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第二章・二度目の人生とは?
11・錬金術師のスチワート
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デビュタントのパートナーをスチワートに頼んだものの、どうやって連絡を取っていいのかを失念していた。錬金術研究所というところに手紙でも出す?それとも直接尋ねた方がいいんだろうか。そもそも、取り次いでくれるのかしら…
そう悩んでいたある日、夜バスルームから出た私は驚きの眼で固まる!何とベッドの上にスチワートがいた。おまけに…寝ているの?
ここは二階ですけど…忍び込んだ?もしかして、玄関から入って来たってこと?どっちだとしても女性の部屋に勝手に入るなんて有り得ない!
頭の中で『どうして?』がグルグル回って、ネグリジェにショールを羽織りつつ恐る恐る近付いてみる。
すると…すぅすぅと寝息を立ててぐっすり眠っているスチワートが。疲れているの?
私などが想像も出来ない業務に携わっているスチワート。だけどそれにしてもこれって、不法侵入じゃない?だけど…
寝ているスチワートの近くに黙って腰掛けた。ベッドがちょっぴり軋むけど、まだスチワートは気付かない。このまま朝まで目覚めなかったらどうしよう?とさえ思い始める。
それにしてもあどけない寝顔…エズラもそうだったわ。冷たい関係だとはいえ寝室だけは同じだった私達。跡継ぎの為なのか時折抱かれて、嬉しいはずなのに淋しさだけが募っただけ…
そしてあの人が寝静まった後、よくこうして寝顔を見ていた。私を冷たく突き放す訳でもなく、眉間に皺を寄せながら面倒そうに話す訳でもない…その時だけは私だけのものだと思えたから!
だけどもう、どこまでも遠くに思える。私は一歩前進出来てる?そうしてあなたとの思い出も、次第に薄れていくのね。それでいいのだと思う…きっと。
「ううん…えっ?ああーっ!」
やっと目が覚めたのか、ガバッと勢いよく起き上がるスチワート。どうもわざとだった訳ではなく、本当に焦りまくっている。あたふたとしている姿をみていたら戸惑いもどこへやら、何だか可笑しくなってくる。
「フフフッ、焦らなくても大丈夫よ?驚いただけで怒ってはいないから」
「本当にすまない!誰もいない部屋に入ろうとは思ってなかったんだ。ましてや待っているうちに寝るなんて…」
よく見ると目の下には隈が…だけど部屋に入るつもりはなかったなんて、それならどうしてここに居るの?そして一番疑問なのは、どうやってここに居るのかってこと。それで…
「怒ってはいないけど…どうやってここに入ったのかは聞きたいわ!それにね、もしも着替え中とかだったら…」
そう率直に聞くと、スチワートの顔はみるみる赤くなっていく。ええっ?
「そんなことはしない!外から窓に映る君を見たんだ。だからここへ飛んだんだけど、既の差で君はバスルームに入った後で…」
「と、飛んだですって?」
私のそんな反応をみて、再びスチワートはあわわと慌てふためいている。どうも私が考える『飛ぶ』とは違うよう。それでよくよく聞いてみると…
「錬金術ってどこまで知っているのか分からないけど、主に特殊な鉱物や物質を組み合わせたりするんだ。その中で偶然、瞬時に移動出来る装置が生まれた。そしてそれを小型化して持ち歩けば、誰でも目的地まであっという間に移動出来るようになるかも知れない。まだ研究段階だけどね?」
そう言われて思い出すのは、死に戻りする前の新聞記事。そのようなことが書いてあったのを見たような…
じゃあそれって、スチワートが開発したものだったってこと!?
