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第四章・予期せぬ告白
20・感動の再会
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降り立つのは薔薇園だった筈…なのに違う!どこかの部屋?もしかして、城内なのかしら。だけど怖くて視線は落としたままで、どういう場所なのかを確認することも出来ない。上質な絨毯が敷かれていて、ずっと向こうには大きな扉。それに壁にはいくつかの絵画が飾られている。応接室とか客間なの?
首に剣を突き立てられてるスチワートは、身動き一つ出来ない。程なくして首には細く赤い線が現れて…薄っすら切られてる?そんな!
「お前達は何者だ?答え次第では、命がないと思え」
静かで落ち着いた声。これはまさに、私達にとって最大の危機!どうすればいいの?
「やめなさい!どうみても賊ではないのではないか。若い女に…もしかして錬金術師か?それなら怪しいが…」
少し離れたところから聞こえる凛とした声…女性のもの?だけど場を震わせるような迫力がある。これって…伯母様?
こうなったら秘密になんてしていられない!
「私です…伯母様。フレデリカです!」
「な、何ですって?」
こちらへ勢いよく近付いてくる足音…それで思わず振り返る。すると!
「フレデリカ!ああ、クリスティーヌにそっくり…」
お母様に?とビックリしちゃったけど、この方は間違いなく…カサンドラ伯母様!あの頃よりお年は重ねられたけど、それでも美しく威厳ある姿。およそ十五年ぶりの感動の再会で…
「だけどどうしたの?何故正面から私を訪ねて来ないの。フレデリカだと分かっていたなら、刃物を突き付ける真似などしなかったのに。危険でしょう!」
そう言う伯母様は、少し切なそうな表情をしている。女性だけと見上げるように背が高く、そしてお母様と同じ翡翠色の瞳を潤ませる。ああ、私の行動で傷付けてしまった?
「すみません、伯母様!どういう意味で私を捜されているのか分からなかったのです。もしかしてノートン家に関係があるかもと…」
「ああ、ノートン家…」
私の言葉にボソッと呟いた伯母様。そして眉間に深々と皺を寄せる。その表情から、ノートン家やお父様には良い印象がないのが分かる。これって、長い間連絡をくださらなかったことと関係がある?
ずっと心細かった…誰にも頼ることが出来ずに。シンシアのことばかりを気遣うお兄様に、私が悪いと思い込む使用人達。そしてそれを窘めたり、叱ったりもしてくれないお父様。カイだけが唯一の支えだった長き日々。
そして思ったの。もしも伯母様が私の味方をしてくださったら…って。だけど伯母様はお母様が亡くなってからの十年間は梨の礫。もう私達とは関わってくれないんだと思っていた。だから…
「お言葉を遮って申し訳ありません!俺はスチワート・ロウレンという者です。フレデリカは家族達に見切りをつけ、ノートン家を出た身です。ですから長い間自分に会おうともしてくれなかった辺境伯様から連絡が来ても、それを信じることが出来なかったんです。その気持ちは当然のことだとお思いになりませんか?」
毅然と伯母様に意見するスチワート。その首からはまだ血が滲んでいる。スチワートは誰よりも私の心情を理解している…だから黙っていられなかったのだと思う。こんな状況なのにありがとう…スチワート。
「伯母様、スチワートの失礼をお許し下さい。でも…今スチワートが言ったことは本当です。私が苦しい時、心が挫けそうになって泣き出しそうな時、本当は寄り添っていただきたかった!直接お会いできなくても、一通の手紙でも良かったのです!それだけで私は…きっと強くなれた」
いろんな感情が入り混じり、そう自分の心をさらけ出す。それから涙がポロリと落ちる。泣きたくはなかったけど、目の前の伯母様が泣いていたから。
そしてやっと分かった…伯母様だって本当は、私と会いたかったのだと。だけど何か理由があり、会うのを我慢してたんだって!
