存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃

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ディアターナは石碑の森から戻り
コリーアンナの人生を辿った。

なんて強い人なんだろうか…
ギルドに入り人々の為に戦った
コリーアンナ。
そして聖女として目覚めた後
仲間を助けながら剣を握った女性…
愛した男を目の前で送った女性…
そして男を救えなかった自負の念に
耐えられなくなり彼と同じ場所で
命を絶った女性…
行方不明だった間に何があった
のだろう…

残された仲間たちも辛かったはず…
コリーアンナを見つけた時は
どんな思いだったのだろう

勇者かぁ、、英雄かぁ、、
はぁ、、私は大聖女だと言われ
自由に生きているけれど
中身はあまちゃんね。
本当に尊敬するわコリーアンナ様…

その頃 マークは
ディアターナの事を考えていた。

高熱が続き意識を失っていたディア。
ずっと涙を流していたと聞いたが
よりによって休暇中で
部屋から出てこないディアとは
連絡も難しくなっていた。

久しぶりに見た彼女は
とても痩せてしまっていて
顔は真っ白だった。
視線を合わせない彼女を見て
用意した手紙を渡さずに
しまった。
せめて長期休暇を取る事を
伝えておくべき
だったのだろうか…
いや、きっと伝えたところで
何も変わらなかったはずだ…

ディア…
貴女を愛してしまった俺は
きっと神に罰を与えられるのだろうな。

互いにすれ違う日々が続き
いつしか手紙の交換も会話も無くなり
視線が合う事も無くなっていた。


王宮

皇太子ガーディルの婚約式が無事に終わり
慌ただしく挙式の準備に入っていた。
皇后も招待客のもてなしや何やらと
忙しくしていてアベルも騎士団の
配置やら他国の王族護衛や警備などを
手配する為に慌ただしくしていた。

マークはアベルの命令により
大聖女ディアターナの護衛を外れ
王宮で護衛騎士団長として
任務にあたっていて
ディアと距離を置くには良い時期なの
かもしれないと考えていた。

あっという間に月日は過ぎて
ガーディルの挙式が近づくと
各国から王族や要人が集まって来た。

そんな中
ジャラス王国の国王より
大聖女ディアターナに面会の要請があり
ディアターナは国王との
謁見に望んだ。

「久しいな大聖女ディアターナ殿」

久しぶりに見た国王は貫禄がつき
国王と呼ぶに相応しい風貌になっていた。

緊張していたディアターナだったが
国王は予想に反した話しをした。

「あの頃は申し訳なかった。
先代も含め我々は聖女という存在に甘え
貴女には辛い思いをさせてしまった」

「こちらこそ
黙って国を出てしまった事
申し訳ございません」

「驚いたが神託だったなら仕方ない。
我々にはわからない何かがあったの
でしょうから」

優しいの?ディアターナは
国王の言葉に戸惑った。

国王は話しを続けた

「知っているかもしれないが
聖女ビオンヌは偽者だったよ
薬物を使用し騙していた。
彼女は牢に監禁されもう地上に
出る事はないだろう」

あれ?処刑されたんじゃ、、

私があれこれ言う事じゃないわね

「なぜビオンヌ様は薬などを…」

「彼女は昔からそうだった
華よ蝶よと育てられワガママだった。
とにかく目立ちたがり屋で
自分が1番でないと気が済まない性格だ
何せ私の婚約者候補に名があがった
令嬢に嫌がらせをしていたからな。
もちろん私と生涯を共にするならば
嫌がらせなどに屈する事なく
立ち向かうような人でなくては
ならない。
つまり縁が無かったという事だろう」

「そうですか」

ディアターナは何と言ったらいいのか
わからなかった。

「希少な時間をありがとう
貴女に謝罪が出来て良かった。
この西帝国で幸せに暮らしていると
聞いて安堵しているよ」

「ありがとうございます。
私は西帝国の人間になりましたが
ここからジャラスの繁栄を祈り
皆さまに幸ある事を願っています」

「そうか よろしく頼むよ」

国王はディアターナに笑を見せ
席を立った。

ディアターナは国王を見送った後で

「きっとジャラスは良い国になるわ」

そう思った。


一方で
隣国サンブルス王女の護衛を
務めていたマークは
ディアターナがジャラスの国王と
会っていると聞いて内心 心配していた。

距離を置いて冷静になるはずが
ディアターナを護衛出来ない
もどかしさに戸惑っている。

ディアは大丈夫だろうか…
今日の護衛騎士はマルクスだったな。
もしジャラスがディアを連れて行って
しまったら…
いや、そんな事にはならないはずだ。
どうして面会を許したんだ。
ちきしょう
どうなったのか早く報告が欲しい

マークは苛立っていた。

挙式の日

盛大に開かれた式の後
パーティーが開催されて
ディアターナはドレスに身を包むと
エスコートをしてくれる
アベルを待っていた。


コンコン

「俺だ聖女様の支度は出来たのか」

侍女が扉を開け

「整いました」と頭を下げると
ディアターナの前に王子様が居た。

えっ、、さすが殿下!
騎士団長の制服もまぁかっこいいけど
王族タキシードは別格ね!
これはいいわ!
今日は目の保養ができるわね!ふふっ

「そうか
おい聖女!ボーッとしてないで
早く来い」

チッ、、かっこいいは取り消しだわ!
全く こんなに可憐な女性のエスコートも
優雅に出来ないなんてね!
嘘でも「似合ってる」ぐらい言ってよ!

アベルの後ろから廊下を進み
腕に手を回した

「よろしくお願いいたします殿下」

「あぁ」

大聖女ディアターナは王族席に向かうと
アベルの隣に座った。




続く

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