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夜会で突然の婚約破棄!? 心ゆくまで楽しませていただきますわ!
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「サリア、ただ今をもって君との婚約を破棄させてもらう!」
国中の貴族が集まる煌びやかな夜会で突如、私の婚約者であり第二王太子のルークス様が声を荒げながら宣言なされました。
ああっ! ついにきましたわね!
噂に聞く『夜会で突然、婚約破棄を言い渡す』が!
私はクリスマスプレゼントを待つ子どものように、年甲斐もなくドキドキワクワクしてしまいました。
「ルークス様、ご理由をお聞かせいただけますか?」
眉根を下げ、マホガニー色の瞳をこれでもかとウルウルさせてルークス様に訊ねます。
私も思いっきりやらせてもらいますわ!
「フンッ! 自分の胸に手を当ててよーく考えてみるのだな!」
ここで泥棒猫役の男爵令嬢の登場ですわね!
予想通り、不安そうな顔をしたキャシー嬢がルークス様にしなだれかかります。
「ああ、ルークス様……」
「大丈夫だよ、僕の可愛いキャシー」
人目も憚らず見つめ合う二人。
キャシー嬢のドレスは定番の胸元が大きく開いたデザインで、これでもかと谷間を強調しています。
ルークス様、みっともなく鼻の下を伸ばして、せっかくの端正なお顔立ちが台無しですわよ!
「身に覚えがないとは言わせないぞ! 君がキャシーを裏で嫌がらせをしていたのを目撃した人物がたくさんいるのだ!」
「そっ、そんな……!」
ここは悲壮感溢れる顔をしなければ!
キャシー嬢が私の目の前でいきなり自ら張り手をなさったり、階段を転げ落ちてからの華麗な受け身、ルークス様にも見せて差し上げたかったですわ!
私は可笑しくて今にも吹き出してしまいそうになるのを、どうにか抑えます。
「ルークス様、これ以上はサリア様がお可哀想ですわ」
「キャシー、君はなんて優しいんだ……!」
もちろんまったく身に覚えがありませんが、ここは黙って二人のやり取りを眺めることにいたしましょう。
ああっ! 楽しくて仕方がありませんわ!
「サリア、君はこんなに清らかな心をしたキャシーに悪質な虐めを繰り返していたそうじゃないか! 先日、キャシーの大切にしていたブレスレットがなくなったのも君の仕業だろう!」
「ごっ、誤解ですわ、ルークス様……!」
濡れ衣を着せられてしまいましたわ!
けれど婚約破棄としては、まずまずの進行具合ですわね!
「その件ならもう良いのですわ。どうかサリア様にお慈悲を」
「ああっ! キャシー、君はなんて美しい心の持ち主なんだ……!」
この二人の頭の中はどうなっているのでしょうか?
お花畑もいいところですわね!
さて、そろそろあの方が登場なさるはず――!
「ならば彼女は私が預かるとしよう」
「――っ!!」
そこへ颯爽と姿を現したのは、第一王太子のラファエル様!
ルークス様もそれなりに美丈夫ですが、ラファエル様の気品溢れる佇まいや思わず見惚れてしまう顔には到底、敵いませんわね!
「サリア、ずっと前から君を心の内で慕っていた」
「ラファエル様っ……!」
ああっ! これが突然の愛の告白!
もちろん私は一瞬で恋に落ちましたわ!
これはいよいよ婚約破棄もクライマックスですわね!
気を引き締めなければ!
「しょ、正気ですか、兄上!? 彼女は平気で盗みを働く痴れ者ですよ!?」
「痴れ者はお前の方だ、ルークス!」
「っ!?」
水を打ったように静まり返る会場。
貴族の皆様、いい仕事をしてくれますわね!
ああっ! 高鳴る心臓の音が鼓膜を震わせますわ……!
「先ほど話していたブレスレットとはこれであろう?」
「っ!!」
ラファエル様の手のひらでキラキラと光るセボ○スターのような、それはそれは可愛らしいブレスレット。
キャシー嬢には悪いですが、私の趣味ではありませんわね!
「メイドが部屋の掃除をしていたらベッドの下から出てきたそうだ」
「あっ、有り得ないですわ!」
有り得ないも何も、こうしてブレスレットが見つかってるでしょうに。
往生際が悪いですわよ、キャシー嬢!
「これでサリアの濡れ衣は晴れたであろう? 彼女のことは私が幸せにするから心配するな」
「っ!!」
やりましたわ!
これは完全にプロポーズですわね!
「そしてルーカス、お前からは王位継承権を剥奪する」
「そっ、そんなっ! 兄上!」
ついに来ましたわね、断罪イベント!
独断と偏見で勝手に婚約破棄をするなど、普通に考えなくてもおかしいですもの。
「それに伴い二人を国外追放とする。寒さが厳しいがくれぐれも気をつけるのだな」
「あっ、兄上っ! どうか、どうかお許しを……!!」
「はっ、離して! いやああああああああああっ!!」
二人は屈強な近衛兵に連れて行かれました。
さようなら、ルークス様、キャシー嬢。
お元気で。
「サリア、私と海辺まで走らないかい?」
「――ええ、喜んで」
ここは定番のダンスかと思いましたが、乗馬もなかなかいいご趣味ですものね!
ああっ! とっても楽しい婚約破棄でしたわ!
私はラファエル様の逞しい体に抱かれながら、満天の星が瞬く夜空の中を紺碧に輝く海まで走っていきました。
ふふ。
めでたしめでたし、ですわね!
