【完結】冷遇され臣下に下げ渡された元妃の物語

MEIKO

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第五章・真実の愛

47・魔の手

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 「おい、こちらに来い二人共。一緒にカサンドラへ行こう!」
 不気味に笑うアルベルト王に心底ゾッとした。

 ──この男、言っている事が無茶苦茶だ!王ともあろう者が、こんな事でいいのか?
 私は驚きの余りに、声も出ない。
 ただ、兄上だけが悲しい顔をしてじっと王を見つめている。

 「な、何をしている!?アルベルト王!どういう事なのだ┉これは!」

 そこに騒動を聞きつけたガルド王が現れる。そして┉

 「これはガルド王。今、このシルバも我が手に入れようかと┉。このように美しい者だったなら、最初からそうすれば良かったなぁ。ガルド王はお気に召さなかったとか?信じられんな!ならば私が┉と申しているのですよ。」

 それにはガルド王の顔色がみるみる変わる。

 「おぬし、恥知らずな!兄弟共に妃にしようと!?そんなことは許されない┉シルバは私の物だ!いずれ、子供と共に王家に迎え入れ王妃にするのだ!」

 ──私は唖然とした。それが本音なのか?私を┉王妃に?な、何故今さらそのような事を!

 「なんだと?今さら惜しくなったのか。ガルド王ともあろう者がなぁ~。」

 そう言いながらアルベルト王は無理やり私の腕を引っ張ろうとする。

 シュバッ┉!

 アルベルト王が短剣を抜き、私に突き付ける。
 目配せしながら私と兄上に自分の近くに来いと┉。

 その剣先を見ながらじりじりと近付いて、アルベルト王に身体を抱えられようとした時、兄の声が!

 「シルバ逃げろ!」

 兄上がアルベルト王の身体を押しやって、私を逃れさせようとする。だけど、その瞬間┉

 ザシュッ┉鮮血が飛び散る!

 「あぁっ、兄上!!」

 兄が腕を押さえていて、そこからは赤い血がダラダラと流れ落ちる。
 ┉はっ!私はバッと兄上に近付いて、何とかその血を止めようと腕の傷を共に押える。

 「あぁっ┉ルイス!き、傷がー!!」

 その傷の原因を作った張本人、アルベルト王がガタガタと震え、物凄く動揺している。

 ──兄上の手当てを早くしなくては!
 だけど┉アルベルト王の┉様子が可怪しくはないか?
 自分のせいでルイスの腕が切れてしまった┉というよりも、傷自体に異様に反応している。

 それからアルベルト王は、私にキッと鋭い目を向け、ガッと腕を掴まれる。

 「お前のせいだ┉お前の┉」
 その狂気じみた言動にゾッとする。

 「アルベルト!私は大丈夫だから。頼む┉シルバは妊娠しているんだ。離してやってくれ!」

 兄上がそう叫ぶと、ガルド王が動揺で身動みじろぐ。と、突然┉

 ガキッ!ガガ、キィーーン!

 突然、扉の向こう側から争うような音が聞こえる。

 バーーーン!

 その瞬間、扉が大きく開け放たれた。そこに現れたのは┉
  
 「マ、マクシミリアン!」

 そこには今まで見たこともない鬼神のような形相のマクシミリアンが立っていた。

 ──マ、マクス!凄い殺気だ!!
 
 その姿は正に「戦場の銀狼」場が凍るような冷気を放ちながらシュッと剣を構える。

 「お前、シルバに何をした?┉殺す!」
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