前世の彼女が狼だった件

うさみん

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こんなの知らない

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 知らないことに身を委ねるのは、心許ないものだと初めて知った気がする。

 余裕がないのを悟られるのも、何だか悔しい気持ちになったが何かを考えられたのはそこまでだった。

 玲那に触れられる所が全て熱い。

 意識を繋ぎ止めて居るのも難しくて、幾度と無く流される。

 もっと···と思う気持ちと、もうやめて···と思う気持ちがせめぎ合い、言葉らしい言葉も発する事も出来ずに感覚に溺れる。

 懇願する言葉もやんわりと遮られて、只々翻弄されるだけになってしまう。

 自分でも入浴で洗う以外に触れる事の無い場所に、玲那を感じて思わず力が入ってしまう。

 本当にそんなところに触れるんだ?!

 段々混乱してきた頭の中が、ぼんやりと霞み始める。

 撫でられているだけなのに、ゾクゾクと何かが這い上がって来る。

 それが所謂、快感なのだと玲那が体に教え込んでいく。

 お願いだからこれ以上、得体の知れない何かで僕を変えて仕舞わないで!

 言葉に出来ない思いが玲那のキスで封じ込められてしまう。

 抗う事の出来ない感覚に、意識は拐われて所在が判らなくなってしまいそうだった。

 ただ、乱れた息遣いと何処から出でいるのか分からない高い声だけが、自分が此処に居る事を証明しているのに過ぎなかったのだ。

 とうとう、自分の中に入り込んだ玲那に自分の中の何かが崩れ落ちるのを確信した。

 安堵と羞恥が混ざりあって思わずしがみつく。

 後悔している訳じゃない。

 それでも、涙が溢れた。


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