【完結】私が一人で死んだ夜。だからあなたを、捨てることにしますね?

MEIKO

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第四章・予期せぬ告白

22・有り得ない話

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 シンシアの母と聞いて、伯母様は不快な表情を隠さない。そういえばお母様だけじゃなく、伯母様だって従姉妹同士ってことになる。シンシアのお母様と、辺境伯家の姉妹…どんな関わりがあったのだろう。

 「シンシアの母親のエリカは、男爵家の娘だったの。私達の領とは隣の街に住んでいて、だから子供の頃はよく遊んだわ。そして確かに…世間ではクリスティーヌと似ていると言われていた。二人こそが姉妹みたいだって言われてね。だけど私から言わせれば…髪と瞳の色が同じというだけで全然違う!」
 
 伯母様の口ぶりでは、良い印象はないのだと物語っている。シンシアの母親とそんな関係だったなんて、まるで知らなかった。そしてそれは、シンシアがノートン家に来ることになったキッカケにも繋がる。母親同士が仲が良かったからこそ、シンシアを引き取ったのだと思っていたのに…違ったの?お父様は結局、どういった経緯で引き取ることにしたのかしら…

 「さあ、そんな話はあとあと!お腹すいたでしょう?あなたは昨晩から食べていないんだから」

 ハッと気付くと、確かにお腹がペコペコ!伯母様の言う通り、先に朝食を食べた方がよさそう。案内された席に着くと、目の前にはスチワートが座っている。こちらにヒラリと手を振るスチワートは、元気そうに見えてホッとする。

 「スチワート、おはよう。首の怪我は大丈夫?痛くないのかしら…」

 「フレデリカ、おはよう!良く眠れたかな?まだ無理しないようにな。俺の怪我なんてもう治ってるよ。手当てしてもらったから平気さ」

 スチワートはそう言って明るく笑う。昨夜怪我の具合を見なきゃと思っていたのに、それが出来なかったから…だけどそうなら良かったわ!

 「フラウ家のシェフが張り切って作ったのよ?さあ召し上がれ!」

 伯母様のその言葉でテーブルの上を見ると、まだ湯気のあがるオムレツに厚切りのベーコンはこんがりと焼けている…凄く美味しそう!早速いただくことにした。

 「それで辺境伯様、結局どういった理由でフレデリカと会おうとしていたのですか?」

 そう尋ねたのはスチワート。食事を終え、紅茶をいただいている時にそう切り出した。そうだわ…それが本来の目的よね。

 「私達、それをお聞きしたいとここまで来たんです。ですが…ライシックという街で噂で聞いたのですが、こちらで新しいエメラルド鉱山が見つかったとか。それと関わり合いがあるのですか?」

 鉱夫達がしていた噂話。それが関係していると睨んでいた私達。でなければ見当もつかない。すると…

 「ああ、聞いていたのね?それなら話が早いわ。フレデリカがノートン家を出たと聞いて、私はその理由を調べることにしたの。そしてあろうことかフレデリカを蔑ろにし、ほぼ血の繋がりのないシンシアを可愛がっていると知ってね。どうしても連絡を取ろうと…」

 そう聞くと申し訳ない気持ちになる。どんなにか伯母様にも心配をかけただろう?だけどそれと鉱山…どう繋がるのかしら。

 「フレデリカは憶えている?クリスティーヌが所有しているエメラルド鉱山のことと、次の持ち主に定められているのは自分だってことを」

 その伯母様の言葉に、コックリと頷く。十五年前のあの時、幼いながらもハッキリと聞いた遺言。お母様が亡くなった後、受け継ぐのは自分だと。

 「そうね、本来ならその権利はフレデリカのものなの。だけど今はどうなっているのか分からないのね?驚くべきことにその受け取り人は…シンシアよ」

 「ええっ!そんな馬鹿な…」

 どうしてそんなことになっているの?お父様が私の代わりに、受け取っているのだと思い込んでいた。なのに…全く意味が分からない!

 「私もまさかと思ったわ!だけど…調べたら間違いないの。おまけにそれはシンシアの物というより、いつの間にかその母親のエリカの所有になっていたの。だからエリカが亡くなり、それを受け継いだのがシンシアだってこと」

 よく分からない…それじゃあ、お母様の生前に所有が変更されていたってこと?誰が何の為にそんなこと!

 「ではお母様が、そのエリカ様に鉱山の権利を渡したということですか?そんなのあり得るかしら…」 

 それには伯母様も、難しい顔をして押し黙っている。同じように疑問に思っているようで…
 
 「あなたは幼かったから憶えていなかったかも知れないけど、実は会ったことがあるんだと思うわ…エリカと。クリスティーヌが亡くなる前、会いたいと言って訪ねているはず。そして葬儀にも参列していたのは確か」

 お母様が亡くなる前…あの時は本当に辛い時期だった。急な病に倒れたお母様は、あっという間に病状が進んだ。それでも一時、回復した時もあったけど、その後は坂道を転げるように悪くなっていった。私とお兄様はそれが受け入れられなくて、悲しくて見ていられなかった!じゃあ、あの時に?

 「そういえばお母様の最期の時、看病をしていた女の人がいたような。子供だった私とお兄様は、近付くことも許されなかったけど…」

 「恐らくそれがエリカね。私も不思議だったの…従姉妹で昔は仲が良かったとはいえ、クリスティーヌが結婚してからは全く連絡を取っていなかった筈。なのにわざわざ会いに行くなんてと…」

 確かにそう考えたら解せない…そしてその時期だったら、シンシアだって生まれているってこと。そんな幼い娘を家に残して、従姉妹の看病に向かうかしら?下手すれば自分だって病気になるかも知れない…そんな危険を冒してまで行く?

 きっとその理由が、お母様が鉱山の権利を譲り渡したことと関係がある。お母様は最期の時、何を考え何を思ったの?誰か教えて!
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