【完結】私が一人で死んだ夜。だからあなたを、捨てることにしますね?

MEIKO

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第二章・二度目の人生とは?

12・涙のデビュタント

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 デビュタント当日。その日は抜けるような青空だった。晴れて大人となる私達を祝ってくれているよう…私だけは既に大人だけどね?
 それでも少しは楽しみでもある。スチワートのおかげで…

 今まで知らなかったけど、友達がいるということだけで心が強くなれる気がした。他人だけど、それでも私のことを考えてくれる人がいる。それだけで強くなれることを知った。私の判断は間違っていなかったのね?

 デビュタントは夕方から…だけど朝から準備に忙しい。まずは全身を磨き上げ、それから浮腫防止のマッサージ。そんなのはやったことがなかったから、相当に面食らってしまう。それがやっと終わって、いよいよドレスを…そう思っていた時、突然屋敷中に響き渡る悲鳴が!

 「な、何?何が起こったの?」

 「フレデリカお嬢様…大変です!」

 私の部屋まで、執事のカイが慌ててやって来る。その剣幕にどうしたのかと驚いて声も出ない。誰か怪我でもした?それとも重大なことが起きたのだろうか。カイは相当慌てたのか肩で息をするのがやっと。すると…

 「早く用意をして、即刻屋敷を出て下さい!でなければ…」

 そんな意外な言葉に戸惑う。早く屋敷を出ろって…どういうこと?それにどうしてカイがそんなことを言うのかしら。この屋敷で唯一の私の味方であるカイが…
 
 それで返事に困っていると、廊下を勢いよく歩く足音が聞こえて来る。おまけにこっちに向かって来ている?

 「カイ、どくんだ。それに勝手なことをするんじゃない!」

 そんなカイの後ろから、厳しい顔をしたお父様が現れる。その意味を測りかねて、お父様とカイを交互に見つめる私。どうしたのかしら…訳が分からない!

 「一体何があったのですか?お父様…」

 困惑しながら問いかける。だけどお父様は、厳しい表情を崩すことはない。私のことじゃないわよね?どうして!

 「シンシアのドレスが破かれていたんだ!デビュタント用に準備したものだ。昨夜確認した時は変わりなかったそうだ。なのに先程出してみたらそのような状態だったと…」

 ハッと息が止まる…それはどういう意味なのかと。もしかしてお父様は、私を疑ってらっしゃるの?シンシアのドレスを破いたのが私だって!

 「だからって、どうして私にそれを?お父様は、シンシアのドレスを台無しにしたのは、私だとおっしゃるのですか!そんなことをしたのが私だと…」

 そう訴える私に、お父様は何も言うことはない。ただ眉をぎゅっと顰めただけ。それが何を言わんとしているのかは、嫌というほど分かっていた…いつもこの表情を見続けていたから。いつもシンシアが私から嫌がらせをされたと訴え、それを疑うこともしない。どれだけ私が無実だと言っても、聞く耳さえ持ってくれずに…ああ、何て虚しいのかしら。

 「おいフレデリカ、お前がやったんだろう?シンシアのドレスを腹いせに破いたんだ。それを証拠に、側にはお前のブローチが落ちていたそうだ。珍しい蘭の形の…お前の物だろう?この前の一件を聞いた時から、お前がまたシンシアに嫌がらせをするって思ってた!だけどいくら何でも酷くないか?仮にも妹なんだぞ」

 蘭の…それはお母様のブローチ?絶対ここにあるはずだと確信している私は、いつも仕舞っておく鏡台の引き出しを開ける。確かここに…ないわ!どうして?

 「いつもはここにあるんです…誓って私じゃありません!」
 
 そう訴えかけるけど、お父様もお兄様も私を睨んだまま。もう何を言っても無駄…私を信じてくれる人なんていないの?
 
