存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃

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ジャラス王国の宮では
王太子にエスコートされながら
優雅にビオンヌが歩いている

何となく感じる違和感、、
華を見てくる騎士や職員たちからは
以前のような「憧れの眼差し」を
得られていないようだ。

王太子とビオンヌが位置につくと
「やっと来たか」とばかりに
国王陛下が入って来た。

礼をするビオンヌに国王は言った

「あぁ、挨拶などいらん
早々に話したいから頭をあげてくれ」

ビオンヌは少し不貞腐れたが
すぐに笑顔をつくった

「さ、聖女よ
今、我が国では雨が降り続き街の
あちらこちらで川の氾濫や冠水の
危険報告が上がっている事を
知っているな」

「はい、私も胸を痛めております」

だから何よ!

「そうか、ならば話は早い
すぐに神殿に向かい神託を聞き
雨を止めてくれ」

「私がですか?
失礼ながら私は祈りを捧げますが
神託は聞けないかと思います」

「何故だ?お前は聖女だろう」

つっっ……

「聖女にも各々の役割がございます故に
神託を聞き伝えるのはディアターナで
ございます」

「ならばお前は聖女として
何が出来るのだ」

えっと、、
やだ、どうしよう…みんなが見てる

「わ、私は人々が…人々に…
そうです人々に愛をもたらす聖女です」

「愛か…ならば得意な愛を
民に与えてくれ。まずは雨を止めろ
これから神殿に行ってくれ」

そう伝えると国王は足早に部屋を出た

「ちょっと、、えっ
お待ちください陛下」

隣に居た王太子はビオンヌの手を取った

「既に馬車を用意してありますので
急ぎましょう」

い、嫌よ…神殿なんて何も無いじゃない!

まるで拉致された令嬢のように
下を向いたまま廊下を進んだ

こういう時にお父様が助けに来たり、
王太子が助けたりするんじゃないの?
なんで王太子が私を神殿に
連れて行くのよ!
早く来なさいよ私のヒーロー!!

誰も来ないままビオンヌは
神殿に到着してしまった。

「うぅぅぅ寒いっ」

入口から壁そして廊下は大理石だ
足元からひんやりした風が流れ
ガクガクする

「聖女様、まずは濡れた衣服を
着替えてください」

本当よ!風邪をひくわ 馬鹿!

ビオンヌは震えながら神官についていくと
地味なベッドと机があるだけの
部屋だった。

「待って!何よここは」

思わず神官を睨んだ

「えっ、こちらは歴代聖女様の
お部屋でございます。
あ、お風呂は下の階にありますので
週に2回使用して頂けます」

は?風呂が週に2回ですって…
ちょっと意味がわからないんだけれども

「そうだわ聖女ディアターナに
挨拶しないといけないわね
どこにいるのかしら?」

「わかりませんが大神官と御一緒かと…
ただこの数日は王都には
いらっしゃらないみたいです」

「ちょっと待ってよ
私に祈りだの神託だの言って
大神官と聖女が居ないって何よ」

神官は焦った

「大神官は留守にする間
聖女ビオンヌにここをお願いしたいと
申していました」

「居ない間だけ?
すぐに戻るんでしょ?わかったわよ!」

神着に着替えたビオンヌは
自分に言い聞かせていた…

そうね、少しだけだものね
少しだけフリをすればいいだけよ。

この時 大神官は王命により
姿を消したディアターナを必死に
探していたのだった。

王太子は
「聖女、いやビオンヌ嬢
民や我々は今 貴女を必要としています。
どうか力を貸してください」

そう言うと跪いてビオンヌの手に
唇を落とした。

ビオンヌはふふふっ
ついに私は王太子を膝まつかせたのね。
と微笑んだ

「頑張りますわ」

王太子はビオンヌを見つめた後
身をひる返して騎士に言った

「早く戻るぞ」

王太子はスっと唇をハンカチで拭いた。

ジャラスの国民たちは
不安が怒りに変わってきていた。

丹精込めて耕した麦畑も野菜畑も
雨で流されてしまい
家畜も寒さで倒れた。
もちろん漁師も仕事が出来ない。
店頭からパンが消え飲食店が看板を終い
当然、家から食べ物がなくなった。
空腹で元気を無くした子供たち
怒りは聖女に向かっていた。

「祈りの聖女は偽者だ」
「聖女なんて役たたずだ」
「寄付した食べ物を返して欲しい」
「聖女は国民に謝れ」
「国は何をしてるんだ」
「聖女に邪悪な悪魔が取り憑いた」

姿を見せないビオンヌにも
次第に同じ感情が向けられるように
なっていた。

それを知らないビオンヌは
見よう見真似で女神像の前に座ると
祈りを捧げる

床が硬いのよ…足が痛いわ
寒くて3分しか頑張れないわよ。
こんな事をしてなんの意味があるの?
神官とやらが見てるから仕方なく
やるけれど聖女である前に
私は公爵令嬢なのよ?

ディアターナって本当にバカよね
よくもまあ毎日のように
こんな事ができるわね
貴族令嬢なんて毎日のように
美味しい物食べて
パーティーでストレス発散して
良い男を見つけてさぁ
華よ蝶よと言われながら生きるから
楽しいんじゃない。

全く、こんな事をするために
聖女になったんじゃないのよね…

あ、そうだ!
飲むのを忘れてたわ
確かドレスのポケットに入れたんだわ
お付きの神官に見つかる前に
飲まなくちゃ…
早く終わらないかしら、、、
もう!早く迎えに来てよ
お父様は何をしているの?

ビオンヌは女神像を見ながら
ため息をついた。


続く

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