【完結】あなたの妻(Ω)辞めます!

MEIKO

文字の大きさ
58 / 108
第四章・新たな生活

57・もしかして┉

 兄はあれから、何故だか急にまた忙しく仕事に打ち込み出した。

 ──何かあったのだろうか…?

 そう思ったけど、聞いても答えてはくれなかった。
 そしてお前も仕事に戻れって…

 その事が気にはなったが、父の病状が思っていたよりも早く良くなったのもあり、俺は新事業の手伝いに戻った。

 あれからずっと、どうしても沢井さんが気になってしまっている…

 沢井さんと言う人は、歳は兄と同じくらいだろうか?真面目で温厚な人だ。
 仕事もデキる部類の人だと思う。

 でも涼さんの相手…って思うと、兄とは全く違うんだ。
 ワザと違うタイプを選んだのかな…?そう思って複雑な気持ちになる。

 俺は涼さんに、殺したいほど憎んでいたことを告白して以来、ずっと会ってはいなかった。
 そうこうしている間に兄とは離婚することになって…そのままだ。

 涼さんは驚いた事に、兄には俺の件についての話を一切していなかったんだ!

 きっと兄さんを悲しませたくない…そう思ったからだろうな…

 そしてその後、涼さんにそんな事をしようとしたことを心の底から後悔することになった。

 
 兄達が離婚して直ぐ、家に涼さんの叔父の内藤さんが現れた。
 凄い剣幕でやって来て、離婚することになった理由を問い詰めて…
 ことの真相までは話さなかったが、結婚までの経緯や離婚に至った理由の一部始終を聞いた内藤さんが言ったんだ…子供の頃から苦労した涼に何て事をするんだ!って。

 ──子供の頃から…苦労した?

 俺は涼さんは幸せに暮らして来たんだと思ってた。
 確かに両親は早くに亡くなったけれど、叔父の家で苦労もなく育ったんだって…

 実際は違った…家ではずっと愛情を向けられず一人きりだったと。
 内藤さんは涙ながらに告白して、涼さんには本当にすまない事をしたんだ…って。

 兄はそれを聞いて絶句していた。

 それから内藤さんは、そんな中途半端な想いなら二度と涼に近付くな!と激怒して去って行った…

 
 俺はこの違いは何だろう?って思った。
 俺と同じように愛情を受けずに育った子供…なのに涼さんはそんな境遇だなんて微塵も感じさせないような人だ。
 温かくって愛情深くって…

 涼さんは兄弟もいなくて、どんなにか寂しかっただろう。
 そう思って、自分は甘ったれていただけなんだ…って愕然とした。

 涼さんは本当に強い人だ!

 そう思って、いつか会えるなら謝りたいって!


 
 今、目の前に涼さんが居る。

 沢井さんに何かを届けに来たのか?二人は楽しそうに笑っている。

 受付の人達が涼さんの噂をしている。本当に綺麗な人だって。

 この人は心も綺麗なんだ…って心の中で呟いて近付く。
 その瞬間、涼さんと沢井さんの会話が聞こえた。

 「そう言えば柚子ちゃんは?保育園のお迎え行く時間じゃないのかな?」って沢井さんが言ったんだ。

 ──柚子ちゃん・・・は?

 ちゃん…って、自分の子供に対してはちょっと他人行儀じゃないのか?って。
 確かに絶対ないとは言えない。
 だけど、予感っていうのか?なんでかそんな気がしたんだ。

 ──もしかして、もしかしたら兄さんの…子供なのか!?

 チラッと見掛けたあの子、顔は涼さんにそっくりだったが、利発りはつそうな表情は…そう思ってしまったら、正にそうとしか思えなくなってきた!

 これは聞いてみるしかない!そう強く感じて、涼さんに近付いて行ったんだ──。
感想 117

あなたにおすすめの小説

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです ※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。