「ああ…本当にごめんね、フレデリカ。私が悪かった…全て私が招いたことだったの。あなたの心を一番に考えなければならなかったのに、私はそう出来なかった。本当にごめんなさい!」
「お、伯母様!」
私達はひしと抱き合った。始めは少し照れくさかったけど、直ぐにその温もりに身を任せることが出来た。これが血というものなのかしら?落ち着くわ…まるでお母様に抱かれているよう。
「フレデリカに…ロウレン令息、疲れたでしょう?二人には部屋を用意するわ!旅の汚れを落として、一緒に食事しましよう。さあ、さあ!」
一転元気になった伯母様は、私の肩を抱きながら微笑み掛けてくる。そして…
「事情を聞くのはまた後にして、取り敢えずお風呂に入ること!貴族の令嬢がそんなに埃だらけだなんて考えられないことよ?」
「ええーっ、そんなに酷いですか?もしかして匂いも…」
そう焦る私に、この場が笑いに包まれる。先程剣を突き付けていた騎士も、突き付けられていた側の私達も…
分かってもらえて本当に良かった!だけど…
「伯母様、私のことよりも、早くスチワートの怪我の手当てをしたいんです…もう痛そうで見ていられません!」
さっきからチラチラ見て、気になって仕方がなかった。本人は気にもしていなさそうだったけど、痛みは絶対あるはず!
「そ、そうだわね。即刻医師の手配を!ロウレン令息、知らなかったとはいえ、怪我をさせてすまなかったわね」
「いいえ、大丈夫です。それから俺のことはスチワートとお呼び捨て下さい」
それから伯母様はメイドに声を掛けて、私の身支度を手伝うように言っている。それでやっとホッとした私達は、それぞれ部屋に案内されることに。
「スチワート、フレデリカを守ってくれてありがとう…感謝するわ!」
「はい!フレデリカは俺にとって大事な友人ですから」
そう答えているスチワートの声が聞こえて微笑む。良かった…そのうち二人もきっと打ち解けられるわね。そう確信して、二人に向かってコックリ頷き歩き出した私。そして廊下を進むとその豪華さに驚いていた。そんな時二人は…
「それであなた、いくつくらいなの?フレデリカよりも少し年上なのかしら」
「はい、俺は二十五…いえ、二十一になったばかりです」
安心しきっていたフレデリカは、そんな二人の会話を聞くことはなかった。これからもっと伯母様と話をしたいと、ワクワクしながら…
首に剣を突き立てられてるスチワートは、身動き一つ出来ない。程なくして首には細く赤い線が現れて…薄っすら切られてる?そんな!
「お前達は何者だ?答え次第では、命がないと思え」
静かで落ち着いた声。これはまさに、私達にとって最大の危機!どうすればいいの?
「やめなさい!どうみても賊ではないのではないか。若い女に…もしかして錬金術師か?それなら怪しいが…」
少し離れたところから聞こえる凛とした声…女性のもの?だけど場を震わせるような迫力がある。これって…伯母様?
こうなったら秘密になんてしていられない!
「私です…伯母様。フレデリカです!」
「な、何ですって?」
こちらへ勢いよく近付いてくる足音…それで思わず振り返る。すると!
「フレデリカ!ああ、クリスティーヌにそっくり…」
お母様に?とビックリしちゃったけど、この方は間違いなく…カサンドラ伯母様!あの頃よりお年は重ねられたけど、それでも美しく威厳ある姿。およそ十五年ぶりの感動の再会で…
「だけどどうしたの?何故正面から私を訪ねて来ないの。フレデリカだと分かっていたなら、刃物を突き付ける真似などしなかったのに。危険でしょう!」
そう言う伯母様は、少し切なそうな表情をしている。女性だけと見上げるように背が高く、そしてお母様と同じ翡翠色の瞳を潤ませる。ああ、私の行動で傷付けてしまった?
「すみません、伯母様!どういう意味で私を捜されているのか分からなかったのです。もしかしてノートン家に関係があるかもと…」
「ああ、ノートン家…」
私の言葉にボソッと呟いた伯母様。そして眉間に深々と皺を寄せる。その表情から、ノートン家やお父様には良い印象がないのが分かる。これって、長い間連絡をくださらなかったことと関係がある?
