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第二章・二度目の人生とは?
10・シンシアの企み
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シンシア、どういうつもりなの?ロリーのことがあってから、少しは大人しくなったと思っていた。あからさまに私を批判することもなくなり、むやみに陥れようとする行動もみられなくなっていた。だから…少しは反省しているのだと思っていたのに。違ったのね?結局どこまでも私って、甘いんだわ…
「急に現れて失礼よ、シンシア。今ロウレン家の方達と大事な話をしていたの。だから特に用もないなら、遠慮してくれるかしら?また違う機会にでも…」
なるべく事を荒立てないように、静かにそう伝える。私はスチワートはともかく、エズラには早く帰って欲しい。言いたいことは全て言い終え、もうこの場にいる必要もないんじゃないかと思う。だからシンシアがやって来たところで、もうこれ以上会話をするつもりもなかったから。なのに…
「お姉様っていつもそう!どれだけ私を邪魔にすれば気が済むの?私は将来義兄になるかも知れない方に、ご挨拶をしようとしただけなのに…それなのに酷いです!」
よりによってこの場で…そんなことを言ってくるシンシア。そうか…分かったわ!私の縁談自体を、なくしてしまおうとしているのね?
シンシアは先程までの私達の会話を知らない…だから婚約するものだと思い込んでいるのね。私の幸せを壊そうとしている?そんなの無駄なことなのに。
「ちょっと聞いて下さいますか?この前もお姉様が、私付きのメイドを屋敷から追い出してしまったんですよ。彼女とは姉妹同然だったのに…やっぱり私って、お姉様に疎まれているのかしら?」
余りの言い草に、思わず苦笑いする。私がロリーを追い出した?それはあなただと思うけど。だけどシンシア、残念ね?そんなのは無意味…私が嫌われて困る人なんて、ここにはいないのよ。そして二人はシンシアの言うことを信じるんでしょうね?そうだとしても、今更傷付きもしないわ。
「君は…フレデリカ嬢の妹だね?確かこの前一度会ったシンシア嬢。だが家族にそんなことを言うのは感心しない。それにそんなこと、君の気のせいではないのか?フレデリカ嬢は理由もなく、そのようなことをする人には見えないがな。おまけに勝手にベラベラ話し出すなんて…不躾だろう?」
「そ、そんな…お姉様の肩を持つのですか?信じられません!」
目の前で繰り広げられる意外な会話に言葉もない。シンシアを咎めているのは…何とエズラ。この人が私を庇うなんて有り得ない!
シンシアは言い当てられたのか、ぷくうと頬を膨らませている。それから「もういいです!」と捨て台詞を残して足早に庭園を後にした。嵐のように現れて、嵐のように去る…一体何をしたかったの?
「本当にすみません!義妹とは最近、気持ちのすれ違いがあったものですから。あの子の失礼な態度をお詫びいたします」
あの子の行動の意味が分からず困惑するけど、同じノートン家の者として頭を下げた。信じてくれたのは正直嬉しいけど、戸惑いを隠せないのも事実。それで…
「もうお開きにいたしませんか?今日は初めてお会いしたことですし。それではスチワート、デビュタント当日はよろしくお願いします。何か分からないことがあったら、いつでも連絡して下さいね」
「も、もう?分かったよ…よろしくね」
エズラはともかく、スチワートはまだ名残惜しそうにしている。だけどもう疲れていた。想像もしていなかったエズラとの再会に、かなり一日で打ち解けたとはいえ、スチワートとも初顔合わせだったから。それにシンシアのことだって…恐らくあの子のことだから、お兄様やお父様に対して被害者ぶって大袈裟に話すに違いない。その対応のことを考えるだけでも頭が痛い!だからもう一人になりたいのが本音。
そしてにこやかな笑顔で見送る私。スチワートとエズラは仲が良さそうに並んで歩いている。そんな二人を見ていたら、ある感情に苛まれる。
私はかつての夫の、逞しい背中をじっと見つめながら呟いた。
「あなたは私の夫とならなければ、あんな非情な人にならなくて済んだのかも。それもまた、私の罪でもあるのかも知れないわ…」
+++++
見目麗しい兄弟が庭園を歩いてゆく。兄はこの帝国有数の騎士で、弟は権威ある上位錬金術師。体格の違いはあるものの、顔立ちは良く似ている二人。誰から見ても仲の良い兄弟…だけどほんの少し遠慮があるように見える。庭園を抜けた先には栗毛の馬が一頭繋がれていて、その前まで来ると兄が弟に向かってクルリと振り返った。そして…
「お前はどうやって帰るんだ?なんならこの馬で送ってやろうか。大昔に二人で一緒に馬に乗ったことがあっただろう?あの時は本当に楽しかったな。だから…」
兄は懐かしむように目を細め、弟に微笑みかける。そして弟は照れたようにフッと笑う。だけど次の瞬間、サアッと表情を変えて…
「ああ、一度だけね?俺にとっては最悪な思い出になったよ。それにしても…フレデリカって可愛い人だよね?俺に同情しているのか、拒絶出来なかったみたいだ。だけど兄さん、言っておくけど…」
先程までの和やかな二人の雰囲気とは打ってかわり、ピリリとした緊張が走る。兄はそれに言葉もなくし、驚愕の表情で弟を見ている。信じられないというように。
「もう俺の邪魔はするなよ?兄さんにはそんな権利さえないんだ!だからもう、俺とフレデリカには関わらないでくれ」
さっきまでは、どちからかというと幼い印象だったはずの弟。だけど真顔で兄にそう言い捨てる。人が変わったように…元々そうだったかのように。
それから右手を前に突き出し、親指と中指でパチン!と指を鳴らした弟は、その場から煙のように消え去る。
兄はいつまでも見ていた…消えた弟が、今の今まで立っていた場所を。世間的には屈強だと呼ばれる兄…だけどその瞳には涙が滲んでいた。
「急に現れて失礼よ、シンシア。今ロウレン家の方達と大事な話をしていたの。だから特に用もないなら、遠慮してくれるかしら?また違う機会にでも…」
なるべく事を荒立てないように、静かにそう伝える。私はスチワートはともかく、エズラには早く帰って欲しい。言いたいことは全て言い終え、もうこの場にいる必要もないんじゃないかと思う。だからシンシアがやって来たところで、もうこれ以上会話をするつもりもなかったから。なのに…
「お姉様っていつもそう!どれだけ私を邪魔にすれば気が済むの?私は将来義兄になるかも知れない方に、ご挨拶をしようとしただけなのに…それなのに酷いです!」
よりによってこの場で…そんなことを言ってくるシンシア。そうか…分かったわ!私の縁談自体を、なくしてしまおうとしているのね?