「今は一度訪れたことがある場所にしか移動出来ないんだ。それで君に会おうとノートン邸のガゼボまで移動した。ほら、この前招待されただろ?だけど来てみたものの、これからどうしようか困っていたら…君が窓から見えたってわけ」
「それって…まるで魔法みたい!」
お話の中でよく聞く魔法…それとは違うのだろうか?まるで未知な分野だから、まったくもって分からない。スチワートもそんな私を笑って…
「魔法?錬金術は魔法とは違うんだ。魔法は何もないところから生み出せるけど、錬金術は物体を違う物に変える。昔々は魔法を使える人だっていたようだけど、今はいないだろ?きっと錬金術って、その名残のようなものだ。ほんの少しだけ能力が残った者達が、錬金術師ってことだよ。だからいつの日か、そんな者さえも居なくなるんだろうな…」
ただ漠然と知ったつもりになっていたけど、聞けば聞くほど深い話。そんな希少な存在が目の前にいるなんて!だけど…スチワートはどこか他人事のように話している。錬金術師としての自分を嫌っているのかしら?それとも…
「まあ、錬金術のことはこれくらいにして、それよりもデビュタントだ!仲間から聞いたけど、パートナーって色を合わせたりしなきゃならないんだろ?今日はそれを尋ねに来たんだけど」
「私もそれを考えていたの。だからちょうど良かったわ!」
デビュタントまで後一週間…それで早く連絡を取りたいと思っていた。今更衣裳を合わせることは出来ないでしょうけど、せめて小物を合わせたいと思っていた。それを考えると、驚いたけど今日来てくれて良かったわ。
「普通はね、衣裳なんかを合わせるんだけど、もう時間がないし…ポケットチーフやブローチ、それかマントのピンなんかを合わせましょうか?私はネックレスや髪飾りにするわね」
スチワートはまるで海のような碧眼…だからネックレスはエメラルドで決まりね!そして髪飾りは黒水晶をあしらったものやブラックダイヤモンドもいいかも?私の持っている物でなければ、お母様の遺品を借りることにする。すると…
「ってことはさ、フレデリカは明るい茶色の髪に深い緑の瞳だから…深緑のチーフに、茶色の宝石をあしらったアクセサリーを使えばいいってこと?そして衣裳は無難に黒にする」
「そうそう!それで大丈夫よ」
意外と早く打ち合わせは終わって、それからスチワートにハーブティー振る舞った。少し疲れているように見えたからカモミールを選ぶ。少しでもリラックスしてくれるといいな…
それから一週間が経ち、いよいよデビュタント当日。このまま何事もなく終えることが出来ると、誰もが信じて疑わなかった。だけど…そんな私を嘲笑うかのように、信じられない現実が待っていた。
泣きじゃくる私…そして諦めの果ての絶望。どうしてこんなことになってしまったの?
そう悩んでいたある日、夜バスルームから出た私は驚きの眼で固まる!何とベッドの上にスチワートがいた。おまけに…寝ているの?
ここは二階ですけど…忍び込んだ?もしかして、玄関から入って来たってこと?どっちだとしても女性の部屋に勝手に入るなんて有り得ない!
頭の中で『どうして?』がグルグル回って、ネグリジェにショールを羽織りつつ恐る恐る近付いてみる。
すると…すぅすぅと寝息を立ててぐっすり眠っているスチワートが。疲れているの?
私などが想像も出来ない業務に携わっているスチワート。だけどそれにしてもこれって、不法侵入じゃない?だけど…
寝ているスチワートの近くに黙って腰掛けた。ベッドがちょっぴり軋むけど、まだスチワートは気付かない。このまま朝まで目覚めなかったらどうしよう?とさえ思い始める。
それにしてもあどけない寝顔…エズラもそうだったわ。冷たい関係だとはいえ寝室だけは同じだった私達。跡継ぎの為なのか時折抱かれて、嬉しいはずなのに淋しさだけが募っただけ…
そしてあの人が寝静まった後、よくこうして寝顔を見ていた。私を冷たく突き放す訳でもなく、眉間に皺を寄せながら面倒そうに話す訳でもない…その時だけは私だけのものだと思えたから!
だけどもう、どこまでも遠くに思える。私は一歩前進出来てる?そうしてあなたとの思い出も、次第に薄れていくのね。それでいいのだと思う…きっと。
「ううん…えっ?ああーっ!」
やっと目が覚めたのか、ガバッと勢いよく起き上がるスチワート。どうもわざとだった訳ではなく、本当に焦りまくっている。あたふたとしている姿をみていたら戸惑いもどこへやら、何だか可笑しくなってくる。
「フフフッ、焦らなくても大丈夫よ?驚いただけで怒ってはいないから」
「本当にすまない!誰もいない部屋に入ろうとは思ってなかったんだ。ましてや待っているうちに寝るなんて…」
よく見ると目の下には隈が…だけど部屋に入るつもりはなかったなんて、それならどうしてここに居るの?そして一番疑問なのは、どうやってここに居るのかってこと。それで…
「怒ってはいないけど…どうやってここに入ったのかは聞きたいわ!それにね、もしも着替え中とかだったら…」
そう率直に聞くと、スチワートの顔はみるみる赤くなっていく。ええっ?