 「取り敢えず今は時間がない…だからせめてお前のドレスをシンシアに譲るんだ!参加出来ないと泣くシンシアの為に今直ぐ譲りなさい。そしてこの件はデビュタントが終わった後に話をする。おい、そのドレスを今直ぐシンシアの元に!」

 私を手伝ってくれていたメイドが、ビクリと身体を震わす。それから我に返ったように、私のドレスを掴んで走って行く。その後ろには無言のお父様が続き、それからお兄様は心底軽蔑したような視線を向けて…

 「そんなに妹を虐めて楽しいのか?お前なんて俺の妹じゃない!」

 そう吐き捨てて、怒った顔で出て行く。そんな理不尽な疑いに、服の胸の辺りを強く握って何とか耐える。そしてこの部屋に残っているのは私とカイだけ…

 「お嬢様、申し訳ありません!私がもっと早く気付いていたなら…だけど私は信じています。フレデリカ様がそんなことをする訳がないって!きっと何かの間違いです」

 そう大声で叫んで、泣きださんばかりになっているカイ。信じてくれるのはもちろん嬉しいけど、それによってカイの立場が悪くなるのを申し訳なく思う。それで…

 「ありがとう…カイ。この家で私の味方はあなただけ。私は大丈夫よ?だからこのノートン家の執事として、お父様達の出発を見送って欲しいの。それに今は、一人にして欲しい…お願い!」

 もうじき私のドレスを纏って美しく着飾ったシンシアと、お父様とお兄様が連れ立ってデビュタントへと向かう。着るドレスを失った私は、もちろん参加出来ない。それでいい…あのドレスでなければ意味はないもの。お母様と同じ色のドレスでデビュタントを…それすらも叶わなかったから。あの時ブティックで言ったのに…お母様と同じ色を着るのが夢だったって!それなのに私には、そんなことすらも許されないのね?

 二度目のデビュタントは、参加すらも出来ない。結局は良い思い出など、私には程遠い。そして会場の皇居で待っているスチワートには参加出来ずにすまないと思う。きっとお父様から事情を聞くでしょう。私を信じてくれる?あなただけは…

 「フフッ…もう疲れたわ。せめてこの人生を変えようと頑張ったけど、もう無理なのかも…誰も私のことなんて愛してはくれない」

 暫くすると、階下から弾んだ声が聞こえる。きっとシンシアだわ…あのドレスでどんなにか綺麗でしょうね?
 そんな声を聞きたくはないと、耳を塞いで机に突っ伏した。そんな時…ハッと気付く!

 「そうだわ…お母様のブローチ!」

 お母様の遺品のアクセサリーは数あれど、それはあくまでノートン伯爵家の所有物。将来はノートン伯爵夫人のものになる。だけど…あのブローチだけは、私にとお母様が唯一遺してくれたもの。だからどうしても取り返さなきゃ!

 その一念ですっくと立ち上がり部屋を出る。使用人達はお父様達の見送りに出ているのか、一人もいなかった。そしてこの二階の端にあるシンシアの部屋へと急ぐ私。

 ──キイッ。

 シンシアの部屋にも誰もいない。そして足早にドレスが保管されていたというクローゼットへと向かう。すると…

 「あれは、お母様のブローチ?」

 見慣れたブローチが、クローゼットの端に転がっている。だけどよく見ると叩きつけたのか、花びらの部分に付いていた宝石が欠けている。そのことで心が潰れそうになる。

 「お母様の色のパパラチアサファイアが!酷いわ…」

 ツーッと涙が流れる…もう我慢することは出来なかった。誰からも信じてもらえずに、おまけにお母様の形見まで!
 
 ──どうして?どうして私だけが、こんな目に遭わなければならないの?誰か教えて…

 その場にへたり込みひとしきり泣いた。ノートン家の女主人として少しは家門に貢献出来たと思っていた。それなのに…こんなことでその努力が無駄になってしまうの?もう嫌っ!
 
 そう思いながらフラフラと立ち上がる。それから気を取り直して近付きブローチを拾う。すると…違和感が!

 「軽い?宝石が割れたからなのかしら。それにしても可怪しい…よく見ると造りだって違う?これはお母様のブローチじゃないわ!」

 よく似せてはあるけれど、細かい造りが全く違う。そしてあろうことか、強く握った時にポキリと半分に折れる。その衝撃…これって、どういうことなの?
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