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22,過酷な現実

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 痛みに悶えながら、3匹目を視界に入れる。

 激しかった動きが、段々鈍くなったみたいに見える。

 所詮悪足掻きだか、未だ死にたくない。

 痛みに何とか耐え、床をずり這う。

 狼の頭の下までたどり着くと、無事な腕で火掻き棒の端を掴む。

 強引に壁に足を踏ん張り、声を張り上げ勢いで引き抜く。

「だありやあああああああぁ!!」

 カラ~ンッ!!

 引き抜いた火掻き棒が、床に音をたてて落ちる。

 狼は引き抜かれたショックで頭を垂れて、其のまま動かなくなった。

 痛みを誤魔化す為に、無理矢理呼吸を整える。

 何度も咳き込みながらも必死に繰り返す。

 自分の粗い呼吸音しか、聞こえない。



 そんなはずは無い。


 違和感に気付く。

 静かすぎるのだ。

 ドアから聞こえていた音がしない。

 ドゴンッッッッ!!

 窓から異音がして振り返る。

 窓は閉じていて、窓に嵌まっていたはずの、狼の頭が無い。

 ドゴンッッッッ!!

 更に二つ目の窓からも頭が消えた。

 ドゴンッッッッ!!

 とうとう、最後の頭も窓から消えた。

 余りの不気味さに、俺は痛みを忘れて後退る。

 なんだ?!何が起こっているんだ?!



 バキッメキッメキッメキッメキッメキッ!!!


 魂が凍るような恐ろしい音が響いた!

 震えながら、音と供に破壊されたドアの所を見た。

 ゆっくりと巨体が顔を覗かせた。

 それは、狼ではなく······巨大な熊だった········。



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