「そんなことはしない!外から窓に映る君を見たんだ。だからここへ飛んだんだけど、既の差で君はバスルームに入った後で…」
「と、飛んだですって?」
私のそんな反応をみて、再びスチワートはあわわと慌てふためいている。どうも私が考える『飛ぶ』とは違うよう。それでよくよく聞いてみると…
「錬金術ってどこまで知っているのか分からないけど、主に特殊な鉱物や物質を組み合わせたりするんだ。その中で偶然、瞬時に移動出来る装置が生まれた。そしてそれを小型化して持ち歩けば、誰でも目的地まであっという間に移動出来るようになるかも知れない。まだ研究段階だけどね?」
そう言われて思い出すのは、死に戻りする前の新聞記事。そのようなことが書いてあったのを見たような…
じゃあそれって、スチワートが開発したものだったってこと!?
「今は一度訪れたことがある場所にしか移動出来ないんだ。それで君に会おうとノートン邸のガゼボまで移動した。ほら、この前招待されただろ?だけど来てみたものの、これからどうしようか困っていたら…君が窓から見えたってわけ」
「それって…まるで魔法みたい!」
お話の中でよく聞く魔法…それとは違うのだろうか?まるで未知な分野だから、まったくもって分からない。スチワートもそんな私を笑って…
「魔法?錬金術は魔法とは違うんだ。魔法は何もないところから生み出せるけど、錬金術は物体を違う物に変える。昔々は魔法を使える人だっていたようだけど、今はいないだろ?きっと錬金術って、その名残のようなものだ。ほんの少しだけ能力が残った者達が、錬金術師ってことだよ。だからいつの日か、そんな者さえも居なくなるんだろうな…」
ただ漠然と知ったつもりになっていたけど、聞けば聞くほど深い話。そんな希少な存在が目の前にいるなんて!だけど…スチワートはどこか他人事のように話している。錬金術師としての自分を嫌っているのかしら?それとも…
「まあ、錬金術のことはこれくらいにして、それよりもデビュタントだ!仲間から聞いたけど、パートナーって色を合わせたりしなきゃならないんだろ?今日はそれを尋ねに来たんだけど」
「私もそれを考えていたの。だからちょうど良かったわ!」
デビュタントまで後一週間…それで早く連絡を取りたいと思っていた。今更衣裳を合わせることは出来ないでしょうけど、せめて小物を合わせたいと思っていた。それを考えると、驚いたけど今日来てくれて良かったわ。
「普通はね、衣裳なんかを合わせるんだけど、もう時間がないし…ポケットチーフやブローチ、それかマントのピンなんかを合わせましょうか?私はネックレスや髪飾りにするわね」
スチワートはまるで海のような碧眼…だからネックレスはエメラルドで決まりね!そして髪飾りは黒水晶をあしらったものやブラックダイヤモンドもいいかも?私の持っている物でなければ、お母様の遺品を借りることにする。すると…
「ってことはさ、フレデリカは明るい茶色の髪に深い緑の瞳だから…深緑のチーフに、茶色の宝石をあしらったアクセサリーを使えばいいってこと?そして衣裳は無難に黒にする」
「そうそう!それで大丈夫よ」
意外と早く打ち合わせは終わって、それからスチワートにハーブティー振る舞った。少し疲れているように見えたからカモミールを選ぶ。少しでもリラックスしてくれるといいな…
それから一週間が経ち、いよいよデビュタント当日。このまま何事もなく終えることが出来ると、誰もが信じて疑わなかった。だけど…そんな私を嘲笑うかのように、信じられない現実が待っていた。
泣きじゃくる私…そして諦めの果ての絶望。どうしてこんなことになってしまったの?
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