女ミーアは、紺碧の海から夜空を仰ぎ見る。
夏の星座はとりわけ彼女のお気に入りだった。
「しんじゅ座とうみがめ座の星を辿っていく先に運命の人がいる――」
古くから人魚族に伝わる言葉。
夢見がちなミーアは、うっとりした様子で星を眺めた。
「あれは何かしら?」
夜の海に漂う一隻の小さな船。
好奇心旺盛なミーアは、泳いで近づく。
「まあ、人間だわ」
船の中を見ると端正な顔立ちの男性が眠っていた。
服装は質素だが、どことなく気品が漂っている。
ミーアの気配を感じ取ったのか、男性は目を覚ました。
「今晩は、海の民よ」
「あなた、私が怖くないの?」
地上の人間は人魚族を得体の知れない存在だと避けるのが、この世界での常識だった。
だからミーアは人間の眠る夜に、大海原を自由に泳ぎ回っているのだ。
「夜闇の刻だけ人魚族に会えると噂で聞いてね。まさかすぐに会えるとは幸運だ」
「わざわざ会うために一人で海へ出たの?」
人魚族は友好的な種族だが、海獣や聖獣は攻撃的なものが多い。
それもあり、海に住まう人魚族も恐ろしいと誤解されてしまったのだろう。
「僕はルイ。君の名は?」
「私はミーアよ」
そう答えるミーアの心臓が早鐘を打つ。
(この淡く弾ける気持ちは、一体なに――?)
「ミーアか、美しい名だ」
「そんなこと……せっかくだし案内するわ」
ルイの手を取り、ミーアは海に潜る。
するとルイは人から人魚へと姿を変え、海中でも呼吸ができるようになっていた。
「ただし時間はくじらが二度、鳴くまでよ」
「ああ、分かった」
ルイが微笑むと、またしても胸が高鳴る。
ミーアは気にしないようルイを人魚の国へ案内した。
荘厳な神殿、珊瑚礁の王宮、貝の家々――
そのどれもが美しく、悠久の時を揺蕩うよう静かに佇んでいる。
「こっちへ来て」
王国を出ると、二人は海の山脈へと向かう。
まだ見ぬ生き物が住んでいると言われる深淵。
頂は海上に少しだけ顔を覗かせている。
そこには多種多様な種族が住んでいた。
サメ族、イルカ族、タコ族――
「すごいな……」
ルイは息を呑む。
と、鯨の鳴き声が二度、聞こえてきた。
「さあ、帰らなくちゃ」
明るい口調とは裏腹に寂しさが募る。
ルイが船に上がると同時に魔法を解いた。
「ありがとう、ミーア。とても有意義な時を過ごせたよ」
「良かったわ、それじゃ」
去ろうとするミーアをルイは呼び止める。
「ミーア。君がよければまた会いに来てもいいかい?」
「……ええ、待っているわ」
ミーアは幸せそうに微笑む。
ついに運命の王子様と出会えたのだ。
END
人魚族の王女ミーアは、紺碧の海から夜空を仰ぎ見る。
夏の星座はとりわけ彼女のお気に入りだった。
「しんじゅ座とうみがめ座の星を辿っていく先に運命の人がいる――」
古くから人魚族に伝わる言葉。
夢見がちなミーアは、うっとりした様子で星を眺めた。
「あれは何かしら?」
夜の海に漂う一隻の小さな船。
好奇心旺盛なミーアは、泳いで近づく。
「まあ、人間だわ」
船の中を見ると端正な顔立ちの男性が眠っていた。
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地上の人間は人魚族を得体の知れない存在だと避けるのが、この世界での常識だった。
だからミーアは人間の眠る夜に、大海原を自由に泳ぎ回っているのだ。
「夜闇の刻だけ人魚族に会えると噂で聞いてね。まさかすぐに会えるとは幸運だ」
「わざわざ会うために一人で海へ出たの?」
人魚族は友好的な種族だが、海獣や聖獣は攻撃的なものが多い。
それもあり、海に住まう人魚族も恐ろしいと誤解されてしまったのだろう。
「僕はルイ。君の名は?」
「私はミーアよ」
そう答えるミーアの心臓が早鐘を打つ。
(この淡く弾ける気持ちは、一体なに――?)
「ミーアか、美しい名だ」
「そんなこと……せっかくだし案内するわ」
ルイの手を取り、ミーアは海に潜る。
するとルイは人から人魚へと姿を変え、海中でも呼吸ができるようになっていた。
「ただし時間はくじらが二度、鳴くまでよ」
「ああ、分かった」
ルイが微笑むと、またしても胸が高鳴る。
ミーアは気にしないようルイを人魚の国へ案内した。
荘厳な神殿、珊瑚礁の王宮、貝の家々――
そのどれもが美しく、悠久の時を揺蕩うよう静かに佇んでいる。
「こっちへ来て」
王国を出ると、二人は海の山脈へと向かう。
まだ見ぬ生き物が住んでいると言われる深淵。
頂は海上に少しだけ顔を覗かせている。
そこには多種多様な種族が住んでいた。
サメ族、イルカ族、タコ族――
「すごいな……」
ルイは息を呑む。
と、鯨の鳴き声が二度、聞こえてきた。
「さあ、帰らなくちゃ」
明るい口調とは裏腹に寂しさが募る。
ルイが船に上がると同時に魔法を解いた。
「ありがとう、ミーア。とても有意義な時を過ごせたよ」
「良かったわ、それじゃ」
去ろうとするミーアをルイは呼び止める。
「ミーア。君がよければまた会いに来てもいいかい?」
「……ええ、待っているわ」
ミーアは幸せそうに微笑む。
ついに運命の王子様と出会えたのだ。
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