おしまい
国中の貴族が集まる煌びやかな夜会で突如、私の婚約者であり第二王太子のルークス様が声を荒げながら宣言なされました。
ああっ! ついにきましたわね!
噂に聞く『夜会で突然、婚約破棄を言い渡す』が!
私はクリスマスプレゼントを待つ子どものように、年甲斐もなくドキドキワクワクしてしまいました。
「ルークス様、ご理由をお聞かせいただけますか?」
眉根を下げ、マホガニー色の瞳をこれでもかとウルウルさせてルークス様に訊ねます。
私も思いっきりやらせてもらいますわ!
「フンッ! 自分の胸に手を当ててよーく考えてみるのだな!」
ここで泥棒猫役の男爵令嬢の登場ですわね!
予想通り、不安そうな顔をしたキャシー嬢がルークス様にしなだれかかります。
「ああ、ルークス様……」
「大丈夫だよ、僕の可愛いキャシー」
人目も憚らず見つめ合う二人。
キャシー嬢のドレスは定番の胸元が大きく開いたデザインで、これでもかと谷間を強調しています。
ルークス様、みっともなく鼻の下を伸ばして、せっかくの端正なお顔立ちが台無しですわよ!
「身に覚えがないとは言わせないぞ! 君がキャシーを裏で嫌がらせをしていたのを目撃した人物がたくさんいるのだ!」
「そっ、そんな……!」
ここは悲壮感溢れる顔をしなければ!
キャシー嬢が私の目の前でいきなり自ら張り手をなさったり、階段を転げ落ちてからの華麗な受け身、ルークス様にも見せて差し上げたかったですわ!
私は可笑しくて今にも吹き出してしまいそうになるのを、どうにか抑えます。
「ルークス様、これ以上はサリア様がお可哀想ですわ」
「キャシー、君はなんて優しいんだ……!」
もちろんまったく身に覚えがありませんが、ここは黙って二人のやり取りを眺めることにいたしましょう。
ああっ! 楽しくて仕方がありませんわ!
「サリア、君はこんなに清らかな心をしたキャシーに悪質な虐めを繰り返していたそうじゃないか! 先日、キャシーの大切にしていたブレスレットがなくなったのも君の仕業だろう!」
「ごっ、誤解ですわ、ルークス様……!」
濡れ衣を着せられてしまいましたわ!
けれど婚約破棄としては、まずまずの進行具合ですわね!
「その件ならもう良いのですわ。どうかサリア様にお慈悲を」
「ああっ! キャシー、君はなんて美しい心の持ち主なんだ……!」
この二人の頭の中はどうなっているのでしょうか?
お花畑もいいところですわね!
さて、そろそろあの方が登場なさるはず――!
「ならば彼女は私が預かるとしよう」
「――っ!!」
そこへ颯爽と姿を現したのは、第一王太子のラファエル様!
ルークス様もそれなりに美丈夫ですが、ラファエル様の気品溢れる佇まいや思わず見惚れてしまう顔には到底、敵いませんわね!
「サリア、ずっと前から君を心の内で慕っていた」
「ラファエル様っ……!」
ああっ! これが突然の愛の告白!
もちろん私は一瞬で恋に落ちましたわ!
これはいよいよ婚約破棄もクライマックスですわね!
気を引き締めなければ!
「しょ、正気ですか、兄上!? 彼女は平気で盗みを働く痴れ者ですよ!?」
「痴れ者はお前の方だ、ルークス!」
「っ!?」
水を打ったように静まり返る会場。
貴族の皆様、いい仕事をしてくれますわね!
ああっ! 高鳴る心臓の音が鼓膜を震わせますわ……!
「先ほど話していたブレスレットとはこれであろう?」
「っ!!」
ラファエル様の手のひらでキラキラと光るセボ○スターのような、それはそれは可愛らしいブレスレット。
キャシー嬢には悪いですが、私の趣味ではありませんわね!
「メイドが部屋の掃除をしていたらベッドの下から出てきたそうだ」
「あっ、有り得ないですわ!」
有り得ないも何も、こうしてブレスレットが見つかってるでしょうに。
往生際が悪いですわよ、キャシー嬢!
「これでサリアの濡れ衣は晴れたであろう? 彼女のことは私が幸せにするから心配するな」
「っ!!」
やりましたわ!
これは完全にプロポーズですわね!
「そしてルーカス、お前からは王位継承権を剥奪する」
「そっ、そんなっ! 兄上!」
ついに来ましたわね、断罪イベント!
独断と偏見で勝手に婚約破棄をするなど、普通に考えなくてもおかしいですもの。
「それに伴い二人を国外追放とする。寒さが厳しいがくれぐれも気をつけるのだな」
「あっ、兄上っ! どうか、どうかお許しを……!!」
「はっ、離して! いやああああああああああっ!!」
二人は屈強な近衛兵に連れて行かれました。
さようなら、ルークス様、キャシー嬢。
お元気で。
「サリア、私と海辺まで走らないかい?」
「――ええ、喜んで」
ここは定番のダンスかと思いましたが、乗馬もなかなかいいご趣味ですものね!
ああっ! とっても楽しい婚約破棄でしたわ!
私はラファエル様の逞しい体に抱かれながら、満天の星が瞬く夜空の中を紺碧に輝く海まで走っていきました。
ふふ。
めでたしめでたし、ですわね!
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