シンシアは先程までの私達の会話を知らない…だから婚約するものだと思い込んでいるのね。私の幸せを壊そうとしている?そんなの無駄なことなのに。
「ちょっと聞いて下さいますか?この前もお姉様が、私付きのメイドを屋敷から追い出してしまったんですよ。彼女とは姉妹同然だったのに…やっぱり私って、お姉様に疎まれているのかしら?」
余りの言い草に、思わず苦笑いする。私がロリーを追い出した?それはあなただと思うけど。だけどシンシア、残念ね?そんなのは無意味…私が嫌われて困る人なんて、ここにはいないのよ。そして二人はシンシアの言うことを信じるんでしょうね?そうだとしても、今更傷付きもしないわ。
「君は…フレデリカ嬢の妹だね?確かこの前一度会ったシンシア嬢。だが家族にそんなことを言うのは感心しない。それにそんなこと、君の気のせいではないのか?フレデリカ嬢は理由もなく、そのようなことをする人には見えないがな。おまけに勝手にベラベラ話し出すなんて…不躾だろう?」
「そ、そんな…お姉様の肩を持つのですか?信じられません!」
目の前で繰り広げられる意外な会話に言葉もない。シンシアを咎めているのは…何とエズラ。この人が私を庇うなんて有り得ない!
シンシアは言い当てられたのか、ぷくうと頬を膨らませている。それから「もういいです!」と捨て台詞を残して足早に庭園を後にした。嵐のように現れて、嵐のように去る…一体何をしたかったの?
「本当にすみません!義妹とは最近、気持ちのすれ違いがあったものですから。あの子の失礼な態度をお詫びいたします」
あの子の行動の意味が分からず困惑するけど、同じノートン家の者として頭を下げた。信じてくれたのは正直嬉しいけど、戸惑いを隠せないのも事実。それで…
「もうお開きにいたしませんか?今日は初めてお会いしたことですし。それではスチワート、デビュタント当日はよろしくお願いします。何か分からないことがあったら、いつでも連絡して下さいね」
「も、もう?分かったよ…よろしくね」
エズラはともかく、スチワートはまだ名残惜しそうにしている。だけどもう疲れていた。想像もしていなかったエズラとの再会に、かなり一日で打ち解けたとはいえ、スチワートとも初顔合わせだったから。それにシンシアのことだって…恐らくあの子のことだから、お兄様やお父様に対して被害者ぶって大袈裟に話すに違いない。その対応のことを考えるだけでも頭が痛い!だからもう一人になりたいのが本音。
そしてにこやかな笑顔で見送る私。スチワートとエズラは仲が良さそうに並んで歩いている。そんな二人を見ていたら、ある感情に苛まれる。
私はかつての夫の、逞しい背中をじっと見つめながら呟いた。
「あなたは私の夫とならなければ、あんな非情な人にならなくて済んだのかも。それもまた、私の罪でもあるのかも知れないわ…」
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見目麗しい兄弟が庭園を歩いてゆく。兄はこの帝国有数の騎士で、弟は権威ある上位錬金術師。体格の違いはあるものの、顔立ちは良く似ている二人。誰から見ても仲の良い兄弟…だけどほんの少し遠慮があるように見える。庭園を抜けた先には栗毛の馬が一頭繋がれていて、その前まで来ると兄が弟に向かってクルリと振り返った。そして…
「お前はどうやって帰るんだ?なんならこの馬で送ってやろうか。大昔に二人で一緒に馬に乗ったことがあっただろう?あの時は本当に楽しかったな。だから…」
兄は懐かしむように目を細め、弟に微笑みかける。そして弟は照れたようにフッと笑う。だけど次の瞬間、サアッと表情を変えて…
「ああ、一度だけね?俺にとっては最悪な思い出になったよ。それにしても…フレデリカって可愛い人だよね?俺に同情しているのか、拒絶出来なかったみたいだ。だけど兄さん、言っておくけど…」
先程までの和やかな二人の雰囲気とは打ってかわり、ピリリとした緊張が走る。兄はそれに言葉もなくし、驚愕の表情で弟を見ている。信じられないというように。
「もう俺の邪魔はするなよ?兄さんにはそんな権利さえないんだ!だからもう、俺とフレデリカには関わらないでくれ」
さっきまでは、どちからかというと幼い印象だったはずの弟。だけど真顔で兄にそう言い捨てる。人が変わったように…元々そうだったかのように。
それから右手を前に突き出し、親指と中指でパチン!と指を鳴らした弟は、その場から煙のように消え去る。
兄はいつまでも見ていた…消えた弟が、今の今まで立っていた場所を。世間的には屈強だと呼ばれる兄…だけどその瞳には涙が滲んでいた。
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