【完結】私が一人で死んだ夜。だからあなたを、捨てることにしますね?

MEIKO

文字の大きさ
21 / 53
第四章・予期せぬ告白

21・奇妙な夢

しおりを挟む
 「おい、眠ったのか?フレデリカ」

 突然のそんな声に眠い目を擦る。エズラ…?あなた、帰って来たのね。起きなきゃと思うけど、今日は朝から具合が悪くて、どうにも起き上がることが出来ない。

 すると冷たい手がおでこを包む。それがとっても気持ちいい!

 ──あっ、やっぱり熱があったんだわ…

 そう気付いた私は、眠気まなこで強く額に押し付ける。もっと…って。

 それから意識が朦朧としていた私は、また直ぐに眠ってしまったよう。だけどいつの間にか身体が揺られている。

 ──うん?ソファで寝ていたはずなのに。誰が…

 それからそっとベッドの上に置かれ、次の瞬間フワリと温かいものに包まれる。布団を掛けてくれたの?すると…

 「フレデリカ、早く元気になれ」

 「ええっ…」

 
 ガバッと起き上がる。あれっ?私って何をしていたっけ。それに…エズラなんているはずがないじゃない!寝ぼけていた?

 夢を見ていたんだわ…今となっては懐かしい夢を。だけどあんな経験をしたことがない。優しいあの人なんて…
 過去の私が見せた夢?願っていたことを…そんなの意味ないのに。それにしても奇妙な夢だったわ…
 
 それに過去の私って、本来ならもっと未来のこと。ああっ、どう言ったらいいのか…こんがらがるわ!
 結局は今の私にとっては現実じゃないってこと。だから考える必要もないのだと思う。それよりも今は…

 旅の汚れを落とした私は、ほんの少しだけ休むつもりだった。出発してからそれ程経ってはいなかったけど、それでも初めての移動は身体に堪えたみたいで。それで伯母様との夕食まで時間があるし、ちょっとだけ休もうって思ったんだけど。ぐっすりと眠ってしまった!あれから皆はどうしたのかしら…

 ──コン、コン、コン。

 ちょうどその時、鳴り響くノック音。どなたかしら?
 「失礼します」という元気な声の後、扉から現れたのは…メイド?

 「おはようございます!フレデリカ様。朝のお支度の手伝いをさせていただきますオリアナと申します。どうぞお見知りおき下さいませ」

 「はい!よろしくお願いします」

 そう言う私にオリアナは、私などに敬語はおやめください…とやんわりと伝えてくる。そ、そうね…私はノートン家を出たといっても、まだ籍を抜けた訳ではない。まだ貴族家の令嬢…だけど。

 今までだって殆ど自分でやってきた。身支度やお風呂だって…やってもらえたのは必要最低限のこと。女主人を名乗った後はほんの少しマシになったけど、それでも充分だったとは、とてもじゃないけど言えない。だからこういう扱いは久しぶりになる。伯母様に恥をかかせる訳にはいかないし、慣れなきゃね…

 「オリアナ、これからよろしくね」

 微笑みながら言い直すと、オリアナも笑顔で頭を下げてくれる。それから気になっていることを聞くことにする。

 「私、かなり寝ちゃったみたい。あれからどうしたのかしら?伯母様やスチワートは…」

 「はい!カサンドラ様は、お疲れのフレデリカ様をそのまま寝かせておくようにおっしゃいました。それでご夕食はスチワート様とお二人で取られていました。随分話が弾んでおいででしたよ?」

 そのことにホッとする。私がいなくて、二人だと気を遣っただろうと心配したから。でも会話が弾むだなんて、やっぱり物怖じしないスチワート!きっと伯母様にも伝わった筈…スチワートが素晴らしい人だって。

 「それなら良かったわ!今からなら伯母様と、朝食はご一緒出来るわね?」

 「はい!楽しみにしてらっしゃると思います」

 そう言いながらオリアナは、クローゼットの扉を開く。すると中には数多くのドレスが並んでいて…おまけに一見して上質なものばかり!伯母様は子供がいらっしゃらないから、若い人向けのドレスなんて必要ないと思うけど…お母様の若い頃のものかしら?

 「フフフッ、カサンドラ様が急遽、揃えられたのですよ?既製品でも上質のものを!と命を出されて、辺境伯領中のドレスを一晩で集められました」

 「ええっ…私のために!?」

 私が持って来たのは小さな鞄に入るだけの…それで伯母様が用意してくださったのね?もっと持ってくるんだった…お礼を言わなきゃ!

 それからオリアナに手伝ってもらいながら、身支度を整えることに。オリアナが中から選んでくれたのはピンク色のドレス。ああ、お母様のものみたい…伯母様が選んでくださったのかも?

 「このドレスにするわ!さあ、急ぎましょう」

 これ以上伯母様達を待たせる訳にはいかないと、急いでダイニングルームへ向かう。すると…

 「おはようございます。すみません、遅くなりました」

 「フレデリカ!良く眠れたかしら?ああ…っ」

 私の顔を見るなり、伯母様は口元を手で押さえる。どうしたのかと驚くと…

 「クリスティーヌが帰って来たようだわ…あの子、ピンクのドレスがお気に入りだったから。とっても似合ってる…そっくりよ?」

 伯母様はそう言って、再び瞳を潤ませている。でも…昨日もそうだったけど、伯母様の欲目じゃないかしら?似ているだなんて、言われたのは初めて。そうだったとしても嬉しいわ…

 「伯母様だけです…そうおっしゃていただけるのは。でも嬉しい!お父様もお兄様だって、そんなことを言ったことありませんから。シンシアがお母様にソックリですから余計に…」

 照れながらそう言って、それでも嬉しいことを伝える。そして微笑みながら伯母様を見ると…ええっ?

 「シンシア、あの女の娘ね。なのにクリスティーヌにそっくりだなんて有り得ない!あの男もアルベルトも、どこまで見る目がないのかしら…」

 先程までのにこやかな表情を崩して、伯母様は厳しい顔をしている。そして…あの女?それって、シンシアの亡くなったお母様のことかしら。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

処理中です...