【完結】私が一人で死んだ夜。だからあなたを、捨てることにしますね?

MEIKO

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第二章・二度目の人生とは?

13・罠と旅立ち

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 よく似せてはあるけれど、造りが全く違う!おまけにこんなに簡単に折れるって…純金製じゃないってこと?

 「偽物だわ、金じゃない!金張りの粗悪品…これは誰かが私の、ブローチに似せて作らせたものだわ。どういうこと?」

 そう気付いた後、ある可能性に気付いてクルリと向きを変える。それから自分の部屋に戻り、鏡台の引き出しをもう一度探してみる。すると…いつもよりもずっと奥、引き出しの角に隠すようにブローチが置かれている。私じゃない!こんなところに、大事な物を押し込んだりしないわ。これはきっと…シンシア?

 そういえばと思い出したのは、デザインの参考にしたいからと一度だけブローチを見せてあげたことがある。あれは…ひと月くらい前?欲しいと言われるんじゃないかとヒヤヒヤして…
 
 結局は返ってきたから、考えすぎなんだと思っていた…本当に参考にしたかっただけだって。それなら、あの時模写しておいたってことかしら?それで私を陥れようとして、シンシアが作らせたに違いない!

 だけど待って…それにしては造りは甘く、少し動かしただけで盗まれた訳でもない。それは恐らく、後でこれが偽物だったと言えるように。それなら目的は、私からデビュタントを奪いたかっただけ。ドレスを奪ってしまえば参加は無理。そして帰ってからしれっと種明かしすればいいだけ。お姉様は犯人ではなかったと言いながら…

 『フレデリカが女主人として、家門を采配するのに不満を抱いた犯人は、陥れる為に偽物のブローチを作る。そしてそれをわざと落とし、シンシアのドレスをズタズタに!』

 そんなシナリオを作ったんじゃないかしら?それからデビュタントから帰った後誰かに罪をなすりつけて、自分は何のことかと知らんぷりする。それなら悪いのは犯人と、私を責めたお父様とお兄様だけ。そんな筋書きなんでしょうね。

 その意味は…といったら、私を絶望に落とす為。家族の誰からも相手にされず、また愛されてもいない。そしてまんまとお父様達は信じてしまって…
 結局は私をデビュタントに参加させないのが目的で、それ以上大袈裟にしたくはないのでしょう。家門全体の恥になってしまうから…

 「だけどもう、どうでもいいわ」

 今回のことで、流石の私も嫌というほど学んだわ。ほんの少しだけ期待していたものが、ガラガラと音を立てて崩れてしまった。もう二度と元には戻れないところにまで。

 ──私はここに居るべきではない。

 「行こう…私を求めてくれる場所へ!」

 やっと決心がついた…もう二度と迷うことはない。何度嫌な目にあっても、どこか血の繋がりを断ち切れずにいた。いつかきっと、一緒に笑える日がくるんだって。それはもう、諦めましょう。

 「どこへ行くって?フレデリカ」

 突然のそんな声に驚く。振り向くと…そこには優しい笑顔を浮べて私を見ているスチワートが!
 黒色の正装に胸ポケットには深緑色のチーフが…別人のように素敵。こんなに頑張って用意してくれていたのに、一曲も踊れなかったのを残念に思う。

 「お父様から聞いたの?だけど私は絶対に無実。どうもシンシアの罠に嵌って…」

 「そうだろうと思ってた!だからこそここに来たんだ。フレデリカ、暇だろ?」

 そんな呑気なことを言うスチワートに、思わずプッと吹き出す。この人なりに慰めてくれているのよね?
 それから明るく笑うスチワートは、突然片腕を突き上げる。それから…

 ──パチン!

 「えっ…ええっ!嘘でしょう?」

 パチンと音が鳴った瞬間、フワッと身体が浮き上がる気がした。それからハッと我に返ると、いつの間にかドレスを着ているのに気付いて…

 「こ、これは…私のドレス?」

 私が一から仕立てたドレス…デザインや何もかもに拘って。あのシンシアに奪われた筈のドレスが何故ここに!?

 「今頃デビュタント会場は大騒ぎになってるはずだよ?だけど流石に下着姿は可哀想だからさ、代わりに君の部屋着を着せておいたよ。ほら、だって錬金術は存在していないものは出せないから!」

 「アハハッ、本当に?」

 淋しくて萎んでいた心が、ほんわかと温かくなる…スチワートのおかげで!

 「ではお嬢様、一曲お願い出来ますか?」

 背筋をピシッと伸ばしたスチワートが、サッと手を前に差し出す。その手を戸惑いながら取る私。それから…

 まるで舞踏会のように二人は動き始める。最初はぎこちなく、それから誰も見ていないのだからと大胆に。音楽なんて一切ない…だけど本当に聞こえるよう!
 手を取り合って、それからクルクルと回る。すると、とっても可笑しくなってくる。アハハと笑い合い二人で踊る…これが私達のデビュタント。
 誰よりも素晴らしい最高のデビュタントを…

 「ハァ、ハァ…楽しかったわね!それにしてもダンスの練習相当頑張ったのね?完璧だったわ!ありがとう…会場なんて行けなくても平気だった。あなたがいてくれたから…」

 涙が滲む瞳でスチワートを見つめる。それからポロリと溢れてしまったけど、精一杯の笑顔を向ける。嬉しくて涙が止まらず、スチワートはちょっと困った顔をする。それをまたプハッと笑う私。するとスチワートは…

 「俺と一緒に行かないか?フレデリカ。君と一緒なら、何でも出来そうな気がするんだ。俺は絶対に君を裏切らない!前も言ったっけ?」

 それからスチワートは、先程と同じように手を差し出す。思わずその手をじっと見てしまう。そして…

 ──私はこの手の温かさを知っている。今度は間違えないわ!

 「はい!よろしくお願いします」

 満面の笑顔でスチワートの手を握る。迷いなど一切なく、その温かさを信じることにした。
 それから私はちょっと待ってて欲しいと伝え、壊れた偽物のブローチを持ってお父様の執務室に向かう。そして机の上にコトリとそれを置き、それから今の気持ちをしたためることにした。

 『お父様、これでお別れです。もう二度とお目にかかることはないでしょう。私はあなたを、捨てることにしました』

 ──パチン!

 こうしてフレデリカは、ノートン邸から跡形もなく消える。誰にも言わず、そして行き先さえも分からない。まるで最初から存在していなかったかのように…
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