ずっと心細かった…誰にも頼ることが出来ずに。シンシアのことばかりを気遣うお兄様に、私が悪いと思い込む使用人達。そしてそれを窘めたり、叱ったりもしてくれないお父様。カイだけが唯一の支えだった長き日々。
そして思ったの。もしも伯母様が私の味方をしてくださったら…って。だけど伯母様はお母様が亡くなってからの十年間は梨の礫。もう私達とは関わってくれないんだと思っていた。だから…
「お言葉を遮って申し訳ありません!俺はスチワート・ロウレンという者です。フレデリカは家族達に見切りをつけ、ノートン家を出た身です。ですから長い間自分に会おうともしてくれなかった辺境伯様から連絡が来ても、それを信じることが出来なかったんです。その気持ちは当然のことだとお思いになりませんか?」
毅然と伯母様に意見するスチワート。その首からはまだ血が滲んでいる。スチワートは誰よりも私の心情を理解している…だから黙っていられなかったのだと思う。こんな状況なのにありがとう…スチワート。
「伯母様、スチワートの失礼をお許し下さい。でも…今スチワートが言ったことは本当です。私が苦しい時、心が挫けそうになって泣き出しそうな時、本当は寄り添っていただきたかった!直接お会いできなくても、一通の手紙でも良かったのです!それだけで私は…きっと強くなれた」
いろんな感情が入り混じり、そう自分の心をさらけ出す。それから涙がポロリと落ちる。泣きたくはなかったけど、目の前の伯母様が泣いていたから。
そしてやっと分かった…伯母様だって本当は、私と会いたかったのだと。だけど何か理由があり、会うのを我慢してたんだって!
「ああ…本当にごめんね、フレデリカ。私が悪かった…全て私が招いたことだったの。あなたの心を一番に考えなければならなかったのに、私はそう出来なかった。本当にごめんなさい!」
「お、伯母様!」
私達はひしと抱き合った。始めは少し照れくさかったけど、直ぐにその温もりに身を任せることが出来た。これが血というものなのかしら?落ち着くわ…まるでお母様に抱かれているよう。
「フレデリカに…ロウレン令息、疲れたでしょう?二人には部屋を用意するわ!旅の汚れを落として、一緒に食事しましよう。さあ、さあ!」
一転元気になった伯母様は、私の肩を抱きながら微笑み掛けてくる。そして…
「事情を聞くのはまた後にして、取り敢えずお風呂に入ること!貴族の令嬢がそんなに埃だらけだなんて考えられないことよ?」
「ええーっ、そんなに酷いですか?もしかして匂いも…」
そう焦る私に、この場が笑いに包まれる。先程剣を突き付けていた騎士も、突き付けられていた側の私達も…
分かってもらえて本当に良かった!だけど…
「伯母様、私のことよりも、早くスチワートの怪我の手当てをしたいんです…もう痛そうで見ていられません!」
さっきからチラチラ見て、気になって仕方がなかった。本人は気にもしていなさそうだったけど、痛みは絶対あるはず!
「そ、そうだわね。即刻医師の手配を!ロウレン令息、知らなかったとはいえ、怪我をさせてすまなかったわね」
「いいえ、大丈夫です。それから俺のことはスチワートとお呼び捨て下さい」
それから伯母様はメイドに声を掛けて、私の身支度を手伝うように言っている。それでやっとホッとした私達は、それぞれ部屋に案内されることに。
「スチワート、フレデリカを守ってくれてありがとう…感謝するわ!」
「はい!フレデリカは俺にとって大事な友人ですから」
そう答えているスチワートの声が聞こえて微笑む。良かった…そのうち二人もきっと打ち解けられるわね。そう確信して、二人に向かってコックリ頷き歩き出した私。そして廊下を進むとその豪華さに驚いていた。そんな時二人は…
「それであなた、いくつくらいなの?フレデリカよりも少し年上なのかしら」
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安心しきっていたフレデリカは、そんな二人の会話を聞くことはなかった。これからもっと伯母様と話をしたいと、ワクワクしながら…
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